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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第七十五回:ATOMIC ROOSTER『DEATH WALKS BEHIND YOU』

2022年に公開された映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』をご存じだろうか。ルイス・ウェインは、ヴィクトリア朝期に活躍したイギリスのイラストレーター。ネコを擬人化したイラストを数多く制作し、当時イギリスを中心に大人気となるが、版権に関する知識がなかったこともあって、ベストセラーを何冊出しても、絵葉書を何枚作っても生活は貧しいまま。周りの反対を押し切って年上の女性と結婚するが、わずか数年で妻が他界。のちに統合失調症と診断されて病院に送られ、人々から忘れられてしまうという、不幸を絵に描いたような人生です。

僕はルイス・ウェインのファンを自認していて、関連本とかをチョコチョコ集めている。日本では知名度が高くないので、この映画も注目されないだろうと思っていたら、あっという間に前売り券が売り切れ。前売り特典をもらい損ねてしまった。ファン失格ですな。ルイス・ウェインの隠れファンが多いなんてことはないと思うので、ネコ好きの人が注目したのかな?

同映画では、ルイス・ウェインの人生の悲劇的側面や、彼のエキセントリックな人間性が強調して描かれていた。でも、それってこっちの勝手な思い込みもあるのでは? たとえば、一般的には悲劇&不幸の画家代表みたいに思われているゴッホもそう。ゴッホの書簡集なんかを読むと、確かに苦悩を吐露していることも多いけど、一方で芸術に身を捧げている幸福感みたいなものもあって、ゴッホが必ずしも不幸な人生だったかというと、そうとも言い切れないと思うわけです。では、ウィリアム・ブレイクはどうだろう。

イギリスの画家、詩人、版画家として知られるウィリアム・ブレイクは、今でこそ偉大な芸術家として知られているが、生前は変人扱いされたり、作品もほとんど売れなかったりと、現在の評価とは異なるものがあった。

ウィリアム・ブレイクは、1757年11月28日、ロンドン生まれ。幼いころから妖精や天使を見る幻視を経験し、それが後の作品にも影響を与えることになる。15歳で彫版師に弟子入り。22歳でロイヤル・アカデミー付属の美術学校へ入学するが、相容れないものがあったようで、すぐに離れている。25歳で結婚。職業彫版師としての活動を本格化させるかたわら、自らの作品を制作するようになる。しかし、彫版の仕事の報酬は安く、時に幻視について公言しては気味悪がられ、個展を開けば酷評されるという、ひとりの人間としても画家としても評価は芳しいものでなかった。60代でロイヤル・アカデミーから貧困を理由に金銭的援助を受けるなど、晩年も生活は楽でなかったようで、義弟の家の二部屋を借りて妻と暮らしていた。60代中ごろから、彼を慕う若い画家や信奉者があらわれて、ダンテ『神曲』の連作の依頼を受けている。以降はそれに取り組み続けることになるが、ある日、突然仕事の手をとめると、長年連れ添い、彼の作品制作に協力し、精神的支えでもあった妻を見て、「あなたはいつも私の天使だったよ。今からあなたの肖像画を描こう!」と叫んだ。そして、肖像画を描き終えると、讃美歌などを歌ってから息を引き取ったという。70歳だった。貧しくはあったけれども、死の間際まで作品制作に打ち込み、大好きな妻に見とられて旅立つ。そんなブレイクの人生を不幸といえるだろうか? 何が言いたいかって、人の人生が「幸」か「不幸」かは他人が決めるものじゃないということ。でもいるでしょ、人の人生を腐すやつ、それも得意げに。気にしなくていいですよ、他人の言うことなんて。

