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【ユーロ・レーベル探求 第四回】BRAINレーベル~頭にこだわって“BRAIN”!!

【第四回】「頭にこだわって“BRAIN”!!」

寄稿:ike333さん

先日、高校の同期会があり、結構変わり果てた友人の姿をみて、時の経過を改めて感じてしまいました。特に、頭脳労働を職とする友人の頭の劇的変化にはかなり戸惑いを感じましたが、ジャーマンロックの話が出てきて、趣味は変わっていなかったので安心したところです。

さて、ドイツで有名なレーベルはOHR、PILZ、KOSMISCHEですが、私がユーロロックに関心を持ち出した70年代後半には、もう輸入盤のお店では見あたりませんでした。当時の独レーベルというと独大手レコード会社METRONOME傘下のBRAINでした。このレーベルは72年頃に設立されましたが、英バンドなども幅広く独国内リリースして70年代後半も立派に生き抜きました。当然、私の独盤達もBRAINです。

ただし、独の音楽は、感情に訴えるところが少なく、常に計算され、冷静なサウンド。頭で聴かねばならず、結構、疲れることが多かったのは事実です。BRAINとは良く名付けたものだと思います。以下、少しこのレーベルのグループなどについてつらつら(「ヅラヅラ」でない)書いてみたいと思います。

NOVALIS

18世紀の独詩人の名前をグループ名に冠してのデビュー盤『BANISHED BRIDGE』(1973)は、まだ英語で歌っていてジワリと訴えるオルガン・シンフォ系です。2作目から、エモーショナルなギターとフルートを除いた初期キャメル風(「ならばキャメルではないじゃないか」とは言わないでね)、独特の小節の効いた音楽を展開しはじめます。

幻想的なジャケットで楽曲・アレンジもしっかりして魅力的な2作目『NOVALIS』(1975)を経て、木の下で女性が本を読んでいる詩的なジャケットの3作目『SOMMERABEND』(1976)はアルバム全体で3曲という大作指向となった代表作となっています。もの悲しげな旋律があふれ出てくるのですが、最後まで冷静な展開で、これがドイツ風メルヘンなのかと思ったものです。


その後、元気なライブ『KONZERTE』(1977)、メロディアスかつロック色が強くなった力作『BRANDUNG』(1977)など素敵なアルバムを出し続けBRAINから計6作品発表しています。なお、他レーベル移籍後の『FLOSSENGEL』(1979)はメロティアスかつ熱い展開があり私のお気に入り。また、小粒化傾向は見られるものの『AUGENBLICKE』(1980)や『NEUMOND』(1982)の楽曲も結構良いと思います。




GROBSCHNITT

BRAINレーベル8番目のアルバムが彼らのデビューアルバム『GROBSCHNITT』(1972)。ナイフと空中に浮かんだ目。思いっきり意味深なジャケットです。テクニカルではありませんが、ダークでおどろおどろしくもスリリングな音楽で、ジャケットそのまま。彼らの最高傑作です。

それが2作目『BALLERMAN』(1974)は、YES(サードアルバム頃)がうらぶれた芝居小屋になだれ込んできた感じの音楽になり、3作目『JUMBO』(1975)では妙に明るくなります。適度にGENESIS風ファンタジックな『ROCKOMMEL’S LAND』(1977)、ライブを経て、おもちゃの遊園地のジャケットのままの音楽を展開する『MERRY-GO-ROUND』(1979)はなかなか魅力的。




その後も時代に沿った好盤『ILLEGAL』(1980)などをBRAINから出し続けました。

SFF

実はスイスのバンドですが、当時輸入盤屋さんが独のバンドだと宣伝していたので、私はそれを信じていました。SFF名義で硬派なプログレアルバムを出しています。国宝「あしゅら」のようなジャケットの1作目『SYMPHONIC PICTURES』(1976)は、楽曲がとてもテクニカル。演奏も冷静かつ超高度。3作品中最もシンフォな内容の傑作アルバムです。

