2014年6月4日 | カテゴリー:プログレ温故知新,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ温故知新
「歌」を聴かせるプログレと言えばやはりイタリアン・プログレ。熱い叙情に満ちたヴォーカルは聴き手の心をわしづかみにする魅力を放っています。そこで定盤からはBANCO DEL MUTUO SOCCORSOの1st、そして新鋭からはIL TEMPIO DELLE CLESSIDREの2nd『ALIENATURA』をご紹介いたします。
イタリアン・ロックと聞いて皆さんはどのようなものを想像されるでしょうか。バロックな荘厳さ、ドラマティックなメロディ、情熱に満ちたカンツォーネ・ヴォーカル・・・。
もしこれらをすべて兼ね備えたグループがいるとしたら、それはもうイタリアン・ロックの代名詞と言ってもいいですよね。それがまさにBANCOなんです。
BANCOはVittorioとGianniのNocenzi兄弟を中心に結成され、72年にデビューし3枚のアルバムを発表。その後P.F.M.に続いてELP主催のマンティコア・レーベルより世界進出を果たしました。80~90年代にはよりポップな作風を取り入れた力作をリリースしていますが、日本においては初期3枚の人気が高く、P.F.M.と共にイタリアン・ロックを代表するグループとして知られています。
ご紹介する1stは、兄弟によるオルガンとピアノのツイン・キーボードを中心とした重厚感とスピード感を併せ持つバロッキーなアンサンブルに、ヴォーカリストFrancesco Di Giacomoによるオペラ風の伸びやかな美声が乗る荘厳かつドラマティックなプログレ。では彼らのサウンドの本質がよく現れたこの曲をお聴きください。
理性と凶暴性が拮抗する火花の散るようにスリリングなアンサンブルをバックに、Giacomoが朗々たる歌声を聴かせる前半パートと、ピアノに導かれて現れる情熱的かつドラマティックな歌唱が冴え渡る後半パートとの対比が見事な一曲です。これぞイタリア。何度聴いても胸が熱くなる素晴らしい曲ですね。
他にもこれぞプログレシッヴ・ロック!と言うべき変幻自在な演奏と巧みな構築性が光る2nd『DARWIN!』、前衛色を取り入れてよりアーティスティックなアプローチで聴かせる3rd『IO SONO NATO LIBERO』と初期は作品ごとに異なる魅力を放つ傑作が揃っていますので、おすすめです。
さて、Giacomo氏を始め70年代イタリアン・ロックには個性的な歌唱を聴かせるヴォーカリストが多く存在し、それが他国のシーンにはない特別な魅力となっていたのは間違いありませんが、それは30年余が経過した現在のイタリアでもやはり同様だと言えます。そんな中でも一際素晴らしい歌声を披露しているのが、06年結成のへヴィ・シンフォ・グループIL TEMPIO DELLE CLESSIDREです。
このバンドは、2010年にリリースした1stアルバムが当時のプログレとしては大きな話題を呼び、人気バンドとして認知されるようになりました。それはバンドによる往年のイタリアン・へヴィ・シンフォを踏襲した演奏の素晴らしさもさることながら、ヴォーカルを往年の名バンドMUSEO ROSENBACHのヴォーカリストStefano “LUPO” Galifiが務めていたことによります。「LUPO=狼」の名の通り、朗々とした中に時として獣が牙を向くような凶暴さを見せる独特のヴォーカル・スタイルは、へヴィ・シンフォというサウンドにこれ以上ないというほどマッチするんですよね。どこか背徳感を漂わせるその声質は、作品そのもののカラーにさえ強い影響を与えています。
そんな素晴らしい歌唱を聴かせたGalifiが脱退し、前作より3年ぶりにリリースされた第2作がご紹介する『ALIENATURA』になります。
はたしてどんなサウンドを聴かせているのか、まずは本作からのナンバーをお聴きください。
ヴォーカルには、Galifiの声質・唱法にかなり近い朗々とした響きを持ちつつも、低いトーンでの表現力が豊かな実力派を起用。演奏も技術向上によってよりダイナミズムを増しており、へヴィな中にもドラマティックで深遠な描写を織り交ぜた独自の音世界を見事現出しています。これは現代のへヴィシンフォ勢はもちろんのこと、往年に活躍したへヴィシンフォ・バンドたちにも負けない極めて高いクオリティを放つ傑作!
