2022年3月11日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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『レコード・コレクターズ』2022年3月号の特集は、「究極のギター・ソロ 日本のロック編」でした。まあ色々な感想があるかと思いますが、ギター・ソロに注目して日本のロックを聴き直すという、そういう機会にしてもらえたらと思います。
改めて説明しておくと、今回の企画は参加したライターさんが、「これぞ!」と思う20曲を選出。その中から編集部でセレクト、各ライターさんに原稿依頼があるという段取りでした。
僕が20曲選んだ中から書かせていただいたのは、カルメン・マキ&OZ「空へ」、憂歌団「胸が痛い」、LOUDNESS「Crazy Doctor」、B’Z「ギリギリChop(Version51)」、X JAPAN「Silent Jealousy」の5曲。『レココレ』でB’ZとX JAPANのことを書く日が来るとは!
自分が選んだアーティスト、楽曲を他の人が書かれていたものもあった。それはそれで満足。しかし選ばれなかった曲は、やはり残念無念。ということで、例によってここで晴らさせていただきます。
今回の特集は、60~90年代しばりということがあったから仕方がないけど、ALDIOUSやBAND MADE、LOVEBITESとか、ガールズ・メタル・バンドのギタリストも入れたかったなあ。それでもこのお方は入れておこうと、SHOW-YA(五十嵐美貴)「私は嵐」を選出したんですが採用されず。日本の女性ハード・ロック・ギタリストの草分け的存在ですよ。
他にも、聖飢魔Ⅱ(ジェイル大橋)「Fire After Fire」やMOONDANCER(沢村拓)「哀しみのキャンドル」なども選んだけれど採用されず。だいぶ無念だったのは、ALFEE(高見沢俊彦)「ジェネレーション・ダイナマイト」で、これはYouTubeにも音源がアップされているので、ぜひ聴いてみていただきたい。ALFEE版RAINBOW「Kill The King」といえる名曲です!
さて、コロナが収まりませんね。それに振り回されることも多いし、人との話題もコロナのことばかりだったりして気が滅入る。閉塞的な状況や周囲のネガティヴな言動などを受けて、仕事に行きたくないとか、気分が落ち込むとかいうコロナ鬱という症状もあるらしい。
そんなこととは関係なく、ただ、もう単純に働きたくない。よくよく考えたら人生は短いよ。その大半を仕事に費やしているのは、それが正しい人生の使い方なのかな、とつくづく思う。ローンもあるし、子供の教育費や家族の生活費のために働かなあかんというのも真っ当な理由だけど、何とかならんかな。つまり、働かんで、生活できんかな?という中学生ぐらいが考えそうなことを、今も真剣に考えている。
その結論として、宝くじを買っています。まあ発想が単純。競馬とか競輪は詳しくないので、一番手っ取り早い感じの一攫千金といえば、宝くじだろう、と。しかし、これまでにどれぐらい宝くじにお布施をしたか。全くといっていいほど御利益はない。と思ったら当たっていました!ロト6の末等1000円だって?!もうそんな小さい金額ええねん!億当たらんかい!
という、どうにもなんか気持ちがギスギス、クサクサしていて、ああ、なんか現実逃避したいなあという時に、無性に聴きたくなるのがINCREDIBLE STRING BAND(以下ISB)です。
ロビン・ウィリアムソンとマイク・ヘロンの二人を中心としたイギリスのフォーク・ユニット。どこか浮世離れした、サイケデリックな、草や風の匂いを感じさせたり、童話のようなファンタジーの世界だったり、小さいことへのこだわりなんかどうでもいいような、独自のフォーク・サウンドが心を癒してくれます。
そんなISBのアルバムのなかでも、ジャケットからして脱力感抜群の『I LOOKED UP』(1970年)を紹介したいと思います。
これは、どうですか?と丸投げしたくなるヘタウマなイラスト。就学前の子供が書いたみたいと言ったら言い過ぎか?当時の人たちはどう感じたんだろう。戸惑わなかったのかな?
