2021年11月10日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
1967年、ビートルズが世界初のコンセプト・アルバムと言われる『サージェント・ペパーズ』をリリース。
それまでシングル・ヒットを飛ばすことが目的だったポピュラー・ミュージックとしてのロックは次第に「作品(アルバム)主義」を重視するようになり、一貫したテーマを持たせたり長尺の曲を演奏したりと、より「アート性」のある作品づくりを志すようになりました。
クラシック、ジャズなど他のジャンルとの融合、高度なテクニックや複雑な楽曲構成・・・それらの流れは70年代に入ると「プログレッシヴ・ロック」と呼ばれる新たなジャンルを生み出していくのですが、今回ご紹介するのはそれより少し前の音楽。
サイケデリックから、プログレッシヴの時代へ。そんな時代の過渡期に生み落とされた、素晴らしきアート・ロックの作品たちをご紹介してまいりましょう。
アート・ロックの代名詞と言えばこのバンド。67年のデビュー作。
代表曲「キープ・ミー・ハンギング・オン」をはじめほぼカバーで構成されつつ、見事なのは原型をとどめぬほどの魅力を原曲にまとわせる彼らのアレンジ・センス。
屋台骨を支えるTim Bogert&Carmine Appice(のちにCACTUS~BECK,BOGERT&APPICEで活躍)などの確かな演奏力も聴き所な、ロック史に残る名盤!
70年代における栄光のハード・ロック時代、その前夜に彼らが残した69年作3rdがこちら。
サイケの残り香を感じる混沌としたアンサンブルに、ジョン・ロードのクラシカルなオルガンが炸裂。
後の作風とは異なりますが、これはこれで魅力的ですよね。邦題は「素晴らしきアート・ロックの世界」!
こちらも後に英国プログレの代表格となるグループですが、この69年1stは浮遊的なサイケの香りを残したアート・ロック作品。
ピーター・ハミルのエモーショナルな歌声や夢見心地なオルガンの音色、「狂気」と「叙情」が同居する孤高のメロディ・ライン・・・。
後の強烈なプログレ作品と比べるとインパクトでは劣りますが、叙情的なブリティッシュ・ロックの名作として語り継がれるべき逸品ですね。
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今日のMEET THE SONGSは、孤高の詩人ピーター・ハミル率いるダークな英国プログレ・グループVAN DER GRAAF GENERATORを特集!
イギリスはウェールズ出身のバンド、69年作の2nd。
ゾンビーズが『オデッセイ&オラクル』の後にVertigoに移籍して3rdを残していたとしたら、こんなサウンドになってたかも?
ヘヴィなギターやリズム・セクション、R&B~クラシック~ジャズをゴッタ煮にしたようなオルガン、そしてサイケ・ポップ的なメロディの融合はまさにこの時代ならでは!
スティーヴ・ハウがTOMORROWの解散後に結成したアート・ロック・バンドをご存じ?
当時未発表に終わったこの69年作、聴いてみると、YESの3rdに繋がる縦横無尽なプレイを既に全編で披露していて圧巻!
こちらはクリムゾンやキャメルで名演を残すサックス&フルート奏者メル・コリンズがキャリア初期に在籍したバンド!
サイケデリック&ブルージーな「ノルウェーの森」カバーが痛快です。
オルガンやファズ・ギターが荒々しく主張し合う、怪しく混沌としたサウンド・・・これぞ70年代前夜英国アート・ロック!
この英サイケ・バンド、ヴァニラ・ファッジやアート期パープル、あるいは初期フロイドが好きなら超オススメ!
R&B/ブルース・ロックからアート・ロック~プログレへの過渡的なサウンドを詰め込んだ、米ロック70年作。
スリリングなオルガン・ロックが炸裂する1曲目から持っていかれます!
ヒット曲「Green-Eyed Lady」で知られるB米コロラド出身のバンド、70年作。
ハードなサウンドにサイケデリックなオルガンとギターが響く「Green-Eyed Lady」を始めこの時代の空気が詰まったサイケ/アート・ロックの名作!
マジカルなサイケ・ポップやサイケ・フォーク、CHICAGO風ブラス・ロックをごった煮にしたような、「過渡期」らしい懐深いサウンドが魅力!60年代末にNYにて産み落とされた米サイケ/アート・ロックの名作2作品をコンパイル!
ここからはユーロのアート・ロック名作をご紹介!
マグマのバーナード・パガノッティが在籍していたプログレ黎明期のフレンチ・ロック・バンドと言えば?70年唯一作。
フロイド、コロシアム、トラフィックをゴッタ煮にしたようなアート・プログレで、ジャケの通り秘宝臭ぷんぷん。
ヴィブラフォンやエレピが静謐に鳴るアート・ロックに、ジミヘン彷彿の奔放かつスリルあるギターが豪快に乗っかるこの1曲目、ずばり名曲!
マイナーな人だけど才能は素晴らしいなぁ。MAGMAで知られるローラン・チボーも参加の71年作。
初期イエスやフォーカスに通じるスピーディーなアート・ロック感とともに、クレシダやグレイシャスに通じる感じも。
なんと、オランダのバンドの70年作とは!
このOPナンバー、「Come Together」をサイケ・ハードに仕立てて、ポーランドならではの哀愁を注いだ感じ!?
ポーランド屈指の人気を誇ったビート・バンドによる、サイケデリック&アート・ロックの好盤71年作!
次は北欧から!67年のノルウェーにこれほどまでのサイケ・ポップ/アート・ロック傑作が生まれていたとは・・・。
あのテリエ・リピダルが在籍で、ジェフ・ベックばりに尖ったギターを炸裂させてるし、トラフィックや米BS&Tの1stに負けない素晴らしさ!
