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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第六十一回 GROBSCHNITT 『MERRY GO ROUND』

『レコード・コレクターズ』2022年5月号は、同誌の40周年を記念して、「今聴くべき60年代アルバム200」という企画になっている。同誌では、25周年を迎えた2007年5月号で「60年代ロック・アルバム・ベスト100」という企画を行なっていて、今回はそのリニューアル版となる。

1960年代に発表されたロック・アルバムから、各選者が「これぞ」と思うものを、1位~30位までにランク付けして選出。それを集計し、ランキング形式で200枚紹介するというもの。まだ発売前かと思うので、詳細は書かないでおこうと思うが、僕も参加させていただきました。

新たなロックのスタンダード名盤を!と色々ぶっこんでやろうとか、こんなん選んだら批判されるんちゃうかとか、前回の企画ではとりあげられなかったアルバムを入れたいとか、若い音楽ファンに「発見」してもらいたいとか。まあ色んな狙いを定めてみたものの、ちょうど選盤の時期に多忙の極み&体調不良が重なってしまい、最終的に「えいやっ!」て感じで選びました。

例のごとく、僕が選んだ30枚の中でランキングに入賞しなかったものもありまして、このコーナーを借りて紹介させていただきたい。


まずは、僕が30位に選んだTASTE『TASTE』。

アイルランドが生んだギター・ヒーロー、ロリー・ギャラガーのプレイは、この頃からキレキレです。彼のギターは、譜面におこせない音に魅力がある。これは聴いてもらわないとわからないなあ。70年代以降のソロ作も入手しやすい状況にあるので、若い人にもっと聴いてほしい。おすすめは、『TASTE』のトップに収録された「Blister On The Moon」です。

Blister On The Moon

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続きまして、28位に選んだFREE『TONS OF SOBS』もランキング外でした。

FREEのアルバムの中で一押しをどれにするのかというのは、人によって悩まれるところかも。僕はデビュー作の『TONS OF SOBS』を偏愛していて、これを入れないわけにはいきませんでした。デビュー作特有の前のめり感というか、2作目以降にはない緊張感や勢いがあるように思える。おすすめは、オープニングのイントロに続く「Worry」です。

Worry

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24位に選んだINCREDIBLE STRING BAND『WEE TAM & THE BIG HUGE』。

これは前回のコラムが前フリになっていたりするんだけど、ランキング外でした。後にも先にも、ここまで個性的な音を出していたユニットはいないでしょう。『WEE TAM & THE BIG HUGE』は、そんな彼らの創作意欲が爆発していた時期のダブル・アルバム。特に本作は宗教的なテーマも盛り込まれていて、崇高な雰囲気さえ漂っている。最初はピンとこないかもしれないが、ハマれば一生愛したくなる名作。『THE BIG HUGE』のラスト曲「The Cirle Is Unbroken」は、ISB史上の最高傑作と思います。

The Cirle Is Unbroken

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14位に選んだGRAHAM BOND ORGANISATION『THE SOUND OF 65』もランキング外。

グレアム・ボンドはブライアン・オーガーとともに、ジャズやブルースなどの垣根を取り払ったパイオニアとして、もっと評価されてもいいと思うんだけど。GRAHAM BOND ORGANISATIONは、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー、ディック・ヘクトール・スミスが在籍し、CREAMやCOLOSSEUMの源流ともいえるユニット。それだけでスゴイでしょ?グレアム・ボンドは1970年代にもGRAHAM BOND’S MAGICK名義などでエキセントリックかつ挑戦的なアルバムを連発しています。関連作、まとまって再発されないかなあ。『THE SOUND OF 65』の中では、「Oh Baby」がおススメです。

Oh Baby

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その発展形ともいえるCOLOSSEUM『VALENTYNE SUITE』を12位で選んだけれども、これもランキング外でした。

ジャズ、ブルースをベースにしながら、組曲形式というクラシックの手法も取り入れたタイトル曲は、ロックというジャンルの可能性に果敢に挑んだもの。デイヴ・グリーンスレイドのキーボード・ワーク、手数の多いジョン・ハイズマンのドラムに痺れます。

