2022年2月10日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
こんにちは。スタッフ佐藤です。
今回の探求の出発点は、イギリスのチェンバー・ロック・バンドHENRY COWです。
Fred Frith、Tim Hodgkinsonを中心に結成、アンチ商業主義を標榜した即興主体のアーティスティックかつストイックな音楽性は、RIO(ROCK IN OPPOSITION)と呼ばれるムーブメントとして欧米全土に広がっていきました。
とは言え、硬質なアンサンブルのあちこちから滲み出てくるカンタベリー・ロックとしての芳醇な叙情性もまた魅力で、プロフィールから想像されるほど取っつきにくくもないんですよね。
そんなHENRY COWが好き!または興味がある!という方に是非聴いてみて欲しい各国の作品をセレクトしてまいりたいと思います。
まずはHENRY COWの衝撃的デビュー作をお聴きください♪
もはや職人技の域に達するまでの技巧を身につけた猛者たちによる、緻密にしてダイナミック、そしてカンタベリーらしい息吹も感じさせる傑作1st。
即興をメインとする鋭くアヴァンギャルドに切れ込むプレイの応酬に思わず耳を奪われますが、ふいにコミカルなタッチや妙な間なども挿入され、遊びの要素も多分に感じさせるところがポイント。
メンバーのミュージシャンシップの高さを見せつけるようなサウンドです。
先日紙ジャケでリイシューされた、チェンバー・シンフォと呼ぶべきこの名作も勿論HENRY COWファンには大推薦!
スイス・プログレ屈指の人気作と言っていいかな。
HENRY COWばりの緊張感を孕んだチェンバー・アンサンブルに、ピアノやシンセがシンフォニックな幻想性を付与。
同郷の巨匠デザイナーH.R.ギーガーによるジャケットのインパクトに負けないスリリングかつ緻密な大名盤ですね!
フランスからは、RIOの中心的バンドとしても知られるこちら!
HENRY COWを夢想的にしたような音像は、これぞフレンチ・チェンバー・ロック。
優雅なようでどこか不安定に奏でられていく奇妙なチェンバー・サウンドは何とも予測不能ですが、幻想的で浮遊感のあるサウンドはカンタベリー・ファンにも響きそうです。
ユニヴェル・ゼロを生んだベルギーにも素晴らしいチェンバー・ロックが多数ありますね。カウのメンバーも参加したこの作品!
そのサウンドは、ずばりレコメン系 meets ニューウェーブ。
民族調のパーカッションも交えた独特の引っかかりを持つ面白いリズムの上を、弦楽が優雅に流れゆき、サックスがフリーキーなインプロヴィゼーションを炸裂させるスタイルは、奇天烈なようでいてスリル抜群。緻密な計算の上で展開されるカオスな音像が鮮烈に耳へと突き刺さります。
リズム側に注目して例えるならトーキング・ヘッズをチェンバー・ロック風に仕立てた感じとも言えるし、初期イーノのストレンジ・ポップを知的に再構成した感じとも言えるし、『ディシプリン』クリムゾンに弦楽を突っ込んだ感じでもあります。
聴くたびに発見がありそうな、いろんな方面へと繋がるサウンドです。
新鋭にもナイスなチェンバー・ロック・バンドがいっぱいです。世界各国からピックアップ☆
アート・ベアーズやヘンリー・カウやザッパとともに、ハットフィールド&ザ・ノースやソフト・マシーン、さらにヒップホップまでぶち込んじゃった知性派アヴァン・ロック。さすがはあのYUGENのヴィブラフォン奏者率いるバンド。
狂暴な変拍子に終始なぎ倒されっぱなし!ヘンリー・カウやクリムゾンばりの強度でレッドゾーンを振り切りまくるズール系新鋭による痛快すぎる傑作!
XTCやヘンリー・カウのDNAを継ぐイラン系イギリス人のポップ・マエストロ、個性豊かな2014年デビュー作!
