2020年11月4日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ新鋭
現在、プログレ大国イタリアにも引けを取らない量と質のプログレ作品を送り出しているのがポーランド。
その中核を担っているのがレーベルがLYNX MUSICです。
レーベルオーナーがキーボードを務めるバンドMILLENIUMを筆頭に、ピンク・フロイド影響下のシンフォニック・ロック・グループを数多く擁している点、また魅力ある女性ヴォーカルを擁するグループが多い点で、70年代からのプログレ・ファンからも注目を集めているんです。
こちらでは、そんなLYNXレーベルに所属するアーティストの作品を中心に、ポーランドの新世代プログレを一挙ご紹介していきたいと思います!
オルガンが叙情的にたなびき、R.ライト彷彿のシンセがダークに広がり、そしてギルモア+S.ロザリーと言える泣きのギターが飛翔するサウンドは、「ドラマチック」という言葉をそのまま音にしたような素晴らしさ。ポーランド・シンフォの雄、貫禄の20年作!
何とも重厚なジャケットですが、サウンドはフロイド憧憬たっぷりの幻想的なシンフォニック・ロック。おっ、ポーランドの人気バンドLOONYPARKのkey奏者によるソロなのね!
ホールズワースばりの超絶ソロからS.ロザリー調のエモーショナルな泣きまでを自在に弾きこなす超実力派ギターが痛快!00sのMARILLIONがお好きならこのポーランド新鋭はイチオシです♪
ずばり「優美な気品が加わったフロイド」。PINK FLOYD直系のメランコリックで夢想的なサウンドの中、端正かつ妖艶に響き渡るピアノが極上だなあ。
前述のとおり、LYNXレーベルのオーナーRyszard Kramarski氏がキーボーディスト/リーダーを務めるのがMILLENIUMです。
名実ともに00年代以降のポーランド・シーンの中核を成すグループで、ピンク・フロイドとジェネシスからの影響を強く受けたスタイリッシュかつヴィンテージな温かみも宿した極上のシンフォニック・ロックを聴かせてくれます。
彼らの変遷とディスコグラフィーについては個別の特集ページでお楽しみください♪
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MILLENIUMのリーダーにしてLYNXレーベル総帥を務めるキーボーディストによるリーダー・プロジェクトも、MILLENIUMが気に入ったなら是非お楽しみいただきたいところ。
MILLENIUMで共に活動するベーシストKrzysztof Wyrwa、度々MILLENIUM作品に参加している女性ヴォーカルKarolina Leszko、元MOONRISEのギタリストMarcin Kruczek、人気バンドLOONYPARKのドラマーGrzegorz Fieberという、現ポーランド・シーン屈指の実力者たちが集ったバンド編成はさすがの人脈です。
MILLENIUMと同じく『狂気』~『ザ・ウォール』期ピンク・フロイドに影響を受けながらも、「星の王子さま」「クリスマスキャロル」といった文学作品をコンセプトに据えたスタイリッシュにして温かみにも溢れた名品を作り出しています。
ドラマチックで哀感ある女性Voバージョンと素朴で温かみ溢れる男性Voバージョン。ヴォーカルが違うだけでここまで音の印象が変わるとは…。『雪の女王』をテーマに主人公ゲルダとカイの視点を2枚組で描くシンフォ傑作!
ポーランドのプログレにおいて特に人気が高いのが女性ヴォーカルを擁するシンフォニック・ロック・グループたち。現在、その筆頭と言うべき人気バンドがこちらのLOONYPARKです。
QUEENやGENESISに影響を受けたキーボーディスト/コンポーザーのKrzysztof Lepiarczykを中心に結成され、08年にデビュー作をリリース。
美声の女性ヴォーカルをフィーチャーし、ポーランドらしい陰影を帯びた繊細でメロディアスなシンフォ・サウンドを特徴とします。
彼らも個別の特集ページがございますので、詳細はそちらをご覧いただければ幸いです!
