2019年1月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
本記事は、「netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』第52回 APERCO / The Battle (Israel / 2016) 」に連動しています
Maor ArbitmanとShimry Mesicaによるフォーク・デュオから派生したグループであるMR.TOADは、2003年にデビュー・アルバム『Trench Art』をリリースしました。彼らが生み出すサウンドは、アコースティックな質感のプログレッシブ・フォークであり、アルバムは終始デリケートなイスラエル叙情に包まれています。ヴァイオリン、チェロ、フルート、トランペット、クラリネット、バスーンの各奏者を従え、フォーキーに、ジャジーに、そしてクラシカルに聴かせます。
インターネットのプログレッシブ・ロック・コミュニティーでの出会いを契機に結成されたのがAHVAKです。AHVAKは、アメリカの5UU’SやTHINKING PLAGUE、あるいはベルギーのPRESENTなどでの活動が知られるドラマーDave Kermanを正式メンバーに招き、2004年にデビュー・アルバム『Ahvak』を発表しました。その作風は、Dave Kermanの加入も納得のRIO(Rock In Opposition)スタイルであり、KING CRIMSONやMAGMAにも通じる硬質且つ肉感的なバンド・アンサンブルを用いてアグレッシブに進行していきます。
Arik HayatとElad Abrahamを中心として2000年に結成されたSYMPOZIONは、2005年にデビュー・アルバム『Kundabuffer』をリリースしました。イギリスのGENTLE GIANTに通じる偏屈な音楽性がSYMPOZIONの特徴であり、緻密に編み上げられた変拍子やミニマリズムの採用など、一筋縄ではいかない楽曲構成となっています。楽曲によってはフルートが大きく取り入れられている点などは、イスラエル産プログレッシブ・ロック・グループならではのアプローチでしょう。
2005年に『In Between』でアルバム・デビューを飾ったのがMELECHETです。彼らの音楽性はPINK FLOYDやGENESISなどから影響を受けたメロディアスなシンフォニック・ロックであり、GENTLE GIANTのような屈折したサウンド・メイクを展開することが少なくないイスラエル産プログレッシブ・ロック・グループの中では比較的オーソドックスな作風となっています。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルートのゲスト奏者を配し、適度な異国情緒も感じさせながらドラマティックに聴かせます。
JETHRO TULLやGENESISといったブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・グループのカバー・バンドから歩みを始めたEGGROLLは、2006年にデビュー・アルバム『Fairytale』を発表しました。彼らの作風は、サイケデリックな質感を漂わせたヴィンテージ・ロックであり、THE BEATLESを引き合いに出すことも出来るほどのメロディー・センスを発揮。チェロ、フルート、トランペット、トロンボーンの各奏者を従え、デリケート且つドリーミーなサウンドを奏でます。
2000年代のイスラエル産プログレッシブ・ロックを代表するグループのひとつが、専門的な音楽教育を受けたキーボーディストGil Stein率いるキーボード・ロック・グループTRESPASSです。2002年に『In Haze Of Time』でアルバム・デビューを果たしたTRESPASSは、2006年に『Morning Lights』をリリース。キーボーディストRick Van Der Lindenが率いたオランダのEKSEPTIONやTRACEに通じるバロック・テイストのシンフォニック・ロックが、多くのリスナーから高く評価されました。
2006年に結成されたREALEAFは、翌2007年にデビュー・アルバム『Possibly Not』をリリースしました。彼らの音楽性はPINK FLOYD、あるいはPORCUPINE TREEといったブリティッシュ・プログレッシブ・ロックからの影響を感じさせるサイケデリック・スペース・ロックであり、その物憂げなサウンドは、例えばスウェーデンのANEKDOTENやPAATOSなどとの共通点も見つけることが出来ます。中心メンバーのギター・ヴォーカリストYuval Gorenは、フルートもプレイしているようです。
90年代以降のイスラエル産プログレッシブ・ロック・シーンに言及する場合には、サイケデリック・ロック・グループROCKFOURの存在が欠かせないでしょう。88年に結成され、91年にレコード・デビューを果たしたROCKFOURは、ヴィンテージ志向のサウンド・メイクでプログレッシブ・ロック・ファンから高く評価されてきました。60年代から70年代にかけての、古き良きブリティッシュ・ロックをそのまま持ち帰ったような音楽性は一聴の価値あるものです。
ギタリストYuval Aviguy、ベーシストAvshalom Elan、そしてドラマーLior Arinosを中心として2006年に結成されたのがシンフォニック・ロック・グループTELIOFです。カナダ出身の女性ヴォーカリストKristine Sykesを擁するTELIOFは、2008年にデビュー・アルバム『Is It?』を発表しました。アルバムには複数のパートに分かれた20分の大曲も収められており、YESやGENESISといったブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・グループからの影響を昇華したサウンドを聴かせます。
2005年に結成されたへヴィー・プログレッシブ・ロック・グループEPHRATは、2008年にデビュー・アルバム『No One’s Words』を発表しました。中心メンバーのOmer Ephratは、ギターやキーボードの他、フルートも奏でるマルチ・プレイヤーです。本作にはスウェーデンのPAATOSから女性ヴォーカリストPetronella Nettermalm、そして同じくスウェーデンのプログレッシブ・メタル・グループPAIN OF SALVATIONからギタリストDaniel Gildenglowがゲスト参加し、PORCUPINE TREEのSteven Wilsonがミックス・ダウンを担当しています。
SHESHETやNO NAMESらと並ぶ、70年代のイスラエル産プログレッシブ・ロックを代表するグループであるZINGALEは、73年の傑作『Peace』が辺境プログレッシブ・ロックの必聴作として知られてきました。オリジナル・メンバーであるギタリストEfrayim BarakとベーシストEhud (Udi) Tamirを含む編成で30余年ぶりにリリースされた2008年のセカンド・アルバム『The Bright Side』には、アメリカン・プログレッシブ・ロックにも通じるような明瞭なシンフォニック・ロックが収められています。
「netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』連動 イスラエル産プログレッシブ・ロックの2000年代 Volume 2(2010 – 2018)」を読む
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