2020年6月5日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ASIA MINOR、PULSAR、そして一昨年来日も行ったATOLL。フレンチ・シンフォの魅力と言えば、ダイナミックな中にもどこか漂うクールでアーティスティックな幽玄さですよね。
それを際立てているのが、サウンドを彩るひんやりとしたトーンのシンセサイザー。粛々と紡がれるその音色に耳を傾けていると、夏でも冷気の立ちこめる幻想世界に迷い込んだような気分になります。
という訳で今回はASIA MINORを起点に、クールな幻想性に満ちた「秘宝」的シンフォ作品をピックアップしてまいりましょう!
フランスのキャメルと言えばこのグループ!79年デビュー作。エキゾチックな旋律や変拍子を駆使したアンサンブルはテクニカルかつ硬質ながら、同時に肌触りのよいキーボードがフランスらしい幻想性を醸し出していて非常にファンタジック。フレンチ・シンフォの名作ですね。
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ここからはフレンチ・シンフォの知られざる名盤をご紹介!
ANGEのVoクリスチャン・デキャンがプロデュースを務めた75年唯一作なのですが、何とも言えない奥ゆかしいメランコリーがたまらないなぁ。初期クリムゾンやジェネシスのファンは是非一聴を!
ジェネシスやキャメル影響下のフランスのグループ、76年のデビュー作と並び評価される79年作!ジャケには秘宝感ないですが、奥ゆかしく叙情的なシンフォニック・サウンドはいかにもフランスならではで秘宝感ぷんぷん。
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フランスのキーボード・トリオ、77年に自主制作された唯一作。エッグ~カーン時代のデイヴ・スチュワートを彷彿させる淡いトーンのオルガン、そして、仏カルプ・ディアンに通じるほの暗い幻想美。こちらもまさにフレンチ・シンフォの秘宝!
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あるときはクラシカルに格調高く、あるときはジャジーかつ芳醇に、あるときはグルーヴィーで熱量たっぷりに…。辺境地で鳴らされた個性豊かなオルガン・ロックの数々をピックアップしてまいりたいと思います。
この作品を知っていたら、貴方もかなりのフレンチ・シンフォ・マニア!?フランスのキーボード奏者PHILLIPPE DE CANCK率いるグループの78年作。幻想的なキーボードと壮麗なヴァイオリンが織り成す、優雅でいてちょっぴり毒のある耽美なサウンドがGOOD!
MONA LISAやANGEが好き?ならこの超絶マイナーな作品も聴いてほしいです。霧の中から響くようなミステリアスで奥ゆかしい演奏に、これでもかとエモーショナルなシアトリカル・ヴォーカルが映える!
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次はシンフォの本場、ドイツの作品をご紹介!
ジャーマン・シンフォの秘宝的名盤といえばこちらでしょうか。83年作ですが、どこまでもジェネシスやキャメルへの愛情に満ち溢れたサウンドが見事。時代を考えると自主制作なのは仕方がないけど、泣きの美メロに溢れた叙情派シンフォの名品!
ジャーマン・シンフォの隠れた名バンドといえばこちら。自主制作でリリースされた73年1st。ゲルマンの深い森の奥からひっそりと聴こえてくるような神秘性、そして、深く内省へと沈み込んだような、はたまた中世の古城にとらわれてしまったかのような暗鬱なメランコリー。この繊細に紡がれるロマンティシズムこそジャーマン・シンフォの醍醐味!
NEUSCHWANSTEINと同じドイツはラケット・レーベルよりリリースされたのですが、どうにもNEUSCHWANSTEINの陰に隠れてしまった感のある彼らの77年唯一作。とはいえドイツ産らしい深みと翳り、そして格調高いフルートが木霊する様はまさにジャーマン・シンフォ!GENESIS系屈指の名作☆
ジャーマン・シンフォはこちらの記事でも詳しくご紹介しております!
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次は数々のプログレ名バンドを生んだオランダ!
