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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第七十九回:EDENBRIDGE『SHANGRI-LA』

女性シンガーものに惹かれてしまうのは、男のサガでしょうか。いや、今の時代そういう表現も不可なのかも。僕は、と書いた方がいいかな。そう、女性シンガーものが好きなんです、僕は。ということで今回は、近作がまとめて国内発売されたのを祝して、歌姫サビーネ・エデルスバッハー有するオーストリアのシンフォ・メタル・バンドEDENBRIDGEを、ジャケットの話題中心で紹介です。

EDENBRIDGEの中心人物は、オーストリア出身のランヴァルことアルネ・ストックハマー。ギターだけでなくキーボードなども弾くことができるマルチ奏者。彼はまずランヴァル名義で1994年に『MELOLYDIAN GARDEN』というアルバムをリリースしている。これが叙情系シンフォ・プログレの良作として、少なからず話題を集めることに。オーストリアの叙情プログレ・アーティストには、ガンダルフという大先輩がいるが、ランヴァルの2作目『AURAMONY』(1996年)には、そのガンダルフも参加。人間の持つ様々な色のオーラをテーマにしたコンセプト作という、これまたプログレ・ファンの琴線をくすぐるアルバムだった。1997年にはソロ3作目『THE PYROMANTIC SYMPHONY』を発表。1作目から一貫してのシンフォ・プログレ作となっている。近年に紙ジャケ再発されたので興味がある方は是非どうぞ。

だけどランヴァル自身は、ガンダルフ路線のひとりプログレ・ユニットをやる気はなかったようだ。彼がやりたかったのは、そのシンフォ・プログレのセンスを用いたハード・ロックで、女性シンガーのサビーネ・エデルスバッハーとともにEDENBRIDGEを結成する。

このサビーネ・エデルスバッハー、まず名前の響きが良くないですか? 思わず言いたくなるでしょ、エデルスバッハー!って。ならんか? ちなみに、日本では当初エデルスバッカーと表記されていた。エデルスバッカー! これもいい。それは置いといて、EDENBRIDGEは、2000年にデビュー作『SUNRISE IN EDEN』を発表する。本作は海外とほぼ同じタイミングで日本盤も発売された。10分に及ぶ大作を収録しているのは、ランヴァルのプログレ・センスのなせるわざか。つり橋が天に向かって伸びているジャケットのデザインは、バンド名からイメージしたものだろう。イラストを手掛けたのは、ハード・ロックやヘヴィ・メタル系アルバムを数多く手掛けているマーカス・メイヤー。なかなか重厚な雰囲気で、ヘヴィ・メタル・ファンにはアピールするデザインとなっている。驚いたのはブックレットに写るサビーネ・エデルスバッハー! こんな美しい女性がシンフォ・メタルを?!と純粋な驚き。当時、NIGHTWISHなど女性シンガー入りシンフォ・メタルが少しずつ登場し始めていたが、EDENBRIDGEも注目の新星登場!と、一部のファンの間で注目を集める。

2001年には2作目となる『ARCANA』を発表。本作にも10分近い大作を収録。このプログレ・メタル的試みは、EDENBRIDGEの個性となっていく。ジャケットは前作に続きマーカス・メイヤー。宇宙をバックにした古代遺跡という神秘的なイラストになっていて、前作よりもシンフォ・メタルっぽさが増した感じだ。

2003年の3作目『APHELION』もジャケットはマーカス・メイヤー。本作もスペース・ファンタジーな感じで、ここまではマーカス・メイヤー3部作と勝手に呼んでいる。ブックレットのサビーネの写真は、なかなか妖艶な感じもあって、うん、いいです。


2004年のライヴ作『A LIVE TIME IN EDEN』をはさんで、同年に4作目『SHINE』をリリース。その両作共にジャケット・デザインを手掛けたのが、トーマス・エワハード。ファンタジー系ジャケット・アートで有名なイラストレーターで、数多くの作品を手掛けているが、EDENBRIDGEには少し宗教的な香りのする作品を提供している。2006年の5作目『THE GRAND DESIGN』もジャケットのイラストはトーマス・エワハード。真ん中に目のあるΩマークの左に赤ちゃん、右にお爺さんが描かれたイラスト。シンフォ・メタル・アルバムのジャケットにリアルなお爺さんは、どうなんだろう?