この後、『SUNBURST』(1977)、『TICKET TO EVERYWHERE』(1979)と、徐々に時代を反映してリズムを強調したシンフォアルバムとなっていきます。なお、Schickeが抜けたF&F名義で、結構ナチュラルで穏やかな『AMMERLAND』(1978)、BGM的な『STRINGS』(1979)、基本癒し系なのにダイナミックなB①等が素晴らしい『DIARY』(1981)を発表しています。



NEU

BRAINに3作品を残しています。ザクッと表現してしまえば単純なリズムを刻み続けるドラムスに脳天気な演奏が重なっているアルバム達なのですが、3作目の『NEU 75』 (1975)はパンクの魁ともいえる曲入り名(迷)作です。この後、NEUはLA DUSSELDORFに発展し、別レーベルから傑作『VIVA』(1979)を発表することとなります。

KLAUS SCHULZE

言わずもがなのドイツの電子音楽の大御大。彼がBRAINに移籍しての第一弾(のはずだったがリリースが遅れ2弾目となった)『PICTURE MUSIC』(1973)ではSchulzeのドラムスも聴くことができます。

その後、VIRGINレコードから世界的に打って出ますが、立体的で深淵な音宇宙に吸い込まれてしまう『TIMEWIND』(1975)、『MIRAGE』(1977)なども、独国内では引き続きBRAINからのリリースとなっています。


CLUSTER

RoedeliusとMoebiusの2人による反復する電子音の実験ユニットという以上は、残念ながらよく分かりません。でも『II』(1972)のジャケはポップでオシャレ、演奏シーンの写真をみるとE-Gを抱えながらシンセサイザーを操作していて、結構、アナログで格好良いのでした。(こんな理解だから独シーンは苦手なんですよね。)

HARMONIA

CLUSTERとNEUのM..ローターによるユニットです。『MUSIK VON HARMONIA』(1974)はピコピコ電子音が単純なリズムに合わせ変調するCLUSTER的。で、『DELUXE』(1975)は、なんとNEU的明るいポップな音楽になっています。


SCORPIONS

あの発禁ジャケ・アルバム(少女の人権があまり問題にならない当時の日本ではオリジナルジャケットで発売。内容は、歌も演奏もめちゃ格好良い。)の『VIRGIN KILLER』(1977)で大出世した独のハードロックバンドのデビューアルバム『LONESOME CROW』(1972)はBRAINレーベル第1弾のアルバムでした。この1作目にはMichael Schenker!も居り、ギターは格好良いのですが、全体的には微妙に暗さのあるモワッとしたハードロックです。

この後メンバーを一新しRCAに移籍、スカッとしたハードロック路線を目指しました。

JANE

ハードロックなのですが、やはりドイツ的。SCORPIONSとは違って醒めているんですよね。学があるぞといった音楽で、ラベルのボレロ風も登場する4作目 『FIRE, WATER, EARTH & FIRE』(1976)は格好良く展開する名作です。

その他奇妙なバンド等も散見され、サイケなハードロックバンド『SPERNULL 』(S/T, 1973)、初期AMON DUUL IIの流れを汲み珍妙なアシッドでサイケなロックを演じるキノコジャケットの『SAMETI』 (S/T, 1972)、尺八風フルート、エコーの効いたギター等で東洋の神々に捧げるような音楽のYATHA SIDHRA 『A MEDITATION MASS』(1974)、フルート入りでグルグルとマシーンの中間をドロ~ンと行くような『KOLLECTIV』(S/T,1973)などユニークです。

なお、OHRレーベルなどに居たGURU GURU『KANGURU』(1972)等、EMBRYO『STEIG AUS』(1973)等やBIRTH CONTROL『BACKDOOR POSSIBILITIES』(1976)などもBRAINからですし、なんとANYONE’S DAUGHTERもデビュー『ADONIS』(1979)はBRAINからだったんですよね。

以上、頭・脳にこだわった話でした。

【ユーロ・レーベル探求 第一回】「懐かしのGONG」はこちら!
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【ユーロ・レーベル探求 第二回】「赤いサソリと黒のサソリ(赤サソリ編)」はこちら!
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BRAINレーベル

ユーロ・プログレ・シーン随一の個性派達を抱えるBRAINレーベル!