イタリアン・ロックの歌い手達の素晴らしい歌唱を堪能していただけましたでしょうか。情熱と叙情に溢れるヴォーカルの宝庫イタリアを是非これからも探求してみてください。きっとあなたの心の琴線をかき鳴らす歌声に出会えることと思います。
PFMと並びイタリアのプログレッシヴ・ロックを代表するバンコ。ヴィットリオ・ノチェンツィを中心に今なお活動する彼らだが、その哀愁を帯びた声の不世出の名ヴォーカリスト、故フランチェスコ・ディ・ジャコモと、彼らの地中海性を担っていた名ギタリスト、故ロドルフォ・アルテーゼを加えた、今では再現不能の黄金期編成による99年のライヴ盤。新旧代表曲を歌い込むジャコモと壮大なキーボードが並び立つ、真のバンコの姿を伝える名演!(レーベル紹介文より)
ご存じ、PFMと共にイタリアン・ロックを代表する名バンドによる「シベリア鉄道」を題材にした2019年作!スタジオ・アルバムとしては94年作『IL 13』以来実に25年ぶりとなります。唯一のオリジナル・メンバーであるキーボード名手Vittorio Nocenzi、近年のMetamorfosiにも在籍するドラマーFabio Moresco、DORACORで活動するギタリストNicola Di Gia、そして14年に急逝したヴォーカリストFrancesco Di Giacomo氏の後任という大役を務めるTony D’Alessioら6人編成で制作された本作、ずばり傑作!凛と格調高いタッチのピアノと一音一音に存在感のこもったオルガン、キレのあるプレイでスピード感をもたらすギター、そして熱く歌いこむドラマチックな表情と優雅で繊細な表情とを自在に行き来するヴォーカル。さすがの洗練されたモダン・イタリアン・ロックを聴かせてくれます。でもそれで終わらないのが素晴らしいところで、最初期バンコに漂っていた少し前衛的でミステリアスな雰囲気が全編をうっすら覆っている感じが堪りません。その質感をもたらしているのは勿論キーボード。現代的な重量感あるロック・サウンドを繰り出す演奏陣の中で、クラシックに根差した息をのむようにアーティスティックな音運びが冴えわたっており、衰えは一切感じません。ヴォーカルは、ジャコモ氏とは全く異なるタイプながら、イタリアン・ロック然とした堂々たる歌唱を聴かせていて感動的。FINISTERREやUNREAL CITYといった新鋭の音に接近しながらも、バンコらしい芸術性の高さは遺憾なく発揮された一枚となっています。
ブックレット一体型デジパック仕様、ボーナス・トラック2曲
盤質:傷あり
状態:良好
軽微な圧痕あり
直輸入盤(解説帯付仕様)、ボーナス・トラック5曲、価格記載なし
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯に軽微な圧痕・軽微な折れあり
PFMと共にイタリアン・ロックを象徴する名バンドが放った22年作!ピアノとアコギが寂しげに鳴らされ、哀愁と艶やかさを兼ね備えた素晴らしいヴォーカルが歌い上げる叙情的1曲目から一転、重厚なリズムとギター、ピアノ、オルガンがダイナミックに絡み合ってアーティスティックに突き進んでいく2曲目へと至る、このスリリングさと来たら!誰もが2nd『Darwin!』や3rd『Io Sono Nato Libero』を思い浮かべるであろうテンションのパフォーマンスに感動がこみ上げます。FINISTERREやUNREAL CITY、LA MASCHERA DI CERAなどの新鋭に接近したモダンさを見せつつも、往年のBANCOが持っていたロマンほとばしるようなイタリア臭は健在なのが最高に嬉しいです。前19年作もかなりの力作でしたが、初期BANCOを彷彿させるという点では、今作はジャコモ時代のBANCOファンにも是非オススメしたい傑作!
