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50周年連載企画<BACK TO THE 1971>第30回:CAROL KING『MUSIC』

2021年にカケレコがお届けしている特別企画「BACK TO THE 1971」。
今からちょうど50年前、1971年に産み落とされた名盤を取り上げて、その魅力に改めて触れてみようというのがこの企画です。

ビートルズの活躍を中心としてロックに多様な表現が生まれた1960年代が幕を下ろし、60年代の残り香漂う1970年を経て、いよいよ新たな時代へと目を向けた作品が生まれていったのが1971年という時期。

英米ロックの名作はもちろん、欧州各国の重要作品も取り上げて、各作品の誕生日または誕生月に記事をアップしてまいります。

この機会に、ロックが最もまばゆい輝きを放っていた時代の作品達にぜひ注目していただければ幸いです。

それでは皆で、BACK TO THE 1971 !!!

キャロル・キング『ミュージック』

第30回目にご紹介するのは、70年代初めのシンガーソングライター・ブームをけん引したキャロル・キングのソロ3作目です。

キャロル・キングといえば、真っ先に思い浮かぶのは前作の『TAPESTRY(つづれおり)』ではないでしょうか。
『つづれおり』は71年2月にリリースされ、全米アルバム・チャートで15週連続1位を記録。その後約6年もチャートに入る大ヒットとなりました。

その『つづれおり』からわずか10カ月後の12月にリリースされたのが今回ご紹介する『ミュージック』。前作があまりにヒットしたため陰に隠れていますが、この作品も3週間連続でチャート1位に輝いたヒット作です。『つづれおり』に続きプロデュースを手掛けたルー・アドラーは、「『ミュージック』が先にリリースされていたらもっと凄いことになっていたのではないか」と言うほどの自信作。

当時のソウル・ミュージック・シーンの変化にも呼応した本作は、シンガー・ソングラーターを代表するというだけでなく、71年を代表する名盤と言えるのではないでしょうか。この機会にぜひ『ミュージック』の魅力に触れていただければ幸いです!

それでは、ここで1971年のアメリカの社会的状況とミュージック・シーンをあらためて振り返ってみます。

『ミュージック』が生まれた71年のアメリカ

<激動の時代の終焉>

1960年半ばに本格化したベトナム戦争は、1970年代に入っても終わりが見えず泥沼化していました。社会からドロップアウトし、一丸となり自由と平和と愛を叫んだ若者達も社会へ復帰し始め、カウンター・カルチャー・ブームは終焉を迎えます。

ロック・シーンも同様。ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソンら60年代ロックを象徴するミュージシャンが相次いで亡くなり、71年には聖地フィルモア・イーストとフィルモア・ウェストが閉鎖。カウンター・カルチャーと共にあった60年代ロックは終焉を迎えます。

<時代と呼応したミュージック・シーンの新たな流れ>

極彩色に彩られた時代が終わり、多様化していくロック・ミュージックの新たな流れのひとつが、ジェイムス・テイラー、キャロル・キングらを先駆けとする70年代初めのシンガーソングライター・ブームでした。私的な経験や心情といった等身大の歌詞をアコースティック・サウンドにのせた曲は、激動の時代が終焉し疲弊した個々の心に寄りそうように響き共感を生んだのです。


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「個」に立ち返る時代の動きは、ロック・シーンだけでなく、ソウル・シーンにおいても新しい流れを生み出します。マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールド、ダニー・ハサウェイ、スティーヴィー・ワンダーらを代表とする、日本でニュー・ソウルと呼ばれる音楽です。

アーティスト自身が手掛ける社会問題に言及したメッセージ性ある歌詞や内省的な歌詞、ジャズ、ラテン、クラシック、ロックなどの要素を取り入れた洗練されたサウンドは、ポップなラヴ・ソング中心の60年代から大きく変化したものでした。

ニュー・ソウルを代表的するアルバムが、71年5月にリリースされたマーヴィン・ゲイの『What’s Going On』
反戦の想いが込められたタイトル曲を始め、環境問題や貧困問題に言及した曲を収録。シングルを集めたものではなく、コンセプト・アルバムという点も従来のからの大きな変化でした。

Marvin Gaye/「What’s Going On」

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「What’s Going On」に感銘を受けたキャロル・キングは、「Brother, Brother」を書き、『ミュージック』の1曲目に収録しています。

一聴して「What’s Going On」を想起させるメロディライン、軽やかなラテン・パーカッション、間奏に挟まれるサックス。ニュー・ソウルのサウンドを取り入れたこの曲は、後にアイズレー・ブラザーズがカヴァーしており、ロック・シーンとソウル・シーンが互いに影響し合っていたことをうかがわせます。

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次に収録されているのは、72年にカーペンターズがカヴァーしてヒットした「It’s Going to Take Some Time(小さな愛の願い)」。ピアノを中心としたシンプルな曲で、キャロルの素朴なヴォーカル&ハーモニー、煌めきを感じさせるエレピの音、オーボエが重なっていきます。ジャケットの情景そのままの穏やかに心が満たされる名曲です。

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B面の1曲目に収録されているのが、ジャズっぽいアプローチの「MUSIC」
音楽を愛する気持ちをシンプルかつストレートに歌っていて、のびのびとしたヴォーカル、滑らかなサックスが気持ちの良い曲です。

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最後にピックアップするのは、盟友ジェイムス・テイラーがギター&バッキング・ヴォーカルで参加している「Song Of Long Ago」。さすが相性ぴったりのハーモニーですね!

試聴 Click!

他にも複数のホーンを取り入れたりと、前作よりソウル味が増した本作。71年のミュージック・シーンの空気が詰まった名盤です。

キャロル・キングが、シンガー・ソングライターとして活動するまではこちらをご覧ください。


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