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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第五十回 CITTA FRONTALE『EL TOR』(イタリア)

去年の四月頃だったか、体重が著しく増加したので「緊急ダイエット宣言」を発出。その甲斐あって、少し体重が減ったので宣言を解除。ところが、今年に入って完全にリバウンド。「このままじゃアカン。痩せるわ!」と今年の一月に二度目の「緊急ダイエット宣言」。「去年もそう言うたけど、体重減ってないし、ほぼ一年間何してたん?!」と、周りは冷たい目。確かに、本人としても一度目の「緊急ダイエット宣言」に比べたら緊張感が足りない。それでも少しは体重が減ったので、三月になって宣言を解除。

しかし、今までガマンした反動で食べ過ぎてしまい、あっという間にズボンの腰回りに余裕がなくなってきた。そこでまずは、ズボン非常事態宣言を発出。四品以上のオカズ、午後九時以降の飲酒は控えることに。妻にも強くご協力をお願いさせていただいた。でも四品といっても、フライもの四品だとカロリーは高いし、午後九時までに駆け込みでアルコール飲んだりして、ズボンの腰回り逼迫率が100%に迫る。これではいかんと、より強い内容の「肥満防止等重点措置」を発出。不要不急の間食を自粛し、目に毒だから、子供のおやつも原則休止。しかし、何が不要不急なのかわからないし、子どもたちからは「宣言とか措置とか、とりあえず言うたらええと思ってるやろ!」と反発を食らう。

そこでゴールデンウィーク突入前に「三度目の緊急ダイエット宣言だ!」と家族に向かって吠えた。ところが、その日の夕食はすき焼きとのこと。それはもうバクバク食べたさ。家族は「宣言出したんちゃうの?!」と。いや、今日は緊急ダイエット宣言の発出の要請を検討に入っただけだから。次の日は、これまた好物のトマト系パスタで、バクバク食べる。いや、まだ宣言の発出を要請したけど、実際に発出されるのは今週末の予定だから。そんな緊張感のない宣言で体重が減るわけもない。すでにズボンの腰回りも崩壊状態。でもゴールデンウィーク過ぎたし、宣言は継続するけど、ご飯のおかわりは二杯まで可、食後のおやつも可と緩和措置することに。大丈夫、よく効く痩せ薬があるから。でも、いつ手に入るかはわからないけど。

長々と失礼しました。これを書いている5月11日現在、僕の住んでいる大阪は、患者受入重症病床使用率156.7%だから、救急車を呼ぶぐらい具合が悪くなったら、もう助からないと覚悟した方がいい状態。それでも打つ手なしで、明日も明後日も満員電車に揺られて多くの人たちが移動する。なにかが、おかしい。


そんなどうしようもない状況を受けて、今回はイタリアのCITTA FRONTALE『EL TOR』を紹介します。ジャケットに描かれたシュールなイラストが印象的な一枚。このカヴァー・デザインは、メンバーのマッシモ・グァリーノが手掛けている。黒い枠の中に線画で描かれたシュールなイラスト。前回紹介したTOE FATの「親指人間」みたいな人物が描かれている。両手を広げて助けを求めているようにも見える。そのほかにも抽象的なものが色々と描かれているが、何を表しているのかわからない。イラストの奥には町が見える。その町に何か不吉なものが迫っているようにも見える。

見る者に幸福感を与えるものではなく、不安感を掻き立てる。それもそのはず、このアルバムのタイトルに冠せられたエル・トールというのは、かの伝染病を起こした細菌、コレラの型の名前なのである。そもそもはエジプトの町の名前だが、そこで発見されたことにちなんでエルトール型コレラと名付けられた。このエルトール型コレラ菌は、1961年にインドで大流行。その脅威は今も終息したわけではない。イタリアのナポリでは、1884年と1911年にコレラの大流行があった。だが二度目となる1911年のコレラ流行に関しては、政府が無能であることを証明したくないがために公表しなかったという愚行をはたらく。CITTA FRONTALE『EL TOR』は、イタリア人にとっても苦い歴史であるコレラ菌、それに絡めて政治批判もテーマにこめられたコンセプト作だという。ね、今にピッタリのアルバムでしょ?