狂気のヴァイオリン、暴走するサックス、偏執狂的ギター。
東欧の小国ベラルーシに突如あらわれたチェンバー・ロック・グループ・・・恐るべし。
ベルギーのレコメン系グループの2012年作なんですが、アカデミックさと奇天烈さとヨーロピアンな洗練とがゴッタ煮されてて、テクニカルなのに温かくしなやかだし、ザッパやゴングのファンはヤられるはず!
温もりのあるチェンバー・ジャズ・サウンドにデジタルな音響を混ぜ合わせながら、スリリングに変拍子を刻んでいくアンサンブルが格好いい!
HENRY COW、PICCHIO DAL POZZO好きに是非オススメしたいアルゼンチン産新鋭アヴァン・ジャズ・ロック!
アルゼンチンが誇る新鋭チェンバー・ロック・バンドと言えば?SLAPP HAPPYやCOSのファンにはたまらない女性ヴォーカルのコケティッシュ声炸裂!
いかがでしたか?
気になる作品が見つかりましたら幸いです☆
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チェンバー・ロックといえば気品ある室内楽アンサンブルを大幅に導入したロックですが、なんだかアヴァンギャルドでダークなイメージも・・・。そんな「暗黒系」チェンバーが苦手な方にオススメの、ファンタジックで叙情的な「非暗黒系」チェンバーを集めてみました。
東欧はベラルーシ出身、管弦楽器奏者を含む6人編成のチェンバー・ロック・グループ。2010年作5th。テンションみなぎる変拍子、狂気のヴァイオリン、暴走するサックス、FRIPP譲りの偏執狂的ギター、スリリングなピアノ、Dagmar Krauseのごとくな女性Vo。とにかく圧倒的なテンション!HENRY COWやクリムゾン『太陽と戦慄』のファンは間違いなく気に入るでしょう。アンサンブルの強度が半端ではありません。おすすめ!
MAGMA/ZEUHLサウンド影響下のフランスのマルチ・ミュージシャン、FRANCOIS THOLLOTによるグループ。11年デビュー作。編成は、リズム隊にギター、ピアノ、アルト・サックスの5人組。変拍子を散りばめながら急激な緩急でシャープに畳みかけるドラム、クリムゾン『レッド』期ばりの轟音ベースによる硬質なリズム隊からして圧倒的なテンション!さらに、緊張感をあおるミニマルなフレーズから疾走する早弾きまで緊張感をあおるキーボード&ピアノ、塊となって聴き手に襲いかかるギターとサックスが追い打ちをかけて、ヘンリー・カウやクリムゾンばりの強度でレッドゾーンを振り切ります。いや〜、凄まじい熱量とスピード感。アコースティックな音色もうまく配して音は芳醇さもあるものの、アンサンブルは終始キレキレ。狂暴な変拍子になぎ倒されっぱなしの痛快な傑作です。
アルゼンチンはブエノス・アイレス出身で、クリムゾンやジェントル・ジャイアントやヘンリー・カウとともに、ドビュッシーやルチアーノ・ベリオやリゲティ・ジェルジュに親しんだコンポーザーのAbel Gilbert(1960年生まれ)率いるチェンバー・ロック・バンド。2014年作の3rd。女性ヴォーカルのCarolina Restucciaも特筆で、ダグマー・クラウゼ(SLAPP HAPPY)やパスカル・ソン(COS)を彷彿させる狂気とコケティッシュさを内包した歌声が強烈。クリムゾンのジェイミー・ミューア的な奔放なパーカッションにCarolinaの奔放なヴォーカルが乗るチェンバー・ミュージック、そして、管弦楽器とシャープなエレキ・ギターがまばゆいトーンでエキセントリックなアンサンブルを奏でるチェンバー・ロック、さらにニューウェイヴとゴシックを行ったり来たりするようなアヴァン・ポップも交えながらイマジネーション豊かに展開していきます。ユニヴェル・ゼロばりの器楽的な技巧を持ちつつ、強迫的にはならず、どこかカンタベリーにも通じるようなユーモラスさがあるサウンドが持ち味です。数多く好グループが出てきている2010年代以降のチェンバー・ロック・シーンの中でも屈指と言える強度と奔放さを持った名バンドによる傑作です。
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