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7月の特集【奥深き英国ジャズ・ロックの世界】第2回:ヴァーティゴ期NUCLEUSに注目!

ロック・ファンの皆さまを魅惑の音楽探求へとご案内する月間企画、7月のテーマは【奥深き英国ジャズ・ロックの世界】

今回は、ちょうど先日一挙4タイトルがリマスターでリイシューされたNUCLEUSに注目。

NUCLUES(IAN CARR WITH NUCLEUS)名義でVERTIGOレーベルに残された8作品から、彼らの音楽性の変遷をたどってみたいと思います。

NUCLEUSについて

60年代初頭より英国ジャズ・シーンで活躍した名トランぺッターIan Carrを中心に、管楽器/鍵盤を操る天才Karl Jenkinsやオールラウンドないぶし銀ギタリストChris Speddingのほか、重鎮Mike WestbrookやMike Gibbsの作品に参加していた名うてのジャズメンたちが集い69年に結成されたのがNUCLEUS。

Karl JenkinsやJohn Marshallらのメンバーはバンドを脱退しNUCLEUSと双璧を成す名ジャズ・ロック・バンドSOFT MACHINEに加入したことで、NUCLEUS人脈は英国ジャズ・ロック・シーン全体に広がったと言っていいでしょう。

間違いなく英国ジャズ・ロック界で最も影響力を持つバンドの一つです。

それでは、そんなNUCLEUSの作品をサウンドの変化に注目しながらご紹介してまいりましょう。

NUCLEUS / ELASTIC ROCK

記念すべき70年のデビュー・アルバム。

本作を一聴して真っ先に感じ取れるのが『Miles in the Sky』や『In A Silent Way』など、いわゆる「エレクトリック・マイルス」からの影響。

落ち着いたリズム・セクションに乗り、トランペットら管楽器がゆったりとメロディを紡ぎ、そこにエレピが密やかなタッチで絡んでいくアンサンブルは、まさに上記の2作品からの影響を強く受けた作風と捉えて間違いないでしょう。

ただし、どこか神経質な緊張感を放つ即興パートでの掛け合いや、マイルス作品ではムーディーな色気が滲みだしてくるのに代わり、凛とした静謐なリリシズムが常に支配しているところなんかが、彼らのサウンドをどうしようもなく英国ジャズ・ロック然とさせているんですよね。

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NUCLEUS / WE’LL TALK ABOUT IT LATER

翌71年の2ndアルバム。

1stでの静謐なフリー・ジャズ色を引き継ぎつつも、よりロックのダイナミズムが前に出た演奏が楽しめる初期の傑作です。

SOFT MACHINE『BUNDLES』冒頭の「HAZARD PROFILE」にも使用された熱気あるリフが炸裂する1曲目から思わず拳を握るスリリングでソリッドなアンサンブルが炸裂。

特に、イアン・カーのトランペットにジャンルの垣根を超えた縦横無尽なギターで絡むクリス・スペディングのプレイが出色で、2人のクリエイティヴなパフォーマンスに触発されるようにリズム隊がジャズを逸脱した良い意味で荒いプレイを聴かせるようになっていくアルバム後半が素晴らしく感じます。

そこに淡々とクールにジャズ・エッセンスを添えるカール・ジェンキンスのエレピ&サックスにも注目。

電化マイルスからの影響は核に持ちながらも、彼らが本格的に「ジャズ・ロック」の道を歩み出した重要作ではないでしょうか。

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IAN CARR WITH NUCLEUS / SOLAR PLEXUS

前作でジャズ・ロック・バンドとして覚醒した彼らが、今度はビッグ・バンド・ジャズ風の厚みあるホーン・セクションを押し出したスタイルを披露する71年3rdアルバム。

アメリカのビッグ・バンドのようなギラギラとゴージャスな演奏とは一味違う、あくまでしなやかに進行する温度の低めなアンサンブルがやはり英国流儀といった感じです。

そこにロックの骨っぽさや現代音楽調のアンニュイでミステリアスなパートも挿入して彼らならではのアヴァン・ジャズ・ロック・サウンドを確立しています。

随所で後の路線を想起させるファンクのグルーヴが感じ取れるのも特徴の意欲作。

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IAN CARR WITH NUCLEUS / LABYRINTH

