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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第七十回:MAGNUM『SLEEPWALKING』

ついに2023年が始まりました。今年もよろしくお願いします。アラフィフとして色々思うところもあるんですが、ここは焦らずじっくりと、ただし時間を無駄遣いしないよう、人生の後半を見据えながら歩む一年にしたいと思います。

さて、前回の続きでイギリスのハード・ロック・バンドMAGNUMです。前回は、1978年にデビュー作『KINGDOM OF MADNESS』を発表し、徐々に人気を高め、1985年に発表された6作目『ON A STORYTELLER’S NIGHT』で英24位を記録したところまで紹介しました。今回はその続きを紹介します。

商業的成功を経て大手ポリドールへと移籍したMAGNUMは、1986年に7作目『VIGILANTE』を発表。プロデュースをQUEEN『A KIND OF MAGIC』を手掛けたデヴィッド・リチャーズとQUEENのロジャー・テイラーその人が手掛けることに。初期MAGNUMはQUEENの影響も大きかったので、メンバーの希望だったかもしれない。しかし、アルバム・トップの「Lonely Night」を聴くと、サウンドが軽い!ドラムの音もベースも軽い!アルバム・ジャケットのイラストは悪くないけれど、ピンクの色が強いのも軽い印象を受けてしまう。「Vigilante」「Back Street Kid」などの良曲を含んでいて、前作同様に英24位を記録したけれども、このままポップな方向性を強めるのだろうか?

ところが、1988年に発表した8作目『WINGS OF HEAVEN』では、前作で失いかけていた格調高さが復活。ポップな「Start Talking Love」などもあるが、トップの「Days Of No Trust」から、10分に及ぶラストの「Don’t Wake The Lion(Too Old To Die Young)」まで、ヒット性と従来の堂々たるハード・ロックの見事な折衷を実現。バンド史上最高位の英5位を記録する。本作では初めて表ジャケットにメンバーの写真が使われた。U2ぽくて、これは悪くない。

レコード会社からのプッシュもあっただろう、ついにMAGNUMはアメリカ進出を果たす。プロデュースにキース・オルセンを起用、レコーディングもロサンゼルスにあるキースのスタジオ「グッドナイトLA」で行われ、それをタイトルにした『GOODNIGHT L.A.』を1990年に発表する。これまで作曲はトニー・クラーキンが一手に引き受けていたが、本作ではラス・バラッド、ジム・ヴァランス、スー・シフロンというソングライターと共作。だからポップになったというわけではなく、本作では「Heartbroke And Busted」、「Shoot」など、トニー・クラーキンが一人で手掛けた曲も、かなりアメリカナイズされている。キース・オルセンのプロデュースにより、当時のモダンなハード・ロック・サウンドになっているが、MAGNUMにははまっていない感じも。ジャケットはRUSHやDREAM THEATERでおなじみのヒュー・サイムが手掛けた。おじいさんが空高く一輪車に乗っているという、なかなかインパクトの強いジャケットだけど、これもMAGNUMにふさわしいかどうかは疑問だ。

『GOODNIGHT L.A.』は英9位を記録したが、MAGNUM自らが、アメリカ進出&音楽性のアメリカナイズは間違いだと思っていたようだ。彼らは、ライヴ・アルバム『THE SPIRIT』を最後にポリドールから離れ、新たにイギリスのミュージック・フォー・ネーションズと契約。トニー・クラーキンが自らプロデュースを務めた『SLEEPWALKING』を1992年に発表する。同作は日本発売されなかったが、内容的には前作以上に英国を感じさせて英27位を記録。

1993年、MAGNUMは当時のブームに乗ったアンプラグド・アルバム『KEEPING THE NITE LIGHT BURNING』を発表する。これが何と初期のJetレーベルからリリースという謎。ちょっと安っぽいロゴだけど、ジャケットの雰囲気は良い。アレンジは極上で、MAGNUMの過去曲のメロディの魅力がストレートに味わえる作品になっていた。

MAGNUMはドイツEMIと契約。1994年に『ROCK ART』を発表する。女性アーティストが手掛けた油彩画のようなジャケットは雰囲気も良く、ドラマチックな「On Christmas Day」など良曲目白押しだが、これも日本盤の発売は見送られた。