NOVALIS

試聴 Click!

ドイツ屈指のシンフォ・バンドによる76年作より。シンセを基調とした優美なシンフォ・サウンドとドイツらしい硬質感を持ったリズムとのバランスが実に個性的な音空間を作り上げます。

GROBSCHNITT

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これぞジャーマンと言うべき独特の味わいが魅力の72年デビュー作。演奏には重厚感と鋭い切れ味が同居しており、シアトリカルなテイストを持つヴォーカルも相まってヘヴィーで濃厚な作品世界が堪能できる一枚。

SFF

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実現こそしなかったものの、かのフランク・ザッパがプロデュースを買って出たことでも有名なスイス出身のバンド76年作。流麗なギターと繊細なタッチのピアノ、美しいメロトロンの調べがシンフォ・ファン直撃の逸品。

NEU!

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後のパンク/ニューウェーブの多大な影響を与えたこのバンドも実はBRAIN出身。こういうバンドからSSFのような生粋のプログレ・バンドまで所属している所が本レーベルの面白いところです。

KLAUS SCHLZE

試聴 Click!

75年作より。幾重にも折り重なるシンセを駆使して深遠なる音の宇宙を紡ぎだしていく様はまさに圧巻と言う他ありません。彼のクリエイティヴィティが最大限に発揮された名作の一つですよね。

HARMONIA

試聴 Click!

NEU!とCULSTERの音楽性が融合を果たしたジャーマン・エレクトロを代表するバンドによる74年作。若干間の抜けたジャケットとは対照的に、ミニマムな中にもどこかうねりを感じさせるシンセパターンが深淵な雰囲気を醸し出します。

SCORPIONS

試聴 Click!

ジャーマン・ハードの最高峰バンドによる72年1st。MICHEAL SCHENKERを含む切れ味鋭いツインギターと艶のある悩ましげな歌唱を披露するKLAUS MAINE。ドイツきってのモンスター・バンドへと進化していくポテンシャルが伝わってきます。

JANE

試聴 Click!

ジャーマン・ロックの隠れた名バンドJANEの76年作より。ジャーマンらしいささくれ立ったサウンドですが、これが哀愁に満ちたシンセとギターの絡みがこれでもか堪能できる好盤なんですよね。切ないヴォーカルも素敵です。

関連カテゴリー

BRAINレーベル在庫一覧

  • CLUSTER / CLUSTER II

    KlusterからClusterへと改名後の第2作、72年発表

    Hans Joachim RoedeliusとDieter Moebiusの2人から成り、アンビエント・ミュージックの提唱者であるBrian Enoにも大きな影響を与えたグループ。ベルリンのアート集団「Zodiak Free Arts Lab」を母体として69年に結成。初期は「KLTSTER」の名前で、TANGELINE DREAMの創設メンバーであったKonrad Schnitzlerとの3人編成で活動、彼の脱退後に「CLUSTER」と変名。KRAFTWERKが即物的とでも言える無機質なサウンドを提示した一方で、CLUSTERは同じエレクトロニクスと反復を用いて、シンプルながらも神秘的でアンビエンスな音像でKosmische musik(直訳すると宇宙音楽)と呼ばれるサウンドを確立。本作は、現代音楽からアンビエント・ミュージックへの橋渡しとして重要な役割を果たす72年2nd。