2008年の6作目『MY EARTH DREAM』もトーマス・エワハードがジャケットを担当。映画のワン・シーンみたいな、スペクタクル感強めのイラストはインパクトが大きい。オーケストラを起用、大作組曲を収録など、アルバムも充実の内容で、この頃からヨーロッパを中心に人気が高まっていく。

ライヴ作『LIVE EARTH DREAM』(2009年)をはさんで、2010年に7作目『SOLITAIRE』を発表。カヴァーを手掛けたのは、アメリカ人イラストレーターのアンソニー・クラークソン。シンボリックなデザインは悪くないけど、シンフォ・メタル感が薄れたように思う。音楽的には王道のシンフォ・メタルを貫いています。ブックレットには、ずいぶん貫録が増したサビーネをメンバーが抱っこするという謎の写真も。


2013年の8作目『THE BONDING』は16分の大作を収録した意欲作。ジャケットに描かれているのは下水道だろうか。ハードな印象のジャケットだけど、EDENBRIDGEの世界観と異なる気がするんだよなぁ。イラストは前作に続いてのアンソニー・クラークソン。

続く2017年の9作目『THE GREAT MOMENTUM』も、ジャケットはアンソニー・クラークソン。音楽的にも東洋的なメロディやアレンジ、テーマを挟むことも多かったEDENBRIDGEだが、座禅を組んだ女性(の像?)が電撃を受けて光り輝いているという、これもインパクトはあるけれどハードすぎないだろうか。で、サビーネも同じポーズやるんかい! と、思わずツッコミをいれたくなる写真がブックレットに。まさか、お笑い路線に行ってないよね?と心配に。


2019年の10作目『DYNAMIND』では、ジャケットがシンフォ・メタルらしい華麗&ファンタジー路線に戻っていた。なんと、このイラストを手掛けたのは、本作でドラムを務めたヨハネス・ユングライトメイヤーだというから驚き。

そして、2022年発表、現時点での最新作が11作目となる『SHANGRI-LA』だ。ジャケットを見た瞬間に「これだ!」と。深い森の中の神秘的な風景。手前には杖を手にしてマントを着た人物が見える。初期のスペース・ファンタジー路線や、ヘヴィ・メタル系の雷バリバリとか電気ビリビリ路線のイラストもいいけど、どことなく違和感を覚えていた。どちらかというと、もっと童話的なファンタジーの方が彼らの音楽性にあっているのではないかと思っていて、それがこの『SHANGRI-LA』で、ようやく実現された。イラストを手掛けたのはアラブ首長国連邦の無名アーティストらしいけど、よく見つけてきたなあ。音楽的にもヒット性を感じさせるポップな曲から、シンフォ・メタルの王道曲まで幅広く収録。さらに、あの大作組曲「The Bonding」のパート2まで収録と、昔からのファン大満足、新しいファンの獲得も期待できる優れた内容だ。

と思ったのに、当初は日本国内盤の発売はなしでガッカリ。それが今年の8月に旧作数枚の再発と同時に発売が決定!少しタイムラグは出たけれど、これはめでたい。今回は同作収録の中でもポップさ全開の「The Call Of Eden」を聴いていただきましょう。サビーネ・エデルスバッハーは、デビュー当時から比べると、まあずいぶんと貫禄が増したけれども、ランヴァルと共にEDENBRIDGEをデビュー当初から支えてきた歌姫として、ここでも堂々とクリアな歌声を響かせています。応援してます、サビーネ・エデルスバッハー!

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

The Call Of Eden

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それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。







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