スウェーデンのロック黎明期の名バンド、70年作3rd。
グルーヴィーなR&B/ソウルからヘヴィ・サイケ、そしてシタールやタブラを取り入れたラーガ・ロックまでごった煮した作風は実にアーティスティック。
サイケ&アート・ロッキンなヘヴィネスや混沌が渦巻くサウンドは英米のバンドに一歩も引けをとっていません。
このヴォーカル、ジム・モリソンとスティーヴ・ウィンウッドの中間に位置するような感じで良いなぁ。
演奏は、フロイドや初期タンジェリン・ドリームみたいだし、ぬぬ、スウェーデンのグループとは!
ハード・ロック前夜の煙のような空気が充満する中で、鳴り響くハモンド・オルガンとファズ・ギター。
でも、スウェーデンらしく、ヘヴィさの向こうには透明なリリシズムも感じさせてグレイト。
最後はアイスランド屈指のプログレ・グループ、71年3rd。
ロック・オペラとして世界で最も過小評価されている作品!?
サバスみたいなヘヴィなリフで始まったかと思えばポール・マッカートニーばりのリリカルなパートあり、グルーヴィーなオルガン・ロックありと、なんという玉手箱感!これは凄いです。
いかがでしたか?こちらもあわせてご覧下さい♪
ピーター・ハミル率いる英国プログレッシヴ・ロック屈指の名バンド。69年の記念すべき1stアルバム。幻想的なハモンド・オルガンやハープシコード、メロウなアコギのストローク、そして、ピーター・ハミルのエモーショナルなハイ・トーンの歌声と「狂気」と「叙情」が同居する孤高のメロディ・ライン。69年という「プログレッシヴ・ロック」前夜の空気感を見事に収めたアート・ロック・サウンドが実に魅力的です。後の強烈なプログレ作品と比べられ、インパクトで劣る分、過小評価されていますが、もしこの一枚のみで解散していたとしたら、逆にブリティッシュ・ロックの名作としてもっともっと評価されていたことでしょう。ずばり名作です。
66年にデビューして以来、ポーランド屈指の人気を誇ったビート・バンド。3枚のビート名作を残した後にリード・ギタリストが脱退。トリオ編成となってからの2作目で、通算5作目となる71年作が本作。キャチーなビートを期待したデビューからのファンからはソッポを向かれたものの、現在ではポーランド・ロックの名作として高く評価されているようですが、なるほど納得。オープニングからファズ・ギターが低く立ちこめて、混沌とした空気が渦巻きます。どこかモノトーンのクリーンなカッティング&メランコリックなアルペジオによるリズム・ギターを軸に、ファズ・ギターのリードが時にスリリングに切り込み、時にサイケデリックな音像を描きます。ここぞでは、Vo&Gのメンバーにはヴァイオリンとピアノのクレジットもあって、ここぞでヴァイオリンが狂おしくむせいで痺れます。ビートルズの「Come Together」をサイケ・ハードに仕立てて、ポーランドならではの哀愁を注いだ感じ!?聴き所の多い好作品です。
アメリカ北東部コネチカット州を拠点に活動したオルガン・ロック・バンド、70年リリースの2ndアルバム。1曲目から名曲!手数多く疾走するドラムスとシャープなカッティングを繰り出すギターを従えて、ファンキーかつスリリングなオルガンが炸裂するインスト・ジャズ・ロックがカッコよすぎます。ソウルフルなヴォーカルに痺れる旨味たっぷりのブルース・ロック・ナンバーあり、ラグタイム調のピアノを伴い進行するゴキゲンなブルース/ジャズ・ナンバーありと、基本はブルースやR&Bを土台にしたサウンドですが、突如デイヴ・スチュワートみたいなキレのあるソロを含むEGGばりのオルガン・ロックが繰り広げられたりと、プログレ前夜のアート・ロック感覚も数曲で発揮されているのが印象的です。しまいには『Freak Out!』に影響を受けたような奇声満載の実験的パートも飛び出してきて驚きます。R&B/ブルース・ロックからアート・ロック〜プログレへの過渡的なサウンドを詰め込んだ一枚です。
名ジャズ・ギタリストSam Brownが在籍していたことでも知られるNY出身のサイケ/アート・ロック・バンド、68年1st&69年2ndの全スタジオアルバムを収録した20年編集盤。1st『ARS NOVA』はDOORSを手掛けた事でおなじみのポール・ロスチャイルドがプロデュースを担当。管楽器をふんだんに取り入れたマジカルなサイケ・ポップをベースにしつつ、同じくNY出身のVELVET UNDERGROUNDを彷彿とさせる気だるさもほんの少し散りばめられた完成度の高い逸品となっています。一方2nd『SUNSHINE AND SHADOWS』では後にジャズの場で活躍するギタリストのSam BrownとトランぺッターのJimmy Owensが加わり、GRATEFUL DEAD風のサイケ・フォーク・ロックやらCHICAGO風ブラス・ロックやら心安らぐサイケ・フォークやらエネルギッシュなガレージ・サイケをゴッタ煮にしたような、まさしく「混沌のアート・ロック時代」らしい作風が特徴的。Sam Brownの粒の細かい繊細なギター・プレイ、そしてヴォーカリストJon Piersonのジェントルで耳触りの良い歌声などはどこか英国的な香りも。英米サイケ、また60年代末期の「ジャンルのるつぼ」的雰囲気が好きな方には是非おすすめの作品です。
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