2014年10月17日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
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ジェスロ・タルのオリジナル・ギタリストとして知られるミック・エイブラハムズ(Mick Abrahams)が結成したバンド、ブロドウィン・ピッグ(BLODWYN PIG)を特集いたしましょう。
まずは、結成までのミック・エイブラハムズの経歴を振り返ってみます。
出身はイングランド東部のベッドフォードシャー。リッチー・ブラックモアの後釜としてSCREAMING LORD SUTCHに加入するなど、アンダーグラウンド・シーンで活躍した後、1967年、イアン・アンダーソンとともにジェスロ・タルを結成し、『日曜日の印象(THIS WAS)』で68年にISLANDレーベルよりデビューします。
ジェスロ・タルと言えば、イアン・アンダーソンのフルートが激しく吹き荒れるプログレッシヴ・ロックとして有名ですが、このデビュー作は、ミックとイアンとの双頭体制で制作され、ブルースとジャズ色の強いサウンドが特徴です。
ミックはソングライティングでも活躍。初期の代表曲と言える「Beggar’s Farm」は、ミックとイアンとの共作です。
メディアから好意的な評価を受け、イギリスで10位、アメリカでもビルボード62位となるヒットとなりながら、フォーク&ジャズを織り交ぜたよりプログレッシヴなサウンドを求めるイアンとの音楽的な方向性の違いからバンドを脱退。ブルース・ロックを追求するべく結成したバンドがブロドウィン・ピッグです。
他のメンバーは、
69年に『AHEAD RINGS OUT』でデビュー。初期コロシアムやキーフ・ハートレイ・バンドなどと同じく、ブルース・ロックをベースに、ホーン・セクションを導入した、英国的な陰影豊かなブラス・ロック・サウンドを聴かせます。
彼らのTV放送映像も紹介いたしましょう。
サックスとフルートを同時に加えて吹くジャック・ランカスターがカッコ良すぎ!
同じく69年にリリースされたコロシアムとキーフ・ハートレイ・バンドの作品も聴いてみましょう。ブラスを導入したブルースとジャズのハイブリット・ロックが当時のトレンドだったんですね。
そして、1stに比べ、よりブラスをフィーチャーし、ソリッド&ファンキーなサウンドを聴かせるのが1970年作の2nd『GETTING TO THIS』です。
1曲目から汗飛び散るように熱気むんむんでグルーヴィーなブラス・ロックが炸裂!
シカゴやBS&Tなど米国のブラス・ロックは音に艶やきらびやかさがありますが、ブロドウィン・ピッグの場合は、全体的に霧がかったようで陰影がある音がいかにも英国流ですね。
幻想的なフルートをフィーチャーした2曲目も英国臭ぷんぷん。ミック・エイブラハムの渋みと旨味たっぷりのスライド・ギターもいぶし銀でたまりません。
TV出演時の映像もピックアップいたしましょう。
ミック・エイブラハムとジャック・ランカスターのソロが原曲以上にフィーチャーされていて、これはカッコ良い!
ワイト島フェスやレディング・ロック・フェスに出演したり、2回のアメリカ・ツアーも行うなど、精力的なライヴ活動で叩き上げたバンドとしての実力がみなぎっていますね。
1stが全英9位、2ndが8位とヒットにも恵まれますが、音楽的な対立からミック・エイブラハムズが脱退。バンドは、イエスの初代ギタリストで後にFLASHを結成するピーター・バンクスを迎えるなど活動を続けますが、アルバムを残すことなく解散します。
バンドを脱退したミック・エイブラハムズは、ミック・エイブラハムズ・バンドを結成。71年に1st『A MUSICAL EVENING WITH THE MICK ABRAHAMS BAND』、72年に2nd『AT LAST』を残します。
ジャック・ランカスターが参加した注目作もピックアップいたしましょう。
まずは、オランダの名プログレ・バンドTRACEのリーダーであり名Key奏者リック・ヴァン・ダー・リンデンと組んだプロジェクトから聴いてまいりましょう。
プログレとフュージョンをつなぐ架け橋と言われたそのスリリングなサウンドが大きな話題を集めた1979年の名作。
同じく1979年に英国裏街道オールスターというべきグループAVIATORとしてもデビュー作をリリースしています。精力的ですね~。
メンバーは、ジャックの他、MANFRED MANN’S EARTHBANDのVo/Gのミック・ロジャース Mick Rogers、CARAVANやQUANTUM JUMPでお馴染みのベーシスト、ジョン・G・ペリー、元JETHRO TULLのドラマー、クライヴ・バンカー!
