2021年1月8日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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あけましておめでとうございます。とにかく世の中がエライ状態のまま2021年を迎えたわけですが、今年も健康には気をつけていきたいと思います。といいながら、この年末年始は原稿関係の仕事もあって、バタバタしたまま終わってしまい、あまり体が休まっていない感が……。その原稿仕事のひとつが、今月発売となる『レコード・コレクターズ』2月号の企画「この曲のドラムを聴け!」だった。この企画は、まず参加した各ライターが、「この曲のドラムがすごい!」と思うものを20曲選ぶ。そうして集まった曲の中から、編集部が200曲余りに厳選して、各ライターさんが執筆するという流れになっている。
この企画は、同誌2020年5月号で特集された「究極のギター・ソロ:ロック編」の続編的なものといえる。そちらにも参加させていただいたが、僕が選んだけど選考から外れた曲もあった。せっかくなので新春特別企画として(?)それらの曲を紹介させていただきたい。ぜひギター・ソロ興味で聴いてみてもらえればと思います。
まず、僕が選んで執筆もしたのが8曲。これについては本誌バックナンバーを読んでもらえればと思います。ちなみに①UFO「Rock Bottom」、②CAMEL「Lady Fantasy」、③RAINBOW「Light In The Black」、④GENESIS「Firth Of Fifth」、⑤Jeff Beck「Shapes Of Things」、⑥MARILLION「Kayleigh」、⑦PATTO「Loud Green Song」、⑧CHICKEN SHACK「Crying Won’t Help You Now」の8曲です。
僕が選んだけど、他のライターさんが書かれたものは4曲あった。まずはLYNYRD SKYNYRD「Free Bird」で、これはもう後半のギター・ソロが最高。BOSTON「A Man I’ll Never Be」は自分で書けなかったけど選ばれて嬉しかった。曲を劇的に盛り立て、短いながらも印象的なフレーズを一撃必殺で聴かせるトム・ショルツのセンスは抜群です。KING CRIMSON「21st Century Schizoid Man」は、誰かが選ぶだろうなとは思っていたけど、やはりあのギター・ソロは素晴らしい。他のメンバーがせわしなく慌ただしく音を鳴らすパートで、ゆっくりとロングトーンで入っていくというところが、ロバート・フリップのひねくれ感丸出しでサスガだ。4曲目はGUNS ‘N’ ROSES「Sweet Child O’ Mine」のスラッシュのギター・ソロ。先に挙げた「Free Bird」の影響を受けたというが、そういうロックの先達のセンスが確かに感じられ、やっぱり彼らは良く出来たロック・グループだなと思わせてくれる。
僕が選んだけれど採用されなかったのは8曲。まずはTHIN LIZZY「Roisin Dubh(Black Rose)A Rock Legend」で、トラッドの要素を加味したハード・ロック・バンドの彼らが、ガッツリとトラッド・メドレーをとり入れてみせた曲。それがすんなりハード・ロックに溶け込んでいるのは、やっぱりゲイリー・ムーアというギタリストがいたからこそといえるだろう。
2曲目は、BLIND FAITH「Presence Of The Lord」。当然エリック・クラプトンは選ばれるだろうし、CREAM「Crossroad」というのも順当だけれど、僕が偏愛するのは、この曲なんだよなぁ。カッチリとした構成のソロのなかで、感情のこもったチョーキング、繊細なビブラートなど、そのフレーズやトーンで胸をキュンキュン締めつけるギター・ソロだ。
3曲目はWISHBONE ASH「Through Down The Sword」で、本誌ではこの曲を収録した『ARGUS』から「Warrior」が選出されていた。そちらのギター・ソロも絶品だけど、僕の好みは「泣き」なので、その要素が強いこちらを選出した。
4曲目は、ロリー・ギャラガー「A Million Miles Away」。彼のギターは、どれも名演と言いたくなるものばかりで迷ったけど、切なさ溢れる同曲を選出。
5曲目はMOUNTAIN「Travellin’ In The Dark (To E.M.P.)」。MOUNTAINのレスリー・ウエストは、マイケル・シェンカーに影響を与えたことでも知られるが、この曲を聴くと、逆なんだけど「まるでマイケル・シェンカーやん」と思わず言ってしまうはず。特にテクニックの高くないフレーズながら、起承転結がパキッと決まっている絶品のギター・ソロです。
