2015年2月3日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
66年8月にリリースされ、全米No1の大ヒットとなったタイトル・トラックを含むドノヴァンの3rdアルバムで、ビートルズに負けじとロック・メインストリームの最前線に踊りでた名作『サンシャイン・スーパーマン』をピックアップいたしましょう。
66年の8月と言えば、ビートルズ『リボルバー』がリリースされたのと同じ月で、反体制の若者文化の代弁者としてのフォーク・ロックから、アーティスト個人の表現を進化させたサイケデリック・ロックへとスイッチする時期。そんな時代の空気を読み取ったドノヴァンは、サイケデリック・フレイヴァーたっぷりのヒット曲「サンシャイン・スーパーマン」とともに、デビュー時の「英国のディラン」から、サイケな時代のポップ・アイコンへと一気に跳躍しました。
サウンド面でサイケデリック・フォーク・ロックへと変化するキーとなったのが、本作からコンビを組んだプロデューサーのミッキー・モスト。アニマルズを見出し、ハーマンズ・ハーミッツをアメリカで成功させるなど、時代とリンクした3分間ヒットソングを作ることに長けた彼とのコンビネーションで、ロックの先端をいく、管弦楽器やシタールなどを導入したメルヘンチックかつサイケなサウンドを獲得しました。
アルバムのオープニングを飾るのが、タイトル・トラックの「サンシャイン・スーパーマン」。何より印象的なのが、不思議な浮遊感のある効果音的なギターで、なんと演奏しているのはセッション・ミュージシャン時代のジミー・ペイジ!オリエンタルな雰囲気をかもすハープシコード、ボコボコとまるでタブラみたいなドラムもクールだし、ちょっと気だるげなドノヴァンのヴォーカルもいい感じ。これがラジオから聴こえてきたら、そりゃレコード屋に走りますよ。キャッチーすぎる名曲。
鉄琴やハープシコードやリコーダーの夢想的な響き、そして、流麗なストリングスによる艷やかなるアレンジが、まるでカート・ベッチャーのミレニアムみたいで、元祖ソフト・ロックと言えるT2「Legend Of A Girl Child Linda」は美しすぎだし、タブラやシタールが低く立ち込めて、まるでソロのシド・バレットみたいな気だるいヴォーカルが乗るT3「Three King」なんてインクレディブル・ストリング・バンドに先駆けて元祖アシッド・フォークと言えちゃいそうだし、アコギのストロークにドリーミーなメロディがたゆたうT4「Ferris Wheel」は、きっとベル&セバスチャンに影響を与えただろう元祖ネオ・アコと言えるし、ダブル・ベースやジャジーなブラスも入ったT5「Bert’s Blues」は、この路線の先に確かにペンタングルやニック・ドレイクが続いていることが感じられるし、A面だけでこの濃密さで、いやはや「プログレッシヴ」と言えるほどに先鋭的なサウンドを次から次へと聞かせています。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを彷彿させるA面からサビでドアーズになる、なんてレビューしようと思ったら、ヴェルヴェッツもドアーズもまだデビューしてない!ということに驚きな「Season Of The Witch」ではじまり、ヴェルヴェッツで言えば「Sunday Morning」のように気品たっぷりな「Celeste」でおわるB面もまた言葉を失う美しさ。
きっとビートルズのメンバーにも影響を与えたはずだし、この作品がなければ『サージェント・ペパーズ』は生まれなかったかも、と言っても過言ではないでしょう。
『サージェント・ペパーズ』と比べるとロック史における評価は雲泥ですが、時代の先をいき、後進のロック・ミュージシャンに与えた多大な影響を考えると、66年の確かなロック・マイルストーンと言える作品。
1946年にスコットランドはグラスゴーで生まれ、64年にボブ・ディランのロンドン公演でミュージシャンの道を志した若干20歳の若者が、ついにビートルズやボブ・ディランと並ぶ地平へとたどりついた出世作であり、代表作であり、60年代屈指の傑作です。
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