2020年9月28日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
【1月26~2月1日の3枚】
現在ポーランドで最も注目すべき作品と言える、アルメニアの伝統音楽を取り入れたジャズ・ロックを聴かせたORGANIC NOISESの19年作。そのORGANIC NOISESのギタリストRobert Wiercioch&キーボーディストKarolina Wieriochを中心とする4人組バンドがこのSEGUEです。
さすが上記作にて素晴らしい演奏を披露した2人だけあって、切れ味の鋭さと哀感が同居するフレーズを次々と紡ぎ出すテクニカルなギターと、ジャズを基軸にクラシカルな美麗さも織り交ぜて鮮やかに舞うピアノが交錯、本作でも息をのむほどに技巧的で鮮やかな隙のないインストゥルメンタル・ジャズ・ロックを聴かせてくれます。
ORGANIC NOISESから民族エッセンスを抜き、よりタイトで硬質に再構築したようなそのサウンドは、「洗練の極致」と表現したいほどに完成されており圧巻!
ただ注目は技巧のみならず、ポーランド・プログレの特徴とも言えるPINK FLOYD的なメランコリーと空間的な広がりを持つも随所に散りばめてあり、陰影に富んだ幻想美が立ち上がってくるナンバーもまた魅力的です。
ずばり、テクニカルなジャズ・ロック・ファンなら必聴の一枚!
こちらはフィンランド出身、女性ヴォーカルと2人のメロトロン・プレイヤーを擁する新鋭シンフォ/プログレッシヴ・フォーク・グループによる19年5thアルバム。
民族色を帯びたパーカッション、うつむき加減につま弾かれるアコギ、うっすらと哀愁を添えるサックス、ひんやりとしたシンセ、そしてゆったりと雄大に湧き上がるような生メロトロンらが作り上げる、この世とは思えない幻想美を感じさせるアンサンブル。
そこに麗しくも少し厳かな表情で歌われる神秘的なフィンランド語ヴォーカルが生命を吹き込みます。
夢の世界のようでありながら、同時に北欧の厳しい自然情景も想起させるイマジネーションに富む演奏があまりに見事です。その音作りに大きく貢献するメロトロンは、陽だまりのように温かみある音色を奏でたり荘厳に溢れ出したりと表情豊かに本作を彩っており、近年の新鋭でもメロトロン演奏にかけてはトップクラスの出来栄えと言って良さそう。
聴いているとドイツのHOELDARLIN1stやバスクの女性シンガーITZIARなどを思い出す幻想的なプログレッシヴ・フォーク。まさに息をのむような美を湛えた名作です。
2014年に始動した、ギタリスト/マルチ奏者Celo Oliveiraと女性ヴォーカリストGabby Vessoniによるブラジル産シンフォ・プロジェクトがこのFLEESH。
本作は、彼らのサウンドに最も影響を与えるグループMARILLIONの楽曲を演奏したトリビュート・アルバムとなっています。
18年に発表されたRUSHトリビュート・アルバム『NEXT HEMISPHERE』同様にオリジナルへの愛情溢れる忠実なアレンジですが、ギターに顕著なドリーミーな響きを持つアンサンブルと、しっとりと歌い上げる麗しの女性ヴォーカルによる幻想美に満ちたサウンドは、カバーであることを忘れさせるほどにFLEESHの音となっています。
それにしても、ここまで再現度の高い演奏をたった2人でこなしてしまうとは恐るべし。特に演奏を一手に担うCelo Oliveiraのマルチ・ミュージシャンとしての実力には驚くばかりです。
オリジナルへのリスペクトに満ちたプログレ・トリビュート作品として、これは比類なき出来栄えを誇る逸品!
【1月19~25日の3枚】
最初の一枚は、ブラジルのグループによる15年ぶりとなる2ndアルバムです!
