2021年6月11日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
名盤からディープな作品まで、ユーロ諸国で誕生した様々なロック名作を掘り下げていく「ユーロ・ロック周遊日記」。
今回は、21年に他タイトルと共に待望のリイシューを果たした、フィンランド・ロックの代表グループTASAVALLAN PRESIDENTTIの69年デビュー・アルバムをご紹介したいと思います!
コロシアムのエネルギッシュで熱気たっぷりに疾走するソウルフルかつブルージーなサウンド、トラフィックのR&Bを下地に持つグルーヴィーかつ芳醇なサウンドが堪らない!という方は、北欧フィンランドに目を向けてみると素敵な出会いがあるかもしれませんよ?
今回取り上げるTASAVALLAN PRESIDENTTI1の詳しい足跡については以前に特集記事をアップしておりますので、そちらをご覧いただければ幸いです。
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上記特集でも述べているように、TASAVALLAN PRESIDENTTIは、同国を代表するギタリストとなるJukka TolonenとドラマーVesa Aaltonenが中心となり、69年に結成されました。
ベーシストMans Groundstroemと英国人シンガーFrank Robsonがブルース・バンドBLUES SECTIONの元メンバー、フルート/サックスのJuhani Aaltonenは60年代半ばから活動するジャズ・ミュージシャンという経歴の持ち主。
69年といえば、英国シーンではTRAFFIC、COLOSSEUM、JETHRO TULLなどジャズやブルースやR&Bをルーツに持つロック・バンド達が活躍していた時期にあたります。
そんな英国シーンに呼応するブルースやジャズを取り込んだロック・サウンドを打ち出したのが彼らだったのです。
トラフィックが67年結成/デビュー、ジェスロ・タルが67年結成/68年デビュー、コロシアムが68年結成/69年デビュー。それを考えると、TASAVALLANは69年結成/デビューとほぼリアルタイムに英国の最先端サウンドを取り入れたスタイルを打ち出したことがわかります。
まずは1~2曲目「Introduction / You’ll Be Back for More」を聴いていただきましょう。上記英バンドたちと遜色ない演奏にきっとビックリするはず!
いかがですか?冒頭、フルートとオルガンによる北欧然としたデリケートな演奏が流れてきますが、ブルージーなリフが切り込むと、重いリズムとサックスがなだれ込んできます。そして黒人ばりにソウルフルに歌い上げる英語ヴォーカル。コロシアムにも匹敵する痺れる導入です。
後半はブルースを基調にサイケデリックな熱量も帯びたギターと、フリージャズみたいにフリーキーに吹きまくるサックスのバトルに圧倒されます。
まさにコロシアムやトラフィックに対するフィンランドからの回答と呼べるサウンドが炸裂していますよね!
もう一曲カッコいいナンバーをどうぞ!
でも、単なる英国志向のグループというわけじゃないのがこのTASAVALLAN PRESIDENTTI。アルバム冒頭部分で演奏された「Introduction」に象徴されるように、自国の民族音楽のエッセンスもたっぷりと取り入れているのが特徴です。そちらがよく現れたアルバム収録曲の動画がなかったため、同年のシングル曲をお楽しみください。
オルガンとサックスが哀愁いっぱいに盛り上げる、自国トラッドのメロディを引用した旋律にグッと来ますね~。
英国由来のブルース・ロック・スタイルを全面に押し出しつつも、自国のトラッド要素が控えめながら北欧らしいリリシズムと哀愁を添える。両者が違和感なく共存し時に融合するそんなサウンドこそがデビュー時のTASAVALLAN PRESIDENTTIならではの魅力と言うことが出来ます。
60年代末の英国に渦巻いていたあらゆる音楽をロックに取り込まんとするあの熱狂が、北欧の地にも確かに存在していたことが実感できる作品です!