ジャケからして「秘宝臭」漂ってていいですね~。さぁ、音の方はどうかと言うと・・・瑞々しい響きの管弦楽器、シャープに躍動するリズム隊、クラシックとジャズの両方の素養を感じさせるキーボード。溢れるイマジネーションにイチコロ・・・。オランダのシンフォニック・ロック・バンドによる81年作!
もしもムーディー・ブルースに、スティーヴ・ハケットとピート・バーデンスが加入したら、って感じ!?仄暗く繊細さに満ちたサウンドがたまらない79年の唯一作!
原盤は激レアとされる76年の唯一作。クリムゾンとキャメルを合わせたような、ジャジーでメロウでマイルドなサウンドが心地良い・・・。オランダの地に眠る、ロマン溢れるシンフォニック・ロック。
演歌調と言ってもいいほどの哀切極まるフレーズを奏でるギターに、アルトサックスが叙情たっぷりに絡み、シンセサイザーが幻想のカーテンをなびかせる冒頭で、叙情派シンフォ・ファンならノックアウト必至!フレンチ・プログレに通じる儚さと浮遊感で包まれたオランダの秘宝盤がこちら。
ベルギーからもニッチなシンフォ盤をご紹介。
こちらはベルギーのプログレ・グループですが、音像はジャーマン・シンフォの重厚さとフレンチ・シンフォの冷ややかさが交わり合った感じ!?噛めば噛むほど味が出る「するめシンフォ」な78年作です。
さてここまではユーロで来ましたが、最後はなんと・・・バーレーン!?
80年代はじめの中東にジェネシスやキャメル直系のこれほどまでにハイレベルなシンフォ・バンドが居たとは・・・。ASIA MINORが好きならぜひチェックして頂きたい名作!
反対に、暖かみのある叙情的シンフォ作品はこちらで紹介しております!
非常にフランスらしい冷ややかな質感を持ち、流麗なメロディーとフルート奏者によるリリカルな調べでCAMEL系の名グループとして知られるバンドの79年デビュー作。ロマンチック且つファンタジックなシンフォニック・ロックを構築しており、専任フルート奏者の存在に加えて変拍子を織り交ぜながらジャジーなアプローチを聴かせるあたりはCAMELフォロワーらしい側面が伺えます。全体的に演奏はテクニカルで硬質なものですが、冷ややかながらも肌触りの良いキーボードのロングトーンが効いており、マイルドな雰囲気を演出しています。
ジェネシスやキャメル影響下のメロディアスなサウンドが人気のフランスのシンフォニック・ロック・バンド。76年のデビュー作と甲乙つけがたく人気の79年作2ndで、フランスの作家ボリス・ヴィアンによるSF青春小説『日々の泡』をモチーフにしたコンセプト・アルバム。前作から、ドラムが代わり、キーボーディストが加わってツイン・キーボード編成となって録音されています。ラインナップの変化はプラスとなった印象で、シャープに引き締まったドラム、左右チャンネルから鳴らされてシンフォニックに広がりドラマ性を高めるキーボード・アンサンブルは特筆。スティーヴ・ハケットやアンディ・ラティマーを彷彿させる繊細なタッチのリリシズム溢れるギターは相変わらず絶品だし、奥ゆかしさがフランスらしいヴォーカルもまた魅力的だし、ジェネシスやキャメルのファンにはたまらない「詩情」と「ドラマ」に満ちています。マイナーながら叙情的なシンフォニック・ロックの名作です。
78年に結成されたドイツのプログレ・バンドによる83年のデビュー作。スティーヴ・ハケットゆずりの繊細なタッチのメロディアスなフレーズ、ゴリゴリと高速ピッキングで畳みかけるフレーズ、さらにフラメンコ・ギターまでこなすテクニック抜群のギター。そして、いかにもジャーマンらしい古色蒼然とした味わいのキーボード、涼やかなフルート、線の細いセンチメンタルなヴォーカル。自主制作ということもあって、音質はクリアではありませんし、多少バタバタとしたところもありますが、それがまたこのグループの持つメランコリックな質感を引き立てている印象。キャメルやジェネシスのファンは間違いなくグッとくるでしょう。泣きの美メロとドラマティックなアンサンブルに溢れた叙情派シンフォの名品です。
