2017年11月9日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ新鋭
こんにちは、スタッフ佐藤です。
直近で入荷した新作の中から「これはっ!」というオススメ作品をご紹介するこのコーナー。
今回おすすめの新作は『MAR ASSOMBRADO/CANCOES DO FAROL』です。
ブラジルの新鋭シンフォニック・ロック・バンドで、2015年にデビューした彼ら。17年リリースの本作『CANCOES DO FAROL』が第2作目となります。
嵐の海で異形の化け物に襲われる灯台を描いたジャケットからは、なかなかヘヴィなプログレが飛び出してきそうな雰囲気がありますよね。
でもいざ聴いてみると…、
お聴きの通り内容にヘヴィさは皆無で、フルートやアコースティックギターが織りなすリリカルなアンサンブルをメインとして、そこに粛々と叙情的に響くオルガン、少しボサノヴァ風の軽やかなタッチのピアノなどが加わり、南米らしい清涼感と美しい陰影を感じさせるシンフォニック・ロックを作り上げています。
キャメルやジェネシスの優美さに通じるサウンドに、語り調のヴォーカルが入り、美しい物語が綴られるように展開していく演奏が見事ですよね。
曲によってはハープシコードなどによるクラシカルなエッセンスもアクセント的に用いられていて、ユニークさが光っています。
ヘヴィなサウンドも多い近年のブラジル新鋭の中で、ここまで純粋なリリカルさを持つシンフォ・バンドはなかなか珍しい。
キャメル好きにはたまらない南米シンフォの逸品!
MAR ASSOMBRADOで作詞/作曲/ギター/ヴォーカルを担当する中心メンバーAndre de Sena氏に、簡単なインタビューを行いました!
-1.本作『Canções Do Farol』で、どのようなサウンドを目指しましたか。
僕らは70年代の古典的なプログレッシヴ・ロックのスタイルを踏襲したサウンドに、ポルトガル語による文学的な詩を乗せた作品を作りたかったんだ。その試みは成功していると思う。
-2.本作のジャケットからはヘヴィなサウンドがイメージされるのですが、実際には華麗なシンフォニック・ロックが収録されています。随分とギャップがあるように思うのですが、何らかの意図があるのでしょうか。
確かにこれには意図があって、たくさんの隠喩を含んだ詩を朗読するように、認識や欲求などが多義的であることを表したジャケットになっているんだ。そして歌詞は(ジャケットのような)幻想世界の海を漂っているようなものなのさ。
-3.Mar Assombradoの音楽に最も影響を与えているバンドや作品を教えてください。
最初の質問でも答えたけど、僕らの音楽のベースにあるのは古いイギリスのプログレッシヴ・ロックだね。だけど常に自分たちだけの表現スタイルを模索してもいるよ。
-4.音楽以外の活動や趣味はありますか。
ポルトガル語による文学としての詩を嗜んでいる。実のところ僕は詩人でもあって、詩や文学を教えているんだ。音楽は詩というものの可能性を広げる役割を持っていて、またそれを発表するための方法の一つだと思っている。今日詩を読んでいる人はほとんどいないけど、僕らのバンドは特に新しい世代へ詩というものを伝える一助になれればと考えているんだ。
-5.日本であなた達の音楽が聴かれていることをどう思いますか。
間違いなく大変な名誉だね!日本では昔からプログレが愛されてきたし、70年代には多くの有名バンドが日本でライヴを成功させ彼らの活動を支えてきた。ブラジルにはプログレ好きな日系の人々も多くいるね。本国よりも日本でよく知られているブラジルのバンドもいるくらいだよ(ヘヴィ・メタル・バンドが多いけど)。いつかはぜひ訪れたいし、より深く知りたい国だね。
-6.聴いたことのある日本のバンドはありますか。
日本のプログレについては残念ながらよくは知らないんだけど、90年代から愛聴しているアルバムで、村山実(ジャズ/ポップス・シーンでも活躍した尺八奏者)の『BAMBOO ROCK』(1970)があるね。伝統音楽とロックを融合させた素晴らしいアルバムで、日本のジェスロ・タルと言ってもいいんじゃないかな。
-7.日本のプログレ・ファンにメッセージをお願いします。
海の遥か向こうの日本の親切な友人たちへ。僕らはブラジルの海岸都市レシフェで活動するMar Assombrado(Haunted Sea)というバンドで、詩(歌詞)によって世界(または宇宙)を表現する活動を行なっています。私は日本には海にまつわる多くの伝説が残されていることを知り、いつかその物語を僕らの音楽の中で語りたいと思っています。僕らの音楽を楽しんでくれることを願うとともに、ブラジルと日本がより素晴らしい文化的交流を築けることを願っています!
2015年に『Entre As Ondas Sob As Arvores』でアルバム・デビューしたブラジルはレシフェのプログレ・グループ、MAR ASSOMBRADOによる2021年のサード・アルバム『GEOGRAFIAS ESTRANHAS』です。GEOGRAFIAS ESTRANHASの音楽性は南米のヘヴィー・シンフォニック・バンドに多くみられるメタリックなバンド・アンサンブルを用いたアグレッシヴなものであり、コシの強いサウンドで攻撃的に攻め立てます。本作がユニークな点は、ヴォーカルではなくナレーションのような男女音声が楽曲をバックに展開されることでしょう。アルバムの物語性を強く印象づける内容となっています。同じ南米ならメキシコのCASTなどの系譜にあるパワフル&ダイナミックな1枚です!
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