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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第六十九回:MAGNUM『CHASE THE DRAGON』

一年の計は元旦にあり!で、毎年1月に今年はこんなことをやりたいということをバーッと書きだすことにしている。まあ希望であって、かなわなくても持ち越していって、いつかできたらぐらいの軽い気持ちなので、「漬物つけたい」とか「市内の狛犬見て回る」とか、改めて見ると変なものも多い。自分で書いといてなんだけど。しかし、そこにリストアップされているほとんどが、ここ何年かかっても着手できていないことばかり。まあ老後の楽しみにすればいいんだけど、それにしてもやりたいことばかりがドンドン増えて、このままだと老後が何年あっても足りません。バケットリストっていうんでしょうか? 死ぬまでにやりたいことをリストにして書いていくっていうやつ。これまで落書き程度でしていたんだけど、少しちゃんと整理しないと、残りの人生を有意義に過ごせないんじゃないかと真剣に思うようになってきた。

そのなかのひとつで、数年前からやりたいなと思っていたのが、イギリスのハード・ロック・バンドMAGNUMのことをキチッと紹介するということ。ブログとかホームページとかにディスコグラフィーやヒストリーをアップして、少しでも日本でのファンを増やしたいなと。かつて少しやったことがあるんだけど、もう一回ちゃんとやりたいなと、そう思ったのが、もうかれこれ五年ぐらい前だったかな? いつやるねん! ということで、今回はMAGNUMです。

MAGNUMの中心となるのはギターのトニー・クラーキン。バーミンガム出身の彼は、1960年代から数々のバンドで活動していた。MAGNUMが結成されたのは1972年。トニー・クラーキンにシンガーのボブ・カトレイ、ドラムのケックス・ゴーリン、ベースのボブ・ドイルというメンバーだった。ボブ・ドイルは、後にELOへ参加するデイヴ・モーガンに交代する。

1975年、MAGNUMはデビュー・シングル「Sweet For My Sweet / Movin’ On」を発表する。A面はSEARCHERSのカヴァーで、歌っているのはデイヴ・モーガン。その彼はすぐに脱退し、後任にコリン・ロウが加入する。さらにキーボードにリチャード・ベイリーが加わった。地道なライヴ活動が実を結び、ELOが所属したJetレコーズと契約。1978年、ついにデビュー・アルバム『KINGDOM OF MADNESS』を発表する。アルバムA面は曲の切れ間なく展開。『QUEEN Ⅱ』を思わせるハード・ロック作で、タイトル・トラックは後々までライヴでも披露されるバンドの代表曲となった。

ジャケットは、黒ネコか黒ヒョウかの目の中に町が描かれているというデザインで、デビュー作にしてはシンプルだった。それもあってか、アメリカ盤のジャケットは、スチュワート・ダニエルズが手掛けたイラストに変更された。これが、イカレた王様が描かれたシュールなものに。日本では米盤ジャケが採用され、邦題も『狂気同盟』というナカナカに強烈なものだった。

1979年には2作目の『Ⅱ』を発表。アルバム・タイトルがシンプルなら、ジャケットもロゴ・ジャケというシンプルさ。まあ銀色にピカピカ光っているところは工夫されているのかもしれないけど、僕の好みからいえばロゴ・ジャケはデザイン的にピンとこない。内容は抜群に良くて、ドラマチックな「If I Could Live Forever」や泣ける名曲「Stayin’ Alive」などを収録。

1980年代に突入し、イギリスでは若手ヘヴィ・メタル・バンドが数多く登場。その波はNEW WAVE OF BRITISH HEAVY METALと呼ばれた。MAGNUMはこの機運に乗るべく、ヘヴィ・メタルの硬派なイメージを強調したジャケットのライヴ・アルバム『MARAUDER』を発表する。彼らのライヴ・アクトとしての実力を知らしめた同作は、英34位のヒットを記録した。