さてCITTA FRONTALEだが、イタリアン・ロック史に同じ名前のバンドが二つ存在していた。第一のCITTA FRONTALEは、1960年代後半にナポリで結成されている。メンバーは、リノ・ヴァイレッティ(vo)、ダニーロ・ルスティーチ(g)、レロ・ブランディ(b)、マッシモ・グァリーノ(ds)で、後にリノに誘われたジャンニ・レオーネ(kbd)が加入。ライヴで腕を磨き評判を集めるようになった。そんな彼らに惹かれてアプローチをかけたのが、SHOWMENというバンドで活動していた管楽器奏者のエリオ・ダンナだった。エリオ・ダンナがCITTA FRONTALEに加入したのと時期を同じくしてジャンニ・レオーネが脱退し、IL BALLETTO DI BRONZOに加入してしまう。エリオ・ダンナを加えて新編成になったCITTA FRONTALEは、1971年にOSANNAと改名。KING CRIMSONなどイギリスのプログレに影響を受けた彼らの音楽性はもとより、顔にメイクを施し、異様な衣装をまとった彼らのステージが大きな注目を集めるようになる。ともにイタリアをツアーしたGENESISが、OSANNAのシアトリカルなステージングに影響を受けたとも言われている。

OSANNAは1971年に『L’UOMO』を発表。1972年『MILANO CALIBRO 9』、1973年『PALEPOLI』と、イタリアン・ロック史に残る名作を次々と発表する。ところが、ダニーロ・ルスティーチとエリオ・ダンナの二人が、インターナショナルな活動を目指すようになり、他のメンバーとの間で音楽性の相違が生まれてしまう。その中で制作され、1974年に発表された『LANDSCAPE OF LIFE』は、OSANNAの呪術的と呼ばれたカルトな魅力と世界を照準にした親しみやすさが同居しているアルバムとなった。当時のイタリアは政情が不安定でもあり、ロック・バンドの活動に難しさがあったという。それが国外への活動に意識を向かわせた面もあったと思われる。

ダニーロ・ルスティーチとエリオ・ダンナは、HELLZA POPPINのエンゾ・ヴァリチェッリ(ds)とUNOを結成。イギリスのトライデント・スタジオでレコーディングし、1974年に『UNO』を発表するが解散。ダニーロとエリオの二人は、ダニーロの弟でCERVELLOのコッラード・ルスティーチ(g)、CIRCUS2000のフランコ・ロプレヴィーテ(ds)らとNOVAを結成し、ワールドワイドな活動を目指していく。

一方、残されたOSANNAのメンバー、リノ・ヴァイレッティとマッシモ・グァリーノの二人は、ジャンニ・グアラッチーノ(g)、リノ・ズルゾーロ(b)、エンゾ・アヴィタビレ(flt,sax)、パオロ・ラフォーネ(kbd)を率いて新バンドを結成。バンド名には、かつてリノとマッシモが名乗っていたCITTA FRONTALEを採用することになる。こうして第二のCITTA FRONTALEが誕生し、1975年に『EL TOR』を発表する。

当時は時代的にプログレが下火だったこともあって、UNOもCITTA FRONTALEも商業的に成功といかなかった。しかし、UNO『UNO』もCITTA FRONTALE『EL TOR』も、OSANNAでゴリゴリの所まで煮詰めていった音楽をどんなふうに洗練させるかという発想では共通していて、イタリアン・ロック初心者にも受け入れやすい内容となっている。ただワールドワイドな方向性を真正面から見ていたUNOに対して、CITTA FRONTALEは、イタリアにしっかりと足を踏みしめながらの洗練を目指していた。テーマの重さとは裏腹に、アレンジの繊細さやポップとさえいえるメロディもあるが、そこに確かにイタリアのエッセンスが香っている。そこがたまらなく魅力的だ。ここではタイトル曲の「El Tor」を聴いていただきたいと思います。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

El Tor

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  • CITTA FRONTALE / EL TOR

    元OSANNAのメンバーによるグループ、75年作、アコースティックでリリカルな伊プログレの傑作

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