2014年2月20日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
タグ: ジャズ・ロック
スペインはバルセロナの名Key奏者/コンポーザーのJordi Sabatesが75年にリリースした2nd『OCELLS DEL MES ENLLA』をピックアップいたしましょう。
Jordi Sabatesは、スペイン東北部のカタルーニャ地方の中心都市バルセロナ出身で1948年生まれ。
幼少時から本格的にクラシックのレッスンを受け、学生時代はジャズにのめり込むと同時に、物理に魅せられ量子力学を専攻したというアカデミックなミュージシャン。
67年に、学友で後に数多くの作品を共にするギタリストToti SolerとPIC-NICというポップ・バンドを組んで活躍。69年には、Toti SolerとともにOMを結成。スパニッシュ・ジャズ・ロックの礎を築いた名作『OM』を71年にリリースします。
【関連記事】
一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。スペインはバルセロナのジャズ・ロック・シーンを築いた元祖と言えるグループOMの71年デビュー作『OMG』をピックアップ。
OMは、元々はシンガーのバックで演奏したり、アレンジを提供する「裏方」として結成されたセッションバンドで、地中海を代表する女性シンガーMaria del Mar Bonetに曲を提供して注目を浴び、それを気に入ったバルセロナの名SSWのPau Ribaにアレンジ/演奏で参加したり、当時流行していたBLOOD SWEAT & TEARS的なブラスアレンジを提供したり、その中でJordiはパフォーマー/コンポーザーとして活躍します。
同時に、自身のバンドとしてJARKAを結成。2枚のアルバムを残しました。
73年には、OM時代からの盟友Toti Solerとデュオ作をリリースした後、74年に『El Senyor Dels Anells』でソロデビュー。
流れるように叙情がこぼれ落ちるフレーズから、フラメンコが目に浮かぶような力強いフレーズまで、表情豊かなピアノが躍動。ジャズの素養に地中海のエッセンスが加わった芳醇なフリージャズが印象的です。
スペインを代表する盲目のジャズ・ピアニストTete Montoliuも参加するなど、ジャズ・シーンで話題となり、チック・コリアもフェイヴァリットにあげ、スペインに滞在の際に一緒に演奏を楽しんだようです。
ピアノソロを基本としたデビュー作から一転してバンド編成で録音され、75年にリリースされたのが2ndソロ『OCELLS DEL MES ENLLA』。
メンバーは、盟友Toti Solerをはじめ、元OMのベーシストのManolo Elias、JARKAにも参加したギタリストRiccardo Sabates、後にORQUESTRA MIRASOLで活躍するドラマーIvan Bargas。
HATFIELD & THE NORTHやROBERT WYATTのソロなどカンタベリーからの影響と地中海フレイヴァーが混ぜ合った、淡く艶やかな叙情に満ちたジャズ・ロックが印象的です。
Jordi Sabatesの代表曲と言えるアルバムのオープニングを飾るタイトルトラックを聴いてみましょう。
いきなり15分を超える組曲!
ほの暗く青白い叙情に満ちたエレピ、強迫的にうねるムーグ・シンセと表情豊かなJordi Sabatesの演奏はもちろん魅力的ですが、Toti Solerによるギターも特筆もの。
パーカッシヴというより、緻密なタッチで紡がれる、といった方が的確な、静謐でいて非西洋的なエキゾチズムも添えるフラメンコ・ギター。そして、ジョン・マクラフリンのアグレッシヴな奔放さをフィル・ミラー的な繊細さで柔らかに包み込んだようなエレキギター。
イタリアのアルベルト・ラディウスにも通じる溢れんばかりのエモーションと先鋭さもあって、本当に素晴らしいです。
アレンジも聴き所で、地を這うようなギターリフがうねりを上げるパートや、女性スキャットが入ったミスティックなパート、ミニマルなフレーズによるチェンバーロック的パートなどを織り交ぜた色彩豊かな展開は、ハットフィールド&ザ・ノースの1stなどカンタベリーの名作達と比べても一歩も引けを取っていません。
翌75年には3rd『TOT L’ENYOR DE DEMA』をリリース。より地中海フレイヴァーを増し、2ndにも勝るとも劣らない芳醇なジャズ・ロックを聴かせています。
Jordi Sabatesとともに、盟友Toti Solerのソロ作もオススメです。『OCELLS~』と同年の75年にリリースされた『EL CANT MONJO』が素晴らしく、特にJordi Sabatesが参加した楽曲は必聴ですよ~!
