2013年6月28日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ,雑誌連動
皆さん、『ストレンジ・デイズ8月号』もうご覧になられたでしょうか?
今回の目玉特集として掲載されているのが、「ソフト・マシーン&カンタベリー・シーン再訪」と題されたカンタベリー・ロック特集。
カンタベリー・シーンの立役者SOFT MACHINEの足跡を辿りつつ、70年代に数々の名盤を残したカンタベリー系ミュージシャンから、21世紀に息づくカンタベリー・ミュージックまでを紹介しているかなり充実の内容なんです。
それではカケレコからも、カンタベリー名盤をピックアップしてご紹介してまいりましょう。聞き漏らしはないかチェックしてみてください♪
名盤PICKUP!
SOFT MACHINE
CARAVANと同じWILD FLOWERSを母体にRobert Wyattらによって結成されたグループであり、サイケデリック・ロックからその音楽性を変化させカンタベリー・ジャズ・ロックの代表的存在へと飛躍していったバンドによる70年3rd。Elton Deanに加えて、Nick Evans、Lyn Dobson、Rad Spail、Jimmy Hastingsという管弦奏者を充実させた8人体勢で録音された本作は、20分に迫る大曲4曲で聴かせる意欲作であり、初期のサイケデリック・ロックの音楽性を下地にしながらも、構築されたジャズ・ロック・アンサンブルと適度なアヴァンギャルド志向が融合した傑作です。
カンタベリー・ミュージックのみならず、ブリティッシュ・ジャズ・ロックを代表する言わずと知れた名グループ。1枚目が新曲中心のライヴ作、2枚目がスタジオ作という2枚組でオリジナルはリリースされた73年作6thアルバム。前作でサックス奏者のエルトン・ディーンが脱退し、代わりにカール・ジェンキンス(オーボエ、Key)が加入。メンバーは、マイク・ラトリッジ(Key)、ヒュー・ホッパー(B)に、元ニュークリアス出身のカール・ジェンキンスとジョン・マーシャル(Dr)という4人となりました。ニュークリアスでも作曲センスを披露していたジェンキンスは、本作でも約半数の作曲を担っているのが特筆。ラトリッジのクールなエレピとホッパーのずしりと重いベースによるリフの反復を軸に、ジェンキンスのオーボエが涼やかなトーンで幻想的なリードを奏で、その後ろでは、マーシャルがウワモノとは対照的に手数多くシャープに疾走。『3rd』から『5th』で磨き上げた硬派でクールなフリー・ジャズ・ロックを軸に、初期ニュークリアスで聴けたミニマルな反復リフとたゆたうホーンとが織りなす幻想美が加わり、同じく1970年にリリースされた英ジャズ・ロック傑作、ソフツ『3rd』とニュークリアス『エラスティック・ロック』との融合とも言えるサウンドを聴かせています。ジェンキンスに負けじと、ラトリッジもジャズに収まりきらない独創的な楽曲を生み出していて、特に「Chloe And The Pirates」は、90年代以降のポスト・ロックと言えるような流麗かつ浮遊感たっぷりなキラメく名曲。『3rd』にも負けない、イマジネーションに満ちた英ジャズ・ロック・シーン屈指の傑作と言えるでしょう。
オリジナル・メンバーのKevin Ayers以来のギタリスト、Allan Holdsworthが加入し、『6』『7』と推し進めてきたフュージョン色をより強めた作品。75年作の8thアルバム。Karl JenkinsとMike Ratledgeによる叙情性と浮遊感のあるキーボード・ワーク、そしてその上をテクニカルに疾駆するHolldsworthの流麗なギター。John MarshallのドラムとRoy Babbingtonのベースによるロック的ダイナミズムに溢れたソリッドなリズム隊も特筆もの。圧巻のテクニカル・ジャズ・フュージョン・ロック!Holldsworthの唯一の参加作となった傑作。
MATCHING MOLE
