2021年10月8日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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『レコード・コレクターズ』2021年10月号の特集は、「90年代ハード&ヘヴィ・アルバム・ランキング100」だった。同誌8月号の「70年代編」、9月号の「80年代編」に続く3か月連続の企画。僕は3号続けて参加させてもらったが、僕が選んでも本ランキング100に入らなかったアルバムがいくつかあった。「70年代編」では8枚、「80年代編」でも8枚があり、それらに日の目をみせてやろうと、前回、前々回の当コラムで曲付きで紹介させてもらった。
さて「90年代編」だが、なんと僕が選んだ30枚のうち、15枚が本ランキングに選出されず! しかも、結構上位で選んだものが入らなかった。さすがに全部を曲付きで紹介するのは、担当の佐藤さんにもご迷惑がかかるので、僕が上位に選んだけどランキング外だったものを楽曲付きで紹介させてもらいたい。
まずは、僕が2位に選んだSCORPIONS『CRAZY WORLD』(1991年)。本国ドイツでも1位を記録したヒット作。ところが、「アメリカナイズされすぎ」とか、「ウリ・ジョン・ロート時代の方が良かった」とか否の意見も多かった。ヒットすると往年のファンが、なんとなくアンチになるパターンだろうか。
わからなくもないが、シャープかつモダンなサウンドで、パワー・バラードあり、キャッチーなハード・ロックあり、翳りのメロディもありと、SCORPIONSがこれまで培ってきたものと90年代的なサウンドが絶妙にミックスされている。東西ドイツの統一をテーマとした「Wind Of Change」も収録し、あの時代を象徴する作品でもあります。ここではその「Wind Of Change」を聴いてもらいましょう。
次は3位に選んだSAVATAGE『STREETS:A ROCK OPERA』(1991年)。SAVATAGEの過小評価ぶりには本当にがっかり。アメリカのヘヴィ・メタル・バンドで、デビュー当時は割とオーソドックスなスタイルだったが、途中からドラマチックな方向性を強め、本作でストーリー作に初挑戦。しかし、QUEENSRYCHE『OPERATION:MINDCRIME』の二番煎じ的にとらえられたのか、発表当時はあまり話題にならず。
ジョン・オリヴァの声が好き嫌いを分けるかもしれないが、とにかくラスト曲「Believe」が感動的。絶望の中にあるほのかな希望を描いた同曲は、僕自身が個人的に辛かった時期に何度も聴いて勇気をもらった一曲で、今聴いてもウルっときます。奥村裕司さんがSAVATAGE『DEAD WINTER DEAD』(1995年)を22位で選ばれていたが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争をテーマに民族や宗教を超える愛を描いた同作も、涙無くして聴けない傑作です。
4位に選んだTHUNDER『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)もランキング外でした。消えようとしていたブリティッシュ・ハード・ロックの魂を次世代へつなげた、という貴重な存在で、90年代を代表するバンドとして記憶しておきたい。
一度解散するも、後に再結成し、近年までクオリティの高いアルバムを発表し続けている。そのデビュー作となるのが同作。ここでは「Higher Ground」をおススメ。
6位に選んだのは、ドイツのハード・ロック・バンドFAIR WARNINGのデビュー作『FAIR WARNING』(1992年)。「80年代編」でも選んだZENOのベーシスト、ウレ・リトゲンが結成したバンド。
周りがグランジ一色になった1992年に、良質のメロディとポジティヴさを武器に登場。メロディ愛好派にとって希望の星だった。いわゆるメロハー(メロディック・ハード・ロック)という言葉も、同作辺りから言われるようになったのでは?そんな彼らの代表的メロハー曲「The Call Of The Heart」をどうぞ。
8位に選んだのは、DIZZY MIZZ LIZZYのデビュー作『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)。デンマークのハード・ロック・トリオで、グランジを思わせる重く暗いギター・サウンドを持ちながら、メロディには北欧出身らしい美しさとほの暗い哀愁が宿っている。
モダンでありながら、どこかにレトロな雰囲気もあるという稀有な存在。ここでは感動的な「Silverflame」を。
