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MEET THE SONGS 第89回 ギルガメッシュ『ギルガメッシュ』

今日の「MEET THE SONGS」は、ギルガメッシュの75年デビュー作でカンタベリー・ミュージックの名盤『ギルガメッシュ』をピックアップいたしましょう。

バンドの中心人物は、Key奏者のAlan Gowen。ジャズ畑出身で、ASSAGAIに参加した後は、Jamie Muir、Allan HoldsworthらとSUNSHIPを結成。Jamieのクリムゾン参加にともない解散した後、HATFIELD & THE NORTHのオーディションを受けます。同じくオーディションを受けていた元EGGのDave Stewartが合格し、Gowenは残念ながら不合格。72年に結成したバンドがGILGAMESHです。

なお、このオーディションを機にKey奏者&コンポーザーとして2人は意識しあう仲となり、73年には、HATFIELDとGILGAMESHで共演。ダブル・カルテットとしてGowen作曲の40分に及ぶ組曲を演奏します。このコンセプトが、後に2人が結成したNATIONAL HEALTHの布石となります。

何度かのメンバーチェンジを経て、ラインナップが固まり、結成から3年が経った75年にレコーディングしたデビュー作が『GILGAMESH』です。共同プロデューサーとしてDave Stewartも参加しています。

ラインナップは、

Alan Gowen(Key)
Phil Lee(G)
Jeff Clyne(B) :元NUCLEUSのベーシストで、後にアイソトープに参加
Mike Travis(Dr):HENRY LOWTHER BANDなど英ジャズ・バンドで活躍
+Amanda Parsons(Vo) ゲスト

サウンドの一番の魅力は、Gowenによる多彩でイマジネーション豊かな鍵盤楽器。エレピ、ムーグ・シンセ、アコースティック・ピアノの他、クラヴィネットやメロトロンも用い、英国らしいパストラルな叙情を緻密に繊細に描いています。Phil Leeのギターも素晴らしく、気品あるアコギから、抑制されたトーンとフルピッキングが生み出す流麗なフレーズが光るエレキまで表情豊か。派手なキメや丁々発止のインタープレイはありませんが、艶やかな音がたゆたうように、折り重なり合うように、きめ細やかに奏でられるアンサンブルはいかにもカンタベリーといえる魅力に溢れています。

組曲形式のソングライティングがGowenの真骨頂といえるオープニングの3部構成組曲をピックアップいたしましょう。組曲形式の作曲は、Dave Stewartにも大きな影響を与えたと言われています。

One End More/Phil’s Little Dance/World’s Of Zin

イントロから、ムーグ・シンセのリードと、そのバックに奏でられるメロトロン!アコースティック・ピアノとギターのユニゾンによる変拍子の緻密なキメをはさみ(カッコいい!)、ベースがランニングしてピアノとギターのユニゾンでまばゆいテーマが奏でられます。跳ね回るフレーズがユーモラスなクラヴィネットも登場!ものすごくきめ細やかで色鮮やかで、完璧なオープニングと言えるでしょう。Gowenのソングライティングのセンスが光りまくっていますね。

4分30秒あたりで、場面が切り替わり、淡くほの暗い叙情が揺らぐアンサンブルへと展開。繊細なタッチのメロウなギターとAmanda Parsonsのコーラスが入ると、HATFIELDの1stに通じる音世界が現れます。

HATFIELDだときっとRichard Sinclairの歌が入り、ひときわ英国叙情が増すところだと思いますが、GILGAMESHの場合は、Gowenの艶やかでしとやかなピアノが水面のきらめきのようにキラキラと光を反射させながら流れ、透明感あるサウンドを描きます。

クライマックスに向かい、どんどんとエモーションを増幅していき、「恍惚」と言えるほどにメロディをとめどなく溢れだすギターがまた感動的。

緻密さとロマンティシズムとが絶妙にバランスしたGILGAMESHの代表曲であり、カンタベリー屈指の名曲です。

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