2016年2月17日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
タグ: プログレ
「ユーロ・ロック周遊日記」、今回は幻想的なユーロ・プログレッシヴ・フォークの逸品、フランスのASGARDによる78年2nd『TRADITION & RENOUVEAU(伝統と革新)』をご紹介いたしましょう。
ASGARDは、70年代に2枚の作品をリリースしたフランスのプログレッシヴ・フォーク・グループ。76年にデビュー作『L’HIRONDELLE』、78年に2ndにして最終作となる本作『TRADITION & RENOUVEAU』をそれぞれ発表し、80年に解散しています。
まず注目したいのがこの何ともミスティックな幻想美を湛えたジャケット。ジャケットアートの巨匠キーフを彷彿させる意味ありげな人物の配置が印象的です。服装からしてそれぞれに何らかの身分/職業を象徴しているようにも思われますが、いずれにせよイマジネーションをかき立てる秀逸なデザインですよね。
本作は、A面にトラディショナル・ナンバーを、B面に15世紀フランスの詩人フランソワ・ヴィヨンをモチーフとしたオリジナル・ナンバーを配した構成となっており、もしかすると、ジャケットの象徴的なデザインはこの詩人に基づいたものなのかもしれません。
そして気になるサウンドですが、トラディショナル・フォーク本来の格調高さや牧歌性と、ロックのキレのあるダイナミズムがバランスよく融合した演奏は、英国のTREESに通じるものを感じさせます。ただしこのバンドの極めてユニークな点として挙げられるのが、そこに南米の大衆音楽であるフォルクローレのエッセンスを取り入れ、独自の解釈のもとヨーロッパのトラディショナル・ソングを再構成していること。70年代当時のユーロ・ロックとして遠く南米音楽と接点を持った例は、知る限りでは他にはなく、非常に革新的な試みだったと言えるのではないでしょうか。
なお彼ら、前作にあたる76年デビュー作『L’Hirondelle』では、ほぼ全曲がフォルクローレのアレンジで占められているという入れ込みようでしたが、欧州のトラッド・フォークへと回帰したこの2ndでは、フォルクローレ色が楽曲に豊かな表情をもたらすアレンジとして機能しており、本作によってASGARDというバンドならではのサウンドを完成させたと言っていいでしょう。
それがこのどこかヨーロッパの伝統音楽とは趣を異にする賑々しさを醸し出しているんですね。
フランスらしい繊細で幻想的な弾き語りに寄り添うこの山々に木霊するような縦笛の音色は、南米のLOS JAIVASなども彷彿させる、間違いなくフォルクローレを源流とするサウンド!
こちらはフランスの民謡をダイナミックなフォーク・ロックに仕立てあげた一曲。一気にピリッとした荘厳な空気が支配するところはさすがですね。現代ではラジカル・トラッドと呼ばれるジャンルの元祖的な音とも言えるのではないでしょうか。
一方後半は、これぞフレンチ・プログレ!と言いたくなる、耽美な叙情派シンフォを展開します。アコースティカルな響きを残しつつも、シンセやメロトロンが幽玄を奏でる、欧州の深い森の中を彷徨い歩くような得も言われぬ神秘性と幻想美が渦巻くシンフォニック名曲!
なお、ASGARDというのは北欧神話で神々が住まう住居のことだそうで、70年代の英国にも同名のプログレ・バンドが存在していたことはご存知かもしれません。こちらも英国らしい格調と哀愁がたなびく素晴らしきヴァイオリン・プログレの名盤。ASGARDつながりでこちらもピックアップ☆
旧ユーゴはスロヴェニアに、「英フォーク三種の神器」に通じる神々しさを放つ傑作が生まれていたとは!メロウ・キャンドルのファンは間違いなくやられます!
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