ここで妙なことが起こる。なんとMAGNUMが解散して、トニー・クラーキンとボブ・カトレイが、二人のユニットとしてHARD RAINを結成したのだ。1997年に発表された『HARD RAIN』は、ドラムにプログラミングを使用した、デジタル色強めのMAGNUMといえる仕上がりに。バンド名を変えるぐらいだから、新機軸に挑戦したいというのはよくわかるし、名バラード「I Must Have Been Blind」なども収録されていたが、ジャケットのデザインも含めてMAGNUMの音を求める向きには、ちょっと違うんだよなぁという感じがあった。

1998年にはボブ・カトレイが初のソロ・アルバム『THE TOWER』を発表。TENのゲイリー・ヒューズが作曲からプロデュースから全面バックアップした充実作となった。一方HARD RAINは、元MAGNUMのアル・バーロウ(b)、ポール・ハドソン(kbd)、女性シンガーのスー・マックロスキーを加えたバンドとなって、1999年に『WHEN THE GOOD TIMES COME』を発表する。このトニー・クラーキンの迷走ぶりにボブ・カトレイもついていけず、ソロ活動の方に心が動いてHARD RAINを脱退する。

これもよくわからないが、早くも2001年にはトニーとボブ、アル・バーロウ、マーク・スタンウェイという、かつてのメンバーが再結集してMAGNUMが復活する。ドイツのSPVと契約し、2002年に復活第一弾『BREATH OF LIFE』が発表された。久しぶりに日本盤も発売されたが、楽曲の質は高いものの、ドラムはプログラミングで、ジャケットもCGアートみたいと、HARD RAINをひきずっているように思われた。

2004年には復活作第2弾『BRAND NEW MORNING』を発表。ドラムにTHUNDERのハリー・ジェイムズが起用され、バンド・サウンドが復活。かなり往年のスタイルに戻ってきていて、「The Last Goodbye」とか約10分の「Scarecrow」など良曲も多いが、アルバム・ジャケットがダーク過ぎるのはどうだろう。本作も日本盤で発売されたが、「まだまだこんなもんじゃないんだよMAGNUMって!」と。しかし、ここで終わるMAGNUMではなかった! という話は次回に。


さて今回は、1992年発表の9作目『SLEEPWALKING』をクローズアップします。本作のイラストを手掛けたのは初期MAGNUMのイメージを決定づけたロドニー・マシューズ。1986年の6作目『VIGILANTE』から8作目『GOODNIGHT L.A.』のポリドール3作品では、ロドニー・マシューズのイラストが使われなかった。しかもアメリカ進出に失敗したという苦い経験も。その後、イギリスのバンドとしての誇りを取り戻すべく制作されたのが『SLEEPWALKING』で、そこにロドニー・マシューズを起用したというところに、MAGNUMの「よし、原点回帰するぞ!」という意志が透けているように思う。

イラスト自体からもそれが感じられ、過去のジャケットのモチーフがあちこちに描かれている。まずは壁に掛けられた絵。表ジャケットには、左側に1987年のベスト『MIRADOR』の、右側には1990年のボックス・セット『FOUNDATION』のジャケット・イラストが飾られている。そして、裏ジャケットの壁には、『ON A STORYTELLERS NIGHT』のジャケット・イラストがかかっている。もちろんどれもロドニー・マシューズ作。この仕掛けは『ON A STORYTELLERS NIGHT』でもあって、同作の表ジャケットを見ると、奥に『CHASE THE DRAGON』と『THE ELEVENTH HOUR』のイラストが壁にかけられている。

ほかに、部屋の中を三機並んで飛んでいる飛行機は、『THE ELEVENTH HOUR』の裏ジャケに飛んでいたもの。窓辺にいるドラゴンは『CHASE THE DRAGON』のもの、裏ジャケットの柱時計は『ON A STORYTELLERS NIGHT』に描かれていたものと同じ。また、床のラグの紋章のような模様は、1991年のライヴ・アルバム『THE SPIRIT』の表ジャケットに描かれたもので、そのラグの上にはアナログ盤『WINGS OF HEAVEN』、再発盤『MAGNUMⅡ』が置かれている。表ジャケットには、ビックリ箱から飛び出た人形が描かれているが、右手にアメリカの旗を持ち、左手は向かって左を指さしている。「お前たちはアメリカンなバンドじゃないんだから、イギリスに戻るんだ!」と言っている??ちなみに、裏ジャケットの鏡にぼんやり描かれているのはトニー・クラーキンです。『SLEEPWALKING』は、ジャケットの絵解きも楽しいし、良曲ぞろいのアルバムだけど、これまで一度も日本盤が発売されていないというのが残念です。ここでは雄大なメロディが心地よい「The Flood」を聴いていただきたいと思います。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

The Flood

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