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現在女性ヴォーカルものの層が厚いポーランドですが、有名なQUIDAMと共に新世代女性ヴォーカル・シンフォの礎を築いた存在がALBION。
94-95年に2枚をリリースして沈黙、10年後の05年にキーボーディストとギタリスト以外のメンバーを一新して活動を再開します。以降はコンスタントに良質なシンフォ作品を生み出していましたが、18年にキーボーディストと女性ヴォーカルが脱退し新バンドNOIBLAを結成し、残ったギタリストは初期の女性ヴォーカルを呼び戻して再編を行ないバンドは継続。
18年作『YOU’LL BE MINE』はそんな分裂劇の影響を感じさせない傑作に仕上がっていてファンを安心させてくれました。
NOIBLAもさすがのクオリティの1stをリリースしており、両バンドがどのような方向へ進んでいくのか今後の動向が楽しみですよね。
分裂を経て、ギタリストを中心にメンバーが再編された18年作ですが、それでこの完成度は驚き。ひたすら泣きのフレーズを紡ぎ続けるギター、復帰したオリジナル女性ヴォーカルのエモーション溢れだす歌唱に心奪われます…。
ポーランドの実力派ALBIONから脱退した女性Voやkey奏者が新たに結成したシンフォ・グループ。抑制の効いたしっとりと叙情的な演奏によって、女性ヴォーカルの深みある表現力をより際立たせた素晴らしき一枚です。
MOONRISEはキーボード、ギター、ベース、ドラムを務めるマルチ・プレイヤーKamil Konieczniakが率いるシンフォ・プロジェクト。
全楽器担当のKamilにゲスト・ヴォーカリストを加えたソロ・ユニット体制で08年『The Lights Of A Distant Bay』でデビュー。
その後バンド体制となり、2作品をリリースすると、待望の19年4th『Travel Within』では再び楽器演奏を単独で務めるソロ・ユニット形態にヴォーカリストをフィーチャーしたスタイルに回帰しました。
彼はLOONYPARKの作品でマスタリング/ミキシングを担当するなど、サウンドエンジニアとしても手腕を振るう才人。今後の活躍によっては、いつか「ポーランドのスティーヴン・ウィルソン」と呼ばれるほどのアーティストになるかも?
7年待った甲斐がありました…!叙情美にかけては現ポーランド最高峰と言えるプロジェクト、持ち味の幻想美溢れるサウンドメイクはそのままにスタイリッシュなメロディアス・シンフォに進化を遂げた傑作!
ここからは、まだ知る人ぞ知る存在ながら実力は上記バンドに引けを取らない、注目のポーランド新鋭たちを取り上げていきたいと思います。
あのORGANIC NOISESのギタリスト&キーボーディストによるバンドなだけあって、息をのむほどに技巧的で鮮やかな隙のないインストゥルメンタル・ジャズ・ロックを聴かせてくれます。「洗練の極致」と表現したいほどに完成された圧巻の傑作!
アルメニアの伝統音楽とジャズ、ロック、メタルを融合させた「コーカサシアン・エスノ・ジャズ・ロック」!?力強くも粛々とした神秘性漂うサウンドが素晴らしすぎる、圧巻の19年デビュー作!
今ぐんぐんと注目度を上げている新鋭が彼ら。
「架空の映画のサウンドトラックを作る」というコンセプトを掲げ活動するポーリッシュ・シンフォ新鋭です。
この19年3rdでは、冷ややかなトーンのキーボードと熱量溢れる叙情派ギターの絶妙な「温度差」が仄暗さと温かみを帯びた独自の作品世界を作り上げていて素晴らしい!
今年10~11月にわたって開催される国内最大のプログレ・フェス「ProgTokyo」にも出演予定のギター/ヴォーカルWojciech Ciurajが在籍する新鋭グループ。
バンド名は、バンド結成にあたり長らくドラマーを探していたことに由来し「We Are Looking For A Drummer」の頭文字をとったもの。
ピンク・フロイドの音世界に影響されつつも、より外に向いた開放的な響きを聴かせるメロディアス・プログレが絶品で、スタイリッシュにまとめられた洗練のアンサンブルに対比する、ポーランド語の無骨な響きがまたいい味わいです♪
クリムゾンやポーキュパイン・トゥリーのファンにオススメしたいポーランドの新鋭ソロ・ユニット。クリムゾン影響下のヘヴィ・プログレと、ポーランドらしいメランコリックな音響を融合させたようなスタイルで聴かせる、ヘヴィネスと幻想美に溢れた逸品!
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迫りくる凶暴なアンサンブル、そして叙情美。クリムゾンの遺伝子を受け継いだ90年代以降の新鋭グループを世界中からピックアップ!
