2014年5月7日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
今日の「MEET THE SONGS」は、英オルガン・ロック・グループCRESSIDAの71年リリースの2nd『ASYLUM』をピックアップいたしましょう。
CRESSIDAのストーリーは、1968年、John Heyworth(g)とAngus Cullen(Vo)が出会ったことからはじまります。2人はDOMINATORSというバンドで一緒になり、意気投合。間もなくバンドは解散しますが、Angusのアパートで2人は共同生活をすることになり、本格的に作曲活動をスタートします。Kevin McCarthy(b)、Iain Clark(dr)、Lol Coker(org)が加わり、バンドCHARGEを結成。69年にはデモを作り、新興のVERTIGOレーベルと契約します。この時の音源は『TRAPPED IN TIME』として発掘リイシューされています。
Lol Coker(org)が脱退し、代わりにオーディションでPeter Jennings(org)が加入。バンド名をCRESSIDAと改め、ドイツやフランスやスイスやチェコスロヴァキアなど、ヨーロッパをツアー。ドイツでは、COLOSSEUMやEAST OF EDENとともに、ビートルズで有名なハンブルグのSTAR-CLUBに出演を果たします。ヨーロッパから帰ると、マーキー・クラブなどロンドンを中心にライヴ活動を行うとともに、英国各地の大学を回るツアーも行います。
69年末には1st『CRESSIDA』をレコーディングし、70年にリリース。フォーキー&メロウなJohn Heyworth(g)とフォーク色とともにR&B~ジャズ・フィーリングも香るAngus Cullen(Vo)のオリジナル・コンビによるメロディアスな楽曲とAngusのジェントルで気品ある歌声は評論家に高く評価されます。
70年はじめには、オリジナル・コンビの内の1人、John Heyworth(g)がツアーの疲れや人間関係のトラブルから脱退。残ったAngus達は、よりプログレッシヴな作風をめざし、ロックからジャズまでインプロヴィゼーションをこなせるギタリストを募集。オーディションの結果、R&Bシンガーのバックでギターを弾いていたJohn Culley(g)が加入します。
この頃、バンドはシングル向けにコマーシャルな「Situation」をレコーディングしますが、なぜかお蔵入りに。この楽曲は、アーカイヴ音源集『VERTIGO YEARS ANTHOLOGY 1969-1971』で聴くことができますが、1stの延長線上にあるリリカルな佳曲です。
新ラインナップとなったバンドはすぐに2nd『ASYLUM』のレコーディングに着手。持ち前の英国叙情とともに、ジャズやクラシックのエッセンスも盛り込んだアンサンブルには磨きがかかり、オーケストラも導入し、楽曲は長尺になり、プログレッシヴ・ロックとして一気に飛躍しています。
メインソングライターAngus Cullenの楽曲を中心に、Key奏者のPeter Jenningsもバンドの代表曲となった名曲「Munich」をものにするなどソングライターとして覚醒。ラストには、脱退したオリジナル・メンバーのJohn Heyworthの楽曲も本人は演奏に参加していないものの収録。楽曲の魅力も1stからグンと増した印象。
アルバムは、1stの流れを組む軽快なオルガン・ロックでスタートします。
叙情と陰影に満ちたメロディとジェントルな歌声の気品あるヴォーカルは相変わらず英国度120%。
新加入したギタリストJohn Culleyによる抑制されたトーンのジャジーなギター、そして、R&Bフレイヴァーのあるオルガンとの見事なコンビネーション、そして、後にURIAH HEEPに加入するIain Clarkの細かい手数のシャープなドラミング。青白い炎のように熱気を淡さの中に閉じ込めたアンサンブルは、アフィニティなどと並びこれぞブリティッシュ・オルガン・ロックと言える魅力に溢れています。
スピーディーに疾走するラスト30秒は、まるでディープ・パープルばりにドラマティック!