ここで一気にヘヴィ・メタル・バンドへ!とはいかなかった。彼らの本質は、プログレッシヴ・ロック、ひいてはイギリスのロックの伝統ともいえる格調高さやドラマチックさを持ち、そこに胸を熱くするメロディがのるハード・ロックであり、それを煮つめて1982年に発表された4作目が『CHASE THE DRAGON』だった。キーボードがリチャード・ベイリーからマーク・スタンウェイに交代。MAGNUMの音楽性にフィットした彼の加入も大きかっただろうか、クラシカルなピアノを活かした曲を含む、まさに威風堂々たるMAGNUM流ハード・ロックを完成させた。アルバムは英17位というヒットを記録している。

この『CHASE THE DRAGON』のジャケットを手掛けたのがロドニー・マシューズ。彼は1970年代初頭からジャケット・アートを手掛けるようになり、1970年後半にNAZARETH、PRAYING MANTISなどのジャケットで注目を集めた。絵のタイプでいえば、ロジャー・ディーンに近いファンタジー、SFの世界を得意としているが、どうにもロジャー・ディーンに比べると、その芸術性が評価されていないような気がする。ロドニー・マシューズの方が、童話的な、もっと平たく言えばマンガ的というところにあるのかもしれない。

1989年に発表された5作目『THE ELEVENTH HOUR』もロドニー・マシューズがジャケットを手掛けているが、笑顔の仮面をつけ、子どもたちをたぶらかす怪しげな人物というダーク・ファンタジー色強めのイラストになっている。ちなみに、怪しげな者が子供をたぶらかすモチーフは、2016年発表の『SACRED BLOOD DIVINE LIES』でも使われている。

Jetレコーズの経営不振もあって同レーベルを離れたMAGNUMは、新たにFMと契約。ヒットが望まれる状況ということもあり、これまでの重厚なドラマ性を感じさせるハード・ロック路線を保持しながら、よりコマーシャルな方向性も取り入れるようになる。その最良のバランスを示したのが、1985年に発表された6作目『ON A STORYTELLER’S NIGHT』だった。

同作のジャケットもロドニー・マシューズ。こちらに背を向けるフードを着た人物が、トロール相手に物語を話している。トロールたちはその内容に驚いて目を見張っている。タイトルにもふさわしい上に、ファンタジー性を強く感じさせるイラストだった。MAGNUMの音楽性は、同作1曲目「How Far Jerusalem」にも表れているように、叙事詩的な性格が強くある。その世界観も見事にすくい取ったイラストで、ファンタジー小説の表紙のようでもある。ロドニー・マシューズも、このジャケットはお気に入りだそうだ。同作は英24位のヒットを記録する。

これにより、MAGNUM=ロドニー・マシューズというイメージが定着。後に『WINGS OF HEAVEN』(1988年)で英5位のヒットを記録すると、デビュー作と2作目がFMから再発されることになるが、ジャケットがロドニー・マシューズのイラストに変更されている。『KINGDOM OF MADNESS』は、火を噴くドラゴンと奇妙なカブトを着た兵士たちの戦いを描いたものに。『Ⅱ』は、奇妙な姿の宇宙船を描いたものになっていた。これらはアルバムの内容とはあまりリンクしていないので、元からあったロドニー・マシューズの作品からチョイスしたのではないかと思う。

説得力、包容力、力強さとエモーショナルさを兼ね備えた稀代のシンガー、ボブ・カトレイの声で紡がれるドラマ性豊かなメロディを、堂々たる威厳と格調高さを感じさせるサウンドで聴かせるMAGNUMのハード・ロック。ロドニー・マシューズのイラストは、その音楽的魅力を視覚面で特徴づけた。近年の作品でも彼がジャケットを手掛けていることが多いが、その出会いとなったのが『CHASE THE DRAGON』だった。近未来的な塔と建物がそびえる遥か彼方に、ドラゴンたちが向かわんとしているイラストは、彼らの音楽性とベストマッチしている。もちろん各楽曲のクオリティも高く、「Soldier Of The Line」「Spirit」「The Lights Burned Out」など、いずれも彼らの音楽性の旨味を凝縮した名曲だ。ここではアナログ盤A面の最後を飾った「Sacred Hour」を聴いていただきたい。僕が言うところの格調高さ、威厳のある堂々としたMAGNUMの音楽的魅力を、最もよく表した曲ではないかと思います。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

Sacred Hour

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