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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第七十一回:MAGNUM『LOST ON THE ROAD TO ETERNITY』

前回、前々回とイギリスのハード・ロック・バンドMAGNUMを紹介してきて、今回もその続きです。MAGNUMは1978年にデビュー。1988年には『WINGS OF HEAVEN』で英5位を記録するが、1994年の『ROCK ART』発表後に解散。中心メンバーのトニー・クラーキンとボブ・カトレイは、デジタル・サウンドをとり入れたHARD RAINを結成。その新機軸はうまくいかず、2002年にはMAGNUMを再結成して『BREATH OF LIFE』を発表。2004年に『BRAND NEW MORNING』を発表するが、まだまだ往年の音楽性復活とはいかなかった、というのが前回まで。

恐らく彼ら自身も「このままではいけない」という思いがあったのではないか。2007年に発表された『PRINCESS ALICE AND THE BROKEN ARROW』では、冒頭から7分に及ぶ「When We Are Younger」という攻めの姿勢。他も5分越えの曲ばかりで、HARD RAIN時代のデジタルなテイストは払拭され、初期MAGNUMの魅力だった重厚さが復活していた。ドラムはハリー・ジェイムスに代わって、ベテランのジミー・コープリーが担当。そして何よりもジャケットである。MAGNUMは、往年のスタイルへ回帰した本作のジャケットを、ロドニー・マシューズのイラストで飾ることを決める。これも決定打になったはず、本作は英70位と、『ROCK ART』以来となる英100位以内にチャートイン。ここから快進撃が始まる。

ドラムにハリー・ジェイムスが復帰し、2007年末から2008年にかけて、発売20周年を記念した『WINGS OF HEAVEN』全曲披露ツアーを行なう。同年には、そのツアーの模様を収録した『WINGS OF HEAVEN LIVE』を発売。こちらのジャケットもロドニー・マシューズが担当している。

2009年には『INTO THE VALLEY OF THE MOONKING』を発表。イントロに続くトップ曲「Cry To Yourself」は、ボブ・カトレイのエモーショナルな声、耳に残るギター・リフとソロが印象的な良曲だった。ファンタジー色の強いジャケットは、もちろんロドニー・マシューズ。白と黒のストライプ模様の帽子と服を着て、ポケットにパチンコを入れている少年と、ムーンキング(?)が描かれている。同作は英82位を記録。

2011年に発表された『THE VISITATION』でも、ロドニー・マシューズがジャケットを担当。スリップカバーがついていたが、そちらではなくブックレットのジャケットが、手にした瞬間に「絵解き」したくなる魅力にあふれたものだった。まず目につくのは、ジャケット手前に描かれた、白黒ストライプの帽子とパチンコだろう。これは前作のジャケットの少年のものじゃないか?! さらに右の壁には『WINGS OF HEAVEN LIVE』のジャケット絵が飾られている。その下にはワシの頭がついたステッキときんちゃく袋が置かれている。これは『ON A STORYTELLERS NIGHT』に描かれた黒装束の男(ストーリーテラー?)の持ち物。前回書き忘れたけど、『SLEEPWALKING』の裏ジャケットにも描かれている。『THE VISITATION』は、音楽的にも往年と匹敵する重厚さと格調高さ、ロック魂を感じさせるもので英55位を記録した。

その高評価を受けて、はやくも2012年に『ON THE 13TH DAY』を発表する。同作もロドニー・マシューズがジャケットを担当。恐ろしい魔術師(?)が描かれたジャケットは好みを分けるかもしれないが、内容的には「安心と実績」のMAGNUMといえるもので、英43位を記録。ジャケット愛好家としては、「絵解き」がなくて、ちょっと残念。