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えP.F.M.に続いて世界デビューを果たしたバンドの72年デビュー作。その内容はオルガンやピアノを中心としたクラシカル且つダイナミックなロック・アンサンブルと、表情豊かなカンツォーネが雑妙に交じり合ったプログレッシブ・ロックであり、イタリア然としたエネルギッシュなサウンドが素晴らしい1枚。デビュー作らしいハードさと勢いを持った傑作です。
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えP.F.M.に続いて世界デビューを果たしたバンドの72年2nd。前作のハードな音楽性とテンションはさらに高められ、前作以上に複雑に構築された楽曲がカオティックに進行していきます。核となるピアノ、オルガンといったキーボード群に加えてモーグ・シンセサイザーが大幅に存在感を示すようになり、イタリアのほの暗い陰影をドラマティックに演出。セクションによってはアヴァンギャルドとすら言えるほどの攻撃性が凄まじい名盤です。
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えP.F.M.に続いて世界デビューを果たしたバンドの73年3rd。その内容は、前作で爆発的なテンションを聴かせた攻撃性、アヴァンギャルドなサウンドをオリジナリティーに落とし込み、クラシカルな気品を持ったシンフォニック・ロックにまとめた名盤です。勢いで押し続けるような作風からバランスの取れたトータルなサウンドへの移行が見受けられ全体的にスッキリした印象を持ちますが、それによってへヴィーなセクションと静寂に包まれるセクションの対比が明確に描かれています。
紙ジャケット仕様、K2 24bitデジタル・リマスター、透明プラ台紙付き仕様、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯に軽微な折れあり
75年にMANTICOREレーベルよりリリースされた世界デビュー作。1stと3rd『自由への扉』からの楽曲に新曲1曲という構成。1st収録の代表曲「R.I.P」の英語バージョン「Outside」や、3rd収録の胸を打つ名曲「Non Mi Rompete(私を裏切るな)」の英語バージョン「Leave Me Alone」など収録。
76年作の6thアルバム『COME IN UN’ULTIMA CENA(最後の晩餐)』の英語バージョン。MANTICOREレーベルからの世界リリースの第二弾。これまでの彼らのダイナミックなサウンドはそのままに、より明快でコンパクトな作風を採用した名盤となっており、大曲の存在こそ無いものの彼ららしいスケールの大きなシンフォニック・ロックは健在。クラシック楽器の使用も巧みであり、タイトにまとめられた中に高密度でアイデアを閉じ込めた、非常に聴きやすい1枚。
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えPREMIATA FORNERIA MARCONIに続いて世界デビューを果たしたバンドの79年作。コンパクトで分かりやすい作風を望む方向に向かっていた時代の影響を受けた本作は、これまでの作品よりもフュージョンなどを含むソフトなロック・テイストを押し出しています。とは言っても単なる商業路線に走った作品ではなく、Francesco Di Giacomoのボーカルに比重を置いたことによるイタリアの叙情性の増幅や、バルカン・メロディーを散りばめた作風など、プログレッシブ・ロックとの折り合いが素晴らしい好盤です。
ご存じPFMと並びイタリアン・プログレを象徴する人気バンド、81年に放送された同名TVドラマシリーズのために制作されたサウンドトラック作品。全曲インストゥルメンタルでFrancesco Di Giacomoのヴォーカルは不在なのですが、持ち前の演奏力を発揮したスリリングなジャズ・ファンクからクラウト・ロック顔負けの深遠なシンセ・ミュージックまでを披露。合間にはエレピによる従来のBANCOらしいクラシカルなタッチのナンバーも登場しますが、総じてBANCOというバンドの知られざる一面が垣間見られる内容となっています。
イタリアン・ロックを代表するグループ、BANCOの97年作。全編を牽引する情熱ほとばしるジャコモのヴォーカル、そしてヘヴィで骨太なギター、テクニカルなピアノ、前のめりでアグレッシヴなリズム隊が作り出すドラマティックなアンサンブルが展開されます。
イタリアの新鋭ヘヴィ・シンフォ・グループ。ムゼオのヴォーカル在籍で話題になった2010年デビュー作に続く、2013年作2nd。ヴォーカルは交代となりましたが、前任のガリフィに近い声質&声量を持つヴォーカルで文句なし!そして、何といっても往年のイタリアン・ロックを受け継ぐアンサンブル。鋭角かつ厚いトーンのギターがここぞの変拍子で鮮烈なフレーズを聴かせ、時にゆったりとメロディアスなフレーズを奏で、そのバックでは、キーボードが荘厳に鳴り響き、メロトロンが溢れる。前面には出てこないものの、流麗なフレーズを奏でるピアノや艶やかなヴァイオリンがイタリアならではのクラシカルな気品をもたらしています。時に陽光が射すような、ファンタスティックなパートも織り交ぜられ印象的。ムゼオ・ローゼンバッハはもちろん、レ・オルメ『フェローナとソローナの伝説』に通じる荘厳なオルガン・プログレの要素も受け継いだドラマティックなサウンドは、往年のイタリアン・ロックのファンは、歓喜すること間違いなし。これは傑作です。
世界のニッチなロックにフォーカスした膨大なディスク・レビュー、マニアック過ぎる特集、濃密なコラム。質・量ともに過去最大の読み応えとなった「不思議音楽館 ORANGE POWER」第6弾!!
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