2022年9月13日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
今日の探求の出発点は、北欧アヴァン・プログレの雄サムラ・ママス・マンナ。
先の読めないアヴァンギャルドでトリッキーな曲展開と朗らかなトラッド・エッセンスが組み合わさった唯一無二のサウンドは、ザッパの諸作にも対抗しうる変態プログレの筆頭として君臨しています。
さてプログレ・シーンには、そんなサムラのように凝ったアレンジやトリッキーな展開で聴き手を翻弄する屈折しまくりの作品たちがたくさん存在しますよね。
変態プログレではあんまりなので、それらを「屈折プログレ」と名付け、世界各地から選りすぐって紹介してまいりましょう~♪
まずは屈折プログレの極致、サムラの傑作3rdをピックアップ!
スウェーデンが誇るアヴァン・プログレの雄、74年作3rd。
変拍子バリバリの超絶テクニカルなパート、北欧トラッドに根差したおおらかなパート、そして奇声&変な音満載の脱力必至のおふざけパートなどが脈絡無く放り込まれた、先の読めない展開に翻弄されっぱなしの一枚。
そんなサムラの国スウェーデンからニッチな2作品をご紹介。1枚目は先日初CD化されたばかりのこの痛快作!
フルート/サックス奏者を擁する5人組バンドによる71年なのですが、R&R、ジャズ、ハードロック、フォークなどを突っ切ってドタバタ忙しない演奏で聴かせ切る痛快プログレが楽し過ぎる!
SAMLAほどぶっ飛んではないけど、SAMLA好きにもお楽しみいただけそうな「狂騒感」をちゃんと持ってるバンドです。
スウェーデンからの2枚目は、サムラのメンバーも絡んだこの隠れ名盤!
ジャケからしてヤバげですが、サウンドはと言うと疾走感抜群のメロディアス・チューンあり、フルートがさえずるリリカルなナンバーあり、サーカスみたいにめくるめく展開を持つプログレ曲ありと実に痛快。
サムラのラーシュ・ホルメルも関わった作品と聞いて納得!
北欧には他にもすんごい作品があります。ノルウェーから!
トラッドの賑々しさと荘厳さ、ブルースの土臭さ、それらを渾然一体にして聴かせるプログレッシヴ感覚を備えた個性派バンドの1st。
ヘロヘロなようで時に妙にエネルギッシュ、神秘的にして怪しさ満点。
初期のトラッド色を持ったJETHRO TULLとSAMLA MAMMAS MANNAが共演したかのような凄い世界観!
前作と同じくJETHRO TULLを彷彿させるいなたいフォーキー・ブルース・ロックに、今作ではゴテゴテとシンセの装飾を施したサウンドメイクが何とも衝撃的。
前作にも匹敵する強烈な音世界です。
異端の北欧プログレ怪作!
我らが日本からは、もう迷わずこの22年リリースの怪盤をピックアップ!
ジャパニーズ・チェンバー・ロックの先駆的バンドLACRYMOSAを率いたベーシスト/マルチ・プレイヤーによる22年作。
まるでCOMUSにバルカン地方や中近東由来のエキゾチズムを纏わせたかのようなサウンドは、神秘的にしてあまりに異形。
民族弦楽器が緻密に絡み合い、ヴァイオリンが狂乱し、呪文詠唱のようなヴォーカル・パフォーマンスが渦巻く戦慄の音空間!
お次はフランスからとっておきの屈折プログレをご紹介!
手数多く軽快なドラムと動き回るベースによる疾走感溢れるリズム隊を土台に、ギターがテンションいっぱいにカッティングを刻み、フルートやサックスがエネルギッシュに炸裂!
シリアスなだけでなく、ユーモア感覚もたっぷり盛り込んでいて、ソフト・マシーンやヘンリー・カウなどカンタベリー勢からの影響も感じられます。
この音でゴングより先にデビューしているとは驚き!
スペインには、カタルーニャ地方で興ったジャズ・ロック・ムーヴメント「Musica Laietana」を牽引したこのバンドがいますね!
現在も活動を続ける、スペインが誇るアヴァン・ジャズ・ロック・グループ!
スペインの民族木管楽器テノーラによる素っ頓狂なチャルメラ風フレーズが暴れ回るサムラもびっくりな民族舞踏的&チンドン屋的ロックをエネルギッシュに展開!