北欧を代表するギタリストJUKKA TOLONENを中心に結成されたフィンランドのジャズ・ロック・グループが、72年に残した未発表ライヴ音源を収録した19年リリース作。同年リリースの3rd『Lambertland』のナンバーが中心で、どこまでも奔放なようでいて一音一音にデリケートな感性も滲ませたJukka Tolonenの素晴らしいギターワークが存分に味わえます。オリジナル通りの演奏はそこそこに、スリリングなインプロヴィゼーションへとなだれ込んでいく演奏が聴き物で、スタジオ盤以上に手数多く暴れるハードなドラム、サイケ/ブルース/ジャズを混ぜ合わせシャープにフレーズを繰り出すギター、ジャジーなサックスにクラシカルで妖艶なフルート、そしてソウル色のあるヴォーカルと、いろんなジャンルを混合しながらも、ごった煮感は一切なくあくまで洗練された聴き心地なのが凄いです。スタジオ作品だけでは堪能しきれない、このバンドの懐の深さが垣間見れる音源となっています。
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北欧を代表するギタリストJUKKA TOLONEN率いるグループ。69年作の1st。TRAFFICからの影響が感じられるサイケデリックなブルース・ロック。スティーヴ・ウィンウッドにそっくりなブルージーなヴォーカル、デイヴ・メイスンやクラプトンに引けを取らない雄弁なギター、ジャジーにむせび泣くフルート&サックスによるスケールの大きなサウンドは、驚くほどの完成度。60年代後期の英サイケ/ブルース・ロックの名作と比べても全く遜色ない名作。
北欧を代表するギタリスト、JUKKA TOLONENを中心にフィンランドで結成されたグループ。72年作の3rdアルバム。初期はTRAFFICタイプのサウンドでしたが、徐々にジャズの度合いを増し、本作で聴けるのは、ギター、サックス、フルートが次々にスリリングなフレーズで畳み掛けるテンション溢れるジャズ・ロック。テクニック、アレンジ能力ともかなりハイ・レベル。ジャズ・ロックの知られざる傑作でしょう。
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19年デジタル・リマスター、ボーナストラック2曲
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天才ギタリストJukka Tolonenを中心とするフィンランドのプログレ/ジャズ・ロック・バンド、最終作となった74年4thアルバム。本作は自国フィンランドのみならず英国、カナダ、ドイツ、アメリカなど世界各国でリリースされた一枚で、それに恥じぬ高い完成度のジャズ・ロックを聴かせてくれます。前作『LAMBERTLAND』でアヴァンギャルドさとクリアな北欧幻想が入り混じる個性的なジャズ・ロックを創出した彼らでしたが、本作ではそこにWIGWAMにも通じるポップなメロディを加味。ジャズ、ブルース、サイケとクルクル表情を変える変幻自在なギターを軸に舞うようなサックスも交え奔放な音の交歓が繰り広げられるサウンドは、『FAIRYPORT』『BEING』あたりがお気に入りという方なら堪らないでしょう。本作リリース後にベーシストが脱退したバンドは分裂状態に陥り、スウェーデンでのツアーを終えると、同年にあえなく解散。この先のサウンドが聴いてみたかったと思わずにはいられない充実作!
北欧を代表するギタリストJUKKA TOLONENを中心に結成されたフィンランドのジャズ・ロック・グループ。71年リリースの2ndアルバム。終始エネルギッシュに駆け抜ける一曲目から名曲!小気味よいパーカッションを絡めたリズムと賑やかにかき鳴らすアコギ、テンションMAXで吹き鳴らすサックスらがひた走るイタリアン・ロックにも通じる祝祭感に満ちたアンサンブルに、JUKKA TOLONENのサイケとブルースを折衷した奔放なフレージングのギターワークが乗るこのスリリングさと言ったらありません。他の曲では、フルートの響きが北欧の神秘的な森をイメージさせるトラッド・ロックや、芳醇な鳴りのオルガンとブルージーな深みを帯びたギターのコンビが堪らないTRAFFICタイプのブルース・ロックなど多彩に聴かせます。ソロ・ミュージシャンとしても成功するJUKKA TOLONENの才覚が炸裂している名盤です。
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