2015年12月22日 | カテゴリー:スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。
タグ: プログレ
こんにちは。今冬こたつを出してからというもの、いつの間にかこたつ布団にくるまって寝落ちしてしまうのが悩みのカケレコ・スタッフの佐藤です。
前回からスタートした「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」は、一般的にはあまり注目を集めることのない作品ながら「実は良い作品なんだけどなぁ、もっと聴かれてほしいなぁ。」とスタッフ佐藤が日頃から感じている、愛して止まない作品たちを取り上げてご紹介していこうというコーナー。
第二回で取り上げるのは、英国のプログレ・グループ、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター(ヴァン・ダー・グラーフ)が77年に発表した『The Quiet Zone / The Pleasure Dome』です。
前回取り上げたジェントル・ジャイアントとほぼ同時期に、5大プログレ・バンドからの次のステップとして手を出してみた彼らだったのですが、一聴して耳を奪ったのが、孤高の詩人と称されるピーター・ハミルの存在感みなぎるヴォーカル。
もちろんジョン・アンダーソンやピーター・ガブリエルのような、バンドの音楽性の中で欠かせない特徴として機能しているヴォーカリストたちは知っていましたが、ヴォーカルがここまでのエネルギーと鬼気迫るまでの表現力を発揮しているバンドというのは、プログレに限らず出会ったことがほとんどなかったため、非常に衝撃的だったのを覚えています。彼のヴォーカルを的確に表現するのはなかなか難しいですが、個人的にはロック界でも数少ない「魂の歌声」と呼びうるものだと思っています。
そんな特異性もあって、「演奏がまずあって、そこにヴォーカルが乗ってくる」という通常のバンドの印象とは異なり「ヴォーカルをバンド演奏が取り巻く」という印象を与えるのがVDGG。ハミルによって紡がれる深遠な詞を含めて「歌を聴かせるプログレ」として、緻密で技巧的なアンサンブルを土台とした同時期のプログレ・グループたちとは一線を画する独自の魅力を放っていたグループです。
さてそんなVDGGと言えば、69年発表の2nd『The Least We Can Do Is Wave To Each Other』70年作『H to He Who Am The Only One 』71年作『Pawn Hearts』という初期3作品、あるいは活動休止期間を経た75年作『Godbluff』76年発表の『Still Life』『World Record』までを合わせた6作品が全盛期としてよく知られているように思います。
ダイナミックかつ重厚なリズムとオルガン&サックスが醸し出すダークかつ生々しい質感が特徴的な演奏と、そこから浮かび上がってくるある種の崇高さを伴ったヴォーカルが劇的に対比されることによって感動を呼び起こす、唯一無二の音楽体験を味わわせてくれる彼らですが、そういったVDGG本来の醍醐味とは趣を異にする一枚が、『World Record』の次にリリースされた77年の8th『The Quiet Zone / The Pleasure Dome』です。
本作は、04年に活動を再開するまでは彼らの最後のスタジオ・アルバムだった作品。この作品が過去の作品と大きく異なっているのがメンバーチェンジに伴う楽器編成の変化で、全盛期のVDGGサウンドを担ってきたオルガン/キーボードのヒュー・バントンとサックス奏者デヴィッド・ジャクソンが前作制作後に脱退しています。
演奏面でVDGGを特徴づけていたこの2人が抜けたとあっては、たとえピーター・ハミルという揺るぎなきヴォーカリストがいるにしても、「え!VDGG大丈夫なの!?」と不安になりますよね。
何を隠そうスタッフ佐藤自身、「ヒュー・バントンのオルガンがないVDGGなんて!」という思いからずっと未聴の作品だったのですが、いざ聴いてみて「こりゃ、かなり良いんじゃない?」となったのがここ数年のこと。
初期メンバーだったベーシストのニック・ポッターの復帰とともにバンドを窮地から救ったのが、新加入したグラハム・スミスというミュージシャン。VDGGと同じCHARISMAレーベル所属だったSTRING DRIVEN THINGに在籍したヴァイオリン奏者で、本作と同じ77年にリリースされたハミルのソロ作品『OVER』への参加を経ての加入となっています。
