2022年5月13日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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前回に続いて、今回も『レコード・コレクターズ』の企画と勝手に連動しちゃいます。
まず簡単に説明しておくと、同誌は今年で40周年。それを記念して、先月号(2022年5月号)では、「今聴くべき60年代アルバム200」という企画が組まれた。各選者が、60年代に発表された「名盤」を1~30位で決定し、それを集計してベスト200でランキングするというもの。僕も参加させていただいたが、個人として選んだ30枚のなかでも、本ランキングに選ばれなかったものが当然出てくる。それはあまりにも惜しい、出来れば聴いてもらいたい!ということで、ランキング外になってしまったアルバムを前回の当コラムで紹介させていただいた、ということです。
『レコード・コレクターズ』2022年6月号は、前号に続いて「今聴くべき70年代アルバム200」という企画。今回も参加させていただきましたが、僕が選んだ30枚のうち本ランキングに選ばれなかったアルバムが何と12枚も出てしまいました?! 60年代編では6枚だったのが、その倍?!
まずは30位に選んだFACES『A NOD IS AS GOOD AS A WINK…TO A BLIND HORSE』(1971年)だけど、他バンドに数多くカヴァーされた「Stay With Me」、ロニー・レイン作の枯れた味わいの「Debris」といった名曲をはじめ、ロック・バンドの「バンド」という部分の魅力を強力に感じさせるのがFACESではないかと。
ロッド・スチュワート、ロン・ウッド等メンバーそれぞれ才能豊かだけど、バンドになった時の強さ&輝きはまた別物。ロック・バンドかくあるべしということを永遠に伝えるアルバムです。ここでは本作ラストの隠れ名曲「That’s All You Need」を。
28位に選んだRENAISSANCE『ASHES ARE BURNING』(1973年)は、70年代英プログレ・バンドにとって大きな命題のひとつだった(と思う)ロックとクラシックの融合を理想的に実現したアルバム。
『TURN OF THE CARD』とか『SCHEHERAZADE AND OTHER STORIES』でも良かったかな? 10分越えのタイトル曲「Ashes Are Burning」こそ彼らの代表曲だけど、ここではアニー・ハズラムの美声にキュンキュンしまくりの「Let It Grow」を聴いてくださいませ。
26位はロイ・ウッド『BOULDERS』(1973年)で、彼を選んだのは僕だけだったかな?THE MOVE、ELO、WIZZARDでの活躍はもちろん、「I Wish It Could Be Christmas Everyday」などのヒット曲も持つポップ職人。
『BOULDERS』はロイ・ウッドがほぼ一人で多重録音して作り上げたアルバムで、『TUBULAR BELLS』のような崇高さはないけれど、志は同じで、マイク・オールドフィールド並みに評価されてもイイと思うんですが。ここでは、一人でコーラスもクラップもこなした『BOULDERS』のトップを飾る「Songs Of Praise」を聴いてみてください。
25位のSTEELEYE SPAN『HARK! THE VILLAGE WAIT』(1970年)は、FAIRPORT CONVENTIONのアシュレイ・ハッチングスが、伝統音楽の現代化をよりコアに追求するべく、人気バンドになっていたFAIRPORTを脱退して新たに立ち上げた英&アイルランド人混成ユニットのデビュー作。
ゆえにFAIRPORTよりシリアスというか、ピリッとした&ヒヤッとした緊張感がある。FAIRPORTの『LIEGE & LEAF』や『FULL HOUSE』と並ぶ、フォーク・ロックの重要作。ここではゲイ・ウッズとマディ・プライアのハーモニーも美しい「Dark Eyed Sailor」をどうぞ。
24位はSPIROGYRAの3作目『BELLS,BOOTS AND SHAMBLES』(1973年)で、これはまあ選ばれないだろうなと思いながらも選んだ。
フォーク・ロックにジャンル分けされるのかもしれないが、ゴシック&冷ややかな雰囲気、それでいてドラマ性際立つメロディや楽曲構成はとても個性的。ドリー・コリンズによる多彩なアレンジも秀逸。前2作に比べてバーバラ・ガスキンの歌が全面に使用されているのもポイント高し。MELLOW CANDLE、TUDAR LODGEのアルバムと合わせて英フォーク三種の神器と呼ばれるアルバムだけど、そんな狭いところじゃなくて、もっと広く聴かれるべきアルバムだと思います。アルバム・ラストに収録された、12分超えの大作「In The Western World」をどうぞ。
