【ユーロ・レーベル探求 第一回】GONGレーベル~懐かしのGONG
皆さんこんにちは、カケレコ・スタッフの佐藤です。
今回から、70年~80年代にかけて数多くのプログレ名盤を世に送り出したヨーロッパ各地の名門レーベルにフォーカスする『ユーロ・レーベル探求』を連載いたします。
とは言ってもこの企画、実はカケレコ・スタッフの手によるものではございません。カケレコが発行しているミニコミにいつもご寄稿いただいているカスタマーのike333様より頂いたユーロロック・レーベルにまつわる体験談を元にした魅力溢れる原稿の数々を、是非とも多くのリスナーに読んでいただきたいという思いから、この度、ブログにて連載させていただく運びとなりました。
70年~80年代当時にリアル・タイムでユーロ・ロックを追いかけていたリスナーにとっては多くの部分で共感を感じていただける内容であると思いますし、後追いでユーロ・ロックを聴いたリスナーにとっても、当時のユーロ・ロック作品の国内における流通事情なども含め、興味深くお読みいただける内容となっております。
それでは今週から始まります『ユーロ・レーベル探求』、どうぞお楽しみください!
【第一回】懐かしのGONG
寄稿:ike333さん
GONGといってもDaevid Allenらが率いたGONGのことではありません。
スペインのMovieplayレーベル(1960年代にSonoplayとして設立、その後Movieplay、Fonomusicと変遷、2002年にWarner music Spainによって買収された。おかげで多くのアルバムがデジタル・リマスターCD化されている。)におけるGONGシリーズのことです。TRIANAやGRANADAなどのレコードがこのシリーズとして発売されていました。
高校生の頃、大手輸入盤店ではこれらスペイン盤を手に入れることができませんでした。どこで知ったのかは忘れましたが中目黒のマンションの一室で美輪明宏の様なおばちゃまがやっていたフラメンコのレコード屋さんで買っていました。小遣いを遣り繰りしていたため、電車賃を節約して自転車で何十分もかけて買いに行ったものです。おばちゃまが、「今度こんなレコード入りましたよ」等と言って、ちょこっと視聴させてくれるので、レコードを選ぶときにとても助かったものです。
同レーベルのアルバムをいくつかピックアップいたしましょう。
TRIANA
TRIANAは、キーボード兼ボーカルのJesus de la Rosa、フラメンコギターのEduardo Rodriguez R.、ドラムスのJuan Jose Palaciosの3人からなるバンドで、エレキギターやベースはゲストメンバーによって演奏されています。
コテコテのアンダルシア調の歌とフラメンコギターによって他には無い音楽を確立しています。その後も、このタイプのフォロアーがスペインではいくつも現れており、シーンへの影響力大でした。ソリーナの高周波を含んだストリング系の音により、分厚くはないもののシンフォな音になっています。
83年にRosaが自動車事故で死亡し、バンドは6作品で活動停止しましたが、その後何度か復活しています。特に、シンフォニックな1作目『El Patio』、聴きやすい曲の多い2作目『Hijos Del Agobio』、タイトな3作目『Sombra Y Luz』の初期3作はプログレ的な意味でも代表作とされています。また、これら3作はMaximo Morenoによるジャケットが、おどろおどろしくてとてもイイのです。1作目のメンバーの絵の後ろの窓からこっそりのぞいている黒服のおじさんが、3作目のインナーの絵では後ろ姿で登場していたり、ムンクの叫びのような顔はどのアルバムにも登場するし、何かしら続き物のドラマの様でもあります。
GRANADA
GRANADAは、マルチプレーヤであるCarlos Carcamoのバンドというかプロジェクトです。
1作目『Hablode Una Tierra』は特にA面ラストのタイトル曲のメロトロンが圧巻で、これ1曲で当時はスペインのクリムゾンとか言われていたのではないかと記憶します。2作目『Espana Ano 75』は、M.Morenoによる火山噴火のジャケットが印象的で、内容はちょっとペラとした音ではありますが片面1曲という大作入り。3作目『Valle Del Pas』はバグパイプが印象的なタイトで格好良い楽曲が揃った傑作アルバムです。ジャケットの特徴は、どれにもザクロが登場することで、2作目はインナーに登場しています。
AZAHAR
AZAHARは、ウルグアイのJorge Barral(ベース)がスペインに渡って結成したバンドで、1作目『Elixir』は、香り付きジャケットだったと記憶しています。ドラム無し、フラメンコギターとソリーナの音が印象的な浮遊感のあるアルバムです。友人がレコードを購入してくれたので、小遣い不足の私は購入を見合わせました。今にしてみれば惜しいことをしたと思います。
なお、AZABACHEは、J.BarralがAZAHARを経て結成したバンドです。1作目『Dias De Luna』はAZAHARより洗練されたシンフォ系アルバム、2作目『No Gracias』はストレートなロックアルバムとなっています。
Diego De Moron
Diego De Moronは、神格化されたフラメンコ・ギタリストのディエゴ・デル・ガストールの甥で、やはりフラメンコ・ギタリストですが、彼のギターに、TRIANAとGRANADAが4曲ずつバックを努めるアルバムを発表しています。B面1曲目はC.Carcmoの重厚なキーボードをバックに演奏するフラメンコロックの大名曲です。
VEGA
GONGシリーズではありませんが、Movieplayからアルバムを発表しているVEGAは、フラメンコギターの名手Tomas Vegaリードのバンドです。1作目『Andaluza』は素晴らしいインスト・アルバムです。2作目『Jara』も当時流行っていたクロスオーバー風のかなりスリリングなアルバム。ジャケットの絵にはPueblaとサインされていますが、奇妙な形の木の下の地面にパン焼き釜があったりして、とても不思議。
GOTIC