いかがでしたか?
バルセロナのジャズ・ロック・ムーヴメント「ライエターナ・ミュージック」の作品は名作ぞろいですが、その中でもJordi Sabates関連の作品はどれもハイクオリティと言えます。
「ライエターナ・ミュージック」は、カンタベリー・ミュージックや、イタリアのジャズ・ロックや、イスラエル・ロックや、ベルギーのCOSあたりのサウンドが好みなら、間違いなく名盤の宝庫。
各バンドを特集していますので、どうぞ引き続き探求ください!
【関連記事】
70年代にスペインでおこったロック・ムーヴメント「Musica Laietana ライエターナ・ミュージック」を特集!
PETER ROAR / LUCKY GURI / CHARLES BENAVENT / MAX SUNYER / SALVADOR FONT/WE ARE DIGGING THE BEATLES
910941(PICAP)
2290円 (税込2519円)
在庫あり
「なに?ジョン・マクラフリン?スペインにオレがいることを忘れてもらっちゃ困るぜ。」レビュワー5人が満点評価のスパニッシュ・ジャズ・ロック最高峰!
802024(PICAP)
2400円 (税込2640円)
売り切れ
ジャケも最高だが、音もカッコ良すぎる。ハットフィールド&ザ・ノースの1stやヘンリー・カウのファンは間違いなく気に入るでしょう。このキレ味・・・スペイン・ジャズ・ロックすごいっす。
91081001(PICAP)
2090円 (税込2299円)
売り切れ
ハットフィールドが好き?リターン・トゥ・フォーエヴァーが好き?でしたら、このスペインのグループ、是非一聴を!地中海の青空へと吸い込まれていくようなリリカルにたゆたうエレピが絶品ですよ〜。
BARCELONA TRACTION/BARCELONA TRACTION
910822(PICAP)
2190円 (税込2409円)
売り切れ
超絶テクニックを誇るスパニッシュ・ジャズ・ロック、一発録りとは思えない完璧なアンサンブルを堪能できる名作ライブ盤!しかも全部新曲!
802023(ACTUAL)
2290円 (税込2519円)
売り切れ
後にスペインを代表する音楽家となるJoan Albert Amargosが若い日に結成したジャズ・ロック/アヴァン・ロック・グループ。アレアやSHESHETとも呼応した地中海プログレの傑作!
