2012年8月27日 | カテゴリー:カケレコ情報,ライヴ・レポート,世界のロック探求ナビ
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こんにちは、カケハシ・レコードの佐藤です。
8月25日に日比谷野外音楽堂にて開催された「PROGRESSIVE ROCK FESTIVAL 2012」に行ってまいりました。
今年の参加バンドは、今回初来日となるバークレイ・ジェームス・ハーヴェスト(BARCLAY JAMES HARVEST)、2度目の来日ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイター(VAN DER GRAAF GENERATOR)、同じく2度目となったイタリア出身のプログレ・バンド、ゴブリン(GOBLIN)の3バンド。
個人的にはプログレ・バンドのライヴを観るのは初めてということもあり、胸をときめかせつつ開始20分ほど前に座席に到着しました。
夕方5時過ぎの日比谷、非常に暑い中で私も皆さんも滝のように汗を流しておりましたが、それ以上に観客の期待感からくる熱気で会場中が覆われていたように感じました。
そんな中予定通り5時15分に開演。フェスのオープニングを飾るのは初来日ということもあり、観客からの期待を一身に受けたB.J.H!71年作『ONCE AGAIN』からの一曲「BALL AND CHAIN」でスタートです。
リーズの代名詞たる名曲「CHILD OF UNIVERS」を経て、日が暮れかかった夏の夕方にピッタリの爽やかなアコースティック・ナンバー「HYMN FOR THE CHILDREN」をプレイ。間奏のリーズによるリコーダー演奏も見事に決まっておりました?。「SHE SAID」「MOCKING BIRD」など70年代前期の叙情的な名曲のオンパレードで大興奮していると、最後は71年作『AND OTHER…』の最後を飾る「THE POET~AFTER THE DAY」というあまりに劇的な締め。
これ以上ないというほど充実の選曲です。そして何より全編にわたって泣きまくるリーズのギターの素晴らしいこと!往年と少しも変わらないエモーショナルなギター・プレイにただただ感動でした。
ベース/ヴォーカルを担当していたクレイグ・フレッチャーの好サポートもあり、リーズも伸び伸びとプレイできていたように感じます。45分程度と短い出演ではありましたが、その中で爽やかさとドラマティックさが同居したB.J.Hらしさを存分に堪能できるステージとなっていました。
続いてはVDGG。私としては今回最も楽しみにしていたのが彼らです。ピアノ、オルガン、ドラムが向い合って三角形に配置されたステージ。メンバーがまだ登場していないステージ上のそのセットを見ただけでも何か息を呑ませるものがあります。
不穏なオルガンのフレーズが鳴り響き、ハミルが第一声を発すると会場の空気が一気に緊張に包まれます。暴風雨のように吹き荒れるヒューのオルガン、そして猛烈な手数による鬼気迫るドラミングを聴かせるガイ。60代半ばの人間が3人で出している音とはちょっと信じられない演奏に、会場中が圧倒されます。
ハミルがフロントに立ち、歌詞を片手にシアトリカルなヴォーカル・パフォーマンスを披露する場面も非常に印象的でした。ここでの絶唱と呼ぶにふさわしい、ハミルのヴォーカルの凄まじさたるや!