同じくPueblaのファンタジックな絵をジャケットに使っているGOTICは世にも美しいインスト・アルバム『Escenes』を発表しており、当時からの愛聴盤です。フルートがリードをとっていて、少しジャズ風の歌抜きCAMELの様です。たまにアコギがスペイン的な音を出すこともありますが、とてもインターナショナルで洗練された作品となっています。最近、2作目『Maqueta』に予定していながら当時なぜか発表されなかった作品が流出盤としてCD-Rで瞬間流通しました。ファンタジックさは前作を引き継ぎつつも、よりジャズロック的なアルバムとなっています。CAMEL『Moonmadness』あたりの美しさにも近く、当時何で発売されなかったのかとても不思議です。
EDUARDO BORT
最後にEDUARDO BORT。中目黒のレコード屋さんでこのレコードを紹介されたときには、ジャケットとアメリカンなアコギの音を聴いてパスしてしまいましたが、その後、メロトロンで非常に有名であることを知り、とても焦ったことがあるアルバムです。実際には、後半でメロトロンが活躍ということであって、全体には、アコギ、英語の歌が中心のアルバムです。ただし、ラストのメロトロン導入部は、なかなかメロディアスな佳曲です。
他にも、このレーベルからは、H.Camacho『La Estrella Del Alba』、GUALBERTO『Vericuetos』、Daniel Vega、Luis Emilio Batalan『Ahi Ven O Maio』、Lluis Llach『Campanades A Morts』など素敵なアルバムが多数出てますよ。
【ユーロ・レーベル探求 第二回】「赤いサソリと黒のサソリ(赤サソリ編)」はこちら!
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【ユーロ・レーベル探求 第三回】「赤いサソリと黒のサソリ(黒サソリ編)」はこちら!
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【ユーロ・レーベル探求 第四回】「頭にこだわって“BRAIN”!!」はこちら!
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GONGレーベル~70年代スパニッシュ・プログレの総本山
スパニッシュ・シンフォの宝物庫、GONGレーベル!
TRIANA
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スパニッシュ・プログレを代表する名バンドによる75年デビュー作。フラメンコ・ギター奏者を擁して繰り広げられる底知れぬ哀愁を孕んだフラメンコ・ロック。JESUS DE LA ROSAの切なくも情熱的な歌唱が感動を呼びます。
GRANADA
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マルチ奏者CARLOS CARCAMO率いるGRANADAによる75年作2nd。荘厳なメロトロンに彩られた、ジャジーなエッセンスとユーロ・プログレらしいエキゾチシズムがミックスした独特のサウンドが魅力的です。こちらもスペインを代表する一枚。
AZAHAR
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ツイン・キーボード&ドラムレスという特殊な編成を生かした個性的なサウンドを聴かせる77年作デビュー作。この切なく響き渡るソリーナの音色とドラマティックなヴォーカルには、思わず胸が熱くなりますよね。
DIEGO DE MORON
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生粋のフラメンコ・ギタリストによる77年作。これぞフラメンコ・ロック!と言いたくなるスパニッシュ・ギターが炸裂する内容で、そこにTRIANAやGRANADAの参加でシンフォニックな広がり感が加味された傑作です。
GOTIC
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まさに「スペインのキャメル」という形容が相応しいシンフォ・バンド、78年唯一作。幻想的なシンセとフルートの叙情的な響きによって、壮麗に描かれていく音のファンタジーが何とも素晴らしい作品です。
EDUARDO BORT
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メロトロンを大幅にフィーチャーしたサウンドで知られるグループ75年1st。躍動感いっぱいにひた走るアンサンブルと、そこに覆いかぶさるメロトロン。歯切れのよいアコギも絶妙にマッチしています。
関連カテゴリー
GONGレーベル在庫一覧
スペイン、アンダルシア・ロックの最高峰、とめどなく溢れだす哀愁、75年デビュー作!
スパニッシュ・ロックを代表するグループである彼らが75年にリリースした記念すべき1stアルバム。哀愁のフラメンコ・ギターに導かれるキーボード&ピアノのドラマティックな響きと、それに続く熱情的なヴォーカル。めくるめくダイナミックなバンド・アンサンブル。とにかくこれでもかと聴き手の感情を揺さぶる展開はただただ圧倒的。スパニッシュ・シンフォ屈指の傑作。
国内中古
盤質:傷あり
状態:並
帯無
帯無、帯前面部分なし、ケースツメ跡あり、軽微なカビあり
GRANADA / HABLO DE UNA TIERRA(GRANADA)
スペインのキーボード&マルチ奏者、カルロス・カルカモ率いるグループ、75年作1st
シンセ、メロトロン、ピアノ、フルート、ヴァイオリンを操るマルチ奏者、カルロス・カルカモ率いるグループ。75年作の1st。手数が多くアグレッシヴながら安定感抜群のドラムを土台に、キーボード&ギターがテクニカルかつ流麗なフレーズを応酬する叙情性溢れるジャズ・ロックが持ち味。テクニカルなパートだけでなく、アコースティック・ギターとヴァイオリン&フルートによるリリカルなパート、メロトロンの洪水とフラメンコ・ギターによるスパニッシュなパートなど、陰影に富んだ構成も魅力。名作。
国内中古
盤質:全面に多数傷
状態:並
帯無
帯無、盤に研磨跡あり、若干カビあり