2021年2月12日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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緊急事態宣言が3月まで延長されることに。僕が住む大阪の新規感染者数は下がってきている感じがあり、そのうち緊急事態宣言も解除されるんじゃないかと言われているが、さてどうなることやら。とにかく一日でも早い新型コロナウイルス感染症の収束を願うばかりです……と書き続けてもうすぐ一年が経つ。不安や苛立ち、ストレスを抱えている人も多いかと思いますが、こんな時こそ音楽でも聴いて、気持ちだけでも荒まないようにしたいものです。
さて、『レコード・コレクターズ』2021年2月号はご覧になられたでしょうか?「この曲のドラムを聴け!」という企画で、ドラムが印象的な曲が101曲紹介されている。僕も選曲等に参加させてもらったが、この企画では、まず各ライターが「この曲のドラムが好き!」というものを20曲選び、それを編集部が調整して101曲に絞っている。そうすると、当然ながら僕が選んだけれど採用されなかった曲も出てくる。
『レコード・コレクターズ』では、2020年5月号でも「究極のギター・ソロ:ロック編」という企画があった。そちらにも参加させてもらったが、僕が選んだけれど採用されない曲があったので、前回の当コラムで紹介させていただいた。担当のカケレコ佐藤さんが、各曲の音源までアップしてくださって、選考外になった曲たちの無念も浮かばれました!
ということで、今回は『レコード・コレクターズ』2021年2月号の「この曲のドラムを聴け!」で僕が選んだけれども採用されなかった曲&ドラマーたちの弔い合戦(?)です。前回のギター特集の時は、曲が選ばれなくても、その曲で弾いているギタリストは採用されていたというケースが多かったが、今回はドラマーもろとも選ばれなかった曲が7曲もあった。これは救済してあげなければ! 佐藤さん、音源よろしく!
まずは、GENTLE GIANTのジョン・ウェザース。彼がドラムを叩く姿はぜひ動画で見てほしい。あの複雑怪奇なGENTLE GIANTのリズムを難なくこなすだけでも立派だけど、顔をゆがませながら、チープなドラム・セットで、あの難リズムをパスパス叩く姿に痺れます。僕が選んだ曲は「Runaway」です。ガラスの割れる音が徐々にリズムへと変化していく導入部も最高ですね。
選ばれなかった二人目はピップ・パイル。初期GONGを支えたドラマー。デヴィッド・アレンが作る異世界の音楽みたいな楽曲を、軽やかに叩いている才人です。曲は「You Can’t Kill Me」で。エキセントリックなデヴィッド・アレンに合わせるのは大変だったろうなと想像されるが、同曲が収録されたアルバム『CAMEMBERT ELECTRIQUE』の内ジャケに写るピップ・パイルの衣装を見ると、ピップも結構キてる奴なのかもと思わせてくれます。
三人目はスコット・トラヴィス。JUDAS PRIEST『PAINKILLER』でシャープなバスドラを聴かせていたスコット。残念ながら1990年発売の同作は対象外だったので、それ以前に参加していたRACER Xの「Scarified」を挙げた。アグレッシヴだけど、どこかクールで、バスドラのドコドコを心地よく聴かせてくれるスコット・トラヴィスは、JUDAS PRIEST復活の立役者だと思う。
DREAM THETAERのマイク・ポートノイも選ばれなかった一人。彼らのデビュー作『WHEN DREAM AND DAY UNITE』から「Ytse Jam」を選出。彼の歌心があるドラムは、以降のプログレ・メタルにおけるドラムの手本になっていくという意味でも重要なドラマーだと思います。
この人選ばれなかったか!と驚いたのはフリオ・キリコ。イタリアン・プログレのARTI E MESTIERIのドラマー。「こんなに叩くかね?」というほどに手数が多く、時に主旋律を聞きもらしてしまうぐらい、フリオ・キリコのドラムばかりが耳に入ることも。曲は『GIRO DI VALZER PER DOMANI』収録曲の「Mirafiori」です。