一聴コミカルなようでいて、聴き込むごとにサウンドに宿る自国民族音楽への誇りに感動させられる地中海ロックの傑作です。
日本人メンバーも大活躍のこの米グループも忘れてはいけませんね。
アメリカの老舗アヴァン・ジャズ・ロック・バンドによる貫禄の21年14th。
ジャパニーズ・プログレ・バンドTEEのギタリスト米田克己の参加4作目となります。
ザッパ、サムラ、カンタベリー・ロックなどの影響を取り込みつつ、独自のユーモラスなタッチも添えて痛快なフュージョン/アヴァン・プログレに仕立て上げた傑作!
ここからは現代にも登場している屈折プログレ新鋭から、厳選2作品ご紹介!
まずはフランスから、この変則トリオの21年作をピックアップ。
アルト・サックス、バス・サックス、ドラムという編成のトリオで、アヴァンギャルドかつユーモラスに進行するレコメン系ジャズ・ロックは痛快の一言。
SAMLA MAMMAS MANNAあたりがお好きなら堪らないはず!
21年にリリースされた、アルゼンチン発の注目作!
サムラやPDPに通じる忙しなくも芳醇なレコメン系アヴァン・プログレで、管楽器がメロディアスにリードするカンタベリー・タッチ、クリムゾン的緊張感を孕んだテクニカル・アンサンブル、シンセがたなびく静謐なパートなど、様々な演奏の断片を切り貼りしたかのようにコロコロと表情が切り替わるサウンドに翻弄されます。
各国が誇る「屈折プログレ」の数々、ご堪能いただけたでしょうか。
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スウェーデンの5人組。73年唯一作。サムラのLars Holmerが作曲したメロディアスで疾走感ある冒頭曲で幕開け。瑞々しいアルペジオで民族的な旋律を奏でるアコースティック・ギター、たゆたうようなフルートが印象的な2曲目をはさみ、3曲目以降は「これぞ北欧!」というファンタジックでスリリングな、まるでサーカスのように愉快奇天烈な楽曲のオンパレード!ギター、サックス、フルート、ピアノが緊張感溢れるフレーズを応酬してきます!特に4曲目の13分を越える大曲「Knight」は、安定感抜群のアンサンブルと目まぐるしく展開する圧巻の構成による、これぞ北欧ロック!という名演。サムラやSilenceレーベル周辺が好きな方は間違いなく気に入る一枚です。メインではないものの、テリエ・リピダルを彷彿とさせる深遠で透明感溢れる響きのギターも聴き所です。傑作。
スペインはバルセロナ出身、ギター、サックス、ドラムのFortuny3兄弟を中心とするグループで、70年代半ばにバルセロナのライヴハウスZELESTEを中心に起こったジャズ/アヴァン・ロック・ムーヴメントの代表格。最高傑作とされる78年作の4th。初期のフュージョン色はいよいよ薄まり、サムラもびっくりな民族舞踏的&チンドン屋的ロックをエネルギッシュに展開。細かいリズムで切り返しまくるリズム隊、ツンツンと尖ったトーンでシャープに畳みかけるギター、そしてスペインの民族木管楽器テノーラによる素っ頓狂なチャルメラ風フレーズ。手工芸品のように温かな北欧のサムラとは違って、地中海の陽光溢れる快活さが溢れていてとにかく痛快。さすがにデビュー時にはマイルス・バンドもびっくりなジャズ/フュージョン・ロックをこなしていただけあって、演奏のキレ味は抜群。それにしても、アカデミックさと大道芸的ノリを併せ持つサウンドは唯一無比。もっともっと評価されるべきユーロ屈指のグループ。これは素晴らしいですよ〜。
フランスのジャズ・ロック・グループ、70年作の1st。手数多く軽快なドラムと動き回るベースによる疾走感溢れるリズム隊を土台に、ギターがテンションいっぱいにカッティングを刻み、フルートやサックスがエネルギッシュに炸裂!シリアスなだけでなく、ユーモアも盛り込むなど、ソフト・マシーンやヘンリー・カウなどカンタベリー勢からの影響大。まだゴングが1stをリリースしていない70年ということを考えると、恐るべしな作品。北欧のサムラに通ずる痛快さもあり。カンタベリーのファンは必聴の名作です!
