2021年6月11日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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もう飽きているでしょう、新型コロナウイルスの話は。このジメジメする蒸し暑い季節にマスクが辛いということも、いまさら書いても仕方がないかなという感がある。しかし、どこ行ったかな我が家の「アベノマスク」は? 何枚かもらったと思うんだけども。
そんな鬱陶しい季節でも、目を楽しませてくれるのがアジサイで、我が家でも一株購入。きれいに咲いています。アジサイにはカタツムリが似合う。しかし環境の変化に伴って、カタツムリも減少傾向にあるらしい。という話をしていると、うちの子どもが「カタツムリは絶対に触ったらあかんねんで」と。保育所の先生に言われたらしい。なぜなら「寄生虫がいるから」なのだとか。調べてみると、カタツムリやナメクジには、広東住血線虫という寄生虫がいることがあって、これが人間の体内に侵入すると、最悪の場合は死に至ることもあるそうだ。そうか、全然知らんかった。自分が子供のころはカタツムリやナメクジをバンバン触って、その手で駄菓子とかバリバリ食べていたように思うが。それで特に健康被害がなかったのは、ただのラッキーだったのかもしれない。まあ、昆虫でも植物でも、野生のものを触ったら手を洗うのは基本ですね。
そこで思い出したのが、イギリスのフォーク・ロック・バンドTREESのデビュー作『THE GARDEN OF JANE DELAWNEY』に収録されている「Snail’s Lament」という曲。邦題にするなら「カタツムリの嘆き」。このTREES、2020年末にデビュー50周年を記念した4CDセット『TREES』が発売された。オリジナル曲以外にも色々と収録されているが、「あれ?これ初出音源だったかな?」とか、ブートレッグまで含めると、既発音源がどれだけあるのか、ちょっと複雑なことになっている。そこで、多少マニアックな内容にはなるけれど、この場を借りて整理させていただきたい。
まずは、オフィシャル及びブートも含め、これまで世に出ているTREES音源を下に列挙する。
目がチカチカしたらすいません。では、TREESの主要タイトルと上記曲との関係を明らかにしましょう。
(A)はCBSからのデビュー作で、(1)~(9)が収録曲。(B)はCBSからの2作目で、(10)~(19)が収録曲。(A)(B)はBGOなどから再発CD化されたこともあったが、ボーナス曲の収録はなかった。
初めてボーナス音源付きで再発されたのが(C)で、2CD仕様による再発。この(C)のディスク2に、TREESのデヴィッド・コスタとバイアス・ボシェルが、(B)の曲のいくつかをリミックスした(20)~(26)、71年のBBC音源(27)、70年のデモ音源(28)が収録されていた。これは日本盤紙ジャケも出た。この71年BBC音源については後述する。この再発には、アメリカのソウル・デュオ、GNARLS BARKLEYが(B)の収録曲(16)を「St.Elsewhere」という曲でサンプリングしたこともきっかけになったとか。
(D)は、(C)に続いて08年にリリースされたデビュー作の再発CD。これには(29)(30)のデモ2曲、08年にレコーディングされた(31)(32)が追加収録されていた。それらと同時期にSunbeamから1作目と2作目が2LP仕様で再発される。その2作目の再発LPである(E)に、なんと1970年のデモとクレジットされた(33)が収録されている。こちらについても後述したい。
まず、BBC音源の話。先述したけど、オフィシャルでBBC音源が発表されたのは、(C)に収録されていた(27)が初めて。しかし、ブートレッグではすでにいくつかの音源が発表されていた。それが(F)で、アナログ盤のみでのリリース。アナログA面に、(27)に加え(34)~(37)というBBC音源が収録されている。アナログB面には(38)~(41)という未発表ライヴ音源を収録。これは一度TREESが解散した後に再編成されてからのライヴ音源(1973年?)といわれている。ただ(41)に関しては、(38)~(40)とは、ちょっと音質が違うような気も。
(G)は、1989年にBBC音源集として突如発売されたブートCD。1970年の“Folk On 1”に出演した時の(42)~(46)、1970年のBBC音源(47)~(51)、(C)収録曲と同じ1971年のBBC音源(27)、(34)~(37)が収録されていた。
(H)もCDで発売されたブートで、収録曲は(F)と同じ。単純に(F)のCD化なのかと思いきや、(H)のラストに収録された(52)は、「Bonus track from Blockbuster Sampler-different version」とクレジットされている。この「Blockbuster Sampler」というのは、CBSが1970年にリリースしたサンプラー盤『ROCK BUSTER』と書きたかったところを誤植したものと思われる。『ROCK BUSTER』には、TREESが「Polly On The Shore」を提供しているが、どうやら(B)収録曲とは別ヴァージョンらしい。「らしい」というのは、『ROCK BUSTER』収録ヴァージョンを聴いたことがないから。ここまで書いてきてなんだけど、(A)~(I)を全部持っているわけじゃない。ツメが甘くてすいません。
そこで、ここからは推測だけど、先の(F)に収録されていた(41)も(52)と同じ音源の可能性はないだろうか? さらに、(E)のみに収録されている、1970年のデモとクレジットされていた(33)だが、これもデモではなく、『ROCK BUSTER』収録の別ヴァージョンの可能性がないか? すなわち、(33)(41)(52)は同音源なのではないか?と。 誰か、(A)~(I)を全部持ってる人、いませんか?!