「狂気」~「ウォール」期フロイドをポーランド特有の深い陰影とモダンな質感で蘇らせたような新鋭バンド!
ダブルギター編成を生かし、エフェクトを効かせ淡く幻想的なトーンを鳴らす2本のギターと、ひんやりと冷たい質感を持つシンセが浮遊感あるダークな色調の音世界を構築します。
深遠かつ静謐な幻想性に溢れたサウンドは、フロイドに肉薄!
弱冠19歳のメンバーで結成されたプログレ・トリオ。
沈み込むように暗く、それでいてセンシティヴな感性に溢れた繊細なメロディは、とても10代によるものとは思えない深みがありますね。
フロイド影響下のメランコリーと哀愁を帯びたサウンドを聴かせる注目バンド!
ヴォーカル/作曲ともにビョークばりの才覚で驚かせる女性アーティストを中心とするポーランド新鋭!エレクトロニカ色の強いサウンドと艶めかしくもアーティスティックな女性ヴォーカルが作り出す、蠱惑的な音世界に飲み込まれます…。
10歳から本格的な音楽教育を受け94年にデビューしたKAYANISことLubomir Jedrasikによるプロジェクト。
艷やかなトーンのシンセを中心とする各種キーボードとエレクトロニクスを重ね合わせて作り上げられた、このクリアかつ深遠な音世界…いかにもポーランドって感じで惹き込まれるなぁ。
愛らしさとミステリアスさを備えた女性ヴォーカルも絶品ですよ。
艶やかさと共に民謡的な「揺らぎ」が感じられる本格派女性ヴォーカルが印象的なグループ。
細かく刻むジャズ・ロック調のドラムスとメランコリックな中にも輝かしい叙情美を秘めたギターが織りなすエモーション溢れるアンサンブルの素晴らしさも特筆です。
新作、出ないかな…。
MILLENIUMのドラマーTomasz Paskoによるシンフォ・ユニットなのですが、これはずばりCOLLAGEの後継者と言ってもよい完成度!
宇宙を感じさせるシンセの囁きから突如ハードなギターが唸りを上げる白熱の展開がたまらない!
「東欧のANEKDOTEN」と言ったほめ過ぎかもしれませんが、物悲しいメランコリーを含んだへヴィネスにポーランド特有の夢見るようなロマンティクさが加わったメロディアス・プログレは、そう呼びたくなるほどの出来栄え!
ドイツのRPWLのサポートを務めたことで知られるイマジネーション豊かな新鋭グループ。
幻想的にたなびくキーボードとヘヴィかつヌケの良いギター、そしてそこに映えるメランコリックな美声女性ヴォーカル!
ポーランドものに求めたい要素をきっちりと備えた良いグループです。
1stではかなりヘヴィな音でしたが、この2ndはフロイドをはじめとする70年代プログレ・エッセンスをふんだんに散りばめた愛すべきプログレを鳴らしています。
それにしても、なぜこのジャケに…。
他とはちょっと毛色の異なるこんなグループも所属しています。
なんと80~90’sリバイバル・プログレ・ハードと言える痛快サウンドで、しかもヴォーカルはまるでデイヴィッド・カヴァーデイルみたいなソウルフルなシャウト炸裂させる紅一点!
淡々とクールなようでいて、その内には確かなエモーションを感じさせる演奏にグッと来ます。2本のギターと物悲しさを帯びたヴォーカルが織りなす哀感溢れるメロディアス・プログレ。
PORCUPINE TREEの激しさとGENESISのファンタジックさを掛け合わせて、ポーランドらしい翳りで包み込んだみたい…!?ここぞで溢れるメロトロン(風音色)もGENESIS的でたまらないなあ。
LYNXレーベル所属の新鋭グループ達の魅力、堪能していただけたでしょうか。
次々と新譜がリリースされており、カケレコが取り扱う中でも今一番勢いがあるのがこのレーベル。
今後も素晴らしい新譜が届くたびにこちらのページにてご紹介していきたいと思います!