90年代以降のブラジリアン・シンフォを代表するバンドQUATERNA REQUIEMのヴァイオリニストKleber Vogelが結成したシンフォ・グループで、94年1stから15年ぶりにリリースされた19年2ndアルバム。
CAMEL/GENESISに通じるファンタジックな叙情派プログレに、ヴァイオリンがクラシカルな格調高さや古楽的な典雅な味わいを加える、奥深い響きを持つシンフォニック・ロックを聴かせます。
クラシカルな気品高いフレーズをスケール大きく奏でるヴァイオリン、アナログっぽい温かみと艶やかさを備えたシンセサイザー、泣きを帯びた哀愁のギターらが、ドラマチックに絡み合いながら描き出していく壮大なサウンドにひたすら圧倒的。QUATERNA REQUIEMでともに活動するドラマーClaudio Dantasが参加するVITRALを彷彿させる完成度の高さと言えるでしょう。
さらに注目なのはO TERCOのギタリスト&キーボーディスト、そしてSAGRADOで知られるヴァイオリン名手Marcus Vianaの参加!特にMarcus Viana参加の2曲は必聴で、VogelとVianaのヴァイオリンが左右のチャンネルに分かれてスリリングかつ優美に共演しており、現ブラジルの2大名手によるWヴァイオリンに思わず熱くなります。
QUATERNA REQUIEMやVITRALが気に入られた方は勿論、ヴァイオリン奏者が加入した近年のCASTがお好きな方にもオススメ!
続いては、故ピーター・バンクスの「最後の新作」というべき20年作をご紹介。
元KING CRIMSONのヴァイオリン奏者デヴィッド・クロスと、2013年にこの世を去ったYESの初代ギタリスト、ピーター・バンクス。
彼らが2010年8月10日に行ったセッションの素材を元に、パット・マステロット、トニー・ケイ、ビリー・シャーウッド、ジェレミー・ステイシー、ジェフ・ダウンズら豪華YES&KING CRIMSON人脈を迎えて制作された2020年作品が本作です。プロデュースはクロスとBRAM STOKERの中心人物トニー・ロウが担当。
幻想的な浮遊感に満ちたヴァイオリン&キーボードと、ゆったりと叙情的なフレーズを奏でるギター。ニューエイジ/アンビエントにも通ずる壮大なサウンドはクロス/フリップの15年作『STARLESS STARLIGHT』を彷彿とさせつつ、そこに言うまでもなく確かな実力を誇るタイトなリズム隊が加わって、ロック的ダイナミズムにも満ちた優美かつスリリングなアンサンブルを聴かせています。
ピーター・バンクスの「最後の新作」としても申し分ない完成度に仕上がった逸品です。
最後は、BIG PINKレーベルから届いたマイナー米ロックのリイシューをピックアップ!
アメリカ北東部コネチカット州を拠点に活動したオルガン・ロック・バンド、ジャズ系レーベルとして著名なRouletteレーベルより70年にリリースされた2ndアルバム。
1曲目から、手数多く疾走するドラムスとシャープなカッティングを繰り出すギターを従えて、ファンキーかつスリリングなオルガンがリードするインスト・ジャズ・ロックが炸裂していてカッコよし。ジミー・スミスの「Sagg Shootin’ His Arrow」を思い出すスピーディかつグルーヴィな好ナンバーです。
以降はソウルフルなヴォーカルに痺れる旨味たっぷりのブルース・ロック・ナンバーあり、ラグタイム調のピアノを伴い進行するゴキゲンなブルース/ジャズ・ナンバーありと、基本はブルースやR&Bを土台にしたサウンドですが、突如デイヴ・スチュワートみたいなキレのあるソロを含むEGGばりのオルガン・ロックが繰り広げられたりと、プログレ前夜のアート・ロック感覚も数曲で発揮されているのが印象的です。
しまいには『Freak Out!』に影響を受けたような奇声や怪しげな会話を盛り込んだ実験的パートまで飛び出してきてR&Bベースのグルーヴィな演奏に乗っかってきたりと、大胆かつ挑戦的なサウンドが好印象。
R&B/ブルース・ロックからアート・ロック~プログレへの過渡的なサウンドを詰め込んだ一枚と言えるでしょう。
まずは、ウクライナより登場した現代プログレきっての才人率いるグループの新作から!
英国を拠点に活動するウクライナ出身コンポーザー/キーボーディストAntony Kaluginによるプロジェクトが、前作『ECHOES FROM WITHIN DRAGON ISLAND』から1年を待たずして送り出した19年作その2!
