2021年2月15日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
前回ご好評いただいた男性ヴォーカリスト特集に続き、今回は各国プログレ界の女性ヴォーカリスト特集をお送りいたします☆
一言に女性ヴォーカルと言っても、透き通るような美声を聴かせるシンガーがいれば、コクのあるブルージーな歌唱を持ち味とするシンガー、そういった既存の枠の中では捉えられないシンガーまで、様々なスタイルの歌い手がいますよね。そこで今回は、世界各国の個性豊かなプログレ系女性シンガーをピックアップしてまいりますよっ!
まずはプログレ発祥の地イギリスからまいりましょう☆
英プログレ界を代表する美声女性ヴォーカリストと言えば彼女。清流のように澄みきったクリスタル・ヴォイスは「天使の歌声」とも称され、今日まで多くのプログレ・ファンを虜にしてきました。クラシックとフォークを土台としたシンフォニック・ロックを持ち味とするRENAISSANCEの音楽性に、これ以上ないというほど見事なマッチングを聴かせます。
英プログレ界の人気女性シンガーとして、アニー・ハズラムと双璧をなすのがCURVED AIRのSonja Kristina。彼女のブルージーかつ妖艶なヴォーカルと、クラシック畑のヴァイオリニストDarryl Wayが牽引する演奏との間に引き起こされる化学反応こそがCURVED AIRの魅力の一つでした。ちなみに同バンドにドラマーとして在籍し後にPOLICEを結成するStuart Copelandとは当時夫婦関係にあったことで知られます。
ジャズ~ブルース由来のコクと旨味がたっぷりなハスキー・ヴォイスがたまらない女性シンガー。AFFINITYでのジャジーで洒脱なヴォーカルの素晴らしさは言うまでもありませんが、NUCLEUSをバックに従えたソロ作ではドラマティックなバラードも切々と歌い上げていて、また最高なんですよね~。
オリジナルRENAISSANCEからの派生バンドでありアニー・ハズラム在籍のRENAISSANCEとは兄弟バンド的関係にあたるILLUSIONのシンガー。ブリティッシュらしいメランコリックな陰影を湛える粛々とした声質の持ち主で、英国然とした叙情的なナンバーを歌わせたら彼女の右に出るものはいません。
メイン・ヴォーカルではなくとも、バンドになくてはならない声というものがあります。ジリ・スマイスによる宇宙空間にたゆたうようなウィスパー・ヴォイスこそその最たるもの。GONGが繰り広げる唯一無二のサイケデリック・スペース・ワールドには不可欠な要素でしたよね。
マイク・オールドフィールドとのコラボレーションで知られる女性シンガー。『FIVE MILES OUT』『CRISIS』などポップ化したマイクのサウンドに絶妙にマッチする愛らしいフィメール・ヴォイスが大変魅力的。世界的な大ヒットを記録したこのポップ・チューンをどうぞ!
「英国のジャニス・ジョプリン」と呼ばれたシンガーは何人かいますが、プログレ関連ではこの方。フィル・ミラー、スティーヴ・ミラー、ピップ・パイル、ロイ・バビントン、ロル・コックスヒルというカンタベリーの猛者たちのバックアップを受け、「英国のジャニス」の面目躍如たるパワフルなヴォーカルを披露しています。カンタベリー全開の演奏とこの存在感抜群な女性ヴォーカルという組み合わせ、他では決して聴けないサウンドです。
熱量たっぷりに繰り広げられるスリリングなアンサンブルが素晴らしいFUSION ORCHESTRAの唯一作にて、極上のヴォーカルを披露したのがJill Saward。ハード・ロック的なパワフルさの中に女性らしいコケティッシュな表情が映える抜群の歌唱力が武器ですね。彼女はのちに名フュージョン・バンドSHAKATAKの看板シンガーとして活躍したことで知られます。
01年のデビュー以来、21世紀の英国シンフォ・シーンを牽引してきたグループMAGENTAの女性ヴォーカリスト。往年のRENAISSANCEを現代的なヘヴィかつタイトな演奏で再解釈したようなサウンドを核とするグループで、そのヴォーカリストである彼女もANNIE HASLAMに若干の翳りと女性的な艶やかさを加えたような美声の持ち主です。
その美貌も相まってか日本にもファンが多いというイタリアを代表するカンタゥトリーチェ。フォーク・タッチの演奏にマッチする瑞々しいフィメール・ヴォイスが特徴。I POOHのプロデューサーを迎えた、イタリアらしい牧歌的なフォーク・ロックを彩る甘く優雅なストリングスの調べが美しいデビュー作からのナンバーをお聴きください♪
OPUS AVANTRAのデビュー作では誰もが衝撃を受けたであろう彼女の歌声。クラシックに根ざした格調高い歌唱がふいに狂気へと振れる瞬間と言ったらまさに鳥肌モノ!前衛クラシカル・シンフォニックという空前絶後の音楽性を確立した本作ですが、彼女による歌の素晴らしさがあって初めて名盤となり得たのは疑いようがありません。
共にイタリアン・プログレの名バンドである元MUSEO ROSENBACHのメンバーと元J.E.T.のメンバーが結成したことでプログレファンにもお馴染みのグループ。アントネッラは、70年代の作品ではまだ本領発揮には至っていないものの、NWがシーンを席巻した80年代以降は持ち前の声量豊かで張りのある歌声で大活躍!当時は彼らのヒット曲が日本のCMに使用されるほどの高い人気を誇りました。
狂気的な女性ヴォーカル部門なら間違いなくNo.1なこの方。SLAPP HAPPY、HENRY COWなどでもヴォーカルを歴任しましたが、狂気という点ではやはりこのグループでしょうか。時にヒステリックに時にパンキッシュに、ヴォーカルだけで聴き手をゾクッとさせるスリルを演出できる稀有な歌い手ですよね。
ドイツのブルース・ハード/プログレ・バンドFRUMPYで英米の女性シンガーも顔負けの強靭な歌声を聴かせたのが彼女。
このアルバムは79年のソロ作ですが、アメリカンなカントリー・ロック調の演奏にソウルやブルースを咀嚼した存在感抜群のヴォーカルが映えに映える!