閑話休題、ブレイクの再評価について。その最初のきっかけは、死後40年ほどたった1863年、アレクサンダー・ギルクリストが著した『Life Of William Blake』だった。また、第二次世界大戦中の1916年には、イギリスの作曲家ヒューバート・バリーが、ブレイク作『ミルトン』の序詞に曲をつけて『エルサレム』(ブレイク作の『エルサレム』とは別作品)として発表。戦意高揚の曲を、という依頼だったそうだが、バリー自身は権威や権力に屈しない自由な精神の象徴として、ブレイクの詩を選んだという。この『エルサレム』は、イギリスで第二の国歌として知られるほど有名になり、EL&Pが『BRAIN SALAD SURGERY』でロック・アレンジしたことをご存知の方も多いだろう。さらに、カナダの文芸評論家ノースロップ・フライが、『Fearful Symmetry』(1947年)という著書でブレイクの詩を絶賛。再発見された彼の詩の魅力は、オルダス・ハクスリーやアレン・ギンズバーグにも影響を与える。ブレイクの幻想的かつ神秘的な芸術世界は、ビートニク文学やサイケデリックの時代にマッチしたのだ。ちなみにアレン・ギンズバーグは、1970年にウィリアム・ブレイクの詩に曲をつけたアルバム『SONGS OF INNOCENCE AND EXPERIENCE』を発表していて、ジャケットにもブレイクの作品を使用している。以降、ロック系アルバムのジャケットでもブレイクの作品を使っているものがいくつか登場する。今回はその中から、ATOMIC ROOSTER『DEATH WALKS BEHIND YOU』(1970年)を紹介したい。


ATOMIC ROOSTERは、CRAZY WORLD OF ARTHUR BROWNのオルガン奏者ヴィンセント・クレインを中心に、同メンバーのカール・パーマー(ds)、そしてニック・グラハム(g,vo)で結成されたハード・ロック・トリオ。1970年に『ATOMIC ROOSTER』でデビュー。ジャケットには女性の乳房をもつ鳥が描かれているが、どうなんでしょうこれ? 少なくとも彼らの音楽性を伝えているとは思えない。





デビュー作発表後、ヴィンセント・クレイン以外のメンバーが総入れ替えとなる。ミック・ホークスワース(ds)、ANDROMEDAのヘヴィ・リフ・マスター、ジョン・デュ・カン(g)を加え、よりヘヴィなサウンドのロック・トリオへと進化。この新体制で放った2作目が『DEATH WALKS BEHIND YOU』(1970年)で、その表ジャケットを飾ったのが、ウィリアム・ブレイクの「ネブカドネザル王」だった。





それは『旧約聖書』「ダニエル書」に描かれた物語。新バビロニアの王として権勢を誇ったネブカドネザルは、そのおごり高ぶりのため神の怒りに触れてしまう。そして、牛のように草をはみ、体は露に濡れ、髪はワシの羽のように、爪は鳥の爪のようになって7年間過ごすことを課せられる。やがて7年の時が過ぎ、理性をとりもどし、神をたたえるようになったという物語。ブレイクの「ネブカドネザル王」は、彼が獣になった時の姿を描いている。

このブレイクの「ネブカドネザル王」が与える、理性を失い、凶暴で危険、予測不可能な、ダークかつブルータルなイメージは、ヴィンセント・クレインの弾くオルガンの妖しく悪魔的な響き、ジョン・カンのドスの効いた歌声、歪むギター・リフが醸しだすヘヴィ&ダークなサウンドに生まれ変わったATOMIC ROOSTERの音楽性にぴたっとハマっている。墓場でたたずむ三人の写真をあしらった内ジャケットも秀逸。視覚面でも完璧といえる傑作だ。