アジアとヨーロッパの境目に位置する国、アルメニアの伝統音楽とジャズ・ロックの融合!?ポーランドの名門クラクフ音楽アカデミーにてクラシックを学ぶと同時に、アルメニアの伝統音楽に魅せられた女性管楽器奏者Zofia Trystulaを中心とするポーランドの5人組。結成以来数々のジャズ・コンペで入賞も果たす彼らの19年デビュー作は、エキゾチック且つどこか粛々とした神秘性を漂わせるアルメニアや東欧の伝統音楽をベースに、ロック、ジャズ、フュージョン、メタル等の要素を自在に組み合わせた圧巻のコーカサシアン・エスノ・ジャズ・ロック!しなやかに躍動するジャジーなピアノに気品溢れるヴァイオリン。ザクザクと重くメタリックなリフを刻むギター、ジャズの素養を感じるタイトでテクニカルなリズム隊、異国情緒漂う旋律を奏でるムーグ…。アコースティカルな要素とヘヴィ/エレクトリックな要素を対比させつつ、そこへZofiaが操るドゥドゥク、ズルナといった民族管楽器や民謡調の抑揚を付けた深遠な女性ヴォーカルが重なり合う、強靭さと神々しさ、優美さとドライヴ感を併せ持ったサウンドは驚くべき完成度!GONGからVESPEROといったスペーシーでエキゾチックなジャズ・ロックのファン、そしてLOST WORLD等ヴァイオリン・プログレのファンには特にレコメンドです!
全ての演奏を務めるマルチ奏者Kamil Konieczniakによるポーランドのシンフォ・プロジェクト、実に7年ぶりに届けられた19年作4th。08年1st、09年2ndでヴォーカルを務めた元MILLENIUMのLukasz Gall、彼の後任として前12年作で歌ったMarcin Jajkiewicz、そして本作では三代目ヴォーカリストとなるMarcin Staszekをフィーチャー。持ち味だったひたすら泣きのフレーズを紡ぐギターと幻想のキーボードが織りなす叙情派シンフォ・スタイルはそのままに、プログラミング音響もセンス良く織り交ぜ格段に洗練されたメロディアス・シンフォへと進歩を遂げていて素晴らしいです。奥行ある深遠なシンセ、霧のように淡く広がる(疑似?)メロトロンらが作り出す幻想美が滲むサウンドメイクに、力強さとナイーヴさを備えたスタイリッシュなハイトーンVoが映えます。相変わらずひたすら美旋律だけを紡ぎ出すギターもさすがです。また6曲目ではMILLENIUMのサックス奏者、7曲目では初代ヴォーカルのGallが参加していてただでさえドラマチックなサウンドを一層盛り上げます。7年ぶりながら現ポーランド随一の幻想的な音作りは健在の一枚です。
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに角つぶれがある場合がございます。予めご了承ください。
ポーランド出身、アルメニアの伝統音楽を取り入れた注目グループORGANIC NOISESのギタリストRobert WierciochとキーボーディストKarolina Wieriochを中心とするプログレ・グループの19年デビュー作。切れ味の鋭さと哀感が同居するフレーズを次々と紡ぎ出すテクニカルなギター、ジャズを基軸にクラシカルな美麗さも織り交ぜて鮮やかに舞うピアノが交錯する、洗練の極致と言いたくなるほどに隙のないインストゥルメンタル・ジャズ・ロックを展開します。ORGANIC NOISESから民族エッセンスを抜き、よりタイトで硬質に再構築したようなアンサンブルのカッコよさと言ったらありません。あまりに技巧的で洗練された演奏に耳が行きますが、ポーランド・プログレの特徴とも言えるPINK FLOYD的なメランコリーと空間的な広がりを持つ音響も随所に散りばめてあり、陰影に富んだ幻想美が立ち上がってくるナンバーも魅力的。ORGANIC NOISESを気に入られた方は勿論、テクニカルなジャズ・ロックのファンには是非聴いてほしい傑作です。
現在のポーランド・シンフォ・シーンの中核を担うグループ、13作目となる2019年作。オリジナル・メンバーのヴォーカリストLukasz Gallが復帰して制作された本作。その内容は、PINK FLOYDやGENESIS〜MALLIRIONへのリスペクトに溢れたシンフォニック・ロックに、ポーランドらしい深いリリシズムと翳りある叙情美を加えた、揺るぎなきMILLENIUMサウンド。虚空に切なく響くようなピアノ、アンサンブルに奥行きをもたらす深遠なシンセ、ギルモアとS.ロザリーをミックスしたようなエモーションたっぷりに泣くギター、そしてスタイリッシュな中に哀愁を秘めた変わらぬ素晴らしい歌声…。シリアスでメランコリックに紡がれる演奏が、サビに向けて気高く飛翔していくあまりにドラマチックな展開は毎度ながら見事の一言です。始動から20年目となる彼らですが、ただただ実直に自らの音楽を深化させ続けていく姿勢に胸打たれる一枚です。
