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西海岸のSSW特集

こんにちは。スタッフみなとです。

今日はアメリカ西海岸に注目して、シンガー・ソングライター達の誕生を紐解いていきます。

60年代、アメリカ西海岸には多くの成功を夢見るミュージシャンが押し寄せました。

そのきっかけを作った一つに、フォーク・ロック・ブームがあります。

「ミスター・タンブリン・マン」から始まったフォーク・ロック・ブーム

1965年、ロサンゼルスで結成されたバーズが「ミスター・タンブリン・マン」をリリースすると、フォーク・ロック・ブームが到来、雨後の筍のようにフォーク・ロック・グループが誕生しました。

ロサンゼルスで一旗上げたい多くのミュージシャンが西海岸へと引き寄せられていき、グリニッジ・ヴィレッジで活動していたアーティストも多く移り住みました。

腕利きのセッション・ミュージシャン集団であったレッキング・クルーがいたこともあり、西海岸のフォーク・ロックは隆盛を極めます。

バーズはその後メンバー・チェンジを繰り返しながら『霧の5次元』でサイケデリック・ロック、『ロデオの恋人』でカントリー・ロックに接近し、時代とともに音楽性を変遷していきます。


バーズ「ミスター・タンブリン・マン」から辿る、フォーク・ロック特集

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1965年4月12日にリリースされたバーズのデビュー・シングル「ミスター・タンブリン・マン」。フォーク・ロックの先駆けとなったこの楽曲から辿って、アメリカで巻き起こったフォーク・ロック・ブームの作品を聴いてまいります。

CSN&Yが描いた理想

バーズの創設メンバーだったデヴィッド・クロスビーは、元バッファロー・スプリングフィールド、元ホリーズのグレアム・ナッシュとともにCS&Nを結成します。


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1969年からちょうど50年を記念して、70年代を代表する名バンドによる69年リリースのデビュー作をピックアップ。第六弾は、5月にリリースされたクロスビー・スティルス&ナッシュの1st『CROSBY STILLS&NASH』!

やがてニール・ヤングも加わりCSN&Yとなり、ウッドストック・フェスティヴァルにも出演、人気を博しました。

4人それぞれを尊重しつつ美しいハーモニーを奏でるというCSN&Yは、人々が対立することなく「個」として自由に存在し調和するという、ウッドストック世代の時代精神をまさしく体現したようなグループでした。

ところがそんなCSN&Yも、メンバーが調和しきれず空中分解してしまいます。

シンガー・ソングライターたちの台頭

時代の夢を反映していたスーパー・グループが解散し、人が集って平和に調和出来るという理想は崩れていきました。

また、当時の反戦運動や公民権運動の行き詰まり、相次ぐミュージシャンの死により、人々は諦めと失望を感じ始めます。

そんな中表れてきたのが、シンガー・ソングライターと呼ばれる人たちです。

彼ら/彼女らは、普段着のようなラフな格好でギターを手にし、個人的な問題を深く見つめ、掘り下げ、やがて普遍へとつながるような曲を書きました。

それでは、西海岸のシンガー・ソングライター作品を聴いてまいりましょう。

まずはこの2人から。

東海岸出身ながら、西海岸に移住してきたアーティストたちが、シンガー・ソングライター時代の幕開けを飾りました。

ジェイムス・テイラー/スウィート・ベイビー・ジェイムス

もとはニューヨークで活動していたジェイムス・テイラー。

68年にアップル・レコードと契約して英国でデビューしましたがうまくいかず、プロデューサーのピーター・アッシャーとともにロサンゼルスを新たな拠点として再デビューを図ります。

70年にリリースした『スウィート・ベイビー・ジェイムス and マッド・スライド・スリム』では「Fire and Rain」がじわじわとヒットし、シンガー・ソングライター時代の幕開けとなりました。

続く2作目、71年の『マッド・スライド・スリム』では、「呼んでくれたらすぐに行くよ、君には友達がいるんだ」と「You’ve Got a Friend」で歌っています。

人々が集まって共同体をつくり社会を変えるという60年代の理想から、もっと身近な「友達」の存在を提示し、遠くを見つめるのでなく身の回りを見つめ、「個」を深めていくという姿勢が感じられます。

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キャロル・キング/つづれおり

ジェイムス・テイラーとの長年の「友達」、キャロル・キング。「You’ve Got a Friend」を書いたのは彼女です。

10代からプロの作曲家としてジェリー・ゴフィンとともに数多くのヒット曲を書き、ビートルズにも影響を与えていました。

ビートルズ旋風やボブ・ディランの活躍などにより、職業作曲家が作った歌をアイドルが歌う時代が終わりを迎え、キャロル・キングもシンガー・ソングライターへと変貌していきます。

