2013年11月12日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
イスラエル・ロックを代表する金字塔的名作、SHESHETの77年唯一作『SHESHET』をピックアップいたしましょう。
SHESHETは、フルート/リコーダー奏者のShem-Tov Leviを中心に77年テルアビブで結成されました。
まずは、Shem-Tov Leviの経歴を見ていきましょう。
Leviは、1950年生まれで、13歳からフルートを学び、テルアビブ大学で音楽を学んだ後、バークレイ音楽大学に留学。
イスラエルに戻り、60年代末からバンド活動をスタートし、70年代はじめには、イスラエルで最も偉大なシンガーと言われるArik Einsteinの作品に作曲やアレンジで関わります。
74年に、KTZAT ACHERET(NO NAMES)を結成し、『SHESHET』と並ぶイスラエル・ロック名作と評価される『NO NAMES』を75年にリリースします。
76年には初ソロ作の『IN THE MOOD』をリリース。
順調にイスラエル・ロック・シーンでキャリアを積んだ後、女性VoのYehudit Raitsとともに、77年に結成したのがSHESHETです。
他のメンバーも若手ながら、セッションでキャリアを積んだ腕利きばかり。
プログレやジャズからの影響を土台に、バルカン音楽や東洋音楽やイスラエルのフォークのエッセンスも取り入れたサウンドは、英米ユーロを見渡しても屈指と言えるクオリティ。当時はなぜか商業的に成功できなかったようですが、現在ではイスラエル国内で高く評価されているようです。
それでは、早速、聴いてまいりましょう。
まずは、オープニング・ナンバーから!
なんといっても魅力なのが、Leviによるフルート。地中海の風を運ぶたおやかなフレーズから、憂いと叙情美に溢れたフレーズまで絶品です。
ギターも魅力で、フィル・ミラー的に抑制されたトーンながら、フレーズに緊張感はなく、フルートやピアノとユニゾンを形成しながら、きらめくフルートとピアノの音色に影を付け、サウンドに立体感を与えています。
女性ヴォーカルも素晴らしく、フランス語のように鼻にかかるヘブライ語の響きがアンニュイで、ジャジーなサウンドにぴったり。
つづいては2曲目。ミニマルなアルペジオを奏でるピアノとギターによるユニゾンの美しさ。
中間部のインスト・パートは、マイク・オールドフィールドに通じる格調高さや静謐さも感じます。
これほどまでに美しいアンサンブルは、英米ユーロのプログレ/ジャズ・ロックの名作を探してもなかなかないでしょう。
つづいては5曲目のLeviのピアノ弾き語りをピックアップ。
詩情豊かなメロディの美しさはイスラエル・ロックの魅力で、イタリアやアルゼンチンの名品にも負けていませんね。
後半のギターとフルートのユニゾンは、ケヴィン・エアーズ『WHATEVERSHEBRINGSWESING』でのマイク・オールドフィールド参加の静かな楽曲に通じる味わい。
ラストは、アルバムでアンサンブルに最も高いテンションがある7曲目を。
取り上げた曲以外も、同等のクオリティを持つ佳曲ぞろい。本当にユーロが誇る傑作ですね。
Shem-Tov Leviは、SHESHETの後、TUNED TONEを結成しますが、これもまた素晴らしいグループでオススメ。
Shem-Tov Levi、本当に素晴らしい名フルート奏者でありコンポーザー。
ソロ作も充実作ばかりですので、SHESHETとあわせて是非、チェックください。
イスラエル・ロックは、潮流図とともにジュークボックスも作って特集しておりますので、是非、ご覧ください。
【関連記事】
SHESHETやKTZAT ACHERET(NO NAMES)をはじめ、ジャズをベースにした洗練された演奏と巧みなポップ・センスがブレンドしたまばゆい音楽の宝庫、イスラエルを大特集!
イスラエルではかなり名の知れたミュージシャンでありコンポーザーの3人、Shlomo Gronich(イスラエルのアラン・ソレンティとして有名!)、Shem Tov Levy(SHESHETのフルート奏者!)、Shlomo Ydov(2010年現在でも活躍を続ける名SSW)によるスーパー・トリオ。イスラエル・プログレのNo.1グループとして知られていて、75年リリースの唯一作である本作は、SHESHETの唯一作と並んで人気の傑作。軽やかな変拍子によりめくるめく展開するアンサンブルと巧みなコーラス・ワークはGENTLE GIANTばり!地中海の空気が感じられる詩情豊かなパートも魅力的で、フルート、弦楽器、エレピ、アコギ爪弾きがタペストリーのように丁寧に重なり、美しいメロディを包み込むアンサンブルは、P.F.M.に比肩しています。GENTLE GIANTやCAMELなどブリティッシュ・プログレのファンからP.F.M.などイタリアン・ロックのファンの皆さま!ずばりこの作品は聴かなきゃ損です!素晴らしすぎる逸品!
KTZAT ACHERET(NO NAMES)〜SHESHETで活躍したフルート奏者Shem Tov Levy。同じくNO NAMESで活躍し、SSWでも名を残すShlomo Ydov。イスラエルを代表するグループKAVERETのギタリスト&シンガーYitzhak Klepterの3人によるスーパー・トリオ。79年作。3人ともが名コンポーザーのため、本当にどの曲も佳曲揃い。たおやかなで胸に響くメロディ、優美なアコギにフルートとエレピが叙情を添えるアンサンブル。歌ものイスラエル・ロックの逸品。
美旋律プログレの宝庫イスラエルでも最高峰と言えるミュージシャン3人が組んだバンドと言えば?神秘的なヘブライ語の響きとこの柔らかで芳醇なエキゾチズムをまとったサウンド。ずばりワールドクラスの大名盤。
KTZAT ACHERET(NO NAMES)/NO NAMES
AAD941042(ACUM)
2420円 (税込2662円)
売り切れ
もしポール・マッカートニーがカンタベリー出身で、ジョン・レノンじゃなくロバート・ワイアットと出会っていたら?って感じのマジカルすぎるこの作品、もう聴きました?
CD14376(HED ARZI)
2390円 (税込2629円)
売り切れ
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!