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2,990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに小さい角つぶれがある場合がございます。予めご了承ください。
ポーランドのシンフォニック・ロックグループ、09年デビュー作。細かく刻むジャズ・ロック調のドラムスとメランコリックな中にも叙情美を感じさせるギターを中心としたアンサンブルに乗って、しなやかさと力強さを併せ持つ女性ヴォーカルが素晴らしい歌唱を聴かせるシンフォニック・ロック。東欧特有のうす暗さが漂うシリアスな楽曲から軽快なリズムと瑞々しいアコギが爽やかに駆け抜ける楽曲まで、演奏陣が多彩なアンサンブルを繰り広げる中、それらに見事に歌声を乗せていくヴォーカルは存在感抜群。民族音楽的歌唱に根ざした独特のゆらぎを随所に感じさせる実力派で、内面をさらけだすような生々しい歌唱には思わず息をのみます。テクニカルで緩急自在の演奏と吸い込まれるような魅力を持つ女性ヴォーカルの歌声が印象的な傑作です。
ポーランドの新鋭シンフォ・グループ、18年作。前作までのキーボーディストらが別グループNOIBLAとして独立し、残ったギタリストJerzy Georgius Antczakを中心に前作や過去作にも参加していたベーシストとドラマー、そして復帰した初期の女性ヴォーカリストAnna Batkoという再編された4人編成となっています。以前までの広がりある幻想的でメランコリックな作風は残しつつも、プログラミングも散りばめたモダンでスタイリッシュなサウンドへと変化を遂げているのが特徴。キーボードはギタリストが兼任しているものの、やはりギターの存在感がアップしており、これでもかとドラマチックな泣きのフレーズを延々紡ぎ続けるギターが圧巻です。さらに復帰したオリジナル・ヴォーカリストがまた素晴らしい!前々作まで在籍した女性ヴォーカルのしっとりめの歌唱も良かったですが、時にシアトリカルとも言える表現力でエモーショナルに歌いこむ、コケットな魅力を秘めた歌唱に心奪われます。プログラミングによる装飾音も絡めつつ安定感抜群のプレイで2人を支えるリズム隊の仕事も特筆です。大きな再編を経たとは思えない完成度の高い音世界で聴かせる傑作!
現在のポーランド・シンフォ・シーンの中核を担うグループ、14作目となる2020年作。タイトルが示すとおり、現代社会における「七つの大罪」を描く7曲によって構成されたコンセプト・アルバムとなっています。重厚なテーマですが、本作でもPINK FLOYDと90s以降のMARILLIONから影響を受けた深淵かつエモーショナルなシンフォニック・ロックは健在。ビシッビシッと重くタイトに刻むリズムに乗って、オルガンが叙情的にたなびき、リック・ライト彷彿のシンセがダークに広がり、そしてギルモアの泣きとS.ロザリーのメロディアスな音運びを兼ね備えたギターが飛翔するサウンドは、「ドラマチック」という言葉をそのまま音にしたような素晴らしさ!英語で歌う、スタイリッシュな歌い回しの中に切ない哀愁を秘めた男性ヴォーカルも、劇的なサウンドを一層盛り立てます。エレクトロニクスやSEを効果的に用いた演出力の高さにも注目。今回も貫禄のMILLENIUMサウンドを繰り広げる力作です。
実力派がひしめく現ポーランドでも屈指の人気シンフォ・グループによる、3年ぶりとなった19年5thアルバム。前作からの大きな変化として女性ヴォーカルの交代が挙げられます。前任者はどこか緊張感のある厳かな歌唱が印象的でしたが、後任はより感情を強く出すエモーショナルな歌唱が素晴らしく、これまでになくドラマ性を高めており特筆です。演奏陣はさすがで、耳を引くユニークなリズムパターンを織り交ぜて存在感を示すリズム・セクション、ポーランドらしい陰影と哀感を乗せひたすら美麗フレーズを繰り出すギター、バックを気品高く流れゆくストリング・シンセらが、呼吸をぴったり合わせ紡ぎ上げていく宝石のように美しいアンサンブルに聴き惚れます。また出番は多くないものの、物悲しいリリシズムと柔らかなファンタジーを併せ持つピアノのタッチも絶品で、LOONYPARKらしい角のないしなやかな音色使いを象徴しているかのよう。従来どおりの端正で美しいアンサンブルと新ヴォーカルが担うアグレッシヴな表情が見事に調和した傑作!