米詩人H.W.ロングフェローと英詩人ウィリアム・ブレイクの詩をテーマにした組曲2つからなるこのアルバム、THE FLOWER KINGS影響下のサウンドをベースとする前作の作風を引き継ぎながらも、若干スケールを抑え、より細部まで丹念に神経を行き渡らせたような息をのむように優美なシンフォ・サウンドを展開します。
フェードインして勇壮に立ち上がるシンセサイザーが物語の幕開けを告げると、ハケットばりに繊細なギターとつややかなトーンのシンセがユニゾンで走り出す、これでもかファンタスティックな導入からもうシンフォ・ファンはハートを奪われること必至です。
歌声を重ねながら語り部のように丹念に歌い上げる男女ヴォーカルもグッとくるし、ハケット調のデリケートなギターはソロでは一転エモーショナルで伸びやかに飛翔するロイネ・ストルトばりの入魂プレイで魅了します。
A.Kaluginのキーボードも負けじと幻想のカーテンをなびかせるように雄大なシンセで包み込んだかと思うと、妖精の浮遊音のごとき美麗なシンセSEを散りばめて個性を発揮。
温かみ溢れるジャケット通り、瑞々しいファンタジー世界を丁寧に描き出した珠玉の一枚となっています♪
続いては、イエス・ファンや80sロック/ポップのファン注目の英ユニットをご紹介☆
90年代より活動しDavid Cross、David Jacksonらとも共演するシンガー/マルチ・プレイヤーJohn Beagleyと、18年のYESトリビュート・アルバムに参加したヴォーカリストRobin Schellによる英国の2人組プログレ・ユニットの19年デビュー作。
これが『DRAMA』~『90125』期の80年代イエスへのリスペクトに満ち溢れた「シンセ・ポップ+プログレ」なスタイルとキレのいいポップなメロディで聴かせる、愛すべきサウンドが詰まった一枚。
トレヴァー・ホーン彷彿の華やかなシンセ・アレンジにトレヴァー・ラヴィンばりの色彩感あるギターワーク、そしてジョン・アンダーソンによく似たハイトーンVoらが描く80sイエスや同時代のNW/シンセ・ポップ愛たっぷりのサウンドを全編にわたって楽しませてくれます。
ただ、そんな中にもコズミックに広がるシンセもたっぷりと織り交ぜていて、スケール大きく広がる音世界は彼らならではの個性となっています。
80sイエス好きは勿論、往年のシンセ・ポップがお好きな方にもこれはきっと刺さるサウンドですよ~!
最後に取り上げるのは、デビュー作にして堂々たる「王道」イタリアン・プログレを聴かせてくれるこちら♪
イタリアの新鋭シンフォニック・ロック・バンドによる19年1stアルバムですが、もう「これぞイタリアン・ロック!」と言いたくなる、ダークさと哀愁が対比してドラマを描き出す70年代リスペクトに満ちたシンフォが炸裂していて素晴らしいです。
ヴィンテージ・テイストのオルガンやシンセが1st時のBANCOを彷彿させるミステリアスな音空間を作り出し、エッジの立ったヘヴィなギターが突き進み、イタリア語のアクセントを強調した熱量高いヴォーカルが歌う、密度の高いアンサンブルが強烈。
ギターやシンセが落ち着き幻想的に聴かせるパートでは、クラシックの素養も感じる格調高さや仄かな地中海的エキゾチズムも醸し出していて、深みある音楽性で駆け抜けます。
最近のイタリアでは屈指と言うべき「王道」イタリアン・ロックに思わず胸が熱くなる逸品!
2019年12月以前の「今週の3枚」は下記ページにてチェックどうぞ!
【関連記事】
「これは聴いてもらいたい!」というカケレコメンドな作品を毎週3枚ご紹介。2019年7月~12月に取り上げた作品はこちらでチェックどうぞ♪
ポーランド出身、アルメニアの伝統音楽を取り入れた注目グループORGANIC NOISESのギタリストRobert WierciochとキーボーディストKarolina Wieriochを中心とするプログレ・グループの19年デビュー作。切れ味の鋭さと哀感が同居するフレーズを次々と紡ぎ出すテクニカルなギター、ジャズを基軸にクラシカルな美麗さも織り交ぜて鮮やかに舞うピアノが交錯する、洗練の極致と言いたくなるほどに隙のないインストゥルメンタル・ジャズ・ロックを展開します。ORGANIC NOISESから民族エッセンスを抜き、よりタイトで硬質に再構築したようなアンサンブルのカッコよさと言ったらありません。あまりに技巧的で洗練された演奏に耳が行きますが、ポーランド・プログレの特徴とも言えるPINK FLOYD的なメランコリーと空間的な広がりを持つ音響も随所に散りばめてあり、陰影に富んだ幻想美が立ち上がってくるナンバーも魅力的。ORGANIC NOISESを気に入られた方は勿論、テクニカルなジャズ・ロックのファンには是非聴いてほしい傑作です。
ブラジル出身、QUATERNA REQUIEMのヴァイオリニストKleber Vogelを中心とするシンフォ・グループによる、94年の1stから25年ぶりとなる19年2ndアルバム。CAMEL/GENESISに通じるファンタジックな叙情派プログレに、ヴァイオリンがクラシカルな格調高さや古楽的な典雅な味わいを加える、奥深い響きを持つシンフォニック・ロックが素晴らしいです。クラシカルな気品高いフレーズをスケール大きく奏でるヴァイオリン、アナログっぽい温かみと艶やかさを備えたシンセサイザー、泣きを帯びた哀愁のギターらが、ドラマチックに絡み合いながら描き出していく壮大なサウンドにひたすら圧倒されます。注目はO TERCOのギタリスト&キーボーディスト、そしてSAGRADOで知られるヴァイオリン名手Marcus Vianaの参加。特にMarcus Viana参加の2曲は必聴で、VogelとVianaのヴァイオリンが左右のチャンネルに分かれてスリリングかつ優美に絡みあうパートは思わず熱くなります。QUATERNA REQUIEMやそのドラマーがが参加するVITRAL、そしてメキシコのCASTファンにオススメ!