そして、2曲目は、キーボード奏者John Heyworth作曲の大曲。
静かに感動を呼ぶリリカルなメロディ、そして、熟成されたワインのように香り豊かなヴォーカル。キメの部分のバンドとヴォーカルが一体となってドラマティックに盛り上がる部分は、誰もが胸を鷲掴みにされるでしょう。メロディをドラマティックに彩る艶やかなストリングスもまた絶品。
タメの効いた歌心満点のリード・ギターも特筆で、ドラムとオルガンが熱くスウィングするソロ・パートでは、精緻なタッチで後期ビートルズのジョージ・ハリスンとカンタベリーのフィル・ミラーとをつなぐようなギター・ソロを聴かせます。ギターに呼応して、アグレッシヴかつ流麗に疾走するオルガン・ソロも出色。
ギターとオルガンのソロが終わると、管楽器による静謐なクラシカルなパートが訪れ、再び、ジェントルなメインのメロディへ。
ラスト1分では、バロック調のオルガン、R&B直系の跳ねたリズムによるオランダのトレースばりのクラシカル・ロックを聴かせ、ラストのテンションみなぎるキメのパートまで一気にのぼりつめます。
溢れんばかりの叙情美とドラマティックな曲展開。ブリティッシュ・オルガン・ロックのみならず、70年代プログレッシヴ・ロック屈指の名曲と言えるでしょう。
3曲目以降も、R&B~サイケ・ポップの残り香を下地に、ジャズ、クラシックのエッセンスを盛り込みつつ、淡い英国叙情と気品で包み込んだ佳曲ぞろい。様々な音楽エッセンスを水彩画のような柔らかい筆致で塗り重ねたサウンドは、1970年代はじめの英国でしか生まれでないものと言えるでしょう。
バンドは、レコーディングが終わるとすぐにヨーロッパ・ツアーに出ますが、マネージャーの不手際により資金面でもバンドの継続が難しくなったことで、メンバー間の関係が悪くなっていき、『ASYLUM』のリリースを待たずに70年末に解散してしまいます。
バンド解散後、ドラムのIain Clarkは、URIAH HEEPに加入。名作『LOOK AT YOURSELF 対自核』に参加します。
ベースのKevin McCarthyは、リズム・ギターとしてジョン・G・ペリーが在籍していたことで知られるTRANQUILITYに加入。
2ndから加わったギターのJohn CulleyはBLACK WIDOWに加入し、『III』『IV』など名作に貢献します。
キーフの中でも特に人気の高いジャケのイメージ通りの淡く叙情的なサウンドの本作『ASYLUM』は、同じVERTIGOレーベルのAFFINITYやFAIRFIELD PARLOURなどとともに、70年代はじめの「英国」の空気を見事に閉じ込めた名作と言えるでしょう。
70年にVertigoレーベルよりリリースされた1st。叙情性溢れるメロディーと憂いのあるオルガン、クラシックやジャズの要素を取り入れたプログレッシヴなアンサンブルというスタイルは、いかにも英国70sロックの真骨頂。美しいメロディーを持った佳曲揃いの傑作。
英国オルガン・ロックを代表するグループがVERTIGOレーベルより70年と71年にリリースした1st&2ndをカップリングした2枚組CD。叙情性溢れるメロディーと憂いのあるオルガン、クラシックやジャズの要素を取り入れたプログレッシヴなアンサンブルというスタイルがいかにもブリティッシュ・ロックと言える1st。1stに比べて、演奏、アレンジとも磨きがかかり、美しいメロディーとドラマティックなアレンジが絶妙に絡んだサウンドが圧倒的な完成度を誇る2nd。どちらの作品も英国ロックを語る上では欠かせない名作です。2ndの2曲目「Munich」は、クラシック、ジャズ、ロックを剥き出しのままぶつけたようなテンション溢れるサウンドが絶品で、緩急自在の曲構成が秀逸な出色の名曲。
盤質:傷あり
状態:良好
スリップケース無し
URIAH HEEPといえば、「対自核」(邦題)と云われる程の代表作!サウンド的には前作「Salisbury」と次作の中間といった所なのですが、バンドのサウンドが成長し、完成度の高いアルバムになっています。また、ミック・ボックスのギターが活躍しており、このアルバムがブリティシュ・ハードロックの名盤として語られる事が多いことも頷けるサウンドになっています。まだ、少々荒削りなサウンドですが、勢いのあるサウンドで、バンドとしての勢いも感じられる仕上がり。冒頭に収録されたアルバム・タイトル曲「Look At Yourself(対自核)」は、名実ともにユーライア・ヒープの代表曲であり、70年代ブリティッシュ・ハード・ロックの名曲のひとつ。楽曲の全編を重厚なオルガンが覆っていますが、決してそれだけが浮き上がることなく、全体としてアグレッシヴなロック・ミュージックを構成する様が見事。間奏部のエキゾチックなメロディや要所要所で聴かれる印象的なコーラスも独特の雰囲気を醸しています。終盤ではOsibisaのメンバーによるパーカッションの客演を得て、さらに魅力的な演奏が展開。決して「軽快」とは言い難いが、興奮を誘うような独特の疾走感が痛快!
70年にVertigoレーベルよりリリースされた1st。叙情性溢れるメロディーと憂いのあるオルガン、クラシックやジャズの要素を取り入れたプログレッシヴなアンサンブルというスタイルは、いかにも英国70sロックの真骨頂。美しいメロディーを持った佳曲揃いの傑作。
72年発表の3作目。黒魔術バンドとして売り出されたグループですが、そういった要素は無く、ハモンドを基調とした疾走感ある演奏に、ときおりフルートや管弦楽器が哀愁漂うメロディーを奏でる、典型的なブリティッシュ・ロック・サウンド。時折聴かせるジャズ・ロック的な演奏とメロディアスなヴォーカル・ラインは、個人的には「グレイとピンクの地」あたりのキャラヴァンを想わせます。メロディー、アレンジ、演奏がハイ・レベルに拮抗した名盤です。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!