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追悼 キース・ティペット氏

2020年6月17日、イギリスのジャズ・ピアニスト、キース・ティペット氏がお亡くなりになりました。72歳でした。

死因は心臓発作だったと発表されています。

プログレ・ファンであれば、やはり初期キング・クリムゾンでの鮮烈なピアノ演奏が印象に残っている方が多いのではないかと思います。 

クリムゾン以降も、ロバート・フリップと共同制作した作品や自身のバンドKEITH TIPPETT GROUPでの活動、そして奥方Julie Driscoll Tippettsとの共作など、近年まで異才を放ち続けました。

彼が参加した主要な作品を取り上げて、その創造性あふれるプレイの数々を振り返ってみたいと思います。

KING CRIMSON/IN THE WAKE OF POSEIDON

衝撃のデビュー作「クリムゾン・キングの宮殿」に負けず劣らずの傑作2nd。「Cat Food」で聴くことができるアヴァンギャルドに舞うピアノは、まさしく「美は乱調にあり」という言葉をそのまま表現したゾクゾクするようなプレイです。

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KEITH TIPPETT/BLUEPRINT

ロバート・フリップがプロデュースしたブリティッシュ・ジャズの名作。フランク・ペリーのアヴァンギャルドなパーカスワーク、ロイ・バビントンの芳醇なダブルベースも見事ですが、流麗にもエキセントリックにも自在なプレイを聴かせるキース・ティペットのピアノがやはり一際個性的ですね。

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CENTIPEDE/SEPTOBER ENERGY

こちらもフリップ・プロデュース作品。ティペット夫妻が共同作曲、キースはピアノと音楽監督としても名を連ねた一枚です。イアン・カー、エルトン・ディーンほか、なんと総勢50名が参加した、英国ジャズ・ロックの名士たちによる祭宴。

ちなみに本作の完成度とスケールの大きさに圧倒されたのが若きマイク・オールドフィールドで、このような大きな仕事をいつか自身も成し遂げたいと考え、それが『TUBULER BELLS』を制作する動機の一つとなったと語っています。

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KEITH TIPPETT GROUP/DEDICATED TO YOU BUT YOU WEREN’T LISTENING

自身のバンドによる71年2nd。ぶっ飛んだロジャー・ディーン・ジャケに負けず劣らず、内容も挑戦的でカッコいいんです。やや前衛度が高かった前作に比べ、より分かりやすい骨太かつ叙情にも富んだジャズ・ロックを鳴らします。エルトン・ディーン、ワイアット、ゲイリー・ボイルら名手たちによるテンションみなぎる演奏と対比する、舞うように鮮やかなピアノがさすがです。

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JULIE DRISCOLL / 1969

70年に結婚した英ジャズ・ロックの歌姫Julie Driscollの71年作にも参加。クリス・スペディングやエルトン・ディーンらが活躍するソウルフルなナンバーと、キースによる繊細なタッチの美しいピアノが聴けるアコースティックで静謐なナンバーとが共存する名作です。その両方で存在感ある歌声を響かせる彼女のパフォーマンスがまた圧巻!

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KEITH TIPPETTS ARK/FRAMES

初期から一貫する、アヴァンギャルドと美が共存するキース・ティペットならではの音楽性がたっぷりと味わえるのがこのアルバム。リリシズム溢れる前半とエネルギッシュに疾走する後半とのダイナミズムもまた魅力です。

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KEITH & JULIE TIPPETTS/COUPLE IN SPIRIT

ティペット夫妻が神秘的に綴る、アヴァン・ジャズ/ミニマルな87年の名作。こちらは13年のライヴ映像ですが、二人が織りなすサウンドに宿る神秘性は露ほども失われていません。

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こうして彼の演奏を振り返っていくと、実験的なパートにおいても、静謐なパートにおいても、またエネルギーみなぎる挑戦的なパートにおいても、どこか気高く孤高な佇まいがあって、それがキース・ティペットというミュージシャンならではの魅力に繋がっていた気がします。

ジャズ、ロック、アヴァンギャルド・ミュージックを結び付けた偉大なピアニストのご冥福を心よりお祈りしたいと思います。

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  • KING CRIMSON / IN THE WAKE OF POSEIDON

    衝撃的デビュー作「クリムゾン・キングの宮殿」の構成を踏襲した70年2nd、前作に匹敵する重厚さドラマ性に加えジャズ系ミュージシャンを起用し新機軸も打ち出した一枚

    ギタリストRobert Frippを中心に結成され、ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック・シーンの頂点に君臨し続けるグループ。プログレッシヴ・ロックという音楽ジャンルを構成する要素の多くは彼らがロック・シーンに持ち込んだものであり、現在もなお数多くのミュージシャンたちに影響を与え続けています。1970年に発表されたセカンド・アルバム『ポセイドンのめざめ』は、デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』の延長上に位置する作品となっています。『クリムゾン・キングの宮殿』発表後、ギタリストRobert Frippと作詞家Peter Sinfieldを除く3名が脱退を表明するも、諸事情によりGreg LakeとMichael Gilesは引き続き本作のレコーディングに参加。新たにKING CRIMSONに参加したのは、ピアニストKeith Tippett、管楽器奏者Mel Collins、ベーシストPeter Giles(Michael Gilesの実弟)、そしてヴォーカリストGorden Haskell。その結果、本作には8名ものミュージシャンの名前がクレジットされることになりました。音楽的にはデビュー・アルバムと同一線上で捉えることも可能ではありますが、例えばKeith Tippettのジャズ・ピアノをフィーチャーした「キャット・フード」、あるいは、ホルスト作曲の組曲「惑星(火星、戦争をもたらす者)」を思わせるリズムとカオティックなメロトロンが凄まじい相乗効果を生む「デヴィルズ・トライアングル」など、新たな試みも行われています。なお本作の後、Greg LakeはEMERSON, LAKE & PALMERとして再デビュー、そしてMichael GilesとPeter Gilesの兄弟はすでにKING CRIMSONを脱退していたIan McDonaldと共にMcDONALD AND GILESを結成します。

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