6曲目はFREE「Come Together In The Morning」で、もはや呻きのようにしか聴こえないポール・コゾフのギターは、彼が当時ドラッグでボロボロの状態だったことを思うと、命削って音を鳴らしているような異様な雰囲気を感じさせる。
7曲目はBAKER GURVITZ ARMY「The Artists」。この企画で絶対とり上げたいと思ったギタリストが二人いて、一人がオリー・ハルソール、もう一人がエイドリアン・ガーヴィッツだった。本誌ではエイドリアン・ガーヴィッツのAOR期の曲が選ばれていたけど、BAKER GURVITZ ARMYの2作目と3作目の、ハード・ロックからAORへ移行する時期のギター・センスの多彩さ&奥深さは、もっと評価されてほしい。
最後はALLMAN BROTHERS BAND「Dreams」。デュアン・オールマンも絶対選ばれると思ったけど、「Dreams」での酩酊したような、それでいてグイグイと聴き手を惹きこんでいくスライド・ギターが最高です。これもそんなに難しいテクニックのソロと思わないんだけど、このフィーリングはなかなかマネできない。
さて、当コラムの本筋に戻り、今回はWHITE WILLOWの『EX TENEBRIS』を含めた初期作のジャケットを紹介します。WHITE WILLOWは、ノルウェー出身のプログレ・バンド。中心となるのは、THE ORCHID GARDENのギタリスト、ヤコブ・ホルム・ルーポで、1995年のデビュー作『IGNIS FATUUS』以来、彼以外のメンバーはコロコロと変化していく。その『IGNIS FATUUS』は、KING CRIMSONの影響を感じさせる硬軟を活かした楽曲に、メロトロン、ヴァイオリン、フルート、女性シンガーといった、70年代プログレ・ファンの琴線に触れる加算ポイントが満載されていた音楽性で注目を集める。こちらのイラスト・ジャケットも印象的だったが、まだテーマ性がハッキリとしていない感じもあった。
それが、1998年の2作目『EX TENEBRIS』のジャケットで覚醒。中央にはバラ。その周りに、布だけをまとった二人の女性が、バラの花びらかのように身をよじらせて写っている。これをブルーのトーンで覆いつくし、全体をほの暗く神秘的に見せている。ゴシックな雰囲気もある同作のジャケットは、90年代プログレの中でも屈指の美麗ジャケットではないかと思う。
この『EX TENEBRIS』は、2014年にTermo Recordsからボーナス・トラックを4曲加えたデジパック仕様で再発されている。その際に、ジャケットがオリジナルのデザインを踏襲しながらもカラーの別デザインに変更されていた。こちらの女性はおそらく一糸まとわぬ姿ながら、ハイライトを当てて細部は見えなくなっている。それが天使のような神々しいイメージも与えている。それを白地ジャケット中央の円の中に配置しているのもセンスが良く、よりデザイン性の高いジャケットになっている。背表紙のタイトルが次作の『SACRAMENT』になっているという誤植があるが、この再発CDもなかなかの美麗ジャケットだ。
この2作目以降、WHITE WILLOWのアルバム・ジャケットは、ホラー要素の強いデザインになっていく。2000年の3作目『SACRAMENT』はまだしも、2004年の4作目『STORM SEASON』は、もはやホラー映画やホラーゲームのワン・シーンを思わせるジャケットに。実は、この2作品も『EX TENEBRIS』とともにTermo Recordsから再発され、その際にジャケットが変更されているのだが、これは再発CDジャケットの方が美麗なものに。『SACRAMENT』はバラを前に愁いのある表情を見せる女性が写るデザイン。『STORM SEASON』は、『SACRAMENT』の再発ジャケットと同じ女性が、傘を手にし、足を交差させ、うつむきがちに座っているという写真が採用されている。いずれもオリジナルとは異なるものの、統一感のあるデザインで実に美しい。
さて『EX TENEBRIS』だが、KING CRIMSONにフォーク的な冷ややかさを足したようなサウンドで、ゴシック的雰囲気の強いジャケットにもピッタリの音楽性を誇っている。ここでは同オリジナル作のラストを飾った「Dance Of Shadows」を聴いてもらいたい。アバンギャルドかつダークな雰囲気のインスト・パートと女性シンガーの歌う牧歌的なメロディの歌パートが、柔らかかつ滑らかに交差する約14分に及ぶ大作です。
それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。
Dance Of Shadows
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