「LIFETIME」「BUNSHO」など、08年作、11年作からのナンバーで構成されたセットリストでしたが、70年代のナンバーをやって欲しいなんていう野暮なことを言う人はおそらく一人もいなかったはず。それほどに凄まじいステージングです。
そんなことを思っていると、ハミルがおもむろにピアノを鳴らし、始まったのが71年作『PAWN HEARTS』収録の「MAN-ERG」!一斉に沸き起こる歓声。ピアノを伴ってのハミルの歌唱は、叙情ナンバーでもやはり素晴らしく映えます。来てよかった~と思わせてくれたまさに至福の一時です。
70年代の若かりし頃の彼らといささかも変わらぬ、狂気とバイオレンス、そして崇高なまでの美しさに満ちた最高のステージを見せてくれました。ハミルの魂の歌唱に鳥肌立ちっぱなしの1時間。演奏終了後はもちろんスタンディングオベーションでの大歓声。
さてそんな中、会場を大いに沸かせてくれたのがトリを務めたGOBLIN。オープニングからメタルバンドを見に来たのかと錯覚するほどのヘヴィーな演奏で観客の度肝を抜いてみせます。
オリジナルスタジオ作の『ROLLER』『IL FANTASTICO VIAGGIO DEL BAGAROZZO MARK 』からの楽曲に加え、『ゾンビ』『サスペリア』『フェノミナ』などサントラ作品からの恐怖ナンバーも多数披露。荘厳なチャーチ・オルガンの響きに、無機的なシンセのパターン、映画のワンシーンを思い出させるおどろおどろしいSE、そして照明効果でステージが真っ赤に染まる演出など、ヘヴィーな演奏の中にも背筋をゾクリとさせるホラー感覚が満載で、実にGOBLINらしいステージングとなっていました。
一方ノリの良いロック調のナンバーでは、手拍子が沸き起こり会場の一体感はここで最高潮に。エンターテイメントとして抜群に優れたステージを楽しませてくれました。ミステリアスな印象を強く持つ70年代のスタジオ作品/サントラ作品でしか彼らを知らなかった方にとっては、驚くべき迫力みなぎるライヴだったことと思います。
他バンドと違い単独公演がなかった分、たっぷりと一時間半ほどにわたって演奏してくれたGOBLIN。「住んでしまいたいくらいに日本好きだ」という本人たちの談のとおり、オリジナル・キーボーディストのクラウディオ・シモネッティを筆頭にとても楽しそうに演奏していたのが印象的でした。
終了後、帰途に着くなかでもリーズのギター、ハミルの絶唱、シモネッティのスリリングなシンセサウンドが頭の中をグルグルと渦巻いておりました。今後しばらくはこの3バンドが頭を離れることは無さそうです。
「第10回までやって10周年のサプライズをやろうと思っている」とまでおっしゃったMCの岩本さん。プログレ・ファンにとっては今後も毎年楽しみにできる夏の行事の一つとなりそうですね。
以下、当日のセットリストになります。
BARCLAY JAMES HARVEST
1.BALL AND CHAIN
2.CHILD OF UNIVERSE
3.HYMN FOR THE CHILDREN
4.SHE SAID
5.MOCKING BIRD
6.THE POET ? AFTER THE DAY
VAN DER GRAAF GENERATOR
1.INTERFERENCE PATTERNS
2.SCORCHED EARTH
3.BUNSHO
4.THE SLEEPWALKERS
5.MAN-ERG
GOBLIN
1.MAGIC THRILLER
2.MAD PUPPET
3.DR.FRANKENSTEIN
4.ROLLER
5.E SUONO ROCK
6.NON HO SUONO ? DEATH FARM
7.L’ALBA DEI MORTI VIVENTI
8.ZOMBI
9.SUSPERIA
10.TENEBRE
11.PHENOMENA
12.PROFONDO ROSSO
71年発表の第三作「And Other Short Stories」。劇的なチェロの調べで幕を開ける本作は、アコースティックなサウンドを主体にさまざまな曲想の作品が並んでいます。 前二作での試みは着実に結果を生み、オーケストラを完全に楽器の一つとして使いこなしたシンフォニックなアレンジは、これまでで最高。 タイトル通り、比較的短い曲を集めており、曲数も今までで最も多いです。 オーケストラ・アレンジはMARTYN FORDに交代。 プロデュースはウォーリー・アレンとグループ。 管弦によるアレンジ含め、アコースティックな音を活かしたフォーク風のファンタジックな楽曲で充実した作品。 オーケストラはアレンジの手段として的確かつ集中的に使用されるようなっており、 特に最終曲はすばらしいでき映え。 また、メンバーのStuart Woolly WolstenholmeやLes Holroydの作品がいかにもこのグループらしい優美なメロディック・サウンドであるのに対して、リーズは積極的に様々な方向へとアプローチしてそれぞれに質の高い作品を生んでいます。 それでいながら全体に散漫な印象を与えないのは、アコースティックな美しさを強調した幻想的なサウンドという通奏低音があるせいでしょうか。 どこを取っても美しいメロディとパストラルなアンサンブル。 オーケストラ嫌いの方でも、このアルバムのサウンドの湛える淡い情感には魅せられることでしょう!