ピンク・フロイド憧憬のメランコリックなサウンドを聴かせるポーランド新鋭、20年作3rd。これは素晴らしい!前作のややハードでモダンな作風と比較すると、本作は1st時の幻想的で浮遊感に満ちた雰囲気が戻ってきた印象。タイトル通り夢の中をたゆたうような静謐で空間的なサウンドを展開しつつ、ここぞではドラマチックなメロディによってダイナミックな盛り上がりを見せる。内省性と壮大さを兼ね備えたサウンドはまさしくフロイド直系ながら、個性的なのは作品全体でフィーチャーされた端正で気品に満ちたピアノの存在。粛々と儚げな音色も良いし、T4「Dark」のようなジャジーで妖艶な表情も魅力的。一部の楽曲ではヴァイオリンや美麗な女性コーラスもフィーチャーし、フロイドに優美な気品が加わったような極めて完成度の高いサウンドを構築しています。前作、前々作以上の傑作!
Tomasz Pasko(MILLENIUM)、Marcin Kruczek(NEMESIZ)らによって結成されたポーランド産シンフォニックロックバンドの07年デビュー作。その音楽性はMILLENIUMにおけるポンプ/ネオプログレ色を残しつつも、Quidam系の爽やかさが絶妙なバランスで交差するメロディック/シンフォニックロックです。哀愁を帯びながら泣きまくるギターサウンドと、東欧らしい冷たさを持ちながら表情豊かに彩りを添えるキーボードが素晴らしく、印象的なフレーズにも恵まれた入魂の作品となっています。また、静と動の対比が素晴らしく、激しいバンドアンサンブルからアコギのセンチメンタルなソロへの流れなど、抑揚をつけた展開で飽きさせません。メロディーメイクの良さはポーランドという国の個性にすらなりつつあり、このMINDFIELDSも例に漏れず、内省的且つ感情を込めた素晴らしいメロディーが映える素晴らしい音を聴かせます。東欧ファンは要チェックの1枚。
現ポーランドを代表するシンフォ・バンドMILLENNIUMのkey奏者によるソロ・プロジェクト、20年4th。本作のテーマはアンデルセンによる「雪の女王」。特筆は、同一の演奏に対し女性ヴォーカルが歌うバージョンと、男性ヴォーカルが歌うバージョンを収めた2枚組である事。DISC1は、艶やかかつ哀感を帯びた女性ヴォーカルがシリアスなドラマ性を引き立てていて、雪景色が浮かび上がるような荘厳さが広がります。一方、素朴な声質で丹念に歌う男性ヴォーカルのDISC2は、同じ演奏とは思えないほど暖かくハートフルな聴き心地をもたらします。物語の主人公ゲルダとカイ、それぞれの視点を表現する見事な演出です。演奏もさすがで、美麗なオーケストレーションをバックに、硬質なリズムとひんやりしたシンセ、静謐なタッチのピアノ、フロイド彷彿の浮遊感あるギターのリフレインらが折り重なり、原作のストーリーをイマジネーション豊かに紐解いていきます。物語の展開とシンクロするSEも効果的。荘厳さの中に淡い叙情を秘めたサウンドが、静かな感動を呼び起こす名作です。
ポーランド・シンフォ・シーンの人気バンドLOONYPARKでリーダーを務めるキーボーディスト/コンポーザーによる20年3rdソロ。19世紀ポーランドを代表する詩人Adam Asnykの詩を歌詞に用いたコンセプト作です。LOONYPARKのギタリスト&ベーシスト、MILLENIUMのドラマー、そしてLEPIARCZYKの別プロジェクトPADREや一時MILLENIUMにも在籍したヴォーカルMarek Smelkowskiら前17年作と同じメンバーで制作。リック・ライト彷彿のメランコリックで浮遊感のあるシンセと、シャープなトーンで泣きのフレーズを次々と紡ぐギターのコンビが見事で、LOONYPARK同様PINK FLOYD彷彿の内省感とドラマ性を描きます。落ち着いた声質で朗々と歌い上げるポーランド語のヴォーカルも素晴らしく、幻想的なサウンドに語り部のごとく丹念に言葉を乗せていきます。LOONYPARKが気に入ったなら本作も間違いなしの一枚!
