2021年12月24日 | カテゴリー:カケレコ新品棚お散歩隊,世界のロック探求ナビ
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ひとつのキーワードを頼りに新品棚前を散歩し、メジャー盤、ニッチ盤を問わず、独断と多少の偏見まじりで新品タイトルをご紹介させていただいている新品棚お散歩隊。本日は、寒い日だからこそズキズキと突き刺さる憂鬱さであえて心に鞭打つ「有痛性メランコリック」をキーワードに作品をピックアップ!
■JAMES MCCARTHY / BORN A LOSER
米中西部はカンサス州出身のSSW、71年の自主制作盤。とにかく歌声が素晴らしく、とろけるように甘くメランコリックなヴォーカルが胸に切々と迫ります。流れるように美しいメロディもまた絶品で、自主制作のレベルを超えています。深夜でひっそりとアコギ爪弾きをバックに宅録されたような、そんなプライヴェート感がヴォーカルとメロディから溢れ出る繊細なリリシズムを最大限に閉じ込めています。ドリーミーなSSWのファンはもちろん、エリオット・スミスやショーン・レノンあたりのファンにもオススメな逸品。
■WARMRAIN / BACK ABOVE THE CLOUDS
イギリスの新鋭プログレ・グループによる19年デビュー作。PINK FLOYDやPORCUPINE TREEからの影響が強い、メランコリックに揺らめく音空間が美しいモダン・プログレを鳴らします。幻想的に響くアコギのリフレインとたなびくシンセが重なり合って生まれる優しくもダークな陰影を帯びたサウンドの中を、ギルモア憧憬のブルースフィーリングと現代的なソリッドなキレの良さを備えたギターとデリケートに歌う男性ヴォーカルが交錯、ドラマチックに広がる音世界で聴き手を圧倒します。テクニカルに攻めるタイプではなくテンポは全体にゆったりとしていますが、丹念に色彩を折り重ねて情景を描くようなアンサンブルが静かな感動を呼び込む名品です。IT BITESのJohn Mitchellが参加。
■PROAGE / DIFFERENT STATE OF REALITY
ポーランドの新鋭プログレ・バンドによる17年デビュー作。ピンク・フロイド的な浮遊感と透明感あるメランコリーに、現代のバンドらしい叩きつけるようなヘヴィネスを加えた、硬軟自在のギターワークを軸に展開するプログレッシヴ・ロックを演奏。キーボードは控えめながらも哀感を帯びたオルガンをメインにヴィンテージな味わいを加味していて、ギターだけではややヘヴィに寄っていきそうなアンサンブルを絶妙にコントロールしています。男性的な低めのトーンの朗々としたヴォーカルも魅力で、メランコリックな叙情パートでは悩ましげな表情を滲ませる表現力ある歌唱で、クリムゾン的ヘヴィネスが現れる激しいパートでは声を歪ませ迫力ある歌唱を聴かせており特筆。フロイド憧憬を核に持ちつつ、モダンなヘヴィネスと荒涼感で包み込んだ、実にポーランド産らしいサウンドを聴かせる力作です。
■OUTSIDE / NAKED
フランス北東部のストラスブール出身で98年にデビューしたプログレ新鋭バンド。2016年作4th。荒々しいリズム・ギターやエッジの立ったトーンで炸裂するリードが印象的なギター、非常に生々しいトーンのタイトなドラム&ベースはモダンさを感じさせる一方で、幻想的なトーンで全体を包み込むキーボードはネオ・プログレ直系。そのコントラストがドラマを生むアンサンブルが印象的です。フランスらしいシアトリカルでエモーショナルな歌唱が魅力の男性ヴォーカル、様式美ハード・ロックにも通じるドラマティックなメロディ・ラインも特筆。なんともしっとりとメランコリックなシンフォニック・ロックの好作品です。
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