ポリスやハートブレイカーズなどカバーも完全にモノにしていて絶品の一言です。
GONGにジリがいるように、MAGMAには彼女のコーラスワークが不可欠でした。狂騒を煽るように不穏さに満ちた呪術コーラスが、MAGMAの作り出す内宇宙的サウンドに聴き手を誘う役割を担います。ただそんなMAGMAでのイメージとは裏腹に、ローティーンにしてフレンチポップス歌手としてレコードデビューしたという意外な経歴も持つ面白い人物だったりします。
RENAISSANCEに通じる叙情性溢れるシンフォニック・ロックを聴かせる名唯一作を残したフランスのグループ。フレンチ・プログレを代表するギタリスト、ジャン=ピエール・アラルサンによるジャズの素養を軸とする泣きのギターと、ローズ嬢のブルーズ・フィーリング色濃いエモーショナルなヴォーカルが相性抜群ですよね。SANDROSE以降目立った活動はないようで、もっと表舞台で活躍してほしかったと思わせる逸材です。
70年代初頭のオランダを代表するプログレ・グループだったEARTH & FIREの紅一点ヴォーカリスト。ソーニャ・クリスティーナにも通じるちょっとスレた感じの「姉御的」なヴォーカルスタイルが魅力的ですよね。デビュー作収録のヒット曲「SEASONS」は、当時日本の洋楽チャートを賑わしたことでも知られています。
ベルギーのシンフォニックなジャズ・ロック・グループCOSでヴォーカルを務めた女性シンガー。少しアヴァンギャルドな要素もあるスキャットを中心とするヴォーカルスタイルを特徴としていて、カンタベリー・ロックにも通じるテクニカルで洒脱なジャズ・ロック・アンサンブルとその上を軽やかに舞うスキャット・ヴォーカルの組み合わせは、今もって唯一無二の個性を放っています。
ポーランドの出身、RENAISSANCEやCAMELの音楽性を正統に受け継いだ、90年代を代表するシンフォニック・ロック・グループQUIDAMの女性シンガー。フルートやオーボエを含む各楽器が繊細に音を重ねて織り上げていく泣きのシンフォ・アンサンブルに、切々と祈るように情感あふれる美声を乗せるEmila嬢、素晴らしいですよね。まさにため息が出る美しさと形容できる名唱でしょう。
まだまだ素晴らしい女性シンガーはたくさんいるとは思いますが、今回はこのあたりまで。
是非皆様も、女性ヴォーカルという要素に注目してプログレ探求を楽しんでみていただければと思います☆
ポーランドを代表するシンフォ・グループ。96年作の1st。ほの暗い叙情性を帯びたロマンティシズム溢れるキーボード、丁寧にメロディを紡ぐギター、優美なフルート、憂いある美しいメロディ、透明感溢れる女性ヴォーカル。東欧シンフォを代表する大傑作。
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は75年にリリースされた4thであり、彼らの代表作の呼び声も多い名盤。特にリムスキー・コルサコフの同名交響曲に端を発した「シェエラザード夜話」は、「アラビアン・ナイト」の世界をコンセプトに据えた20分を超える超大作であり、オーケストラ・サウンドとロックの融合を目指した英国ロックの1つの結論と呼ぶべき傑作。米国での成功で勢いに乗った彼らの生み出したシンフォニック・ロックの世界は他の追随を許しません。
英国出身、女性ヴォーカルSonja KristinaとヴァイオリニストDarryl Wayを擁するロック・グループによる70年作1st。ロックに弦楽器であるヴァイオリンを全面的に採用した初めてのグループ。本作は初期に残した3枚の中で最もヴァイオリンが活躍、クラシカル・ロック度が高い内容です。オープニング曲「It Happened Today」は焦燥感を掻き立てるギター・リフに妖しくも艶やかな女性ヴォーカルが映えるパワフルな導入から、一転清楚なヴァイオリン・パートへと変貌するドラマティックなナンバー。「Vivaldi」では超絶テクを披露するクラシカルなヴァイオリンが時に優雅に、時にノイジーに弾きまくり、目まぐるしく表情を変えるスリリングなインストゥルメンタルを展開。上記2曲を始め「完全に溶け合わないからこそ」の破天荒なクラシカル・ロックが楽しめる楽曲が目白押しです。初期衝動がこれでもか、と伝わるインパクト抜群の一枚。