ポーランドのプログレ・ユニットによる、EP2枚を経ての19年1stフル・アルバム。マルチ・ミュージシャンBartosz Gromotkaによるソロ・プロジェクトで、ギター、ベース、キーボード、ドラム・プログラミング、ヴォーカルと全楽器を自身で演奏した意欲作です。キング・クリムゾン影響下のヘヴィ・プログレと、ポーランドらしい陰影を帯びたメランコリックな音響を融合させたようなスタイルが特徴的。特筆は主役と言えるギターのプレイで、唸るようにヘヴィなトーンで繰り出すリフワーク、エモーショナルに泣きのフレーズを紡ぐリード、瑞々しいタッチのアコースティックギターなどをオーバーダブで重ね合わせ、シリアスながらもリリカルで幻想的な音世界を築き上げるサウンドメイクが見事。ここぞという場面で湧き上がってくる(疑似?)メロトロンもツボを押さえているし、揺らめくような淡いヴォーカル&コーラスもデリケートな世界観にマッチしていて、音選びのセンスの良さが光ります。クリムゾン・ファンやポーキュパイン・トゥリーのファンにオススメの逸品!
15年にデビューしたポーランドのプログレ/アート・ロック新鋭、4年ぶりとなる19年作2nd。前作でも聴かせた孤高の世界観は健在です。まず耳に飛び込んでくるのが艶めかしくもアーティスティックな女性ヴォーカル。浮遊感あるパートでの囁くような歌声はビョークを強く意識している印象ですが、一方で多重録音した自身のヴォーカルが折り重なって迫ってくるようなパフォーマンスは、蠱惑的と言える妖しい魅力を放っていて特筆。サウンドはエレクトロニカ色が強いですが、うっすらと音色を重ねるヴィンテージ・トーンのオルガンや幻想的なトーンで響くギターも実に美しく、エレクトロなサウンドに人肌の温かみを添えています。ヴォーカルに加え作曲とプログラミングも手掛けるMarzena Wronaの才能にまたもや圧倒される力作!
7年待った甲斐がありました…!叙情美にかけては現ポーランド最高峰と言えるプロジェクト、持ち味の幻想美溢れるサウンドメイクはそのままにスタイリッシュなメロディアス・シンフォに進化を遂げた傑作!
KRC9009(KAKEHASHI RECORDS)
2990円 (税込3289円)
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女性ヴォーカルがしっとりと歌い上げるメロディは相変わらず絶品だし、ファンタスティックに綴られていくドラマにただただ圧倒される、メロディアス・ロックとして完璧と言えるポーランド新鋭によるグレイとな傑作!
LM62CD(LYNX)
2190円 (税込2409円)
在庫あり
うっすらと霧がかかったような幻想的なシンセワークにエモーショナルな泣きギター・・、ナチュラルな声質で聴かせる男声ヴォーカル・・。ポーランドらしい翳りも帯びた絶品メロディアス・シンフォだなぁ。
MOONRISE/SOUL’S INNER PENDULUM
LM51CDDG(LYNX)
2230円 (税込2453円)
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現ポーランドの中心的シンフォ・バンドによる待望の19年作!オリジナル・ヴォーカリストが復帰して変わらぬ素晴らしい歌声を聴かせており感動!
KRC9016(KAKEHASHI RECORDS)
2990円 (税込3289円)
売り切れ
美麗な作品の多いポーランドのシンフォ・シーンの中でも屈指と言える幻想美と溢れる美メロ。ファンタスティックなジャケのイメージ通りの逸品です。
MOONRISE/LIGHTS OF A DISTANT BAY
LM29CD(LYNX)
2280円 (税込2508円)
在庫あり
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