9位に選んだDEF LEPPARD『ADRENALIZE』(1992年)は、前作『HYSTERIA』に比べると一般的評価は低いかもしれないが傑作と信じて疑わない。ギターのスティーヴ・クラークがアルバム制作前に他界するという最悪のアクシデントを乗り越えて発表された作品。
世はグランジ全盛期。80年代的ハード・ロックやヘヴィ・メタルの人気低迷期に、ポジティヴなロック・サウンドの同作で世界的ヒットを記録した。しかも「ロックしようぜ!」という曲を1曲目にしていたのが痛快だった。その「Let’s Get Rocked」をどうぞ。
この調子でいくと終わらないので、以降は簡単に紹介しておきます。興味があれば音を聴いてみてください。
まずは、12位に選んだオランダのWITHIN TEMPTATION『ENTER』(1997年)、そして14位に選んだフィンランドのNIGHTWISH『OCEANBORN』(1998年)です。どちらも女性ヴォーカルもののゴシック・メタル・バンド。女性の声の華麗さや美しさというものを、そのまま武器としながら、陰影に富んだヘヴィ・メタルに溶け込ませた音楽性に衝撃を受けた。女性ヴォーカル好きの人は、ぜひチェックしてみてほしい。
15位に選んだARCH ENEMY『BURNING BRIDGES』(1999年)は、ドイツ産メロデス・バンドのアルバム。デス・メタルに拒否反応がある人でも、彼らのとにかくかっこいいギター・リフ、ギター・フレーズの嵐には、思わず耳をとめてしまうのではないかと。
18位に選んだのは、スウェーデンのANEKDOTENのデビュー作『VEMOD』(1993年)。これはカケレコ・ユーザーも好きなはず。KING CRIMSONに通じる重い、暗い、でも美しい音を90年代に打ち出した異端的存在!
20位に選んだRHAPSODY『SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS』(1998年)は、シンフォニック・メタル・の金字塔ですよ!
22位に選んだUFO『WALK ON WATER』(1995年)は、なぜか往年のファンたちの間でも低い評価を目にすることがある。でも、UFOらしさは十分にあるし、マイケル・シェンカーが生み出すギター・リフも魅力的なものばかりで、いい作品なんだけどなあ
26位に選んだDEVIN TOWNSEND『INFINITY』(1998年)は、スティーヴ・ヴァイなどと共演しているシンガーのソロ作。ほとんど一人で作り上げたヘヴィなウォール・サウンドとポップなメロディが気持ちいい。
28位のTHE BLACK CROWESは2作目と3作目がランキング100に選ばれていたけど、僕はデビュー作『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)を選びました。
29位に選んだイギリスのハード・ポップ・バンドTHE WILDHEARTS『P.H.U.Q.』(1995年)、30位に選んだイギリスのドゥーム・メタル・バンドCATHEDRAL『THE ETHEREAL MIRROR』もランキング外。残念!
さて、当コラムの本題、ジャケットの話を。前回に続いてバスクもの、ITZIAR『ITZIAR』(1978年)を紹介したい。前回の当コラムで紹介したITOIZ 『EZEKIEL』に参加していた女性シンガーのイツィアール・エギレオールが発表した唯一のソロ作。オリジナルはレア作だが、これまでに日本でも何度か再発されている。
満月が照らす夜の森。満月が明るすぎるせいか、森の向こうは漆黒の闇になっている。その奥にキラリと何かが光っている。手前の電線と思しき所には色とりどりの鳥たちがとまっている。その森に浮かび上がるITZIARの文字。フォークを基調とした、ほの暗さのある音楽性と見合った、幻想的雰囲気のジャケットになっている。
ゲートフォールドの裏ジャケに同じような満月が、と思ったら、これは電灯の明かり。そこにも鳥がいるが、裏ジャケ左隅に描かれたタバコの煙をまともに受けている。このタバコの煙は電灯の前を横切っているが、電灯は電線の後ろを通っているという、エッシャー的な遠近感のトリックアートみたいになっている。
音楽的にはバスク系に多いフォーク調が中心だが、多くのミュージシャンが参加してバックアップし、ITOIZに通じるジャズ・ロック調の曲もあるなど音楽的にも多彩。だが、イツィアール・エギレオールの透き通るような美声が映えるのは叙情性の強い曲で、ここでは1曲目の「Ameskoi」を聴いていただきたい。表ジャケットのイメージにもピッタリの曲かと思います。
それではまた世界のジャケ写からでお会いしましょう。
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