2022年10月14日 | カテゴリー:-,世界のロック探求ナビ
2022年に最新アルバム『Total Edge Effect』をリリースし、当店でも月間ベストセラーNo.1に輝くなど注目が集まる日本のプログレ・バンドTEEを大特集いたします!
変拍子を多用しつつ流麗なメロディと多彩なフルートが特徴のシンフォニック・ロックバンド。風景、情景、事象など、実際に存在する対象をモチーフにし音で表現することを作曲のコンセプトにしている。そのコンセプトの意味を込めて結成当初はバンド名をThe Earth Explorer(略してT.E.E.)としていた。
前身は埼玉県蕨市にあるロックバーHoneyflash(現Pink Cadillac)のプログレセッション参加メンバーを中心に結成された Euro Express というユーロ・プログレ・カバー・バンド、Area、PFM、Asia Minorのカバー曲でライブを1回行っている。
ヴォーカル、ドラムが脱退後に米倉の発案でオリジナルに転向、初期の数曲が固まったところでドラムを募集、浅田が加入したことでバンドの結成となった。
1stライブは2006年12月6日に上記Honeyflashにて、その後は東京近郊を中心に継続的にライブ活動を行っている。
立川Crazy Jamで行った3回目ライブにおいてライブ録音を敢行、デモ盤「First Voyage」(2007)としてPoseidonレーベル傘下のVitalレーベルよりリリースした。その後2008年にスタジオアルバム作成のためスタジオ入りし、2009年に1stスタジオアルバム「The Earth Explorer」をPoseidon/Museaレーベルよりリリース、それに合わせて正式バンド名をTEEに改変。
2010年にはヨーロッパ最大級のプログレフェスProg Sud(仏)に出演し満場のアンコールで好評を博した。同フェスにはAlti&Mestieri 、The Watch、Alex Carpani Band、元Le OrmeのヴォーカリストAldo Tagliapietraなど著名アーティストも出演しており、バンドとして大きなステップアップとなった。
その後もライブ活動と制作活動を順調にこなし、スタジオレコーディングを実施。
2012年に2ndスタジオアルバム「Trans-Europe Expression」をMuseaレーベルよりリリース。
2016年に3rdスタジオアルバム「Tales of Eternal Entities」をMuseaレーベルよりリリース。
4thスタジオアルバムにあたる最新作収録曲は3rdスタジオアルバムリリース後に随時完成したところから未発表曲としてライブ演奏を開始、アレンジを固めていった。当初2019年中にスタジオ入りする構想であったが、コロナの影響で活動が一時中断したことから延期され、2021年12月にようやくスタジオ入りすることとなった。
2022年に4thスタジオアルバム「Total Edge Effect」を米田が在籍しているFrench TVのPretentious Dinosaur Records レーベルよりリリース。
初期はユーロロックの影響を受けたサウンドが持味であったが、次第にバンドおよびメンバー個々のカラーを打ち出した独自の音作りに移行していき、最新作は唯一無二のTEEサウンドの完成形とも言える作品に仕上がったと自負している。それは結成以来不動のメンバーでバンドの音を進化させ、ライブで何度も演奏しアレンジを突詰めたことで成し得た到達点であると感じている。
レコーディングは1作目から一貫して生音を重視したマイク録りにこだわり、録音、ミックス、マスタリングの全ての工程をレコーディング専用スタジオで行っている。空間を鳴らすことで出せる臨場感と生々しさをぜひ味わっていただきたい。
上記のように、各国の著名アーティストとも渡り合いながら、ワールドレベルと言える4枚のオリジナル・アルバムを発表してきたTEE。そんな彼らをより深く知るべく、バンドにインタビューを行ないましたのでお楽しみください!
―― 4thアルバム『TOTAL EDGE EFFECT』のリリースおめでとうございます。メンバーの皆さんは、ご自身でどのような作品に仕上がったとお考えでしょうか ?