スウェーデンのプログレ・バンドが71年にリリースした1stアルバム。サックス/フルート奏者を擁する5人組で、ロックン・ロール、ジャズ、ハード・ロック、フォークなどを突っ切ってドタバタと忙しない演奏で聴かせ切る痛快プログレを楽しませてくれます。演奏は鋭角的に突っ込むギターと滑らかで音数多い技巧派サックスがユニゾンしたりソロを応酬させたりする目まぐるしいアンサンブルが魅力。スウェーデン語の朗々と歌うヴォーカルも良い味出してます。聴いていて思い浮かんだのが同郷のニッチ・バンドPANTA REI。SAMLAほどぶっ飛んではいませんが、SAMLA好きにも聴いて欲しい「狂操感」を持ったバンドです。
84年の結成以降、バンド創始者であるベーシストのMike Saryを中核に活動する米テクニカル・アヴァン・プログレの名バンドによる2021年作14th。16年作への初参加から4作目となるジャパニーズ・プログレTEEのギタリスト米田克己、17年作より参加する米ジャズ・ロック・バンドVOLAREのキーボーディストPatrick Strawser、00年代の作品でもプレイしたドラマーJeff Gard、そして御大Mike Saryという4人編成を基本に制作。変拍子を自在に交えテンポチェンジを繰り返す複雑なリズムワークを土台に、メロディアスで浮遊感あるフレージングにただならぬ緊張感が潜むギター、つややかなトーンでカンタベリーチックな優雅さをもたらすシンセが躍動する、今作もまったく一筋縄ではいかないアンサンブルが炸裂しています。随所でスリリングに切り込んでくるゲスト奏者のサックス、ヴァイオリンも効果的。とにかく少しも一所に留まっていない目まぐるしく変化していく緻密かつ大胆不敵なサウンドに終始翻弄されます。FRANK ZAPPA、SAMLA MAMMAS MANNA、カンタベリー・ロックなどの影響を取り込みつつ、独自のユーモラスなタッチも添えて痛快なフュージョン/アヴァン・プログレに仕立て上げた一枚です。バンドによる自信作とのコメントも大いに納得の快作!
アルゼンチン出身のアヴァン・プログレ/ジャズ・ロック新鋭、2020年作。SAMLA MAMAS MANNAやPICCHIO DAL POZZOに通じる忙しなくも芳醇なレコメン系アヴァン・プログレで、管楽器がメロディアスにリードするカンタベリー・タッチ、クリムゾン的緊張感を孕んだテクニカル・アンサンブル、シンセがたなびく静謐なパートなど、様々な演奏の断片を切り貼りしたかのようにコロコロと表情が切り替わるサウンドに翻弄されます。南米的なエッセンスはさほど強くなく、上記したヨーロッパのレコメン系グループがお好きな方にオススメしたい作品です。
70年に結成されたノルウェーのグループが、77年にリリースした1stアルバム。トラッドの賑々しさと荘厳さ、ブルースの土臭さ、それらを渾然一体にして聴かせるプログレッシヴ感覚を備えた、なかなか一筋縄ではいかないサウンドです。ドコドコと土着的な響きのドラム、ブルースとサイケが溶けあったような酔いどれギター、奔放に弾きまくるギターに代わり旋律を奏でるベース、ノルウェー語で何かを喚く絞り出すようなヴォーカル。ヘロヘロなようで時に妙に雄々しく、神秘的にして怪しさ満点なこのサウンドは、『AQUALUNG』あたりまでのトラッド色を持ったJETHRO TULLとSAMLA MAMMAS MANNAが共演したような凄い世界観。頭のネジが一本吹っ飛んでいったような、少しもまともじゃないサウンドを繰り広げています。必聴。
フランス出身のアヴァン・ジャズ・ロック新鋭バンド、19年作。アルト・サックス、バス・サックス、ドラムという編成のトリオで、アヴァンギャルドかつユーモラスに進行するレコメン系ジャズ・ロックは痛快の一言。種々のパーカスを織り交ぜた何が飛び出すか分からない変則ドラミングに乗って、アヴァンギャルドにもメロディアスにも自在なアルト、バスーンのようなとぼけた味わいが魅力のバス・サックスが絡み合うサウンドは、SAMLA MAMAS MANNAあたりがお好きなら堪らないはず!
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