73年の4thでは、女性ジャズ・シンガーNorma Winstoneをフィーチャー。

前作のビッグ・バンド路線をよりメロディアスな形で継承したスタイルにパーカッションも大きくフィーチャー、ラテン・ジャズっぽい優美な躍動感を得て、一層演奏に艶やかさや情感の豊かさが加わったように思えます。

前衛的なパートは後退し、女性ヴォーカルの存在もあってこれまでで最も聴きやすく洗練されたサウンドを提示する上質な逸品。

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NUCLEUS / ROOTS

個人的にNUCLEUSのベストに上げたいのが本作。

マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」からの影響と、ギターとリズム隊がロック魂を発揮しダイナミック&パワフルに迫るアンサンブルが調和するスタイルは、2ndのスタイルをグッとレベルアップさせたような感じで、これぞ「ジャズ・ロック」と呼ぶべきカッコ良さ。

彼らがジャズ・ロック・バンドとしての完成形を提示した傑作!

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NUCLEUS / UNDER THE SUN

74年リリースの6th。

トランペットをリードに据えた彼ららしい知的でクールなアンサンブルを軸としつつも、ジャズ・ファンク的な跳ね感やブラス・ロック風の疾走感を取り入れた新境地を披露する一枚。

熱っぽくブロウするホーンと対比するように躍動する、新加入の名手Gordon Beckによる華麗なエレピもお見事!

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NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS)/SNAKEHIPS ETCETERA

どファンクなジャケのとおり一聴ではアメリカのバンド!?と思ってしまうジャズ・ファンクなのですが、熱気ある掛け合いが収まった瞬間、不意に見せる陰影ある表情はやはり英国のグループならでは。

重厚なブラス・セクションに痺れる8thアルバム!

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NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS)/ALLEY CAT

VERTIGOレーベルからの最終作となった9th。

前2作『Under The Sun』『Snakehips Etcetera』からのファンク色を伴ったままクロスオーヴァー/フュージョンへと辿り着いた作品。

どっしりと構えたドラム&地を這うようなベースに、艶やかなエレピ&Ian Carrのふくよかなサックスが絡み合うタイトル曲は必聴のナンバー。

ハービー・ハンコックの『HEAD HUNTERS』から70年後期あたりまでのサウンドが好きな方にも推薦できるジャズ・ファンク/フュージョン秀作です。

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ヴァーティゴ期ニュークリアスの変遷を見てまいりましたが、電化マイルス譲りのサウンドからジャズ・ロックに覚醒、ビッグ・バンド・ジャズ期を経てジャズ・ファンク路線を突き進むという、ソフト・マシーンにも負けないダイナミックな変化を繰り返してきたのが分かりましたよね。

クリス・スペディングは早々に脱退、カール・ジェンキンスやジョン・マーシャルら初期の中心メンバーは途中ソフト・マシーンに移籍するのは周知の通りですが、その意味でもこのダイナミックな変遷の舵取りを担ってきたイアン・カーの先見の明にはとにかく驚かされます。

そして、そんなヴァーティゴ期ニュークリアス全作品を収録したボックスもありますので、気になった方はぜひチェックしてみてください♪

NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS)/TORRID ZONE THE VERTIGO RECORDINGS 1970-1975



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  • NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS) / TORRID ZONE THE VERTIGO RECORDINGS 1970-1975

    Ian Carr率いるブリティッシュ・ジャズ・ロックの名グループ、70年〜75年のVertigo在籍期9作品をまとめた6枚組ボックス

    Ian Carrを中心とするブリティッシュ・ジャズ・ロックの代表的バンドNUCLEUS。彼らがVertigoよりリリースした71年作『ELASTIC ROCK』から75年作『ALLEY CAT』に至る8スタジオ作品(IAN CARR WITH NUCLEUS名義を含む)にIan Carrの72年ソロ作『BELLADONNA』を加えた9作品を収録。英国ジャズ・ロック・シーンに多大な影響を及ぼした彼らの軌跡を知るにはうってつけの一枚です。

  • NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS) / SNAKEHIPS ETCETERA

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    60年代初頭より英ジャズ・シーンで活躍した重鎮トランぺッターIan Carrが率いた英国ジャズ・ロックの最高峰バンド、75年作8th。前作『UNDER THE SUN』で切り開いたジャズ・ファンク/ブラス・ロック路線をさらに推し進め、ファンキーに跳ねる軽快なアンサンブルの上を、ブラス・セクションが饒舌に鳴り響くサウンドはかなりのカッコ良さ。一聴ではアメリカのバンドだと言われても不思議に思わないグイグイと突き進むスタイルですが、熱気ある掛け合いが収まった瞬間、不意に見せる陰影ある表情はやはり英国のグループならではと言えます。名品です。

  • NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS) / UNDER THE SUN

    英国ジャズ・ロックの最高峰グループ、彼ら流のジャズ・ファンクを追求した74年の意欲作!

    60年代初頭より英ジャズ・シーンで活躍した重鎮トランぺッターIan Carrが率いた英国ジャズ・ロックの最高峰バンド、新たなメンバーとして後にAllan Holdsworthとの活動でも名を馳せるベテランkey奏者Gordon Beckを迎えた74年作7th。Carrのトランペットをリードに据えた彼ららしい知的でクールなアンサンブルを軸としつつも、ジャズ・ファンク的な跳ね感やブラス・ロック的な疾走感を随所に取り入れたサウンドが本作の魅力です。ドコドコとロック的ダイナミックが前に出た手数多いリズムに、饒舌なトランペットが乗り、エレピが流麗に舞い、鈍く光沢を放ついぶし銀ホーンが熱を加えます。とは言え痛快にぶっ飛ばす感じではなく、適度に抑制を効かせながらスリリングな緩急をつけるプレイがいかにもNUCLEUSでカッコいいです。もちろんフルートやクラリネットがデリケートに旋律を紡ぐブリティッシュな哀愁たっぷりの叙情ナンバーも素晴らしい。彼ら流ジャズ・ファンクを追求した意欲作!

  • NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS) / ALLEY CAT

    VERTIGOレーベルからの最終作となった75年9th、ジャズ・ファンク/フュージョン路線をさらに推し進めた逸品

    SOFT MACHINEと並び英国ジャズ・ロックを代表するバンド、VERTIGOレーベルからの最終作となった75年6th。前2作『Under The Sun』『Snakehips Etcetera』からのファンク色を伴ったままクロスオーヴァー/フュージョンへと辿り着いた作品。どっしりと構えたドラム&地を這うようなベースに、艶やかなエレピ&Ian Carrのふくよかなサックスが絡み合うタイトル曲は必聴のナンバー。ハービー・ハンコックの『HEAD HUNTERS』から70年後期あたりまでのサウンドが好きな方にも推薦できるジャズ・ファンク/フュージョン秀作です。

  • NUCLEUS(IAN CARR NUCLEUS) / ROOTS

    SOFT MACHINEと並び英国ジャズ・ロックを代表するバンド、ジャズ・ロックとして完成形を見た73年作6th

    SOFT MACHINEと並び英国ジャズ・ロックを代表するバンド、73年作6th。従来のエレクトリック・マイルスを彷彿させるフリー・ジャズのエッセンスと、ギターとリズム隊を主役にロックのダイナミズムをより押し出したパワフルなアンサンブルが絶妙に調和したスタイルは、これぞジャズ・ロックと呼ぶべきもの。インプロビゼーションが炸裂するパートでもどこか陰りがあり、柔らかく優美なフレーズが光ります。女性シンガーJoy Yatesが妖艶に歌う2曲目「Images」の洗練されつつもどこかエキゾチックなサウンドも聴き所です。次作以降ジャズ・ファンク路線を邁進していく彼らの、ジャズ・ロック・バンドとしての完成形を提示した一枚と言えるのではないでしょうか。名作。

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