彼が参加した作品もセレクト。
フォーク・ロック・バンドがDeram Novaより70年にリリースした作品にゲスト参加。
ジェネシスの初代ギタリスト、アンソニー・フィリップスの1stソロにも参加。
BRAND Xのデビュー作『UNORTHODOX BEHAVIOUR』でもラスト曲「Touch Wood」に参加しています。
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カラフルな音色が渦巻くサイケデリック・ミュージックからの揺れ戻しでシンプルなサウンドへと回帰していく中、1968年に音楽シーンの最前線へと躍り出た「ブルース・ロック」。
ロック・シーンの進化の度合いはますます加速し、翌年の69年、ブルース・ロックは早くも「進化」していきます。
その中で最も人気を得たバンドが、ブルース・ロックをベースによりハード化したサウンドを引っさげて華々しくデビューしたレッド・ツェッペリン。その一方で、ホーン・セクションを導入し、ジャズのイディオムを用いてブルース・ロックをストイックに進化させようとしたバンドが、コロシアムであり、キーフ・ハートレイ・バンドであり、ここで紹介したブロドウィン・ピッグでした。
愛すべきながら冴えないジャケット・デザインもあって日本ではB級に甘んじているバンドですが、69年と70年という英国ロックが最も熱かったと言える時期に、先頭集団で走り抜けた名バンドと言えるでしょう。
ジェネシスの初代ギタリストとして活躍し、70年代後半以降はソロ・ミュージシャンとして英国的叙情性に満ちた質の高い作品をリリースしてきた彼の、記念すべき77年1stソロ。ジェネシスのメンバーであるマイク・ラザフォード、フィル・コリンズらが参加。フィリップスによる丹念に爪弾かれるアコースティック・ギターの調べを、ゆったりとおおらかに流れるシンセとリリシズムに満ちたフルートの音色が彩るスタイルを軸とした、アコースティカルな手触りのシンフォニック・ロックを聴かせます。アコースティック楽器主体の演奏ですが、中世トラッド色とよりアカデミックなクラシック的要素の両方が違和感なく一体となった、たおやかな牧歌性とともに格調高くも瑞々しい英国然とした音色が印象的。ジェネシス脱退後にクラシック音楽とクラシック・ギターを本格的に学んだというその成果が遺憾なく発揮されています。演奏のみならず組曲「Henry」におけるハイレベルな楽曲構築性なども彼の豊かな才能を証明しており聴き所。3曲あるヴォーカルナンバーは、1曲でフィリップス、2曲でコリンズがヴォーカルを取っており、特にコリンズによるヴォーカルナンバーは、ジェネシスとは趣の異なる繊細で素朴な味わい深さが大変魅力的。清冽な小川の流れ、風にそよぐ木立、一面に広がる田園など、英国丘陵地帯の情景がイマジネーション豊かに立ち上がってくるような名品です。
デモ音源やシングル・バージョン音源やスタジオ音源などを収録したDISC2を含む2枚組仕様、デジタル・リマスター
盤質:傷あり
状態:良好
1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり
デモ音源やシングル・バージョン音源やスタジオ音源などを収録したDISC2を含む2枚組仕様、デジタル・リマスター
盤質:無傷/小傷
状態:良好
イギリスを代表する存在であり、GENESISのドラマーPhil Collinsが参加していたことでも有名なジャズ・ロック、クロスオーヴァー・フュージョングループの76年デビュー作。その内容は技巧的な演奏の連続が素晴らしいスリリングなテクニカル・ジャズ・ロック作品であり、Phil CollinsのせわしないドラムとPercy Jonesの技巧的なフレットレス・ベースによるリズム・セクションの躍動感をベースにし、各メンバーのいぶし銀のプレイが光る名盤です。アメリカナイズされたクロスオーヴァー・フュージョンのフォーマットは用いつつも、やはり英国的な音の深みと陰影を感じさせるサウンドは彼らならではの個性と言えるでしょう。
ジョン・メイオール率いるブルースブレイカーズを経て、キーフ・ハートレイが結成したグループ。69年にデラムからデビューした同年のうちにリリースされた2nd。前作ではゲスト参加だったヘンリー・ローザーが正式にメンバーとしてクレジットされ、BS&Tやシカゴなど米ブラス・ロック・ムーヴメントとも呼応し、ヘンリー・ローザーを中心とするホーン・セクションをフィーチャーした英ブルース/ブラス・ロックが印象的。ブラス・ロックといっても米国勢のように華やかにならず、むせび泣くように叙情的なのがいかにも英国。ジャジーなフルートとゲスト参加したミック・ウィーヴァーによる淡いオルガンが醸し出す叙情美に心奪われます。ミラー・アンダーソンの憂いたっぷりのヴォーカルも相変わらず絶品。キーフ兄貴のボコスカと重くタイトなドラムもキマってます。米ブラス・ロックの「逞しさ」「華やかさ」に英国ならではの叙情性で対抗したブラス・ロック名作。最高のグルーヴ!
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