  • GROBSCHNITT / ROCKPOMMEL’S LAND

    ジャーマン・シンフォの名バンド、77年リリースの4th

    70年代のドイツを代表するシンフォニック・ロック・グループ。前作で転換を果たしたシンフォニック・ロック路線をさらに推し進めた77年リリースの4th。イエスとジェネシスからの影響を強く感じる明朗でシンフォニックなエッセンスを中心に、それを霧で覆うようにドイツらしいロマンティシズムで包み込んだ、幻想性たっぷりなジャーマン・ファンタスティック・ロックが印象的です。手数多くもタイトなドラムとクリス・スクワイア的なベースによる安定感抜群のリズム隊を土台に、糸をひくように繊細に紡がれるギター、流麗なキーボードがメロディアスなサウンドを織り成していきます。ヴォーカルのシアトリカルさは健在ですがアクは薄まり、ピーター・ガブリエルに比肩するような個性でサウンドの持つファンタスティックな要素を増幅させています。ジャーマン・シンフォニック・ロック屈指の傑作です。

  • KLAUS SCHULZE / TIMEWIND

    ジャーマン・ロック・シーンの重鎮、75年発表のソロ通算5作目

  • HARMONIA / MUSIK VON HARMONIA

    CLUSTERのメビウス&ローデリウスとNEU!のミヒャエル・ローターによるエレクトロ・ユニット、74年1st

    • UICY9559

      紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、ブックレット付仕様、定価2039+税

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯有

      軽微なスレ・軽微な汚れあり

  • GROBSCHNITT / BALLERMANN

    シアトリカルかつシンフォニックなジャーマン・プログレ名グループ、74年作2nd

    70年代のドイツを代表するシンフォニック・ロック・グループ、74年にリリースされた2nd。ヴォーカルのシアトリカルさは一層増し、ジェスロ・タルのイアン・アンダーソンの上をいくほどのアクの強さにまずびっくり。音の方は、1stでのけたたましく畳み掛ける荘厳なハード・ロックなパートとともに、キーボード奏者が代わったせいか、陽光がこぼれるようなリリカルなピアノやファンタスティックなオルガンなど、クラシカルでロマンティシズム溢れるシンフォニック・ロックなパートも印象的。その両軸を行き来しながらダイナミック&ドラマティックに展開する大曲が本作の聴きどころで、13分を超える「Magic Train」をはじめ、ライヴの定番でバンドの代表曲の一つとされる33分を超える「Solar Music」では、クラウス・シュルツが居た頃のタンジェリン・ドリームばりの内省と宇宙が一体となったようなスピリチュアル&スペーシーなサウンドも織り交ぜ、シアトリカルかつハードでシンフォニックでスペーシーな初期グローブシュニットならではのゴッタ煮サウンドを展開しています。理性ではとらえられないものにロマンを求め、非現実的な演劇やファンタジーに自身を投影したドイツ・ロマン主義が息づく、ドイツでしか生まれ得ないシンフォニック・ロックの名作です。

  • GROBSCHNITT / GROBSCHNITT

    シアトリカルかつシンフォニックなジャーマン・プログレの名グループ、72年デビュー作

    70年代のドイツを代表するシンフォニック・ロック・グループ、72年にBrainレーベルよりリリースされたデビュー作。猛々しく連打されるドラム、ゴリゴリとしたトーンで執拗に上下動を繰り返すベース、「サイケ」な時代を引きずった重々しくも切れ味あるエレキ・ギター、そしてけたたましく鳴り響く重厚なハモンド・オルガンが一体となったソリッドかつ荘厳なオルガン・ハード・ロックが持ち味。バンドメンバーには、ステージ上のニックネームがついていたように、演劇的な演出も魅力だったようですが、リード・ヴォーカルの歌いまわしや多声コーラスにシアトリカルなエッセンスが溢れています。流麗なピアノの旋律とクラシカルなハモンドによる宗教的なパートなど、ドイツらしいロマンティシズムもまた印象的。オープニングを飾る13分を超す大曲「Symphony」をはじめ、英国のユーライア・ヒープに対抗できる世界観がみなぎる名デビュー作です。

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