英国ロックのナイーブな叙情性とメロディアスで牧歌的なフォーク・ロック的メロディー・メイク、そして、オーケストラを加えた大掛かりな編成でダイナミズムとシンフォニック・ロック然とした音楽性を打ち出した、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック史に残る名グループの71年作2nd。初期の傑作とされる本作は非常に繊細で優しげなサウンドが心地良い名作であり、特にメロトロンを中心に幻想的に聴かせる手法など、前作からよりファンタジックな叙情を感じさせるサウンドへと変化。一方で後にTHE ENIDを率いるRobert John Godfreyのアレンジによるオーケストラはダイナミックにシンフォニックな彩りを放っており、彼らの個性が花開いた1枚となっています。
72年にHarvestより発表された4thアルバム。傑作2nd、3rdの延長線上にある、叙情的かつ重厚なサウンドが素晴らしい名作。「Moonwater」は、よりクラシック然としたサウンドが素晴らしい名曲。
英国ロックのナイーブな叙情性とメロディアスで牧歌的なフォーク・ロック的メロディー・メイク、そして、オーケストラを加えた大掛かりな編成でダイナミズムとシンフォニック・ロック然とした音楽性を打ち出した、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック史に残る名グループの75年作7th。POLYDORへ移籍第3弾である本作は、POLYDOR移籍後の彼らのバンド・サウンドの成果が結実した名盤であり、ポップ・シンフォニック期の彼らの代表作と言えるでしょう。適度にアメリカン・ロック的な雰囲気も覗かせますが、淡い幻想性を持ったサウンドはやはり英国的な甘みを持っています。
英国ロックのナイーブな叙情性とメロディアスで牧歌的なフォーク・ロック的メロディーメイク、そして、オーケストラを加えた大掛かりな編成でダイナミズムとシンフォニック・ロック然とした音楽性を打ち出した、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック史に残る名グループによる76年作8th。HARVESTレーベルを離れPOLYDORへ移籍後は生オーケストラを封印しシンセサイザーによってシンフォニックなドラマ性を演出するアプローチを取った彼らですが、本作では再びオーケストラを起用、加えて混声合唱も導入したスケール大きく神秘的な音作りを行なっています。持ち前のポップ・フィーリングは相変わらずのクオリティを誇りますが、楽曲の展開などには非常にプログレッシブ・ロック然とした雄大な流れが伺える名作です。
英国叙情派プログレ屈指の名バンド。77年に発表された通算10枚目で、ジャケットのイメージどおりの陰影豊かな叙情と幻想性に満ちた佳曲がつまった名盤であり代表作。オープニングを飾る代表曲のひとつ「Hymn」から彼ららしい優美で穏やかで詩情豊かな音世界が広がります。アコースティックで柔らかな冒頭からキーボード、そしてストリングスと被さってきて壮大にフィナーレを迎える展開が実に感動的です。ある評論家が彼らのことを「Poor Man’s Moody Blues」と揶揄したことに反発して作った楽曲も粋で、ムーディーズの代表曲「サテンの夜」に似せつつもバークレイならではの美しさがつまった名曲に仕上げていてあっぱれ。その他の曲もアコースティックな温かみとメロトロンやオーケストラの壮大さ、英国ならではのメロディがとけあった佳曲が続きます。英国叙情派プログレの傑作です。
78年発表の12枚目。より洗練を極めたクラシカルで美しいポップ・ナンバーが揃った名盤
廃盤、紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、ミニポスター付仕様、定価2039+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干色褪せあり、帯中央部分に色褪せあり
英国叙情派プログレを代表する名グループ。93年作。しっとりとメロディアスなギター、幻想的にたなびくキーボード、優しく紡がれる英国らしい叙情的なメロディと親しみやすいヴォーカル。変わらぬ美旋律を飾らず誠実に響かせる職人芸の名品です。
ピーター・ハミル率いる英国プログレッシヴ・ロック屈指の名バンド。69年の記念すべき1stアルバム。幻想的なハモンド・オルガンやハープシコード、メロウなアコギのストローク、そして、ピーター・ハミルのエモーショナルなハイ・トーンの歌声と「狂気」と「叙情」が同居する孤高のメロディ・ライン。69年という「プログレッシヴ・ロック」前夜の空気感を見事に収めたアート・ロック・サウンドが実に魅力的です。後の強烈なプログレ作品と比べられ、インパクトで劣る分、過小評価されていますが、もしこの一枚のみで解散していたとしたら、逆にブリティッシュ・ロックの名作としてもっともっと評価されていたことでしょう。ずばり名作です。