ところが、このセンスが継続しない。シンガーにピーター・フレンチが加わった次作『IN HEARING OF』(1971年)では、ロジャー・ディーンがイラストを担当。前作と真逆のコミカルなタッチになっている。ここで再びヴィンセント・クレイン以外のメンバーが総入れ替えとなり、COLOSSEUMのクリス・ファーロウらが加入。1972年に発表した4作目『MADE IN ENGLAND』では、アルバム全体をジーンズ生地で包むという変形ジャケット。発想は面白いけど、デザイン的に優れているとは思えない。続く『NICE ‘N’ GREASY』のイギリス盤では目玉焼きに煙草の吸殻が押し付けられているという、「トホホ」なデザイン。同作のドイツ盤は、さらに酷くて、メンバーがオチンチンから火を噴いているというもの。裏ジャケのクリス・ファーロウなんか、元気ない感じで、かわいそうじゃないですか? 『DEATH WALKS BEHIND YOU』のセンスはいずこへ?! この連載をやっていてつくづく思うけど、優れたジャケット・デザインのアルバムを出し続けるというのは難しいようです。





ここでは『DEATH WALKS BEHIND YOU』のタイトル・トラックを聴いていただきましょう。ブレイク作「ネブカドネザル王」を見ながら爆音で聴くと、ホラー感が増すこと請け合いです。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

Death Walks Behind You

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ATOMIC ROOSTERの在庫

  • ATOMIC ROOSTER / ATOMIC ROOSTER

    Carl Palmer在籍の英オルガン・ハード・グループ、70年1st

    THE CRAZY WORLD OF AUTHR BROWN出身のVince Craneを中心に結成され、後にNICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lakeと共にEL&を結成することになるCarl Palmerが在籍していたことで知られているイギリスのハード・ロックグループの70年デビュー作。その内容はVince Craneのクラシカル且つハードなオルガンとNick Grahamのへヴィーなギター、そしてテクニカルなCarl Palmerのドラムが躍動するワイルドな作風であり、所々でブルース・フィーリングやジャズのアプローチを取りながらハード・ロックでまとめた音楽性が個性的です。ブラス・セクションやフルートなども巧みに取り入れた好盤。

  • ATOMIC ROOSTER / DEATH WALKS BEHIND YOU

    英オルガン・ハードの代表格、70年作

    THE CRAZY WORLD OF AUTHR BROWN出身のVince Craneを中心に結成され、後にNICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lakeと共にEL&を結成することになるCarl Palmerが在籍していたことで知られているイギリスのハード・ロックグループの71年2nd。Vince Crane以外の2人が脱退し、後にHARD STUFFへと参加することになるJohn Du CannとPaul Hammondが参加しています。前作ではベース奏者がギタリストを兼ねた編成でしたが本作ではベースレスで構成されており、前作よりハード・ロック然としたアンサンブルと渋みを持ったブリティッシュ・ロックが炸裂しています。

  • ATOMIC ROOSTER / IN HEARING OF

    専任ヴォーカリストを迎え4人編成となった71年3rd、ジャケットはロジャー・ディーン

    専任ヴォーカルとして元リーフ・ハウンドのピーター・フレンチが加入。ヴィンセント・クレイン(key)、ジョン・デュ・カン(g)、ポール・ハモンド(ds)、ピーター・フレンチ(vo)という編成で制作された3rdアルバム。71年作。

  • ATOMIC ROOSTER / NICE’N’GREASY

    元COLOSSEUMの名R&BシンガーChris Farlowe加入後の第2弾にして最終作、73年リリース5th

    R&Bテイストが増し、ブラス/管弦楽のアレンジが新たな魅力を発揮する、70年代のアトミック・ルースター最後の作品となる5thアルバム。73年作。

  • ATOMIC ROOSTER / FIRST 10 EXPLOSIVE YEARS

    70-72年/79-82年の黄金ラインナップ期に焦点を当てた編集盤!

  • ATOMIC ROOSTER / BEST OF VOLUMES 1 AND 2

    90年ベスト盤

  • ATOMIC ROOSTER / BEST OF

    10曲入りベスト。

  • ATOMIC ROOSTER / SLEEPING FOR YEARS THE STUDIO RECORDINGS 1970-1974

    70/71/72/73年作を収録

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