まず、このグループを表現するならば、ずばり歌心だと思っています。あるときはジャズ的味付けがあり、また、ある時はヘビーなロックになっていますが、基本は変わらないと思います。ですから、このバンドの持ち味は、F. De Andreバックアップによるデビュー盤『SENZA ORARIO SENZA BANDIERA』(1968)やヒットシングル集の様な2作目の『NEW TROLLS』(1970)からあたりからずっと不変ですよね。目眩く展開をするプログレの傑作『UT』(1972)でも歌心溢れるラストの曲『CHI MI PUO CAPIRE』が大好きです。
他に、MAGMAレーベルからのアルバムとしては、『UT』以降V. De Scalziと他のメンバーが分裂していた時期の禿げ山の一夜を取り上げたかなりプログレ寄り名作『N.T. ATOMIC SYSTEM』(1973)や演奏主体のジャズロック寄り、でも突然CONCERTO GROSSOのフレーズが飛び出すアルバム『TEMPI DISPARI』(1974)や『LIVE』(1976)があります。
その後、WARNERに移籍して歌ものに戻り、華やかな『ALDEBARAN』(1978)、楽曲がよくQUEENの様にコーラスの素晴らしい『NEW TROLLS』(1979)、ドラマチックな名作『FS』(1981)、表題曲以外OKな『AMERICA OK』(1983)、安定感ある歌もの『AMICI』(1988)、セルフカバー集的な『QUELLI COME NOI』(1992)、伊語歌の感動的名曲満載の『IL SALE DEI NEW TROLLS』(1996)など、ずっと、この歌心路線は変わっていません。
MAGMAレーベル第二弾の『CONCERTO DELLE MENTI』(1973)は、イルバレ、ムゼオという訳にはいきませんが、ギター、オルガン、ピアノ、バタバタドラムスにより、時にアバンギャルド、時にヘビープログレ的演奏をバックに語り続けるという変則的作品です。ちょいと地味な感じがします。
LATTE E MIELE
中高校時代であった70年代後半にこのバンドのPOLYDOR盤を探そうとしたってもう見つかりませんでした。ようやく入手できたレコードが3作目『AQUILLE E SCOIATTOLI』(1976)でした。MAGMAレーベルからのリリースです。で、A3の『MENESTRELLO』のもの悲しくも美しいメロに大感動、さらにB面の『PAVANA』はツインキーボードを活かしたダイナミックかつ心地よい大作で、これらのおかげでこのアルバムは当時からの愛聴盤です。
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次ぎにFONIT CETRAがディストリビューションをしていたGROGレーベルのアルバム達ですが、このレーベルも、MAGMAと同様にAldo,Vittorio de Scalzi兄弟により設立されました。
MANDILLO
記念すべきGROG第一弾『MANDILLO』(1976)はフーテンの万次郎です。中古をジャケ買い、右上のとぼけたウサギの後ろ姿が気に入って万次郎と名付けました。で、内容は、ビートルズの様なポップでほのぼの系の歌ものです。元GARYBALDIのM.Cassinelli (Ds)がメンバーに居り、A.De Scalzi(key)、V.De Scalzi (g)がゲスト参加しているなど錚々たるミュージシャンが居るのに・・・ということで一般に評価はイマイチですが、B2の『IL COMMERCIANTE DI LIMA』などはフルートが美しくてドラマチック。私は、結構好きです。
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CELESTE
GROGレーベル第二弾『CELESTE』(1976)。中学生の時に『LA GRANDE ISORA』がNHK FMで放送されたのを聴き、牧歌的であるものの、アコギとイタリア語の歌、さらにフルート、怒濤のメロトロンと展開する美しさがあまりにすばらしく、その後ずっと探していたのですが、全く伊盤レコードを見つけられませんでした。レコードは後に日本盤が発売されていますので、それまではお預け。放送をカセットテープに録音した1曲だけという状態、この飢餓状態はたまらないものでした。
GROG第三弾『PICCHIO DAL POZZO』(1976)。NTのVittorioの実弟Aldoのグループで、骨折系ハット&フィールドとも言われています。さわやかな伊語の歌部分とアバンギャルドな部分が交互に出てくる傑作ジャズロックで、CELESTEのメンバーもゲスト参加しています。CELESTE同様、何度もCDを買ってしまっているアルバムです。
CORTE DEI MIRACOLI
GROG第4弾『CORTE DEI MIRACOLI』(1976)。NTのVittorioが冒頭曲にギターでゲスト参加しています。ダブルキーボードで適度にスリリングな展開を楽しめるアルバムです。私にとってリアルタイムに入手できた伊盤GROG唯一のアルバムでして愛聴盤でした。ドラムスのバタバッタ感が気になるものの、イタリア語の歌が伸びやかで瑞々しく、とても素敵なアルバムです。
単発ながら素晴らしい作品を残したイタリアのプログレッシブ・ロックグループの76年唯一作。ゲスト・プレイヤーにPICCHIO DAL POZZO のAldo De Scalziを迎えて製作され、メロトロンの名盤としても知られるその内容は、ファンタジックなフォーク・ロック風の牧歌性が素晴らしい優美なサウンド。フルートやヴァイオリン、ギターが彩るフォーキーな音楽性を基本にメロトロンやアナログ・シンセサイザーが神秘的な広がりを加味しています。ほとんどリズム・セクションを廃した作風とシンセサイザー・サウンドの効果もあって、ジャーマン・ロックなどにも通じる浮世離れした浮遊感を持っていることが個性的ですが、やはり優美なメロディーには確かなイタリア叙情を感じます。
イタリアを代表するプログレッシブ・ロックバンドの72年の作品。Nico Di Paloのハードな音楽性の色濃い作品となっており、純ハードロック然とした楽曲から哀愁のバラード、キーボーディストMaurizio Salviが大活躍のシンフォニック・ロックまでを放り込んだイタリアン・ロックを代表する1枚。もともと雑多な音楽性を持ちながら咀嚼能力に優れたNEW TROLLSらしい作品となっています。本作を発表後にバンドは分裂、Nico De Paloは新バンドIBISを結成、一方Vittrio De ScaltiはN.T. ATOMIC SYSTEM名義でクラシカルな音楽性を追求した名盤「ATOMIC SYSTEM」をリリースします。