2021年3月17日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
英国プログレ随一の超絶技巧集団と言ったらジェントル・ジャイアントですよね。
各メンバーがいくつもの楽器を持ち替え、各楽器が複雑に交差する緻密なプログレを構築する様は、さながら魔法のようです。
そんなGGのアルバムの中で、地味なポジションながら大好きなのが2nd『アクワイアリング・ザ・テイスト』。
その要因の一つが全編で愛らしくも神秘的なリコーダーが聴ける事で、リコーダーという身近な楽器がロック・ミュージックの中で躍動している事に感動した覚えがあります。
そんなわけで、今回は『アクワイアリング・ザ・テイスト』から出発して、リコーダーが活躍しているプログレをピックアップしたいと思います。
まずは、GGより幻想的なリコーダーをお楽しみください♪
デヴィッド・ボウイとの仕事でも名高い敏腕トニー・ヴィスコンティがプロデュースした2ndアルバム。
1stに比べ、より湿り気と陰影を帯びた英国然としたサウンドになっていると同時に、偏執的なまでの音作りへのこだわりが早くも垣間見える一枚です。
1曲目「Pantagruel’s Nativity」から、中世音楽の流れを汲む格調高いリコーダーが大活躍!
霧のヴェールを纏ったような儚く幻想的なアンサンブルを一層リリカルに彩っています。
アンサンブルの息をのむような繊細さという点では、同年発表のGENESIS『Nursery Cryme』と並び突出していると思いますね。
そしてリコーダーは登場しませんが、初期GGの名曲に挙げたいのが「The Moon Is Down」。メランコリックな序盤から中盤のジャジーでしなやかな展開を経てファンタジックに飛翔する曲構成が素晴らしいイマジネーション豊かな名曲!
英国の新世代プログレに目を向けると、このマルチ・ミュージシャンが特筆ですね!
現CAMELの天才マルチ奏者&コンポーザーによるプロジェクトなのですが、ほぼ一人多重録音によって作品を作り上げる彼の重要な楽器の一つとしてリコーダーがあります。
ギターやキーボードが躍動する、これでもかとメロディアスでファンタジックな演奏に、素朴なリコーダーのプレイがいい意味での手作り感を加えているのが印象的。
スケールの大きなシンフォ然としたスタイルに、人肌の温もりあるタッチを添えるセンスは彼ならではと言えるでしょう。
ドイツからは、リコーダー奏者がリーダーのシンフォニック・ロック21年作がイチオシです☆
ジャーマン・プログレELOYの作品にも参加しているリコーダー奏者が率いるバンドの21年作。
リコーダーって小学生も練習する身近な楽器だけど、こんな雄大なシンフォニック・ロックで堂々と主役を張ってて凄い!
HOSTSONATENの四季シリーズにも匹敵するクラシカルでファンタジックな音世界がどこまでも広がる傑作です。
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Derek Shulman、Ray Shulman、Phil Shulmanの三兄弟を中心とする、ブリティッシュ・プログレの代表的なグループのひとつ。ポップ・フィーリング、古楽の様式美を思わせるクラシカルなアプローチ、そして高い演奏技術に定評があり、変拍子を含む複雑な構成の楽曲を軽々と弾きこなす超絶技巧グループです。『Acquiring The Taste』は1971年のセカンド・アルバムであり、聴き手を選ぶツウ好みの内容ながら、彼らの溢れんばかりの音楽的探究心が結実したという意味ではやはり傑作。GENTLE GIANTといえば、メンバーたちのマルチ・プレイヤーぶりがしばしば話題となりますが、その印象は本作を発端としているのでしょう。おびただしい数の楽器がクレジットされており、その様はまるで劇薬を生み出さんとするマッド・サイエンティストの実験室のようです。一聴して耳に残るような派手さにこそ乏しい印象を持つものの、プログレッシヴ・ロックの特徴のひとつである緻密なバンド・アンサンブルの始祖的な位置にある作品であり、噛めば噛むほど味が出る、聴くたびに新たな発見のある名盤です。
1980年に英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーPeter Jonesによるプロジェクト、待望の3rdアルバムとなる17年作!16年よりCAMELのメンバーとしてツアーにも参加する彼。前2作で聴かせたコンポーザー&プレイヤーとしてのレベルの高さはもはや揺るぎないものでしたが、いやはや今作も凄い完成度です。まるで80年代以降のシリアスなテーマ性を持ったキャメルを、ゴージャスなサウンドプロダクションで再現したかのような、モダンかつロマンティックで雄大なシンフォニック・ロックが眼前に広がるこの感じ…何というイマジネーション。BIG BIG TRAINあたりに通じるモダンでスタイリッシュな音像も活きていて、往年のプログレと現代のバンドらしいモダンなセンスがこれほど不可分に結びついたサウンドはそうそうないでしょう。これでもかとファンタジックなフレーズを紡ぎ出すキーボード、アンディ・ラティマーばりにドラマチックに泣くギター、芳醇に響くクラリネット&リコーダー、そして端正に歌い上げる美声のヴォーカル。彼一人で各楽器をこれだけ自在に操る才能にはただただ脱帽。各パートが次々と展開していく、映画を観ているような情報量の多い音像は前作からの持ち味ですが、それを複雑に感じさせない淀みなく流れるような緻密な構築性にも舌を巻きます。改めてとんでもない才能を見せつけられる思いのシンフォ傑作です。
ジャーマン・プログレELOYの00年代作品にも参加しているドイツのリコーダー奏者Volker Kuinkeが率いるシンフォ・グループによる21年作3rd。ELOYのギタリストやキーボーディスト、元SYLVANのギタリスト、美声女性ヴォーカルIsgaardらをフィーチャーしています。クリアで繊細なタッチのピアノと悠久の調べを奏でるヴァイオリンが織りなす、どこまでも気高くクラシカルなサウンドに、泣きを帯びたギターがメロディアスに駆ける息をのむアンサンブルが冒頭から展開。これだけでも素晴らしい所に主役となるリコーダーが登場するのですが、これがまた見事!まるでゲルマンの深き森の奥から響くように神秘的なリコーダーが、クラシック由来のシリアスな演奏に柔らかな優美さを加えていて、幻想度100%のシンフォニック・サウンドを作り上げます。Isgaardのクリアな美声も印象的で、Volkerのリコーダーと美しく調和するパートの素晴らしさは至上の一言。イタリアのHOSTSONATENによる四季シリーズに匹敵するファンタジックな映像喚起力に溢れたシンフォニック・ロックに感動しっぱなしの傑作!リコーダーという楽器のポテンシャルを全編にわたって思い知らされる一枚です。
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