2014年の『ESCAPE FROM THE SHADOW GARDEN』も、ロドニー・マシューズのイラストが使用された。ジャケットの中央に頭を抱えた黒装束の老人。かたわらにはワシの頭のついたステッキときんちゃく袋。そう、彼こそはあの『ON THE STORYTELLERS NIGHT』のストーリーテラーだ。木の後ろから顔を出すのは、『ON THE 13TH DAY』の魔術師。裏ジャケットには『CHASE THE DRAGON』のドラゴンも描かれている。後ろの風景が『THE ELEVENTH HOUR』に似ていたり、「絵解き」の楽しさにも溢れている。楽曲のクオリティも1980年代のMAGNUMに匹敵するもので、ドラマチックな曲から壮大なバラード・ナンバーまで取りそろえた同作は英38位を記録した。

2016年に発表された『SACRED BLOOD “DIVINE” LIES』のジャケットもロドニー・マシューズだが、白黒ストライプの帽子と服を着た少年が復活! パチンコも手にしているし、犬もいる!奥には巨大な怪物が王座に座っているが、少年は平然として立っている。ファンタジー映画のワン・シーンを切り取ったようなイラストだ。同作では英31位を記録している。

ここでドカーンと注目度を高めたいという思いがあったかどうか、2018年発表の『LOST ON THE ROAD TO ETERNITY』では、EDGUYのトビアス・サメットがタイトル曲にゲスト参加。トビアスのメタル・オペラ・プロジェクトAVANTASIAにボブ・カトレイが参加していた関係だろう。MAGNUMのアルバムに有名ミュージシャンがゲスト参加するのは珍しいことで、しかもボブとヴォーカルを分け合っている。ドラマチックこの上ない同曲が起爆剤となって、本作は英15位というヒットを記録した。ちなみに、本作からキーボードがマーク・スタンウェイからリック・ベントンに、ドラムはリー・モリスへと交代していた。

2020年には『THE SERPENT RINGS』を発表。ベースがPINK CREAM69のデニス・ワードに交代していたが、もはやトニー・クラーキンとボブ・カトレイさえいればMAGNUMで、今回も安定の仕上がり。英36位という好成績をマーク。ジャケットはもちろんロドニー・マシューズ。剣を手に持った魔術師のような老人が描かれているが、よく見ると足元にワシの頭がついたステッキときんちゃく袋が見える。なんと、『ON A STORYTELLERS NIGHT』のストーリーテラーじゃないか! 『ESCAPE FROM THE SHADOW GARDEN』では頭を抱え込んでいたが、ここではまるで伝説の勇者のごとき姿で描かれている! 何があったんだ?!

さあ、ストーリーテラーはどうなる? ストライプ帽子の少年の行方は?! と思ったら、現時点での最新作であり、2022年に発表された『THE MONSTER ROARS』のジャケットはロドニー・マシューズではない。恐ろしいモンスターが中央にドンと写っているものに。内容はともかく、ジャケット的には少し残念。








さて、今回は『LOST ON THE ROAD TO ETERNITY』をピックアップしたい。白と黒のストライプの帽子と服を着た少年が、強烈なキャラクターたちと対峙している。右側は不思議の国のアリスのメンバー、その後ろに死神。左側にはオズの魔法使いのメンバー、その後ろに神様(?)。不思議の国のアリスのメンバーは、アリス以外はみんな怒っている。オズの魔法使いのドロシーは、少年に左側へ進むように勧めている。ドロシーの指さす先は裏ジャケットになるが、裏ジャケットの左の隅には、ワシの頭の建造物が見える。これってストーリーテラーのワシの頭のついたステッキと関係があるのかも。少年がそこを訪ねたら、ストーリーテラーがお出迎え。それが『THE SERPENT RINGS』のジャケットだったりして。などなど、見れば見るほどイマジネーションを掻き立ててくれるジャケットだ。収録曲も良曲ぞろいだが、やはりここは、トビアス・サメットが参加したタイトル曲「Lost On The Road To Eternity」を聴いていただきましょう。

2022年に結成50周年を迎えたMAGNUM。ともかく、次の新作のジャケットはロドニー・マシューズでお願いしたい。ストーリーテラー、ストライプ帽子の少年のその後を見てみたい。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

Lost On The Road To Eternity

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