公私ともにパートナーだったジェリー・ゴフィンとも別れ、68年にはカリフォルニアへと移住しました。

68年にバンド、シティとして『夢語り』、70年にはソロ第一作『ライター』、そして71年の『つづれおり』で、着実にシンガー・ソングライターとして階段を上っていきました。

公私ともに普通の人の2倍は生きているような素晴らしいキャリアを持っているキャロルですが、今作でイメージ出来るのは、ニューヨークのアパートメントで一人曲を書く姿。

キャロルの少しこもった歌声は温かくて親しみがあって、誰か親しくて特別な人が歌っているみたいです。

キャロルの歌をしっかり生かすことを第一にした、ギター、ベース、ドラムの厚みある演奏と一体となって、胸に迫ってきます。

JONI MITCHELL / LADIES OF THE CANYON

カナダ出身のジョニ・ミッチェルは、60年代後半にニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジに進出し、まずはソングライターとして知られるようになります。

トム・ラッシュやバフィ・セント・マリー、ジュディ・コリンズなどがジョニの楽曲を取り上げ、じわじわと名を上げていきました。

やがてバーズを脱退したばかりのデヴィッド・クロスビーがジョニの演奏に衝撃を受けてプロデュースを申込み、ジョニをロサンゼルスのローレル・キャニオンへと連れていきます。

70年の『レディズ・オブ・ザ・キャニオン』はローレル・キャニオンでの生活を描いた「Morning Morgantown」「Ladies Of The Canyon」などを収録した初期の傑作。

変則チューニングのギターと格調高いピアノによるアーティスティックな響き、高音が美しいヴォーカルの透明感といったジョニの特徴はそのままで、穏やかな日常の瞬間を高精細のカメラで写し取ったような、聴き手の時間を止める透き通った表現が印象的な作品となっています。

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ニール・ヤング/アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ

カナダはトロント生まれのニール・ヤング。

地元でのバンド結成やニューヨーク行きを経てロサンゼルスへと向かい、66年にスティーヴン・スティルス等とともにバッファロー・スプリングフィールドを結成。

ロサンゼルスで話題のグループとなりますが、メンバー間の対立や問題が多く68年に解散してしまいます。

CS&Nを結成したスティーヴン・スティルスに、ライヴでの音の強化のためもあって参加を要請され、CSN&Y誕生となります。

スーパー・グループとなったCSN&Yは70年に『デジャ・ヴ』という傑作をリリースし世界的な人気を獲得しますが、それぞれ才能あるメンバーだった4人はまとまりを欠き、空中分解となります。

すでにソロとして作品を出していたニール・ヤングは、CSN&Y『デジャ・ヴ』と同年の70年に3rd作『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』をリリース。

憂いに溢れたメロディが胸に迫るアコースティック曲、火を吹くギターバトルに痺れるエレクトリック曲を同時に収録し、混沌としながらも美しくまとまっています。

「1970年代、母なる自然が逃げ出して行くのを見てごらん」と歌う表題曲をはじめとして、理想が崩れ、燃え付きてしまった70年代当初の虚無感を表した楽曲、自分と折り合いをつけることの難しさ、孤独、疎外感などを歌っており、70年代から遠く離れた今でもリスナーの心に響いてきます。

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ランディー・ニューマン / セイル・アウェイ

ロサンゼルスで生まれ、映画音楽を手掛ける叔父・伯母の影響を受けて育ったランディ・ニューマン。

大学時代にすでにソングライターとしてデビューし、68年からはデビュー作『ランディ・ニューマン』をリリースしますが、華麗なオーケストレーションと毒気を持ったやや難解な歌詞が当時は受け入れられず、ヒットしませんでした。

72年の『セイル・アウェイ』の冒頭を飾るタイトル曲を再生すると、ストリングスやホーンがゆったりと響き、優しいピアノとともに美しく親しみやすい旋律を奏でていきます。しかし、そのしゃがれ声で歌われるのは辛辣なアメリカ批判。

「アメリカではみんな幸せになれる」と黒人を船に乗せる奴隷貿易の様子が描かれているのです。

他にも、「お金を恵んでやっているけれど、感謝していない。ならば驚かしてやろう。大きなもの(爆弾)を落としてやろう」とアメリカ政治を皮肉った「Political Science」、神の立場になり、「君達がどれほど盲目かを示すために、街を焼くのだよ/だから私は人類が好きなのだ」と宗教を冒とくするかのような「God’s Song (That’s Why I Love Mankind)」など、醜い歴史や政治の上に立って安穏と暮らすアメリカ市民の目を覚ますような過激な歌詞を、甘く美しいサウンドにのせて綴っています。

聴いた人がふと我に返って、自分の行状を振り返ってしまう、そんな楽曲を多く書いています。

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