KZ002(デジパック)(PRODUZIDO NO POLO INDUSTRIAL DE MANAUS)
デジパック仕様
レーベル管理上、デジパックに凹みや圧痕、若干の角潰れがある場合がございます。ご了承ください。
アメリカ北東部コネチカット州を拠点に活動したオルガン・ロック・バンド、70年リリースの2ndアルバム。1曲目から名曲!手数多く疾走するドラムスとシャープなカッティングを繰り出すギターを従えて、ファンキーかつスリリングなオルガンが炸裂するインスト・ジャズ・ロックがカッコよすぎます。ソウルフルなヴォーカルに痺れる旨味たっぷりのブルース・ロック・ナンバーあり、ラグタイム調のピアノを伴い進行するゴキゲンなブルース/ジャズ・ナンバーありと、基本はブルースやR&Bを土台にしたサウンドですが、突如デイヴ・スチュワートみたいなキレのあるソロを含むEGGばりのオルガン・ロックが繰り広げられたりと、プログレ前夜のアート・ロック感覚も数曲で発揮されているのが印象的です。しまいには『Freak Out!』に影響を受けたような奇声満載の実験的パートも飛び出してきて驚きます。R&B/ブルース・ロックからアート・ロック〜プログレへの過渡的なサウンドを詰め込んだ一枚です。
イタリアのシンフォニック・ロック・バンドによる19年1stアルバム。もう「これぞイタリアン・ロック!」と言いたい、ダークさと哀愁が対比してドラマを描き出す70年代リスペクトに満ちたシンフォが炸裂していて素晴らしいです!ヴィンテージ・テイストのオルガンやシンセが1st時のBANCOを彷彿させるミステリアスな音空間を作り出し、エッジの立ったヘヴィなギターが突き進み、イタリア語のアクセントを強調した熱量高いヴォーカルが歌う、密度の高いアンサンブルが強烈。ギターやシンセが落ち着き幻想的に聴かせるパートでは、クラシックの素養も感じる格調高さや仄かな地中海的エキゾチズムも醸し出していて、深みある音楽性で駆け抜けます。最近のイタリアでは屈指と言える「王道」イタリアン・ロックを聴かせる快作です!
90年代より活動しSimon Collins、David Cross、David Jacksonらと共演するシンガー/マルチ・プレイヤーJohn Beagleyと、18年のYESトリビュート・アルバムに参加したヴォーカリストRobin Schellによる英国の2人組プログレ・ユニット、19年デビュー作。これは素晴らしい!『DRAMA』〜『90125』期の80年代イエスへのリスペクトに満ち溢れた「シンセ・ポップ+プログレ」なスタイルとキレのいいポップなメロディで聴かせる、スケール大きくドラマチックなサウンドは驚くべき完成度です。トレヴァー・ホーン彷彿の華やかなシンセアレンジにトレヴァー・ラヴィンばりの色彩感あるギターワーク、そしてジョン・アンダーソンによく似たハイトーンVoらが描く80sイエス愛たっぷりのサウンドを全編にわたって楽しませてくれます。そんなイエス・リスペクトの中にもコズミックな広がり感のあるシンセを織り交ぜて壮大な世界観を築き上げる手腕に彼らならではの個性を発揮していて注目です。80sイエス好きは勿論、往年のシンセ・ポップがお好きな方にもこれはきっと刺さるサウンド!
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