Valentyne Suite

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5位に選んだMOODY BLUES『DAYS OF FUTURE PASSED』は、2007年5月号の企画でも選ばれてなくて、今回はどうか?!と思ったけどダメでした。

オーケストラとロック・バンドががっぷり四つに組みあった最初期の試みというだけでなく、一日の始まりから夜が訪れるまでを描いたコンセプトに基づくアルバム作り、それぞれがポップ曲としても高いクオリティにあることも含めて、画期的な作品だと思うんだけどな。ラストを飾る「Nights In White Satin」は名曲です。

Nights In White Satin

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さて、コラムの本題。今回はドイツのGROBSCHNITTです。今年の3月に彼らの1970年代のアルバムが紙ジャケットで再発されている。その記事も『レコード・コレクターズ』の同誌で書かせていただいたのだけど、いい機会なので、こちらでも紹介したい。というのも、GROBSCHNITTって、ジャーマン・ロック、ジャーマン・プログレの中では名前を知られた存在だが、その知名度の割に、音楽的な評価が定まっていないように思いませんか?というか、音楽性をドンドン変化させていったので、アルバム毎に魅力が異なっていて、ゆえにバンド自身の個性や魅力がどこにあるかというのを「これ」を言いづらい。それはジャケットのセンスにも共通していて、同じバンドとは思えないほどテイストがバラバラ。

まずは、1972年のデビュー作『GROBSCHNITT』。

中央に配置されたナイフ、首と腕のない男など、ルネ・マグリットを思わせるシュールなデザインのジャケットになっている。ツイン・ドラムという編成も変わっているが、音楽的にも雑多で、サイケかつシアトリカルな混沌としたサウンド。それにふさわしいジャケットといえるかもしれないが。

彼らはツイン・ドラム編成を早々と捨て去り、1974年に2作目『BALLERMANN』を発表。

当初からステージでシアトリカルな演出を行なっていたこともあり、そのライヴの写真をジャケットにあしらっている。いたってシンプル。

1975年の3作目『JUMBO』では、一転してコミカルなイラストのジャケットに。

飛行機に海賊や犬など、様々な人物や動物が乗り込んでいるという、子どもにも受けそうなデザイン。音楽的にもデビュー作でのアクの強さが抜け、演奏も楽曲も洗練されたものに。

1977年発表の『ROCKPOMMEL’S LAND』では、一気にプログレ色が強まる。

アルバム全4曲で、オリジナルの物語を描くストーリー・アルバムである。ジャケットも見ての通りロジャー・ディーンが手掛けている・・・・・・と、思わず間違ってしまうほど、バンド・ロゴのデザインにしてもロジャー・ディーン風だが、本作のイラストを手掛けたのはハインツ・ドフライン。当コラムでも紹介したBIRTH CONTROL『HOODOO MAN』などを手掛けた人物だ。急にファンタジーを打ち出したジャケットです。

1978年のライヴ作『SOLAR MUSIC』を挟んで、1979年に発表されたのが、今回特に紹介したい『MERRY GO ROUND』。

コンセプト作ではないが、前作でも感じられたYESやGENESIS、CAMELなどの影響を感じさせるメロディや曲構成に、彼ら自身の音楽的なユーモア・センスが溶け込んでいる良作です。

ジャケットにはミニチュアのジオラマが写っている。小さな画面内に様々なものが配置されていて、細部をあれこれ見る楽しみに溢れている。裏ジャケットでは同じジオラマの夜の風景になっていて、表と比べて見ると、ハシゴが移動していたり、傘が閉じられていたり、卵が割れていたりと、間違い探しみたいな楽しさもある。

彼らのアルバムの中では最もよく出来たジャケットではないだろうか。紙ジャケットでもその面白さは十分に味わえる。ということで、同作のタイトル曲「Merry Go Round」を聴いていただきましょう。

Merry Go Round

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今回紙ジャケットで再発されたのは、1970年代の作品だけ。GROBSCHNITTは1980年代も活躍し、数枚のオリジナル・アルバムを発表している。音楽的にはシンフォ&メルヘンチックなプログレ色は希薄となり、ハード・ロック、ニュー・ウェーヴへとシフトしている。ジャケットのセンスもイマイチなものが多いが、内容的には悪い作品ではないので、こちらも紙ジャケ再発を期待したい。


それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。



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