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スタッフ増田の「このリフを聴け!」第一回:ARMAGEDDON「Buzzard」

こんにちは。カケハシ・レコードのスタッフ増田です。

突然ですが、ハード・ロックの一番の魅力とは何でしょうか?

音の重量感、ソリッドな切れ味、力強さ、疾走感、叙情性や哀愁。人によって思い浮かぶ要素は様々だと思いますが、私の場合はずばり『リフ』。ハード・ロックの格好良さとは、言ってしまえば大部分はギター・リフの格好良さだと思っています(※個人の意見です)。

そもそもハード・ロックとは、リフによってできている音楽です。もしDEEP PURPLEの「Smoke In The Water」を思い浮かべるとしたら、誰しもが「ジャッジャッジャー、ジャッジャッジャジャー」というリフを真っ先に口ずさむでしょう。「♪スモ~ク・オン・ザ・ウォ~タ~」というサビのメロディではありません。ちょっと不思議ですよね。ポップスにしても、演歌にしても、童謡にしても、歌詞の入ってる曲なら普通は歌い出しやサビを思い浮かべるはず。ところがハード・ロックの場合、重要なのはギター>歌メロなのです。

多くのハード・ロックはギター・リフに始まり、ギター・リフに終わります。プログレ・アーティストが複雑な構成やアルバム・コンセプトに頭を悩ませたり、シンガーソングライターがメロディや歌詞の美しさを探求していた時、ハード・ロックのミュージシャンは「いかに世間の度肝を抜くギター・リフを作るか」に情熱を注いでいた…はずです。

約2~4小節の中で、限られた音階と音符を組み合わせ、どれだけ人々の心を動かせるか。これはずばり、俳句のようなものだと私は考えています。五・七・五という字数制限を設け、その中でどれだけ美しい句を生み出せるかを競う俳句のように、ハード・ロックは極めて短い『リフ』の発明が勝負となってきます。それが、私がハード・ロックが好きな一つの理由です。

そんなスタッフ増田が心動かされたリフをひたすらご紹介していくコラム「このリフを聴け!」。どうぞお付き合いいただければ幸いです。

ARMAGEDDON「Buzzard」

第一回目にご紹介するのは英国のバンドARMAGEDDONが1975年にリリースした唯一作『ARMAGEDDON』より、オープニングを飾る「Buzzard」。まずは楽曲をお聴きください。

試聴 Click!

いきなり4分の5拍子と、全くシンプルではないリフを持ってきてしまいました。曲の長さも8分あり、純粋なハード・ロックというよりはプログレ・ハードと言うべきかもしれません…。

ただ私がこれを最初にご紹介したのは、とにかく格好良いからです。アルバムの頭の1曲目には、やはりそのバンドが一番自信があり、インパクトの強い楽曲を配置するもの。その点でこのリフの存在感は中々他にはないくらい見事です。

(0:00~)
ギター単体によるDm(コード)の変拍子リフに始まり、徐々に地を這うようなベースと切れ味鋭いドラムが加わって疾走。0:55あたりで急に4分の4拍子&DmからBmに転調する瞬間はスリリングで、思わずドキリとしてしまいます。2分を過ぎた所で違う展開があり、ようやくヴォーカルが登場。バックは冒頭のギター・リフと同じかと思いきや、実は4分の4拍子&Gmの音階から始まっているところが一筋縄ではいかなさを感じます。

(3:10~)
そしてこの間奏がまた格好いい。「来るぞ来るぞ…」と思わせてから、雪崩れ込むようにスピーディーにギター・ソロへと移っていく瞬間のカタルシスと言ったら…。興奮しないロック・ファンはいないと断言できます。さらにギター・ソロ終わりもこれでもかとドラマチック。ツイン・ギター、さらにはトリプル・ギターと次々にハモリが重なって、「ここまでやるか」という位の畳み掛け具合に悩殺されてしまいそうです。

(5:28~)
さらにその後冒頭のリフ&ヴォーカル・パートに戻るのですが、今度は突然約1オクターブも低いEmにリフの音階が変化。テンポも少し遅くなり、よりヘヴィに展開したあと、急にガラリと雰囲気が変わり、どこか気の抜けたようなブルース・ハープによる洒脱なパートに。かと思えばクライマックスで再び変拍子のメイン・リフが登場、そして終わったと思ったらメイン・リフをちょっと捻ったフレーズで真のフィニッシュ。

いやあ、何と満足度の高い楽曲でしょうか…。テクニカルな変拍子&転調をバリバリ詰め込み、プログレなみの緩急のドラマチックさもありつつ、基本的にはメイン・リフを武器に終始突っ走っているあたり、まさにプログレとハード・ロックの良いとこ取りといった感じ。素晴らしい完成度です。

さて、このARMAGEDDONというバンド。ただの無名バンドではなく、YARDBIRDS~RENAISSANCEで活動したキース・レルフ(Vo)をはじめ、60年代から他バンドでキャリアを積んだミュージシャンによる「プチ・スーパーバンド」としてロック・ファンにはそこそこ知られる所となっています。

他のメンバーはDEEP PURPLEの初代ヴォーカリスト、ロッド・エヴァンスが参加していることで有名なCAPTAIN BEYONDのボビー・コールドウェル(Dr)、元STEAMHAMMERのマーティン・ピュー(Gt)、そしてレルフと共にRENAISSANCEを結成し、その後STEAMHAMMERにも参加したルイス・セナモ(Ba)。

キース・レルフが結成した新バンドと紹介されることも多い彼らですが、結成の経緯はピュー&セナモがSTEAMHAMMER解散後に昔馴染みのレルフを引き連れて渡米し、そこへ米国人ドラマー、コールドウェルが加入……という形のため、「STEAMHAMMERの後身バンド」と言った方が正しいでしょう。

試聴 Click!

そしてこの「Buzzard」は、元々STEAMHAMMERの楽曲「Penumbra」で使われていたリフを流用したもの。セナモの唯一の参加作にしてバンド最終作の72年作4th『SPEECH』は、A面を22分の大曲「Penumbra」が占める壮大なプログレッシヴ・ハード・アルバム。作品はドイツのBRAINレーベルのみからリリースされ、売り上げも振るわなかったようですが、この変拍子リフを次のバンドで再活用するあたり、ピューにとってこのリフはかなりの自信作だったのではないでしょうか。

あの名の売れたキース・レルフを伴い、一念発起して渡米、そして米国の大手A&Mとの契約も成立。STEAMHAMMER時代の遺産を使いつつ、より優れたものを世に残したいという意気込みが、この「Buzzard」の怒涛のテンションの高さから伝わってくるようです。

ただプロモーション不足などで本作の売上はあまり振るわず、さらにレルフが体調不良のため英国に帰還。その翌年76年5月、レルフが自宅でのエレキギターによる感電死で帰らぬ人となってまったことにより、バンドは解散を迎えます。

その後コールドウェルはCAPTAIN BEYONDに戻り、Cennamoはオリジナル・ルネッサンスのメンバーと共に新生バンドILLUSIONを結成。しかしピューの名前は、07年に7TH ORDERというハワイを拠点とするロック・バンドのEPにて現れるまでぱったりと途絶えてしまいます。

そんな背景も含めると、ますます本作のリフが彼のミュージシャン人生を賭けた「渾身のリフ」という気がしてきますよね。私の人生においてもTOP5に入るくらい、衝撃的で大好きなリフのひとつです。


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