2017年8月17日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
先ごろ17年作『DETACHMENT』がリリースされ、先日にはついに待望の来日公演も実現。日本でも認知度が高まってきている注目のイタリア新鋭BAROCK PROJECT。
70年代プログレの質感を受け継ぐヴィンテージなサウンドと、現代のバンドらしいエッジの効いたモダンなサウンドを絶妙なバランスで取り入れたセンス溢れる音作りを特徴とします。
今回は、そんな要注目の新鋭BAROCK PROJECTの変遷を作品紹介とともに振り返ってまいります!
BAROCK PROJECTは、04年に活動を開始したイタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ。キーボーディストであるLuca Zabbiniのプロジェクト・バンドとして発足し、現在までに5枚のアルバムをリリースしています。
結成当初のメンバーは、84年生まれのキーボーディストLuca Zabbini、ヴォーカルのLuca Pancaldi、ベースのG.B. Giorgi、ドラムスのGiacomo Calabriaという4人編成。
彼らは、07年のアルバムデビュー以前より精力的にライヴ活動を行っており、後の作品にも影響が色濃く現れているELPやGENESIS、自国のバンドではNEW TROLLSなど70年代プログレの楽曲を卓越した演奏力でカヴァーしています。下の動画は05~07年のライヴより。
「LOS ENDOS」(GENESIS)
「BARBARIAN」(ELP)
「CONCERTO GROSSO N2」(NEW TROLLS)
そんなBAROCK PROJECTですが、07年についにアルバム・デビューを果たします。1st『MISTERIOSE VOCI』は、PFMを思い出さずにはいられないこれぞイタリア!な爽やかでヌケの良いメロディセンスと、レパートリーとしていたELPやGENESISを見事に消化した疾走感とドラマティックさを合わせ持つキーボード主体のアンサンブルが一体となった、抜群にキャッチーな傑作に仕上がっています。決してヴィンテージなプログレ観に偏りすぎず一貫して凛としたモダンな質感が通底している点も聴きやすさに一役買っているように思えますよね。上のライヴ映像でもわかるようにもともと地力はあったとは言え、1stにしてこの揺るぎないオリジナリティと完成度の高さは驚異的!
09年にリリースされた2nd『REBUS』は、新たにギタリストのMax Scarciが加わった5人組でレコーディングされており、それを反映するかのようにギターのパワフルなプレイがキーボードと拮抗してサウンドの広がりが増した力作。前作でもギターはフィーチャーされていましたが、今作ではハードエッジなギターがバンドサウンドに前作以上のキレを加えており、ロマンティックに広がるキーボードと劇的な対比を生み出しています。BAROQUEとROCKをかけたものと思われるバンド名通りと言えるバロック調の格調高い演奏を聴かせるナンバーも素晴らしく、ここでのQUEENすらよぎる華美なコーラスワークなど、前作同様聴きどころを満載した一枚となっています。やはり傑作!
そして12年にリリースされた3rd『COFFEE IN NEUKOLLN』がまたまた傑作。前作リリース後にドラマーとギタリストが脱退、キーボードのLuca Zabbini、ヴォーカルのLuca Pancaldi、ベースのG.B. Giorgiの変則3ピースバンドとなっていますが、そんなこと露ほども感じさせないBAROCK PROJECTならではの音世界が広がってきます。ヨーロピアンな情感を纏いより艶やかさを増したキーボードを中心に紡がれるアンサンブルはもはや盤石というべき素晴らしさ。在りし日のプログレを偲ばせるヴィンテージサウンドと現代のバンドとしてのモダニズムを絶妙な配分で織り込んでいくこのハイセンスは、奇才Fabio Zuffanti率いる大御所バンドFINISTERREにも肩を並べる完成度と言えるのではないでしょうか。前作同様バロックなアプローチも抜群に決まっていますね~。
そして15年には、Lucaがここまでの最高傑作と自負した4th『SKYLINE』を発表。本作からは紙ジャケ化を含む国内盤もリリースされ、徐々に日本でも人気を上げていきます。今作で新たなドラマーとギタリストを迎えた4人編成となっており、さらにカバーするなど憧れのバンドだったニュー・トロルスのVittorio De Scalziが3曲目にゲスト参加。爽快なアカペラの多声コーラス・ワークではじまり、アコギとエレキによる弾むようなバッキング、透明感あるリリカルなピアノ、ファンタスティックなキーボードが豊かに広がるアンサンブルの何と素晴らしいこと!前のめりに突っかかるようなリズムのキメとともに、ハモンド・オルガンがうねりを上げるところは、往年のプログレのDNAを継ぐ幻想性とともに、現代的なエッジが絶妙にバランスしててカッコ良いし、ガツンと歪んだギターとハモンドが突っ走るところなんかは70年代ハード・ロックも継いでてグッとくるし、管楽器風のトーンのキーボードが高らかに鳴り響いたかと思うとクラシックそのままの流麗なピアノが流れてメロディアスなパートにスイッチしたり、溢れんばかりのアイデアとそれを軽々とこなす演奏も特筆ものだし、とにかくワクワク感いっぱい。前作を超えるのは容易ではないと思われましたが、さらに突き抜けたサウンドが広がっていてただただ仰天です。
2017年には『DETACHMENT』をリリース。今作でも変わらずのキャッチーでドラマチックなメロディメイクと、変拍子を交えながら疾走感いっぱいに駆け抜けていくテクニカルな演奏の組み合わせが痛快そのもの。エマーソン譲りの速いタッチで派手に畳み掛けるシンセ、ここぞというパートでアグレッシヴに噴き出すハモンド、クラシックの素養滲むロマンティックなタッチのピアノなど、各鍵盤を自在に操り70年代プログレへのリスペクトに溢れたプレイを聴かせるLuca Zabbini、改めて並ではない才能を感じさせます。一方ハード・ロック調の重量感あるプレイを主とするギターが現代的なエッジあるサウンドを担当。ポップに洗練された親しみやすいモダン・プログレの中に絶妙にヴィンテージ質感を織り込むセンスの良さが今作でも光ります。またリズム隊も特徴的で、民族舞曲に通じるリズミカルな躍動感を持つプレイを随所で織り交ぜることでイタリアらしい祝祭感を生み出しているのが特筆。得意とする荘厳で格調高いバロック調スタイルを取り入れたナンバーの完成度にも一層磨きがかかっています。メリハリの効いたスピード感ある展開で一気に聴かせる、文句なしの快作!