カンタベリー・シーンを代表するグループであり、SOFT MACHINEで4枚のアルバムに参加後脱退したRobert Wyattにより結成。独特のポップセンスを持った音楽性が魅力の72年デビュー作である本作は、元CARAVANのDave Sinclair、元QUIET SUNのBill MacCormick、後にHATFIELD AND THE NORTHに参加するPhil Millerといったビッグネームが集い製作された名盤であり、非常にポップな魅力に溢れたユーモラスなジャズ・ロック作品という趣です。インプロヴィゼーション色も強く現れており、淡いサイケデリアを描きつつ進行する様はとても個性的。大きくメロトロンが取り上げられている作品としても有名な名盤です。
ROBERT WYATT
カンタベリー・シーンを代表する名ドラマーであった人物が、シンガーとして始動した記念すべき74年作。転落事故により脊髄を損傷、下半身不随となりドラムを演奏することが出来なくなってしまった彼は、その不屈の精神でシンガーとしてキャリアを積み直していきます。本作は彼の代表作としても知られており、Richard SinclairやHugh Hopperなどのカンタベリー人脈に加えてFred FrithやMike Oldfieldも参加し、Nick Masonのプロデュースと言う布陣で製作された名盤。彼の儚げで優しいボーカルをフューチャーし、浮遊感と優しさに溢れたソフトなサウンドを放っています。
KHAN
David Allenを中心に結成されたプログレッシブ・ロックを代表するバンドGONG。そのGONGを支えたギタリストであり、当時URIELを経たSteve Hillageが、THE CRAZY WORLD OF ARTHUR BROWNのメンバーと共に結成したグループの72年作。URIELやARZACHEL時代の盟友Dave Stewartをゲストに迎えたその内容は、後にHATFIELD AND THE NORTHで開花するDave Stewartの個性と言えるカンタベリー・ジャズ・ロック路線のアプローチに、Steve Hillageらしいスペース・サイケデリックな味付けが冴える作風であり、スペース・ロック、カンタベリーの両ジャンルから見ても重要作と言える、強烈な個性を放つ名盤となっています。
EGG
Steve Hillageも在籍していたバンドURIELを母体として発足、名キーボーディストDave Stewartが率いたイギリスのプログレバンドの70年2nd。バンドは前作同様キーボートリオ編成ですが、ゲストにジャズフィールドのサックス奏者やトランペット奏者が参加し素晴らしい演奏を聴かせており、前作の路線を守りつつもより整合の取れた傑作となっています。Dave Stewartというとジェントリーなプレイに定評がありますが、本作ではAARDVARKのような歪んだハモンドオルガンの引き倒しも見せるなど、かなりアグレッシブなプレイを披露。ギターレスのハンデを全く感じさせません。そして一方ではHATFIELD AND THE NORTHに通じる華やかさも絶妙にブレンドされ、やはりセンスの良さを感じさせます。複雑な変拍子の応酬などプログレッシブなアプローチも素晴らしく、前作と併せて全プログレファン必携の名盤です。
HATFIELD & THE NORTH
元CARAVANのRichard SinclairとSteve Miller、元MATCHING MOLEのPhil Miller、後にNATIONAL HEALTHで活躍するPip Pyleにより結成され、Steve Millerが脱退、KHANを経たDave Stewartが参加したカンタベリー・ジャズ・ロックバンドの代表格の75年2nd。カンタベリー・ジャズ・ロックの代表作である本作は、20分の大作「Mumps」を含め、 前作より全体的に整理、洗練された世界観をすっきりと聴かせる作風となっており、クロスオーバー・ジャズ・ロック色を強めた音楽性へと変化しながらも、彼ららしいポピュラリティーを持ったサウンドと、胸を打つメロディーが素晴らしい傑作です。
NATIONAL HEALTH
