2016年8月5日 | カテゴリー:スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。
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こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」は、一般的にはあまり注目を集めることのない作品ながら「実は良い作品なんだけどなぁ、もっと聴かれてほしいなぁ。」とスタッフ佐藤が日頃から感じている、愛して止まない作品たちを取り上げてご紹介していこうというコーナー。
今回取り上げるのは、ELPの78年作『ラヴ・ビーチ』です。
本連載、ここのところ非プログレの作品を多く取り上げていた気がしますので、今回はプログレより夏を感じさせる一枚を取り上げたいと思います。はい、これしかないという感じですが『ラヴ・ビーチ』ですね。
ご存知ELPが78年に発表した当時としては最終作となった作品ですが、知らない人からすればこれがプログレに分類されるアルバムのタイトル&ジャケットとは思わないはず。ジャケはビーチにナンパしに来た3人組と言われたって何の違和感もありません。あ、ラヴ・ビーチってそういう意味とも取れますね!
何でも、レコード会社の意向で名付けられたものということでメンバーはこのアルバム名に否定的だったそうですが、ジャケットを見るにまんざらでもない様子も見受けられます。これだけこんがりと日焼けしていたら説得力もないというものです。
さて、スタッフ佐藤にとってのELPについては本連載の第3回で触れていますが、いわゆる5大バンドの中では最も「親しみやすいプログレ」として他の4バンドとは一線を画するスタンスを築いた存在と言っていいと思います。そこにきて本作、色んな意味でやや親しみやすくなりすぎてリスナーも反応に困ってしまったという感はどうあっても否めないところです。
キースの休養先だったフロリダ沖南東に位置するカリブの島国バハマにてレコーディングが行われた本作、中米の陽気な土地柄が影響してかバカンスムードが抜けていなかったか、前半はこれELP?と思わずにはいられない、やけに丸みのあるふわふわしたサウンドのナンバーが並びます。「Knife Edge」とかやっていた初期の尖り具合からすれば、ちょっと考えられないくらいの力の抜けよう。
このジャケを見てこのA面が流れてきた時点で、タルカスや頭脳改革のころのELPではないんだなぁ、と脱力してしまうのも無理はないのですが、しかし、従来のELP像を一旦奥へ引っ込めた上でよくよく聴いてみると、内容自体は決して悪いものではないと思うんですよね。むしろA面のポップ・ソング集と後半に据えられた大作組曲の対比も鮮やかなアルバムとしての構成も、意外にありなんじゃないかと思わせられます。まあ間違いなく考え過ぎと言われそうですが。でも本当、全然嫌いじゃないんですよ、コレ。
これまでのELPは軽快な曲の中でも例えれば鋭いナイフを懐に隠し持っているような危なさを秘めていた気がしますが、このタイトル曲はそういった要素が全く感じられないポワンとしたポップ・ソング。なんせ「Love Beach」ですしね。でも柔らかなシンセが彩るほんのりファンタジックなサウンドが単純に気持ち良かったりします。意外と好きです。
ちょっとAOR調も見え隠れする劇的なバラード・ナンバー。まったくと言っていいほど従来のELPらしさはありませんが、こちらも単純にいい曲なものだから反応に困ります。ウェットンが歌ったらエイジアの曲と言われても納得しちゃいそう。
B面を丸ごと使ったこの組曲で、ようやくELPらしさが復活。レイクが持ち前の伸びやかな歌声を響かせると、エマーソンも水を得た魚のようにスケール感のあるキーボードプレイで応じます。過去作ほどの派手に盛り上がる展開はありませんが、終盤、行進曲調の勇ましいリズムにシンセが幾重にも重なっていくドラマティックな展開は、これぞELPと思わず拳を握る素晴らしさ。名曲だと思います。
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