まずジャケット中央の上に飛んでいる人。体をひねっているんだろうけど、デッサンこれでいいかな?バンドのロゴを持ちながら飛んでいる二体の生き物。右側はペガサス?左側はもう何が何だか得体が知れない。下で踊っている四人の人物。羽が生えているようにも見える。肌の色、髪の色の配色もまともな感じではない。見れば見るほどに、脱力してしまうセンス。
アメリカなどでは、ジャケット・デザインが変更され、イギリス盤裏ジャケットに使用されていたメンバー写真が表に採用されている。
イギリス盤ジャケットのイラストを手掛けたのは、ジャネット・シャンクマン・ウィリアムソンという女性。ISBのアルバムのジャケット写真を手掛けていたり、稀代の迷作である次作『U』でも彼女がイラストを手掛けている。メンバーの活動にも深く関わっていた人物らしい。
このジャネット・シャンクマン・ウィリアムソン、デイヴィッド・ホックニーやリチャード・ディーベンコーンといった有名ポップ・アーティストの元でアートを学んだという。ISBやロビン・ウィリアムソンのマネジメントを手掛けた後、2001年にジャネット・ウィリアムソン・ミュージック・エージェンシーという会社を設立して、アーティストのブッキングなどを手掛けている。マイク・ヘロンの恋人で、ISBのメンバーでもあったローズ・シンプソンは、後にウェールズのアベリストウイスという町の町長を務めたりと、ヒッピー的な自由人のようでいて、みんなバリバリ仕事してます。ちょっと反省したりして。
ごく簡単にISBの歴史を紹介すると、クライブ・パルマー、ロビン・ウィリアムソン、マイク・ヘロンのフォーク・トリオとしてスタートし、1966年にデビュー・アルバム『THE INCREDIBLE STRING BAND』を発表。
クライブ・パルマーが脱退して、ロビン&マイクのデュオとなる。1967年に『THE 5000 SPIRITS OR THE LAYERS OF THE ONION』を発表。
この頃からサイケデリックなフォーク・スタイルが一気に爆発。歌詞の内容も、音楽的にも多彩さを増していく。
1968年の『THE HANGMAN’S BEAUTIFUL DAUGHTER』では、ロビン・ウィリアムソンの恋人のリコリス・マケクニー、マイク・ヘロンの恋人のローズ・シンプソンが参加している。
同年に『WEE TAM & THE BIG HUGE』というダブル・アルバム(アメリカ等ではセパレート発売)を発売。僕はこれがISBの大傑作と信じて疑わない。
1969年『CHANGING HORSES』ではマイク、ロビンともに15分近い大作を手掛けるなど、よりプログレッシヴな方向性になり、
続いて発表されたのが『I LOOKED UP』だった。それにしてもなんというジャケットだろう。
内容的には、安定のサイケデリックで脱力感十分のフォーク。1曲目のマイク・ヘロン作「Blac Jack Davy」から、楽しそうやなあという雰囲気が濃厚。
ロビン・ウィリアムソン作の「Pictures In A Mirror」なんて、ふざけてるんちゃうか?という歌い方やリコリスのイノセントすぎるコーラスとか、浸っているだけで別世界へ連れて行ってくれます。
最高なのは、マイク・ヘロン作の「This Moment」で、終わりかけのところでリコリスがコーラスを失敗して、マイクが笑いながらフォローしている様子を、そのまま録り直しもなく収録している。本作のプロデュースは名匠ジョー・ボイド。ISBを愛し、長年にわたり彼らのアルバムでプロデュースしている。しかし、このキュートなミスを残したのはエライわ!
この「This Moment」を聴きながら、『I LOOKED UP』のジャケットを見る。すると、ああ、これはこれでISBらしいなあと思えてきてしまう。「何かよくわからんでも、楽しそうやったらいいやないの!」と言われているような気もする。
それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。
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