91081101(PICAP)
2190円 (税込2409円)
売り切れ
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsaレーベルより76年にリリースされた3rdソロ。BARCELONA TRACTIONのベーシスト、ORQUESTRA MIRASOLのブズーキ/マリンバ奏者、前作から引き続いてのギタリストRicard Sabatesなどサポート。傑作となった前作『Ocells Del Mes Enlla』と比べ、フルート、ブズーキ、ウッドベース、フラメンコ・ギターが入り、地中海フレイヴァーが増した印象。リリカルなピアノをバックにフルートがエキゾチックかつたおやかに流れる部分はイスラエルのSHESHETに通じる味わい。時にチェンバー・ロック的な緊張感もあり、同じバルセロナのMUSICA URBANAに通じるテイストもあります。ジャズ/フュージョンを軸に、カタルーニャ音楽やその他地中海音楽のエッセンスを加えたイマジネーション豊かな逸品。OMをはじめソロも含め、Jordi Sabates周辺作にハズレなし!ジャズ・ロック・ファンは是非一聴を。
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsa/Zelesteレーベルより74年にリリースされた1stソロ。流れるように叙情がこぼれ落ちるようなフレーズから、フラメンコが目に浮かぶような力強いフレーズまで、表情豊かなピアノが躍動するフリー・ジャズ。基本的にはピアノ・ソロで、力強いタッチで鍵盤の1音1音が瑞々しく響いています。時に、エレピが柔らかな彩りを沿えるパートはハッとする美しさ。チック・コリアやキース・ジャレットに対抗できるスペインの奇才による名作。
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsa/Zelesteレーベルより75年にリリースされた2ndソロ。ピアノとエレピを基本にした前作とは異なり、バンド編成で録音。OMで一緒だった名ギタリストToti SolerとベースのManolo Eliasをはじめ、元JARCAのギタリスト、後にORQUESTRA MIRASOLで活躍するドラマーなどがサポート。女性ヴォーカルのスキャットもフィーチャーし、「RETURN TO FOREVERへのスペインからの回答」と言えるたおやかなアンサンブルから、ベルギーのCOSあたりに通じる暗黒カンタベリー的アンサンブルまで、とにかく演奏が芳醇なこと!ピアノやエレピはもちろんのこと、フィル・ミラー的な滑らかに緊張感あるフレーズからゴリゴリとアグレッシヴに弾き倒すフレーズまで縦横無尽なエレキも特筆。パーカッシヴなフラメンコ・ギターとの対比も見事です。15分を越えるオープニングの組曲はユーロ・ジャズ・ロック屈指と言える名曲。
スパニッシュ・ジャズ・ロックの名グループOMのギタリストでありスペインを代表するギタリストであるToti Solerによる77年にEDIGASA傘下のZELESTEよりリリースされた4thソロ。前作までは基本、スパニッシュ・ギター一本のインストでしたが、本作では、パーカッションやブズーキなど民族楽器やクラリネットやフルートなど管楽器も取り入れ、地中海フレイヴァー/アラブ・フレイヴァーいっぱいのサウンドを聴かせています。チェンバー・ロック的な静謐な楽曲から、管楽器とスパニッシュ・ギターがたおやかに舞う伸びやかな楽曲まで、これぞ地中海ロックといえるサウンドが素晴らしい逸品。
スパニッシュ・ジャズ・ロックの名グループOMのギタリストでありスペインを代表するギタリストであるToti Solerが、JORDI SOLER名義でリリースした72年作ソロ。OMとはガラリと変わり、本作で聴けるのは、アコギ一本の繊細なSSW作。半音で下がっていくような陰影に富んだギターがちょっぴりNICK DRAKEを彷彿とさせます。内省的でジーンと染みてくるヴォーカルも特筆もの。哲学的な重みのあるじっくりと向き合って聴きたい作品。
スパニッシュ・ジャズ・ロックの名グループOMのギタリストでありスペインを代表するギタリストであるToti Solerによる73年にEDIGASAからリリースされた2ndソロ。ニック・ドレイクにも通じる弾き語りだった1stとは異なり、ガット・ギターによる繊細かつ奔放なインスト・ミュージックを展開。パーカッションを入れる程度で、基本的には、ガット・ギター一本でカタルーニャならではの詩情を描いています。ただ、7分を越える1曲「Sevilla」ではドラムとベースも入り、OM時代を彷彿させるサイケデリックでキレあるエレキを炸裂させていて特筆。
スパニッシュ・ジャズ・ロックの名グループOMのギタリストでありスペインを代表するギタリストであるToti Solerによる75年にEDIGASA傘下のZELESTEよりリリースされた3rdソロ。前作の延長線上にある繊細かつ奔放に奏でられるスパニッシュ・ギターによるインストを中心に、バンド編成の楽曲を1曲収録。これが素晴らしくて、参加したOM時代からの盟友Jordi Sabatesのフリーキーなエレピと時にインタープレイを応酬させ、時にシャープなユニゾンで畳みかけるなど、これぞバルセロナ産ロック!地中海ロック!と言える開放感いっぱいのサウンドを聴かせます。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!