非凡なる才能を持ったボーカリストPeter Hammillを擁し、難解な哲学詩と前衛的なアプローチ、初期のKING CRIMSONに負けず劣らずのへヴィネスと神秘性を兼ね備えたイギリスのプログレッシブ・ロックバンドの71年4th。前期VAN DER GRAAF GENERATORの総括的作品として名盤の誉れ高い本作は、20分を超える大作を中心にした3曲で構成され、Peter Hammillはもちろんのこと、Hugh Bantonの痛ましいほどに強烈なオルガンさばき、David Jacksonの荒々しいダブル・ホーンが刺激的な1枚。ゲスト参加したKING CRIMSONのRobert Frippでさえ霞みかけるほどに、一節一節強烈なインパクトを残しています。
カリスマ移籍後3枚の傑作アルバムを発表して72年に解散。その後、ソロ・アルバムをはさみ75年に再結成。本作は、その再結成第一弾作品。
SHM-CD、05年マスター、ボーナス・トラック2曲、定価1714+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
帯中央部分に色褪せあり
再結成第2作。テンション溢れるバンド・アンサンブル、鬼気迫るヴォーカル、流麗なメロディーとどれをとっても第一級の名盤。
77年作。元STRING DRIVEN THINGのGRAHAM SMITHが本作より参加。彼のヴァイオリンが静謐に響く、格調高いナンバーが多く収録されています。感情を巧みにコントロールし、楽曲に起伏をもたらすハミルのヴォーカルは相変わらずの存在感。
紙ジャケット仕様、05年デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲、インサート入り仕様、定価2476+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
軽微な角潰れあり、インサートに小さい折れあり
ゴブリンの記念すべきデビュー・アルバムと75年作で、ダリオ・アルジェント監督の映画『赤い深淵 サルペリア2』のサウンドトラック。オープニングを飾るタイトル・トラックは、同時期にヒットしていたマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」を彷彿させるミニマルなキーボード・フレーズを軸に、イタリアらしいそそり立つように荘厳なハモンド・オルガンとシャープなドラムが冴え渡る代表曲。イタリアのヒット・チャートで52週間に渡りチャート・インを続け、イタリアだけで300万枚を売り上げた名作。
イタリアン・シンフォニック・ロックの代表格バンドの76年2nd。デビュー作「Profondo Rosso」での成功を足がかりにした、いわゆる「サントラではない」Goblinのオリジナルアルバムデビュー作である本作は、彼らが恐怖映画のサントラの枠にとらわれずに普遍的なロックの名盤を作り上げた、奇跡の1枚です。前作からドラマーが交代、キーボーディストの新加入、とマイナーチェンジを行い、Goblinの歴史上最強のラインナップで作り上げられた作品ですが、もちろんGoblin節とも言える緊張感溢れるバンドサウンドと恐怖のメロディーラインは健在であり、イタリアンロックの名盤ということが出来るでしょう。
イタリアン・シンフォニック・ロックの代表格バンドの78年4th。それまでインスト路線を貫いてきたわけですが、本作では初めてボーカルナンバーも配置され、およそGoblinのイメージとは遠い、とてもファンタジックなコンセプトアルバムとなっています。「Goblin=サスペリア」、「Goblin=サントラ」というのはもはや常識なわけですが、数は少ないながらサントラではない、いわゆる「オリジナルアルバム」も残しており、その貴重な1枚が本作と言うわけです。ビシバシにキメるリズム隊、そして、恐怖ではなく優美なファンタジーを描かせても超一流の表現が出来てしまう、引き出しが多すぎるClaudio Simonettiのキーボードがやはり圧巻。ボーカルを取り入れたことに対する賛否両論は、それだけバンドとしてのまとまりに隙が無いことの、なによりの証です。テクニカルさを駆使したシンフォニックロックとして最高の出来であり、Goblinの新たな一面を垣間見ることの出来る名盤。
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