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【リスナー寄稿記事】「やはりロックで泣け!」第六回 PRETTY THINGSの「Loneliest Person」

寄稿:ひろきさんさん

 2017年まで連載されていた舩曳将仁さんによるコラム、「そしてロックで泣け」は丁寧に詳しく調べられていて、個人的に大いに興味を喚起されました。今回、彼の精神を受け継いで「やはりロックで泣け!」というタイトルで、様々な「泣ける音楽」を紹介したいと思います。


 今回は元Rolling StonesのbassistであったDick Taylorが結成したPretty Thingsを取り上げたいと思います。60年代の初期はStones, Yardbird等に代表されるような、いわばblues rockが主流で、彼らもそのような類の音楽を追究していました。最初の3枚までのアルバムはThe Pretty Thingsと名乗っていました。しかし彼らの3枚目になる”Emotions”では、前2作とはかなり異なった音楽性を展開しています。しかしながら過多なストリングを使ったアレンジをバンドメンバーがどうも気に入らなかったようで一般の評価もあまり高くありません。しかし彼らの音楽性が別の方向に向かうきっかけとなったことは疑いの余地がありません。個人的にはpsychedelic pop的要素が多分に詰まっている点でStonesの”Between the Buttons”との類似性を強く感じていますし、優れた楽曲も多く、決して駄作ではありません。とりわけ”Death of Socialist”や”My Time”は彼ら自身の作品で、メロディ・アレンジ等全てがきわめて刺激的でchallengingな仕上げになっています。

 1969年になってロック史上で燦然と輝いている名作、”S.F. Sorrow”を発表するわけです。ただこのアルバムは諸事情で発売が約1年半ほど遅れてしまったようです。このようなことからThe Whoの”Tommy”が最初のRock Opera albumと呼ばれているのはPretty Things fanとしては受け入れがたいことです。この作品の発売時にほとんどの人が気づかなかったと思われることは、彼らはThe Pretty ThingではなくPretty Thingsになっていたことです。私的に、theを取り除くことで、いい意味でワイルドな印象を与えると理解しています。S. F. Sorrowとはこのアルバムに登場する主人公の名前です。彼が生まれてから亡くなるまで、周辺で起きる様々な事件を楽曲にのせて表現しているのがこの作品です。印象的なリフをもつ”S.F. Sorrow Is Born”から始まり、シンプルなマイナーフォーク的な小曲、”Loneliest Person”で終わりを迎えます。全ての楽曲がしっかりと構成されており有機的な流れは完璧でまさにmasterpieceと断言できる作品です。

 私は60年代からリアルタイムでrock musicを体験しているのですが、当時彼らのことは全く知りませんでした。最近になって確認しますと、どうやらこのalbumは日本盤として発売されていたようです。その帯を見ますと「ヤングパワーのサウンド!ニュー・ロック・ベストシリーズ ~ ニュー・ロックの追求 プリティ・シングス」となっています。またこのアルバムが日本盤として初めて発売されたことも判明しました。一つ不思議なことを発見しました。日本盤のA1は”S.F. Sorrow Is Born”ではなく、本来A4である”Private Sorrow”になっていることです。さらにジャケットデザインも日本独自のものでメンバー全員をイラスト風に描いています。いわばまさにレアアイテムと言えるかもしれません。

 私がこのアルバムを入手したのは1975年頃だと記憶しています。当時、神戸にあったレコード店で偶然見つけ即購入しました。それは、”S. F. Sorrow” と”Parachute”のダブルアルバム形式で、デザインも暗く特徴的でした。想像通り、このデザイン担当はHipgnosisでした。 その頃、私はSwan Song Labelに彼らが移籍した後の音楽性に夢中になっていたことがきっかけで購入したのですが、何か違和感を感じたのを覚えています。私の友人でsuper Pretty Things fanが高知県にいます。彼はSwan Song時代の2枚のアルバムを異常なほどに高評価しています。これらは様式美を追求した典型的なBritish hard rock albumsに仕上がっており私も全く同意見ですが、私はpsychedelic 時代の音楽性も同レベルで気に入っています。

