2023年9月5日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
カケレコ・ユーザーの皆さん、こんにちは!!
本日ご紹介するのは、2000年代デビューの新鋭と思いきや、実はバンドの歴史は1970年代までさかのぼるというイタリアのIL CERCHIO D’OROです。
70年代からプログレ・シーンで活躍するベテラン・ミュージシャンたちをゲストに招き、とてもイタリアらしいロマンティックなシンフォニック・ロックを聴かせていますよ!
IL CERCHIO D’OROは1974年に、イタリアの湾岸都市サヴォーナで結成されました。
70年代当時の彼らは地道にライブ活動などを行っていたようですがレコード契約には至らず、70年代後半に数枚のシングルのみを残して活動を終了。
その後、20年以上の時が経過した1999年、プログレ・レーベルのMellow Recordsが彼らの音源をまとめた『Il Cerchio D’Oro』をリリースしました。
彼らが残した音源の多くはプログレ・リスナーの興味を引くものではなく、ブートレッグ並みの音源やディスコ調の楽曲、イタリアン・プログレのカバー曲などが収録されたアーカイヴ的なアルバムでしたが、それでもIL CERCHIO D’OROの名前が初めてプログレ・シーンに刻まれました。
その後、グループは74年から75年当時の未発表音源を集めた2005年作『La Quadratura Del Cerchio』を契機に5人編成で再始動。
プログレッシヴ・ロックのスタイルで順調に作品を発表し、現在に至っています。
IL CERCHIO D’OROのスタジオ・アルバムの特徴は、現在まで(70年代の未発表曲集を除き)すべてコンセプト・アルバムで統一されているという点です。
今回新たにリリースされた2023年作『Pangea e le tre Lune』のテーマは「パンゲア大陸」。
ドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナーが命名したもので、現在の大陸は分裂前にひとつの大きな大陸だったという大陸移動説です。
プログレッシヴ・ロックらしいロマンのあるコンセプトですよね!
本作の詳細に触れる前に、実はIL CERCHIO D’OROがこれまでに発表したコンセプト・アルバムにはさらに大きなコンセプトが隠れているので、そちらもチェックしたいと思います。
まず、2008年作『Il Viaggio di Colombo』のコンセプトは「コロンブスの航海」で「水」、2013年作『Dedalo E Icaro』のコンセプトは「ダイダロスとイカロス」で「空気」、2017年作『Il Fuoco Sotto La Cenere』のコンセプトは「人間の精神」で「火」、そして2023年作『Pangea e le tre Lune』のコンセプトは「パンゲア大陸」で「土」を、それぞれ表しています。
お分かりいただけましたか?
つまり4つのコンセプト・アルバムには「四元素」というさらに大きなコンセプトがあり、本作は4部作の完結編という側面も持っているんです!
2023年作『Pangea e le tre Lune』に参加しているゲスト・ミュージシャンについても確認していきましょう。
まず、NUOVA IDEAのメンバーとして73年の名盤『Clowns』などを発表したギタリストRicky Belloni。
彼は、70年代中盤からはNEW TROLLSに参加(アルバムでは『Concerto Grosso n.2』以降)し、90年代中盤まで在籍。
2000年代には、NEW TROLLSの中心メンバーのひとりとして知られるNico De Paloらと共にIL MITO NEW TROLLSを結成し、2007年に『TR3 Special Live Concerto Grosso』をリリースしました。
次に、QUELLA VECCHIA LOCANDAのヴァイオリン奏者として72年のデビュー・アルバム『Quella Vecchia Locanda』に参加したDonald Lax。
そして、70年代中盤のLE ORMEに参加し、75年作『Smogmagica』や76年作『Verita Nascoste』などのアルバムに関わったギタリストのTolo Marton。
彼は、TAGLIAPIETRA,PAGLIUCA & MARTON FEATURING DAVID CROSSというプロジェクトで「Prog Exhibition 2010」のステージ(CD/DVD化済み)に立ったことでも知られています。
さらに、もうひとり押さえておきたいのが本作のアートワークを担当したArmando Manciniで、なんと70年代にQUELLA VECCHIA LOCANDAのデビュー・アルバム『Quella Vecchia Locanda』を手掛けた人物です!
それでは、アルバムのオープニングを飾る「Pangea」を聴いていきましょう!
Pangea
ピアノとメロトロン・フルートによる気品に溢れたイントロから、これぞ70年代イタリアン・プログレというサウンドが展開されています。
現代のイタリアン・プログレでは、アグレッシブなバンド・サウンドで畳みかけるようなタイプの音楽性が主流となっていますが、IL CERCHIO D’OROの場合にはパワフルになりすぎず、ロマンティックなサウンドの域を保っているのが素晴らしいです。
このあたりの味わい深さは、いわゆるゴリ押し系の新鋭バンドにはなかなか出せないものではないでしょうか。
また、やはりイタリアン・ロックらしい歌心を持ったヴォーカルも絶品で、MUSEO ROSENBACHなど往年の名グループを彷彿とさせます 。
では次に、Don Laxがゲスト参加している3曲目の「Dialogo」を聴いてみましょう!
Dialogo
ヴィンテージ・キーボードの音色がスケールの大きな風景を描写し、Don Laxのヴァイオリンが彩りを添えるオープニングに感動!
本編は少し妖しい雰囲気のシンフォニック・ロックで、この影のある感じもイタリアならではです。
エンディングでは再びDon Laxのヴァイオリンが、クラシカルなソロを披露。
やはり、QUELLA VECCHIA LOCANDAのオリジナル・メンバーの実力は凄いですね!
続いて、Tolo Martonがゲスト参加している4曲目の「Le Tre Lune」を聴いてみましょう!
Le Tre Lune
3曲目の「Dialogo」にも言えることですが、もうイントロの数秒からイタリアン・プログレの世界が広がりますよね!
LATTE E MIELEの72年作『Passio Secundum Mattheum』のようなクラシカルな雰囲気があります。
そして、耳に残るメロディーとマイルドなサウンドが印象的なセクションからTolo Martonのエモーショナルなソロが炸裂。
さすが、「ジミ・ヘンドリックス・ワールドワイド・ギター・コンテスト」で優勝した経歴を持つギタリストですね!
この楽曲は、それぞれのミュージシャンたちの見せ場がバランスよく配置されていて、アルバムのハイライトのひとつと言えそうです。
いかがでしたか?
今回はアルバム前半の楽曲のみご紹介しましたが、後半にもTolo Martonがゲスト参加する楽曲を含め聴きどころが満載。
70年代から活動するも音源を発表するチャンスに恵まれなかったバンドが20年以上の時間を経て注目を集め、これほど素晴らしいアルバムをリリースしたのは驚くべきことです。
本作にはCDのみのボーナス・トラックも収録されているので、是非チェックしてみてくださいね!
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