21位に選んだSTRAWBS『GRAVE NEW WORLD』(1972年)は、英プログレ・バンドによる、人の一生をモチーフにしたコンセプト作。
ヴァラエティ豊かな楽曲が並んでいるけど、まるで一つの小説を見ているように物語性を感じさせる傑作だと思っています。ひときわ劇的な「New World」を聴いてみてくださいませ。
20位のCARMEN『DANCING ON A COLD WIND』(1974年)は、もう機会あるごとに何度もCARMENを推していまして。
フラメンコとロックの融合、ロック表現の可能性の深さと広さを伝える名作だと信じて疑いません。CARMENをとりあげた同コラムの第53回をご覧ください。
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19位のWISHBONE ASH『ARGUS』(1972年)は、ツイン・ギターの魅力を広くアピールしたというだけでなくて、フォークやプログレ、ハード・ロックなどの要素をとり入れながら端正さを失わない独自のロック・スタイルを編み出した名作。
彼らの代表曲、「Throw Down The Sword」をどうぞ。
18位に選んだジャニス・ジョプリン『PEARL』が選ばれなかったのは少し不思議。
まあジャニスが製作途中で亡くなった作品だからというのはあるかもしれないけれど、僕にとって、いや僕の人生にとって「Get It While You Can」は本当に大切な曲なので、選ばないわけにはいきませんでした。みなさまも、愛は生きているうちに、ですよ。
11位に選んだGONG『CAMEMBERT ELECTRIQUE』(1971年)は、他作品なら選ばれるかもしれないなとは思ったけど、デヴィッド・アレンのユニークなセンスが濃厚に出ているのは本作でしょう。
ということで、「You Can’t Kill Me」をどうぞ。
10位のUFO『PHENOMENON』(1974年)も、まあ僕にとって思い入れの強いアルバムで、「これがハード・ロックか!」と、頭をガーンと殴られたような衝撃を受けたので、選ばざるを得なかったということで。
ここでは本作の隠れ名曲「Crystal Light」を聴いていただきましょう。
さて、同コラム的に大きく紹介したいのが、4位という高順位で選んだけれどもランキング200外だったAPHRODITE’S CHILD『666』(1971年)です。
真っ赤なジャケットがまず目にまぶしい。中央に黒い四角があり、そこに白抜きで666の数字が配置されている。その上にヨハネの黙示録の一節が引用されているが、「666とは獣の数字である」と書かれている。目に痛いほどの赤、そこにくっきり浮かび上がる「666」。妙な不安感を煽るとともに、邪教のシンボル的なイメージも与えるジャケット・デザインになっている。
APHRODITE’S CHILDは、ギリシャのヴァンゲリス・パパタナシューを中心に結成されたプログレ・バンド。1968年に『END OF THE WORLD』、1969年に『IT’S FIVE O’CLOCK』を発表。
ヨーロッパ圏で人気を得た。彼らは1970年の末ごろに本作のレコーディングを行ない、1971年には完成させるが、アナログ2枚組のヴォリュームであることに加え、女優のイレーネ・パパスが喘ぎ叫びまくる「∞」をはじめとしたアヴァンギャルドな曲の存在もあって、彼らの所属レコード会社のマーキュリーが発売を拒否。1972年にマーキュリー傘下のヴァーティゴから発売されるが、その時にはAPHRODITE’S CHILDの活動は停止していたとか。
本作のテーマになっているのは、新約聖書ヨハネの黙示録。それを熟読してから本作を聴くと面白さが倍増する。確かにとっつきにくいアルバムだけど、実験精神が尊重された70年代前半、プログレッシヴ・ロックの時代を象徴する傑作です。ここでは「The Four Horsemen」を聴いていただきましょう。「あ、なんか普通じゃない!」っていうのが、わかってもらえるかと思います。
それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。
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