そして2019年、待望の6枚目『SEVEN SEAS』がリリースされました。優雅なストリングスも交えたスケール大きいクラシカル・エッセンスと、ハード・ロック的疾走感、そして突き抜けるように明快でキャッチーなメロディが一体となった、今作もBAROCK PROJECTしか鳴らせない痛快無比なプログレを楽しませてくれます。注目はやはりキーボードで、アグレッシヴに唸りを上げるハモンド、厳かでデリケートに鳴らされるピアノ、スピーディに躍動する色彩豊かなシンセと、各種キーボードを自在に操り演奏をリードする、まさにエマーソン譲りの才能を見せつけます。ハード・ロック的なエッジの立ったギターとの対比も鮮やかで、「静」と「動」を目まぐるしくダイナミックに行き来するスタイルにワクワクが収まりません。技巧とキャッチ―な聴きやすさを両立したプログレとして最高峰と言いたい一品!
降り注ぐイタリアの陽光をいっぱいに浴びたようなドラマティックでありながら終始オプティミスティックな空気が支配するシンフォニック・ロックは、00年代以降の新鋭プログレとしてはもっとも聴きやすい部類に入るものと言えるかもしれません。イタリア新鋭プログレの入門バンドとしても最適なBAROCK PROJECT、ぜひ今後の動向にも注目してみてください☆
クラシック音楽やキース・エマーソンに影響を受けたキーボード奏者&コンポーザーのLuca Zabbini率いるグループ。Luca自身がこれまでの最高傑作と評する2015年作4thアルバム。新たなドラマーとギタリストを迎え4人編成となっており、ゲストとして、なんとあのニュー・トロルスのVittorio De Scalziが3曲目に参加して録音されています。爽快なアカペラの多声コーラス・ワークではじまり、アコギとエレキによる弾むようなバッキング、透明感あるリリカルなピアノ、ファンタスティックなキーボードが豊かに広がるアンサンブルの何と素晴らしいこと!このオープニングを聴いて、ムーン・サファリを思い出すリスナーはきっと多いはず。前のめりに突っかかるようなリズムのキメとともに、ハモンド・オルガンがうねりを上げるところは、往年のプログレのDNAを継ぐ幻想性とともに、現代的なエッジが絶妙にバランスしててカッコ良いし、ガツンと歪んだギターとハモンドが突っ走るところなんかは70年代ハード・ロックも継いでてグッとくるし、管楽器風のトーンのキーボードが高らかに鳴り響いたかと思うとクラシックそのままの流麗なピアノが流れてメロディアスなパートにスイッチしたり、溢れんばかりのアイデアとそれを軽々とこなす演奏も特筆ものだし、すごいワクワク感いっぱい。EL&Pやジェスロ・タルへの愛情たっぷりなパートなんかもニンマリだし、往年のプログレ・ファンにも激レコメンド。前作も素晴らしい出来でしたが、さらに突き抜けた傑作!
紙ジャケット仕様、SHM-CD、ボーナス・ディスク付きの2枚組、定価3200+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
天才キーボーディストと呼んで差し支えないLuca Zabbini率いる、現イタリアン・プログレ屈指の人気グループによる24年作!冒頭トランペットが勇壮に鳴り響いたと思ったら、突如唸りを上げるハモンド・オルガンを合図に、クラシカルな絢爛さとスタイリッシュなポップネスを纏って疾走し始めるアンサンブル。もうこの導入部の時点で傑作の匂いがプンプンしてきます。ヴォーカルが歌い上げるメロディも、いつもながらプログレを聴いている事を忘れそうなくらいにキャッチーで素晴らしいです。ビシビシとタイトに刻まれるリズム、クラシカルなフレーズを華麗に弾きこなすキーボード、強度抜群のヘヴィなギター、ここぞで涼風を運ぶフルート。各楽器が緻密に組み上げられていくような演奏なのですが、全体としては極めてスムーズな流れが感じられ、小難しさを一切感じさせないのが彼らの魅力です。そんな中でも、随所で飛び出してくるLuca Zabbiniの才気みなぎるオルガンの速弾き、そしてクラシックのバックボーンを発揮した劇的なピアノは、一際輝きを放っていてずばり一級品。キャッチーなプログレの最右翼として、MOON SAFARIと並べたい名バンドによる快作!
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