 少し話がそれましたが今回取り上げる“Loneliest Person”は先に書きましたようにレコードのB7に収められており全員の共作となっています。もの悲しいacoustic guitarのEmのアルペジオから始まりPhil Mayの歌が入ってきます。このEm / C / G / Dも循環コードパターンはよくある手法ですが、Phil Mayの憂いにあふれたボーカルスタイルがぴったりはまっています。次の歌詞は主旋律的な部分で、最後にも繰り返されます。

 主人公が完全に現世から離脱してしまうかの内容で、重苦しいまま、この物語は終焉を迎えます。下線部分はPhil Mayのコックニーなまりがよくでている箇所で、nameはナイム、meはメーのように聞こえてきます。個人的にはこの部分が気に入っていて自分でもこの曲をカバーしています。

Loneliest Person

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 彼らがThe Pretty Thingsとして2010年1月に初来日した時もこの曲を演奏してくれました。少しその公演内容について触れます。私は大阪公演を運よく体験することができました。Dick TaylorとPhil Mayの存在感は圧倒的ですが、同行していたguitarist、Frank Hollandは元England、”Garden Shed”のguitaristでもあり、彼の堅実なプレイも聞きごたえありました。Bo Didleyの”Road Runner”から始まり、”Don’t Bring me Down”, “The Beat Goes On”と立て続けに60年代中期のThe Pretty Thingsであったが、4曲目の”Havana Bound”で突然Pretty Thingsに変貌し、意表をつかれました。この曲はDick Taylorの脱退後、彼らがWarner Brothersと契約して初めてのアルバム、”Freeway Madness”に収録されているご機嫌な乗りのよいRock&’Rollナンバーです。2000年以降のライブではめったに取り上げないので個人的には感動しました。この曲に続いて”S. F. Sorrow”からまとめて数曲演奏しました。その最後に”The Loneliest Person”を披露してくれました。この時はDick TayorとPhil Mayだけになり、なんとPhil Mayだけが観客席に歌いながらやって来ました!もちろん私は最前列でしたので、彼と握手はもちろん、男同士でハグまでやってしまいました!本当に熱い思い出ができました。このあとは”I Can’t Be Satisfied”や”Come On In My Kitchen”などのスタンダードなblues numberをはさみ、最終曲は”S.F. Sorrow”からの”Old Man Going”でした。Dick Taylorの情感あふれギターソロに心を奪われました。アンコールは2曲で、最後は彼らのデビューシングルでDavid Bowieもカバーした”Rosalyn”という構成でした。今思えば、まさに奇跡の来日公演であったと思います。一つ残念なことは会場がだいぶ余裕があったことです。歴史を作ったバンドにしてはややさみしい思いを持ちました。

 Phil Mayは2020年に自転車事故による後遺症で他界してしまい、Pretty Thingsとしての活動は停止状態になっています。2020年にThe Pretty Thingsとして最後に発売された”Bare as Bone, Bright as Blood”はきわめてシンプルで重く、沈んだ曲がほとんどです。それらは当時のPhil May心理状態を表しているかもしれません。しかしながらどの曲も説得力にあふれ、重厚な仕上がりになっています。また彼らの最後のlive performanceは2019年8月31日にワイト島で行われていますが、そのひとつ前のコンサートは2018年12月13日にロンドンで行われています。このライブはset1, 2, 3という構成で相当な時間を費やしていることが伺えます。アンコールも含め全30曲演奏したようです。setlistによると30曲目にあたるのが”Loneliest Person”となっていました。かれこれ彼はこの曲を半世紀以上歌い続けていることになります。今となれば、この歌詞内にあるme = Phil Mayと置き換えれば、彼に対するレクイエム(鎮魂歌)と考えられるのではないかと個人的には思っています。


それ以前の「やはりロックで泣け!」記事一覧はコチラ!


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