オランダのシンフォニック・ロック・バンド、79年の唯一作。サウンドはずばり「もしもムーディー・ブルースに、スティーヴ・ハケットとピート・バーデンスが加入したら!?」って感じ。フォーキーなメロディ、朗らかでジェントルなヴォーカル、陰影を描くメロトロンなどはムーディー・ブルースを彷彿させながら、アンサンブルにはジェネシスやキャメルに通じるドラマティックさがあります。ハモンド・オルガンのクラシカルなキメとシャープなリズム・チェンジで緊張感を生むリズム隊との組み合わせはまるでジェネシスだし、ギターの繊細なアルペジオにムーグの柔らかなリードが乗るパートはキャメルを思い出します。ローカルなレーベルからのリリースで原盤は激レアのようですが、クオリティの高さは特筆もの。これはユーロ・ロックの秘宝と言える名作です。
76年にイエスやフォーカスに通じるプログレ・ハードの名作『DAYBREAK』を残したMIRRORのギタリスト、ベーシスト、管楽器奏者が結成した、MIRRORの後継と言えるオランダのプログレ・バンド。81年の唯一作。小刻みなハイハットワークで軽やかに疾駆するドラム、ハイ・ポジションで動き回るベースによる躍動感いっぱいのリズムを土台に、クラシカル&ジャジーで洗練されたピアノのリード、粒立ちがよくハード・エッジでメロディアス&エモーショナルなギターのリードがめくるめくインスト・プログレが持ち味。優しくメロディを奏でるオーボエと格調高くリリカルなピアノによる穏やかな情景が浮かんでくるようなパートなど、溢れるイマジネーションも魅力です。フォーカスやフィンチのファンは必聴と言える逸品です。
オランダのプログレ・グループによる78年のデビュー作。冒頭からとにかく哀愁が迸りまくり!!演歌調と言ってもいいほどの哀切極まるギターフレーズに、アルト・サックスが叙情たっぷりに絡み、そこにシンセサイザーが幻想のカーテンをなびかせる冒頭で叙情派シンフォ・ファンなら即ノックアウトでしょう。やや頼りない歌声の英語ヴォーカルも、かえって叙情味を際立たせていてこれしかないといった風情を漂わせます。比較的端正で歯切れのいいバンドが多いオランダにあって、まるでフレンチ・プログレのように儚げで浮遊感あるシンフォを聴かせる一枚。
79年に結成され、82年にデビューしたなんと中東はバーレーンのプログレ・グループ。84年作の2ndアルバム。高らかなトーンで幻想的に鳴り響くキーボード、スティーヴ・ハケットを彷彿させる一音一音丁寧に紡がれるエレキ・ギター、よく動くリッケンバッカー・ベースと手数多くシャープで安定感あるドラムによる魅力的なリズム隊、そして、クセのないジェントルな歌声の英語のヴォーカル。70年代末〜80年代はじめの中東にこれほどまでハイ・クオリティなジェネシス/キャメル直系のプログレ・バンドが居たとは。フランスのASIA MINORあたりにも比肩する名作です。
スイスはジュネーブ近くのフランス中東部の街、オヨナで結成されたキーボード・トリオ。77年に自主制作された唯一作。ゴリゴリと強いアタックでよく動くベースとキレのある手数多いドラム、ほの暗い幻想美に包まれたキーボード。フランスの名グループ、カルプ・ディアンにも通じる、フランチ・シンフォならではの耽美的でクールなサウンドが印象的です。スペーシーかつ淡いトーンのオルガンには、エッグ〜カーン時代のデイヴ・スチュワートも彷彿させます。80年代に発掘されて日本に紹介されていれば、ユーロ・ロック・ファンに人気が出ていたかもしれません。フレンチ・シンフォの秘宝と言える逸品です。
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