この人は選ばれないだろうな!と思ったら、やっぱり選ばれなかったのはテッド・マッケンナ。ロリー・ギャラガー、マイケル・シェンカー、グレッグ・レイク、ゲイリー・ムーア等々、凄腕ギタリストのリズムを支えた敏腕ドラマー。2019年に他界したけど、それほど再評価もされてないので絶対に書きたいと思ったのだが……。その個性がわかる名演を選んでやる!と息巻いたのに、なぜかSENSATIONAL ALEX HARVEY BANDの「Faith Healer」が頭から離れない! この曲でテッドはほぼ活躍していないし、TV出演時でこの曲を演奏した時も「つまんねーなー」って顔で叩いている。テッド、大丈夫だ、このあと名だたるギタリストと共演するんだから、と言ってあげたい。しかし、「この曲のシンガーを聴け!」企画があったら、アレックス・ハーヴェイは1位に選びたいな。いや3位、まあ5位? うーん20位以内には入れたい。
最後はDEF LEPPARDのリック・アレン。大ヒット作『HYSTERIA』のレコーディング前に事故で左腕を失ってしまうという、バンドにとっても致命的といえる状況でも、メンバーは誰一人あきらめなかった。リックはそれに答え、ドラムメーカーのシモンズ協力の下、キック・ペダルを増やしたドラム・セットを開発。ハンデをまるで感じさせないところまで持っていくには、もちろんリック自身が血のにじむような努力をしたに違いないけど、それをサラッと、まるで苦労を感じさせず心底楽しいハード・ロックをやり続けているDEF LEPPARD、やっぱり素敵なバンドですよ。曲は「Run Riot」を選出。
ということで、コラムの本編。今回はもう決まっておりまして、FLOWER KINGSの最新作『ISLANDS』です。FLOWER KINGSは、元KAIPAのギタリスト、ロイネ・ストルトが率いるプログレ・バンド。1994年にロイネのソロ作『THE FLOWER KING』が発表され、それがバンドとして発展。FLOWER KINGSというバンドとして、1995年に『BACK IN THE WORLD OF ADVENTURES』を発表して以降、『ISLANDS』が14作目になる。彼らのアルバムは、いずれもロイネの叙情的なギターがリードするメロディックなプログレ良作なのだけれど、初期作品のジャケットにはイマイチなものもある。まあ各人の感じ方だと思うが。
ファンタジー系のジャケットというのは、実はとても難しい。特に宇宙系ファンタジーのイラスト・ジャケットは、ややもすると滑稽にみえることがある。それもあってか、FLOWER KINGSの『FLOWER POWER』(1999年)とか、『UNFOLD THE FUTURE』(2002年)は、僕の中では平均点以下のジャケット・センスで、続く『ADAM & EVE』(2004年)には正直ガッカリだった。ところが、『THE SUM OF NO EVIL』(2007年)以降、彼らのジャケット・センスがグッとアート性の高いものになってきている。
そして最新作『ISLANDS』だ。カケレコ・ユーザーなら一目でわかるだろう。そう、、かのジャケット・アートの巨匠ロジャー・ディーンが手掛けているのだ。ロジャー・ディーンって、今76歳だよ?! そのイマジネーションの豊かさときたら!という感動がまずある。ジャケットをよく見ると、空中に浮かぶ島に二人の人影が見える。中央の平らな岩の上には五人の人影が。この両者の間は近いようでもあり、かなりの距離があるようにも見える。また、空中に浮かぶ島は、中央の岩場に近づこうとしているのか、それとも遠ざかろうとしているのか、見る人の現在の心境によって見え方が異なってくる。本作のテーマは孤独や別離。なんとも絶妙なジャケット・アートじゃないか!
曲自体はハートウォーミングなメロディに溢れていて、柔らかかつピースフルな雰囲気のアルバムになっている。前作に比べるとコンパクトな楽曲が多くなっていて、プログレ作だと大上段に構える必要はない。FLOWER KINGSの根本にあるリリカルでファンタジックなセンスは変わらず、モーグやメロトロンといったヴィンテージ・キーボードの音色が似合う温かみのある楽曲が詰まっている。新型コロナウイルスや、それに伴うストレスにさらされて疲弊気味の心にも、スーッとしみ込んでくる作品だ。
それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。
Balck Swan
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