カンタベリー・シーンの重要グループであるHATFIELD AND THE NORTHとGILGAMESHの中心メンバーが結成したジャズ・ロックバンドの78年作。Dave Stewart、Phil Miller、Neil Murray、Pip Pyleというキャリアのあるメンバーに加えてGILGAMESHのAlan Gowen、CARAVANやSOFT MACHINEとつながるJimmy Hastings、そしてGILGAMESHにも参加しているAmanda Parsonsなどゲスト人も強力。その内容はDave Stewartの存在感を感じさせる、HATFIELD AND THE NORTHの音楽性をよりジャジーにしたような作風であり、4曲の大作から成るカンタベリー・ジャズ・ロックの集大成といえる圧巻の傑作です。
CARAVAN
SOFT MACHINEと同じWILDE FLOWERSを母体にRichard Sinclairらによって結成されたグループであり、カンタベリー・ジャズ・ロックシーンを代表するグループの71年3rd。彼らの代表作との評価も高いその内容は、淡いサイケデリック・ロックの質感と、Richard Sinclairの甘く響くボーカル、Dave Sinclairの各種キーボードによるマイルドなアンサンブルが上質に響くカンタベリー・シーン屈指の名盤であり、英国然とした湿り気を帯びた雰囲気とSOFT MACHINEよりもポップ且つメロディアスな音楽性が素晴らしい1枚。20分超の大作も採用し、プログレッシブ・ロックならではのスリリングなインタープレイを見せ付けながらも、やはりナイーブでセンチメンタルな叙情に溢れた傑作です。
いかがでしたか?よりカンタベリー・シーンを掘り下げたいという方はこちらのカンタベリー特集も是非ご覧ください♪(潮流図をクリック!)
さて、ストレンジ・デイズ本誌には他にも、カンタベリー・ミュージックに関連するさまざまなコンテンツが載っております。中でも注目が、SOFT MACHINEの音楽性を今に受け継ぐバンドSOFT MACHINE LEGACYのギタリスト、ジョン・エサリッジへのインタビュー!ソフツの『3rd』辺りを彷彿させる13年発表の名品『BURDEN OF PROOF』についても語ってくれていますよ!
手数多いフリーフォームなドラミングで『5th』以降のソフツを支えるジョン・マーシャル、アラン・ホールズワースの代わりに参加しながら遜色ないテクニックとセンスで『ソフツ』以降の後期ソフト・マシーンを盛り上げたジョン・エサリッジ、力強くもしなやかなダブル・ベースで『4th』以降のバンドのボトムを支えたロイ・バビントン、そして、唯一の若手ながらロバート・フリップともデュオを組む気鋭のサックス/Key奏者テオ・ラヴィスという4人組となったソフト・マシーン・レガシーによる07年以来の2013年スタジオ作。ベースによるクールな反復リフ、そこにおかまいなしに圧倒的な手数でフリーキーに畳み掛けるドラムといういかにもソフト・マシーンらしいリズム隊を軸に、エレピやフルートが幻想性や浮遊感を添え、サックスが力強くもムーディーにブロウを放ち、速弾きギターが流麗にかけぬけるアンサンブルは中期と後期のソフト・マシーンの魅力が見事にあわさった印象。サックスがまるで初期クリムゾンばりに暴れたり、キレのある変拍子で畳み掛けたり、ベテランとは思えないエネルギッシュなアンサンブルもまた魅力です。レガシーとついていますが、決して懐古的ではなく、ソフツならではの実験精神健在のテンションあふれる逸品です。
デイヴ・シンクレアやフィル・ミラーが在籍するバンドへのインタビューも読み応え十分!12年デビュー、HATFIELDや初期CARAVANのポップ・フィーリングを受け継ぐカンタベリー出身の新鋭BOOT LAGOONのインタビューも実に興味深い内容となっています。
そして特集では、カンタベリー・ミュージックの精神を受け継ぐ21世紀期待の新鋭バンドたちも紹介されています。
そんなわけで、その中の注目バンド+αを一挙ご紹介してまいりましょう!
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70年代カンタベリー・ロックのエッセンスを独自に昇華させた新鋭たち、どれもレベル高いですよね~。今後も本家を中心として、世界中にカンタベリー・ロックの魅力を広げていって欲しいと思います。カンタベリー・ロックよ、永遠なれ!
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