さて、そんなTREESが、2020年にデビュー50周年を記念した4CDセット『TREES』を発売した。これが(I)です。オフィシャル初登場となるBBC音源もあるが、ブートまで含めると完全なる初出音源は(53)と、18年にオリジナル・メンバーのデヴィッド・コスタとバイアス・ボシェルがON THE SHORE BANDとして行ったライヴからの(54)(55)のみ。ちょっと物足りないけど、ブックレットも付いている。詳しい内容は内容は次回に譲りたいが、まだまだあるというBBC音源とか、まとまった形で出してほしい。
さて、ようやく当コラム本来のテーマであるジャケ写の話。今回はTREESのデビュー作『THE GARDEN OF JANE DELAWNEY』といきたい。本作のジャケットをデザインしたのはメンバーのデヴィッド・コスタ。英ロック・ファンなら、この名前は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか? このデヴィッド・コスタ、TREES解散後には、エルトン・ジョンやQUEEN『NIGHT AT THE OPERA』をはじめとした有名アーティストのジャケット・デザインを数多く手がける。TREESといえば、どうしてもヒプノシスが手掛けた2作目『ON THE SHORE』のジャケットの方が話題に上るが、ちょっとマグリット風のシュールなイメージのある、このデビュー作のジャケットも悪くない。
TREESはトラッドをアレンジした曲も聴きごたえがあるが、オリジナル曲の出来が素晴らしい。ここでは、カタツムリらしいノンビリとした、また朴訥としたメロディが印象的な「Snail’s Lament」を聞いていただきましょう。紅一点セリア・ハンフリスの、時に色っぽく、時に子どもっぽく響く歌声の魅力が味わえます。それにしても、セリア・ハンフリスが今年の1月に他界したことが残念でなりません。
それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。
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英フォークを代表するグループ、70年作2nd。半分はトラッド、半分はオリジナルという構成で、フェアポート・コンヴェンションからの強い影響を感じさせるエレクトリック・トラッドがベースですが、サイケデリックなフィーリングもあるのが特徴。そのサウンドを生みだしているのが、名手バリー・クラークによるリード・ギターで、ズシリと重く、なおかつ凛とした透明感もあるトーンはリチャード・トンプソン直系ですが、その演奏は、より奔放でロック的ダイナミズムがあって、徐々に音が立ち上るヴァイオリン奏法の多用や、グレイトフル・デッドを彷彿させるサイケデリックにたゆたうようなフレージングはかなり先鋭的。一方で女性ヴォーカルのセリア・ハンフリスは伝統的なフォーク/トラッド・スタイルで、時に清楚なハイ・トーン、時に妖艶な歌い回しで、楽曲を静謐かつ艶やかに彩っています。エレクトリック・トラッドとサイケが結びついたプログレッシヴなアンサンブルと、トラディショナルな女性ヴォーカル。その革新と伝統との奇跡的な拮抗と、そこから生み出されるダイナミズムと緊張感とがこのグループ最大の魅力と言えるでしょう。そんな世界観を見事に描いたヒプノシスのジャケもまた特筆。孤高の存在感を放つブリティッシュ・ロック屈指の傑作です。
紙ジャケット仕様、2枚組、各CDはそれぞれ紙ジャケ仕様、07年デジタル・リマスター、内袋付き仕様、定価2700+税
盤質:傷あり
状態:
帯有
1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり
紙ジャケット仕様、2枚組、各CDはそれぞれ紙ジャケ仕様、07年デジタル・リマスター、内袋付き仕様、定価2700+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
1枚は無傷〜傷少なめ、小さいカビあり、その他は状態良好です
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