Donella Del Monaco、Alfredo Tisocco、Giorgio Bisottoによって結成された「前衛」と「伝統」をグループ名に冠したイタリアン・プログレッシブ・ロック孤高のグループによる74年デビュー作。イタリアン・プログレッシブ・ロックの至宝と言われる本作は、アヴァンギャルド性を持った緊張感あるサウンドとDonella Del Monacoのクラシカルなソプラノ・ボーカルで聴かせる例の無い傑作であり、息を呑むほどに儚く壊れそうな繊細さの中に鋭い狂気を内包した名盤と言えるでしょう。クラシカルな美意識と前衛的デカダンスの融合は、全く新しいサウンドを響かせてります。FRANCO BATTIATO初期作品と比較されることの多い彼らですが、この存在感と格調高さ、張り詰めた質感は唯一無二のものです。
フレンチ・オルガンロックバンドEDEN ROSEから発展、女性ボーカリストのRose Podwojnyを加えて結成されたグループの73年唯一作。EDEN ROSEはキーボーディストHenri Garellaのサウンドがフューチャーされたオルガン・ロックでしたが、SANDROSEはソウルフルなRose Podwojnyの歌声とJean Pierre Alarcenのエモーショナルなギターを中心にしたアプローチであり、Henri GarellaはEDEN ROSEからの流れそのままのジャジーなオルガンに加え、KING CRIMSONやGENESISのようなメロトロンも使用し、シンフォニック・ロック然としたサウンドを作り出しています。
多重録音という言葉が既に死語となりつつある現代においてさえ強烈な存在感と圧倒的な完成度を誇るイギリスのマルチ・プレイヤーの83年作。MIKE OLDFIELDの作品の中でも、プログレッシブ・ロックという枠を超えて広く聴かれるべき名盤であり、MIKE OLDFIELDらしい大曲「Crises」に始まり、RENAISSANCEのAnnie Haslamなど多くのアーティストにカバーされている非常にポップな名曲「Moonlight Shadow」、YESのJon Andersonのボーカルによる「In High Places」など、当時のAOR風味を適度に織り交ぜながらも、MIKE OLDFIELDらしい爽やかなサウンドで聴かせています。
デヴィッド・アレン率いるGONGが71年にリリースした2ndアルバム。Pip Pyleの悶絶ドラミング、サックス&オルガンのアグレッシヴかつジャジーな演奏、Gilli Smythのスペース・ウィスパー、David Allenのユーモア溢れる弛緩ヴォーカルなど、すべてが聴き所。(ジャズ+サイケ+ロック)÷David Allen=Gongという公式が見事に確立したジャンル不問の大傑作。
MAGGIE BELLと共に「英国のJANIS」の異名で評されたCAROL GRIMESをフロントに据えた、カンタベリー・ロック・シーンで活躍することになるメンバーを多数擁した、ブルース・バンド。CAROL嬢のパワフルでソウルフル、かつブルージーなヴォーカルを全面に押し出し、ジャジーでアグレッシヴなブルース・ロック・アンサンブルを大展開!どこか可憐味の残るヴォーカルと、一筋縄では行かないカンタベリー・ロック・ミュージシャンによる魔法のように熱くもクールな味わい深い作品です。
70年代初頭にジャーマン・ブルース・ハード・バンドFRUMPYで強靭なヴォーカルを聴かせた女性シンガー、ソロ名義では3作目となる79年作。腰の入ったグルーヴィなリズム、ご機嫌に跳ねるピアノ、スワンプ風味のコクのあるカッティング・ギターらによるアメリカナイズされたカントリー・ロック調の演奏に、ソウルやブルースを咀嚼した存在感抜群のヴォーカルが映えに映えます。セクシーでソウルフルなヴォーカルがカッコよすぎる「Love Potion Number 9」、ハスキーな歌声がスティングばりにハマる「Roxanne」、ここぞとばかりの強靭なシャウト・ヴォーカルに圧倒されるHeartbreakersの「Breakdown」とカバーも絶品の出来栄え。ドイツ最高峰の女性シンガーの実力をたっぷりと味わわせてくれる逸品です!
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