またこの大幅なメンバーチェンジに伴い、バンド名からジェネレーターが取れて「ヴァン・ダー・グラーフ」となります。この改名には、サウンド面の大きな変化を受けて、これまでのVDGGとしての活動との決別の意味が込められているのかもしれません。
そんな本作、鋭く切れこんでくるスリリングなプレイから気品たっぷりの優雅なプレイまで自在なヴァイオリンがフィーチャーされた、すっきりとしたスタイリッシュなサウンドを聴かせるのが特徴で、前作までの闇へ沈み込んでいくような美しくも重厚なサウンドは、英国的な格調高い叙情美へと姿を変えているのが印象的です。ハミルのヴォーカルも以前の緩急激しく迫ってくるスタイルに比べ、落ち着いた穏やかな表情が中心となっており、彼らの全作品の中でも非常に聴きやすい内容に仕上がっているのではないでしょうか。
今回の「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」、いかがだったでしょうか。
今後もなかなかスポットライトが当たらない作品を取り上げ、改めてその魅力の一端を伝えていけたらと思います!
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今日のMEET THE SONGSは、孤高の詩人ピーター・ハミル率いるダークな英国プログレ・グループVAN DER GRAAF GENERATORを特集!
ピーター・ハミル率いる英国プログレッシヴ・ロック屈指の名バンド。69年の記念すべき1stアルバム。幻想的なハモンド・オルガンやハープシコード、メロウなアコギのストローク、そして、ピーター・ハミルのエモーショナルなハイ・トーンの歌声と「狂気」と「叙情」が同居する孤高のメロディ・ライン。69年という「プログレッシヴ・ロック」前夜の空気感を見事に収めたアート・ロック・サウンドが実に魅力的です。後の強烈なプログレ作品と比べられ、インパクトで劣る分、過小評価されていますが、もしこの一枚のみで解散していたとしたら、逆にブリティッシュ・ロックの名作としてもっともっと評価されていたことでしょう。ずばり名作です。
非凡なる才能を持ったボーカリストPeter Hammillを擁し、難解な哲学詩と前衛的なアプローチ、初期のKING CRIMSONに負けず劣らずのへヴィネスと神秘性を兼ね備えたイギリスのプログレッシブ・ロックバンドの71年4th。前期VAN DER GRAAF GENERATORの総括的作品として名盤の誉れ高い本作は、20分を超える大作を中心にした3曲で構成され、Peter Hammillはもちろんのこと、Hugh Bantonの痛ましいほどに強烈なオルガンさばき、David Jacksonの荒々しいダブル・ホーンが刺激的な1枚。ゲスト参加したKING CRIMSONのRobert Frippでさえ霞みかけるほどに、一節一節強烈なインパクトを残しています。
カリスマ移籍後3枚の傑作アルバムを発表して72年に解散。その後、ソロ・アルバムをはさみ75年に再結成。本作は、その再結成第一弾作品。
SHM-CD、05年マスター、ボーナス・トラック2曲、定価1714+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
帯中央部分に色褪せあり
再結成第2作。テンション溢れるバンド・アンサンブル、鬼気迫るヴォーカル、流麗なメロディーとどれをとっても第一級の名盤。
77年作。元STRING DRIVEN THINGのGRAHAM SMITHが本作より参加。彼のヴァイオリンが静謐に響く、格調高いナンバーが多く収録されています。感情を巧みにコントロールし、楽曲に起伏をもたらすハミルのヴォーカルは相変わらずの存在感。
紙ジャケット仕様、05年デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲、インサート入り仕様、定価2476+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
軽微な角潰れあり、インサートに小さい折れあり
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