2014年3月19日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: ジャズ・ロック
今日の「MEET THE SONGS」は、NATIONAL HEALTHの77年デビュー作でカンタベリー・ミュージックの名盤『NATIONAL HEALTH』をピックアップいたしましょう。
NATIONAL HEALTHは、EGG〜HATFIELD & THE NORTHのメンバーとGILGAMESHのメンバーとが合体したカンタベリーのスーパー・グループとして75年に結成されました。
結成時のメンバーは、
Dave StewartとAlan Gowenは、ともにHATFIELD & THE NORTHのキーボード・オーディションに参加して以来、意識しあう仲となり、合格したDave Stewart擁するHATFIELD & THE NORTHと不合格となったAlan Gowenが結成したGILGAMESHは、73年にダブル・カルテットとして共演します。このコンセプトが布石となり、実を結んだのがNATIONAL HEALTHです。
当初は、Mont CampbellとDave Stewartという元EGG組の2人がソングライティングでイニシアティヴを握る形で活動していましたが、パンク前夜の逆風でレコード会社からは冷たく扱われ、レコード制作どころか存続もままならない状態となり、活動は滞ります。
75年末にPhil Lee、76年にMont Campbellが脱退。下記2人が新たに正式にメンバーに加わります。
このラインナップでの正式アルバムが無かったのが残念ですが、『MISSING PIECES』という発掘音源集がリリースされていて、Mont Campbellがリードしていた初期やBill Bruford在籍期の音源を聴くことができます。
作曲は、Mont Campbell。Bill Bruford在籍時の録音。
77年、残念ながらBill BrufordはU.K.結成にともない脱退。代わりに、元HATFIELD & THE NORTHのPip Pyleが加入します。
こうして結成から2年が過ぎ、ようやく録音がスタートしたのが1st『NATIONAL HEALTH』です。
録音前に、Alan Gowen、Amanda ParsonsのGILGAMESH組は脱退しましたが、録音にはゲストとして参加。Alan Gowenの楽曲もあり、演奏面でも活躍するなど、正式メンバーと変わらない存在感を発揮しています。
そのサウンドは、まさにHATFIELD & THE NORTH + GILGAMESH。
HATFIELD & THE NORTHの持つロック的ダイナミズムと英国的な叙情美、そこにGILGAMESHの持つジャジーなイマジネーションや緻密さや流麗さが合わさったサウンドは、まさにカンタベリー・オールスター。
4曲の大曲で構成されていて、Dave Stewart作曲が2曲、Alan Gowen作曲が1曲、2人の共作が1曲となっています。
作曲はDave Stewart。
管楽器のような明朗なトーンのキーボード(Alan Gowenでしょう!)、荒々しくうねるファズ・オルガン(Dave Stewartにきまり!)との見事な対比!イントロから手に汗握る展開が続きます。
冒頭からまずはAlan Gowenがリードをとり、リズム・チェンジしてロック的ダイナミズムが増すと、Dave Stewartがフリーキーなファズ・オルガンを炸裂。そのバックでは、Alan Gowenの艶やかなピアノがバッキングを奏でます。
Pip Pyleの力強くもきめ細やかなドラムもまた特筆。
Phil Millerによるいかにも彼らしい抑制されたトーンの流麗なギターのパートあり、Amanda Parsonsのヴォーカルがたゆたう幻想的なパートあり、その合間ではシャープなキメがクールに決まったり、暗黒ヘヴィにうねったり、溢れんばかりのイマジネーションでサウンドが描かれていきます。
英ロック屈指のキーボード奏者&コンポーザーの2人によるマジカルな共演がめくるめくカンタベリー屈指と言える名曲!
作曲は、Alan Gowen。
イントロからの緻密でいて、宝石箱のようにキラキラした精緻かつカラフルなアンサンブルはいかにもAlan Gowen的。
ゲスト参加した元CARAVANのJimmy Hastingsによる美しくたゆたうフルートも幻想的なアンサンブルに柔らかな色を添えていて印象的です。
4分を過ぎると一転してシャープなジャズ・ロック・パートへとスイッチ。
奔放に奏でられるきらびやかなフレーズ、ここぞで挟まれるシャープかつ煌めくキメのパートともに、Alan Gowenの真骨頂と言えるでしょう。
艶やかなトーンのピアノのリードのあと、ファズ・オルガンがかぶさってきて、ドラムが手数多く走り出すとともに、ファズ・オルガンとエレキギターが切れ味鋭いリードを応酬。ここでも2人のキーボード奏者による音色の対比が光りまくっています。
アマンダのスキャットを挟んで、8分40秒頃、超絶的にマジカルでカッコ良過ぎる変拍子のキメが登場。音のツブ立ちと躍動感がもう半端ではありません。
GILGAMESHの延長線上でイマジネーションがさらに爆発したAlan Gowen屈指の名曲と言えるでしょう。
「HATFIELD & THE NORTHとGILGAMESHの合体プロジェクト」というカンタベリーファンにとってはワクワク感いっぱいの名に恥じないスリリングかつ色彩豊かな名演ぞろい。
テクニカルなプログレやフュージョンが下火となり、パンク・ムーヴメントが主流となった70年代終わりにおいて、カンタベリーの精鋭たちによる放たれたカンタベリー・ミュージックの総決算といえる大傑作。
カンタベリー・シーンの重要グループであるHATFIELD AND THE NORTHとGILGAMESHの中心メンバーが結成したジャズ・ロックバンドの78年作。Dave Stewart、Phil Miller、Neil Murray、Pip Pyleというキャリアのあるメンバーに加えてGILGAMESHのAlan Gowen、CARAVANやSOFT MACHINEとつながるJimmy Hastings、そしてGILGAMESHにも参加しているAmanda Parsonsなどゲスト人も強力。その内容はDave Stewartの存在感を感じさせる、HATFIELD AND THE NORTHの音楽性をよりジャジーにしたような作風であり、4曲の大作から成るカンタベリー・ジャズ・ロックの集大成といえる圧巻の傑作です。
Alan GowenとNeil Murrayが脱退し、元HENRY COWの奇才John Greaves(b)が参加した78年作2nd。Dave Stewart、Phil Miller、Pip Pyleとの4人編成になってまとまりが増したせいか、アンサンブルの強度はグッと増した印象。めまぐるしく切り替わるダイナミックな展開の中、一糸乱れぬ正確さで一気に駆け抜け、聴き手を置き去りにします。呆気にとられるほどのスピードとエネルギー。圧倒的なテンション!ジャズ・ロックのファンもアヴァン・ロックのファンも、またまたクリムゾンのファンも、知的でエネルギッシュなサウンドを好む方は大必聴の傑作。
ビル・ブラッフォード在籍時の貴重な音源など、驚きの音源が沢山つまった好編集盤。
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