コロナの影響で結果として前作から6年の準備期間ができたことが作品の完成度を上げる要因になった。その間に行ったライブでそれぞれの曲のアレンジ面におけるブラッシュアップをかけることができた。そういう意味で今までの作品の中では一番「やり残し感」がない、 過去作と比べて一層楽器間のバランスが取れたアルバムになったと感じる。
キーボードは6年で機材や制作環境に大きな進歩があった。アナログシンセを大胆に導入したことで音が格段に厚くなり主張が強くなった。ソフトシンセが隆盛な中時代に逆行している感もあるが、ハード回帰したおかげで、特にライブにおけるサウンド面でのいろいろな課題が一気に解決し、それが楽曲制作にもプラスに働いた。
フルートは、これまでのやや挑戦的な演奏から「フルートらしさ」を強く意識した演奏を心掛けた。リスナーが思い描いているであろう「フルートらしさ」を意識した点。具体的には、音の立ち上がりや切れ目の処理において、クラシック的技法から逸脱しないよう心掛けた。
ギターは近年のFrench TVなどでのレコーディング経験を活かし、今まであえてやっていなかったオーバーダブを駆使してCDで聴く音場感を意識したサウンドメイキングを行ったこと。
ベースはエフェクトをかけず弦の響きそのものを大切にしている。
楽曲制作の部分で特にこだわったのはTEEのオリジナリティをいかに表現するかということ。
プログレッシブロックの方法論としての王道ラインは保ちつつも、一聴して「TEEの音だな」とわかるような曲やサウンドを目指した。
フルートフロントとして売り出しておりそのように紹介されるが、フルートとギター、鍵盤、場面によってはベースも含めアンサンブルとして各パートのメロディの絡みはとても意識して作っている。
またコードバッキングは、単にコードをベタ弾きするのではなく、音色やボイシングの工夫でTEEらしい響きを出せないかなど、常に「TEEらしさ」を出すことを意識している。
ありがたいことに世界的なフルートフロントの大御所バンドになぞらえて紹介していただくことも多いのだが、実際あまり影響は受けていないこともありどこかで聞いたことあるなあという感じが出ないようにしている。(ちなみにバンドとしては今井は世界に匹敵する強力なプレイヤーだと自負している。)
もともと、1stアルバムのタイトルである「The Earth Explorer」の頭文字がバンド名の由来で、2ndアルバムであえてそれを狙ったことがきっかけで続けている。
アルバムにはそれぞれコンセプトがあり、曲の方向性もアルバムごとに意識して変えているが、どんなコンセプトで楽曲を作ってもやはりそこにはTEEらしさがあるという思いを込めて頭文字がTEEにこだわっている部分はある。
だいぶネタが尽きてきているので次作以降は??
(米倉)TEEではピアノ中心のアプローチの曲が多い。The Art Of Noiseのアン・ダッドリーには大変影響を受けていると思う。強烈なサンプリングサウンドの渦の中で、生ピアノがものすごく艶めかしく際立っているのがすごい。総合的な楽曲面では90年代のパット・メセニーか。
(今井)Frank Zappa、Hatfield and the Northなどのカンタベリー系、初期Return to Foreverなど多数。
(米田)曲作りで最も影響を受けているのはバッハ、特にオルガン曲のTrio Sonataの手法をまねて複数のメロディーが交錯するようなアプローチをすることがよくある。ギターソロはメロディーが立つように無駄に音を詰め込まないで一音一音を大切に弾くよう心掛けている。昨今一番影響を受けているのはPendragonのNick Barrett。
(浅田)ドラマーとして影響を受けているのは、Ray Luzier、Marco Minnemann、Anika Nilles
(飯ケ浜)Yes
(米倉)The Art Of Noise / 「Who’s Afraid Of…」
(今井)Hatfield and the North / 「Rotters’ Club」
(米田)Yes / 「Close To The Edge」
(浅田)Incubus / 「S.C.I.E.N.C.E.」
(飯ケ浜)Yes / 「Tales from Topographic Oceans」
(米倉)天体観測。最近は曲作りのコンセプトに宇宙が解禁になったので、楽曲づくりにもつながっている。
(今井)クラフトビールの追求、育児
(米田)料理、バラ栽培
(浅田)ディズニー
(米倉)決してアバンギャルドという意味ではなく、常に新しい方法論で楽曲制作に取り組んでいきたい。
(今井)各メンバーが他バンドの活動などを通じて新たな展開をいつも見せてくれるので、そうした新しいエッセンスがTEEに入り込んでくることが予想され、それが楽しみ。
(米田)今まで通り同じメンバーで続けていき、その時々のメンバーの持つ現在進行形の新しいエッセンスをバンドの音として昇華させ新たな音つくりを目指していきたい。
(浅田)曲作り・演奏に対して妥協せず納得できる形に昇華できるようこれからも精進していきたい。
注目のジャパニーズ・プログレ・グループTEEの魅力を感じていただけたでしょうか。
下記リンクのジャパニーズ・プログレ新鋭特集でもご紹介しているとおり、ハイレベルなシーンが形成されている現在のジャパニーズ・プログレですが、70年代プログレのエッセンスを豊かに漂わせながらもそれを新たな表現へと昇華させているという点で、TEEは最高峰にあると言って間違いないでしょう。
早くも5thアルバムが待ち遠しいですし、これからのTEEの活躍に是非ご注目いただければと思います!
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